栄養士の仕事とは? わかりやすく仕事内容を紹介
栄養士は、学校や病院、その他食事を提供する多くの施設に欠かせない仕事のひとつです。
本記事では、栄養士の業務内容からその役割、仕事の流れなどを紹介します。
栄養士の仕事とは
栄養士は栄養に関するスペシャリストとして、食事の管理と栄養指導を行う仕事です。
必要な栄養を考え、毎日の食事メニューを決めるだけでなく、実際に厨房に入って調理することもあります。
栄養を満たしていることはもちろん、おいしく食べられるようにすることを意識し、食の魅力や楽しみを伝えることも大事な役割です。
20代で正社員への就職・転職
栄養士の業務の内容
食事の管理
学校や病院などで、それぞれの人に必要な栄養とは何かを考え、毎日の食事メニューを決めることです。
単に栄養を満たしているというだけでなく、おいしい食事であることも求められます。
病院では、医師・看護師・薬剤師とチームを組み、患者の容態を見ながらメニューを決めます。
栄養士の仕事は盛りつけ・献立作成・食事指導などですが、勤務場所によっては調理師といっしょに調理することもあります。
栄養指導
栄養指導とは、その人にとってどのような食事が望ましいかということをカウンセリングすることです。
たとえば、肥満や糖尿病の人にバランスのとれた食生活について栄養指導を行うといったことをします。
特定保健指導
運動不足や栄養の偏りにより、生活習慣病に悩まされる人が増えてきたことから、2008年に「特定健診・特定保健指導」がスタートしました。
「特定健診」とは通称「メタボ健診」と呼ばれるものです。
メタボリックシンドロームは内臓脂肪が蓄積した状態をいい、生活習慣病になりやすくなり、高血圧・動脈硬化・糖尿病などの新たな病気へと繋がってしまいます。
それを未然に防ぐために、栄養士が生活や食生活を改善するよう「特定保健指導」を行います。
40歳から74歳のすべての被保険者・被扶養者で、腹囲の測定結果が男性85cm以上/女性90cm以上が対象となります。
対象者は指導レベルごとに「情報提供」「積極的支援」「動機づけ支援」の3段階に振り分けられ、レベルごとの改善指導を行います。
こうした生活改善の指導により病気を予防することが、ひいては医療費の削減にもつながっていきます。
栄養士の役割
近年、健康ブームの影響で、世間には体にいい食材や料理のレシピなどの情報があふれています。
テレビや雑誌では、病気やダイエットに効く食材・調理法など、おびただしい情報があふれているため、一体どれが正しい情報なのかと混乱してしまう人もいるでしょう。
食材や料理の正しい情報を提供することも栄養士の役割のひとつです。
20代で正社員への就職・転職
栄養士の勤務先の種類
こだわらなければ、栄養士の求人は少なくはありません。
妊娠・出産などで退社する女性栄養士が多いため、欠員補充での求人もよくあります。
栄養士の仕事は、管理栄養士と比べると、食事を管理する仕事よりも調理の現場に近い仕事の募集が多いようです。おもに食事を提供する施設で活躍しています。
- 病院
- 福祉施設
- 学校
- 保育園
- 社員食堂
少数ながら、食品会社などで調査や食品開発に携わる人、自衛隊で働く栄養士もいます。
最近増えているのが、委託給食会社に所属する栄養士です。
給食会社の栄養士は、各施設(事業所)に派遣され、給食業務にあたります。
給食会社によって、介護分野が得意だったり、社員食堂に力を入れていたり、医療分野に強かったりするなどさまざまな特色があります。
病院の栄養士
学校の栄養士
介護施設の栄養士
給食会社の栄養士
保育園、幼稚園の栄養士
公務員(保健所)の栄養士
スポーツ栄養士
自衛隊の栄養士
フリーランスの栄養士
学校で働く栄養士
- 幼稚園・保育園
- 小中学校
- 高校
- 大学・専門学校
上記で働く栄養士は、健康な子どもたちへの食事提供を基本業務としていますが、なかにはアレルギーや病気を抱える人もいます。
そうした人に対しては特別食や代替メニューを用意する必要があります。
子どもの成長に合わせた栄養バランスや食材の選択をすることも大切な仕事です。
また、毎日の食事を飽きずに楽しく食べられるよう、季節感のあるメニューや世界の料理・郷土食をとりいれるなどの工夫も必要です。
さらに、家庭科教諭や保険教諭と連携して食育や身体の発達に関わる指導をすることもあります。
以下のような働き方があります。
- ひとつの学校に専任で勤務する
- 複数の学校を掛け持ちする
- 給食センターで働く
病院や介護保健施設などの医療施設で働く栄養士
病院や介護保健施設で働く栄養士は、病気の人や高齢者のための献立・メニューを作成し、ひとりひとりの体調や健康状態に合わせた適切な食事を提供します。
もし間違った場合は命にかかわる危険性もあるため、ほかのスタッフとの連携が大切です。
食事がとりづらい人には、食材を細かく刻んだ「きざみ食」や、とろみをつけて食べやすくした「とろみ食」などを用意します。
また、食事を提供して終わりではなく、体調や食欲を観察し報告することも大切な仕事です。
公共施設で働く栄養士
都道府県庁・市町村役場などのほか、保健センターなどの公共施設で働く栄養士もいます。
- 地域に住む人の健康に関わる施策に携わる
- イベントを開催する
- 乳児・幼児検診や健康診断などでの栄養相談
- 健康的な食事がとれるよう料理教室を開催して市民にアドバイスをする
- スポーツ関連施設でアスリートや学生に対して栄養指導をする
独立・開業して働く栄養士
企業などに所属せず、栄養士の資格を生かしてフリーランスとして働く人もいます。
- クッキングスクールを開く
- テレビや雑誌に出る
- 講演会をする
- 飲食店のメニューをプロデュースする
など多彩な働き方があります。
近年では、健康や食事に関する関心が高まっているため、SNSやブログから人気に火がつき、活躍する栄養士も増えてきています。
栄養士の仕事の流れ
栄養士は、まずは調理現場に入り、仕込みや調理をします。
その施設によりますが、一度に数十人から数百人分をつくることもあるため、調理師と協力して仕事を進めます。
調理が一段落すると、栄養士はメニューや献立の作成に入ります。
管理栄養士が常駐していない職場もあるため、栄養士がメニューの作成や食材の発注、原価計算や栄養計算などを行うこともあります。
その食事を利用する人の好みや年齢層を考え、食べやす味付けにしたり、メニュー名をわかりやすくしたり、似たメニューが連続しないように気をつけます。
管理栄養士がいる場合は管理栄養士と相談しながら作成をすすめ、予算と照らし合わせ、問題がなければ本決まりとなります。
栄養士と関連した職業
栄養士と栄養教諭の違い
栄養教諭は、2005年から始まった新しい資格制度です。小・中学校で児童や生徒に食の指導を行い、学校給食の管理・運営に携わります。
栄養教諭の制度ができたことによって、栄養教諭は、他の学校の先生と同じく教員として学校における食育に携わることができるようになりました。
なお、栄養教諭の配置や採用基準は各都道府県の裁量に任されており、すべての学校で栄養教諭が働いているわけではありません。
栄養士と調理師の違い
栄養士と調理師は、どちらも国家資格です。
栄養士として働くためには、栄養士養成施設で所定のカリキュラムを修了し、卒業する必要があります。
一方、調理師と名乗るためには調理師養成学校で学ぶか、実務経験を積んだうえで調理師試験に合格し、調理師免許を取得する必要があり、それぞれの職業に就くためには、該当する国家資格を取得することが求められます。
栄養士も調理師と同じように調理を行うことがありますが、あくまでも「栄養」に重点を置いたメニューを作ることになります。
一方、調理師は、栄養について考えながら調理を行うことはあるものの、それ以上に「味」や「見た目」に重点を置いた調理が中心となります。
栄養士に関わるデータ
特定給食施設数の年次推移
栄養士の勤務先である特定給食施設の数は、学校が減少し、老人福祉・児童福祉・社会福祉・矯正施設が増加している傾向にあります。少子高齢化が進むなかで、この流れは続いていくと考えられます。
特定給食施設数の種類別構成割合
特定給食施設数として最も大きい割合を占めるのは学校です。次いで児童福祉施設、病院と続きます。
栄養士の仕事内容のまとめ
栄養士は、栄養のスペシャリストとしてさまざまな施設で働いています。毎日の献立の決定や栄養指導、特定保健指導など、その業務は多岐にわたります。
情報があふれる現代において、食材や料理の正しい知識を提供することも栄養士の大切な役割です。