看護師の年収・給料はどれくらい? 初任給やボーナス、統計データも解説
専門性の高さや手当が多く付くことなどから、比較的よい収入を得られることも特徴です。
この記事では、さまざまな統計データをもとに、看護師の給料・年収、福利厚生などについて詳しく解説しています。
看護師の平均年収・給料の統計データ
看護師の給料は、勤務先の種類や規模、地域などによって異なります。
平均年収は、一般的に女性のなかでは高めといわれています。
とくに夜勤手当などの諸手当の割合が大きいため、20代~30代にかけての若手のうちは、同年代の他業種と比較して給与水準は高くなる傾向です。
ただし、看護師の多くの職場は不規則な勤務体系となっています。また、人の命に関わる業務に携わることから、日々の精神的なストレスも感じやすい仕事です。
一部の看護師からは「業務内容のハードさに対して十分な収入を得られていない」という声も聞こえてきます。
看護師の平均年収・月収・ボーナス
賃金構造基本統計調査
厚生労働省の令和5年度賃金構造基本統計調査によると、看護師の平均年収は41.9歳で約508万円、准看護師の平均年収は51.2歳で約407万となっています。
<看護師>
- 平均年齢: 41.9歳
- 勤続年数: 9.8年
- 労働時間/月: 159時間/月
- 超過労働: 6時間/月
- 月額給与: 352,100円
- 年間賞与: 856,500円
- 平均年収: 5,081,700円
<准看護師>
- 平均年齢: 51.2歳
- 勤続年数: 12.6年
- 労働時間/月: 160時間/月
- 超過労働: 4時間/月
- 月額給与: 286,800円
- 年間賞与: 629,500円
- 平均年収: 4,071,100円
出典:厚生労働省「令和5年度 賃金構造基本統計調査」
※平均年収は、きまって支給する現金給与額×12ヶ月+年間賞与その他特別給与額にて計算。
※本統計はサンプル数が少ないため、必ずしも実態を反映しているとは限りません。
<看護助手>
- 勤続年数:9.2年
- 労働時間/月:158時間/月
- 超過労働: 2時間/月
- 月額給与:222,500円
- 年間賞与:513,600円
- 平均年収:3,183,600円
出典:厚生労働省「令和5年度 賃金構造基本統計調査」
※平均年収は、きまって支給する現金給与額×12ヶ月+年間賞与その他特別給与額にて計算。
※本統計はサンプル数が少ないため、必ずしも実態を反映しているとは限りません。
求人サービス各社の統計データ
職業・出典 | 平均年収 | 年収詳細 |
看護師 (転職ステーション) |
483万円 | - |
看護師 (Indeed) |
3,640,003円 | 時給 1,296円 |
日給 16,182円 | ||
月給257,718円 | ||
看護師 (DODA) |
424万円 | 男性:464万円 |
女性:418万円 | ||
20代: 405万円 | ||
30代 :436万円 | ||
40代 :453万円 | ||
50代〜:479万円 | ||
生涯賃金:1億9799万円 | ||
看護師 (求人BOX) |
372万円 | <アルバイト・パート> |
平均時給 1,475円 | ||
<派遣社員> | ||
平均時給 1,967円 | ||
看護師/准看護師/看護助手 (転職会議) |
434万円 | 最高:1000万円 |
最低:150万円 |
各社のデータより、看護師の年収は360〜530万円の間となる実態が見えてきます。
看護師の手取りの平均月収・年収・ボーナスは
各社の統計データをもとに算出すると、看護師の平均年収は500万円前後となると思われます。
厚生労働省の統計調査より、ボーナスが年間でおよそ2.4ヶ月となっていることから、月額総支給額は35万円、ボーナスは年間86万円ほど支給されていると考えられます。
東京都で勤務する看護師で、独身の人の場合、交通費などを除外して考えると月の手取り額は24~25万円ほどになると見込まれます。
国税庁の「令和4年分民間給与実態統計調査」によると、日本における給与所得者の1年間の平均給与は458万円です。
この金額をもとにすると、看護師の給与水準はやや高めといえるでしょう。
看護師の初任給はどれくらい?
公益社団法人日本看護協会の調査報告によると、2023年度採用の新卒看護師の初任給実績は以下のようになっています。
<平均基本給与額>
- 高卒+3年課程卒:204,950円
- 大卒:210,963円
<平均税込給与総額>
- 高卒+3年課程卒:266,558円
- 大卒:274,752円
※単身・民間アパート居住者を想定
学歴によって多少の差はありますが、看護師の初任給は基本給でおよそ20万円~21万円と把握できます。
この基本給に加えて、夜勤手当や当直手当、通勤手当、住宅手当などが支給されるため、看護師の実際の初任給は、およそ26万円~27万円となります。
残業をした場合は、時間外手当がこれに加算されます。
看護師の勤務先の規模別の年収(令和5年度)
看護師の年収は、勤務先の規模が大きくなるとやや高くなる傾向があります。
10〜99人規模の事業所に勤める看護師の平均年収は453万円、100〜999人規模は486万円、1,000人以上の規模では557万円、10人以上規模平均は508万円となっています。
※賃金構造基本統計調査より作成。本統計は調査の母数が少ないため、必ずしも実態を反映していない可能性があります。
看護師の勤務先の年齢別の年収(令和5年度)
年齢別に看護師の平均年収をみると、年齢とともに徐々に給与が上がる傾向にありますが、それほど大きくは伸びないようです。最も年収が高い世代は、55~59歳の586万円です。
全年代の平均年収は508万円となっています。
准看護師の勤務先の規模別の年収(令和5年度)
准看護師の年収も勤務先の規模にともなってやや高くなっています。10〜99人規模では387万円、100〜999人規模は414万円、1,000人以上の規模では434万円になっています。
※賃金構造基本統計調査より作成。本統計は調査の母数が少ないため、必ずしも実態を反映していない可能性があります。
准看護師の勤務先の年齢別の年収(令和5年度)
准看護師の年収の上昇率は、看護師同様ゆるやかです。平均で見ると、看護師よりも数十万円ほど低めの年収となります。最も年収が高い世代は、50~54歳の438万円です。
全年代の平均年収は407万円となっています。
看護助手の勤務先の規模別の年収(令和5年度)
統計上では勤務先の規模によって給与に差はさほどないようです。
10〜99人規模の事業所に勤める看護助手の平均年収は364万円、100〜999人規模は304万円、1,000人以上規模は321万円、10人以上規模平均は318万円となっています。
看護助手の勤務先の年齢別の年収(令和5年度)
看護助手の年収は、年齢が上がってもあまり変わらない傾向にあります。最も年収が高い世代は、35~39歳の381万円です。
全年代の平均年収は318万円となっています。
20代で正社員への就職・転職
看護師の給料・年収の特徴
諸手当の割合が大きい
看護師の給料の内訳を見ると、諸手当の中に、看護職特有の夜勤手当や残業手当が多く含まれていることがわかります。
手当を含まない「基本給」(毎月支払われる最低賃金)は、一般的な仕事より若干高いだけですが、看護師の給料を引き上げている要因は、各種手当の割合の大きさにあります。
なかでも、とくに手当の額が多いのが「夜勤手当」で、多いときには3万円~5万円ほどつくこともあります。
年収のうち約40万円~60万円は夜勤手当分という計算です。
なお、昼間の勤務でも、日曜・祝日、正月に出勤した場合は「休日手当」がつきます。
また、病気や看護についての深い知識と経験を生かして「認定看護師」の資格を取ると、それに対しても手当がつく場合があります。
安定した給料が期待できる
看護師の仕事は、体力的にきつい上に、人の命を預かるという重い責任感が課せられる、肉体的にも精神的にもハードな仕事です。
果たしてその仕事量にあった給料が支払われているかと問われると納得できない看護師もいるかもしれません。
とはいえ、看護師の給料は安定しており、パートや派遣で働く場合の時給も他の業種より高いです。
求人も日本各地で絶えることがないため、資格を生かしやすい仕事であることは間違いありません。
看護師の福利厚生の特徴は?
看護師の勤務先のなかでは、規模の大きい病院ほど福利厚生が充実している傾向があります。
まず、「社会保険(厚生年金)」と、万が一の医療事故に備える「看護職賠償責任保険」は、看護師として働くときに最低限必要になる基本的な福利厚生です。
独身の看護師向けには「看護師寮」「住宅手当・家賃補助」、またスキルアップに役立つ「資格取得支援制度」などがあります。
既婚の看護師向けに、勤務時間や勤務日数を短縮した状態でも正職員としての待遇を受けることができる「短時間正職員制度」を用意している病院もあります。
また、小さい子どもをもつ看護師のために、院内や近隣に保育施設を完備したり保育手当を支給したりするなど、女性が働きやすい環境を整えているケースが多く見受けられます。
個人医院やクリニックなど規模の小さな診療所では、福利厚生の充実度合いは、院長の考え方・方針によってだいぶ変わってきます。
一部の個人経営の医療施設では、社会保険や退職金の制度がないところもあるといわれるため、勤務先を探す際にはよく確認しておく必要があるでしょう。
20代で正社員への就職・転職
看護師の勤務先別の給料・年収
大学病院で働く看護師
大学病院で働く看護師の平均年収は、500万円~550万円ほどです。
大学病院は研究施設としての側面をもち、全国から高度な医療を受ける必要のある患者が集まります。
先進医療棟や感染症病棟があり、病棟によっては特殊業務手当や危険手当などの基本給以外の手当も多く出ます。
また夜勤業務も月に何度かあり、その分の加算もあるため、他の種類の病院と比べて高めの給与水準となります。
クリニックで働く看護師
街の内科や皮膚科、眼科などのクリニックや診療所勤務の看護師の平均年収は、350万円〜400万円ほどです。
入院施設のないクリニックや診療所では夜勤がなく、所定の勤務時間以外で残業や休日出勤をする必要がほとんどありません。
そのため夜勤手当や時間外手当、休日出勤手当などがつかず、病院勤務の看護師よりも年収は低めになります。
ただし美容系クリニックや人工透析を行うクリニックでは、患者一人当たりの治療費が高く病院の収益も安定しているため、看護師の給与水準も比較的高めです。
介護施設で働く看護師
有料老人ホームや特別養護老人ホームなどの介護施設に勤務する看護師の平均年収は、450万円〜550万円程度です。
年収は施設の種類や夜勤の有無によっても異なりますが、夜勤がある場合は病院勤務の看護師とあまり差はありません。
入居者の要介護度や医療ニーズが低い有料老人ホームや、看護師の夜勤配置が義務付けられていない介護老人福祉施設などでは夜勤や残業がない場合が多く、平均年収は400万円~500万円程度となります。
国家公務員として働く看護師
看護師のなかには、国家公務員として働く人もいます。
国家公務員として採用される看護師の職場は、各地の自衛隊病院、宮内庁病院、厚生労働省の「国立ハンセン病療養所」など、国が運営する医療施設が中心です。
このほか、厚生労働省の「看護系技官」として、看護に関する政策立案などに携わる例もあります。
こうした国家公務員の看護師の給料は、法律にもとづき「医療職俸給表(三)」に沿って支給されます。
以下の図は、人事院の「平成4年国家公務員給与等実態調査」をもとに、医療職俸給表(三)の年収等をまとめたものです。
国家公務員として働く看護師の平均年収は584万円程度になると考えられます。
なお、「医療職俸給表(三)」は看護師の他に「保健師」も含みます。実際の収入は、個人の経験年数や職務階級によっても異なるため、上記の数字はあくまでも参考程度に見てください。
参考:医療職俸給表(三)の適用人数と男女比
以下の図は、医療職俸給表(三)の適用人数と男女比をグラフ化したものです(※2022年のデータより)。
医療職俸給表(三)が適用される職種は看護師・保健師であり、国家公務員のなかではすべての年代で女性の比率が非常に高めとなっています。
参考:医療職俸給表(三)級別平均俸給額
以下の図は、医療職俸給表(三)の級別平均俸給額をグラフにしたものです(※2022年のデータより)。
級が上がるにつれて確実に俸給額が増えていくことが特徴です。
看護師の正社員以外の給料・年収
派遣看護師
派遣スタッフとして医療機関で働く「派遣看護師」の給料は、基本的に時給制です。
派遣看護師の時給は、地域・経験にもよりますが、一般的には都市部で1,500円~2,000円、地方で1,200円~1,600円ほどが相場とされています。
急募の求人、専門知識や経験が必要な求人では高時給になる傾向があり、都市部の大手医療機関や介護施設などでは、時給が2,500円を超える場合もあります。
また、派遣で働く場合はサービス残業はなく、8時間を超える残業や22時以降の夜勤が発生したときは、割増時給で時間外手当がつきます。
派遣看護師が時給2,000円で月に20日、1日あたり8時間勤務した場合、月給は32万円、手取り月収は28万円ほどです。
こう考えると、月収では正職員の看護師とあまり差がありませんが、派遣看護師は基本的にボーナスが支給されないため、年収は360万円~400万円程度と正職員より数十万円ほど少なくなります。
アルバイト・パートタイム
アルバイトやパートタイムとして勤務する場合の給料も、派遣と同じように時給制が一般的です。
ただし、時給設定は派遣看護師よりも数百円ほど安くなる傾向があります。
時給は地域によっても異なりますが、おおむね1,000円~1,500円が相場です。
アルバイトやパートは働く時間や日程を柔軟に調整できますが、基本的に夜勤手当やボーナスの支給がないため、月収や年収には正職員と比べて大きな差がつきます。
1日8時間、月に20日勤務した場合は、月収が16万円~24万円、年収は200万円~300万円ほどになります。
ただし、訪問看護や訪問入浴の仕事では、ある程度のスキルや臨床経験が求められるため、パート看護師でも高時給の求人があります。
また夜勤専従のパート看護師として働く場合は、時給換算すると2,000円以上になることもあり、少ない日数でも効率的に稼ぐことができます。
看護師が収入を上げるためには?
病院では配属先の部署や働き方によって、支給される手当の種類や金額が変わります。
集中治療室(ICU)や救急救命(ER)など超過勤務や緊急対応が多い部署に異動したり、夜勤の回数を増やしたりすることで手当が増え、年収を上げられます。
また「認定看護師」や「専門看護師」などの専門資格を取得することも収入アップにつながる要素です。
資格を取ったからといって必ずしも手当が支給されるとは限りませんが、スキルアップし、ポジション・役職が上がれば給与額が上昇する可能性は高くなります。
また、一般的に運営規模が大きく、病床数が多い病院ほど給与も高い傾向があるため、給与・手当・福利厚生が充実している大病院に転職するのも一つの方法です。
このほか、近年では高齢化が進むなかで訪問看護の仕事は急速に需要が伸びています。
訪問看護は体力や機転が要求される仕事ですが、手当が充実しており高収入が望めます。