歯科技工士の年収・給料はいくら? 男女の違いや年収1000万円を目指せるかについても解説

歯科技工士の平均年収は400万円前後と推定されます。

年齢が上がるにつれて少しずつ収入はアップしていくものの、20代の給料は月収約20万円とやや低めで、年収300万円に満たない人も多いようです。

就業先にもよりますが、ハードな仕事の割に高額な収入は望めない場合があります。

歯科技工士の平均年収・給料の統計データ

日本歯科技工士会「2021 歯科技工士実態調査報告書」によると、歯科技工士全体の年収割合では最も多いのが「300~400万円未満」20.0%、次いで「200~300万円未満」18.8% 、「400~500万円未満」14.5%となっています。

なお、自営業者のみで年収の割合を出した場合は、最も多いのが「200~300万円未満」で15.9% 、次いで「200万円未満」が14.6%です。

専門的な勉強をし、国家資格を取得して働く仕事ではあるものの、医師」や「看護師」などの医療職に比べると給与面で低水準なことは否めません。

ただし、年収600万円以上の割合になると、自営業者は勤務している場合と比べて非常に高く、「1000万円以上」においては9.6%と、給与水準が高いことがわかります。

歯科技工士は技術職であることから、技術力を高めてよりよい条件の職場へ転職したり、独立・開業して成功した歯科技工士の一部は、安定的に高収入を得ています。

競争が厳しい世界ですから、しっかりとした目標を持ち、若手のうちは多少のハードワークに耐える覚悟も求められる仕事といえます。

2021歯科技工士実態調査報告書

歯科技工士の平均年収・月収・ボーナス

賃金構造基本統計調査

歯科技工士の平均年収_2022
厚生労働省の令和4年度賃金構造基本統計調査によると、歯科技工士の平均年収は42歳で約430万円となっています。

・平均年齢: 42歳
・勤続年数: 11.9年
・労働時間/月: 183時間/月
・超過労働: 11時間/月
・月額給与: 328,700円
・年間賞与: 354,300円
・平均年収: 4,298,700円

出典:厚生労働省「令和4年度 賃金構造基本統計調査」
歯科技工士の平均年収の推移_r4

※平均年収は、きまって支給する現金給与額×12ヶ月+年間賞与その他特別給与額にて計算。
※本統計はサンプル数が少ないため、必ずしも実態を反映しているとは限りません。

歯科技工士の手取りの平均月収・年収・ボーナスは

令和4年度賃金構造基本統計調査を見ると、歯科技工士の平均年収は約430万円となっています。

この調査によれば、ボーナスの支給額は35万円ほどと発表されていますが、個人経営の歯科技工所ではボーナスの支給はないか、あっても数万円程度というところも少なくありません。

上記の平均年収から見る手取りの月収は約26万円と推定され、飛びぬけて高額な収入を得るのは難しいのが現状です。

ただ、歯科技工士は残業が発生する職場が多いため、残業代がきちんと支給されるかどうかや、家賃手当や扶養手当などの各種手当の充実度などによって、働きやすさと満足度が変わってくると感じている歯科技工士が多いようです。

歯科技工士の初任給はどれくらい?

歯科技工士として技工所に就職した場合の初任給の目安は15万円から17万円前後が一般的です。

歯科技工士は専門的な知識が必要な仕事であり、一人前になるには実務経験が必要です。

そのため、新卒のうちは給料は低く、実務経験を積み、知識を深めていかなければ給料は上がっていきません。

歯科技工所は小規模の事業所が多く、個人経営の技工所に勤務した場合、とくに初任給や新人時代の給料は低めとなりがちです。

一方、大手歯科医院内の歯科技工士として就職すると、給料はさほど高くなくても、福利厚生など待遇面が充実しており、安定感をもって働ける場合があります。

なお歯科技工士の国家資格を取った後、さらに知識・技術を深めるために「専攻科」へ進学し、卒業した人に対しては、初任給をやや高めに設定しているところもあります。

歯科技工士の勤務先の規模別の年収(令和4年度)

歯科技工士の年収を規模別に見ると、10人〜99人規模に勤める歯科技工士の平均年収は432万円、100〜999人規模は412万円、1,000人以上規模は446万円、10人以上規模平均は430万円となっています。

歯科技工士の年収(規模別)_r4

賃金構造基本統計調査より作成。本統計は調査の母数が少ないため、必ずしも実態を反映していない可能性があります。

歯科技工士の勤務先の年齢別の年収(令和4年度)

歯科技工士の年収を年齢別に見ると、年齢の上昇にしたがって、年収も上がっています。最も年収が高い世代は、65~69歳の680万円です。

全年代の平均年収は430万円となっています。

歯科技工士の年収(年齢別)_r4

 

歯科技工士の福利厚生の特徴は?

大手の歯科技工所になるほど福利厚生は充実

歯科技工士の福利厚生は、勤務先によって変わってきます。

全体としては、大手の歯科技工所になるほど福利厚生は充実している傾向です。

比較的規模の大きなところでは、社会保険完備をはじめ通勤手当、住宅手当、家族手当、退職金制度などがあったり、リフレッシュ休暇制度や保養所の利用、慶弔金などの制度があるところもあります。

福利厚生が不十分な歯科技工所も

一方、個人経営の小さな歯科技工所では必ずしも社会保険が完備されているとは限らず、自分で国民年金や健康保険に加入しなくてはならない場合があります。

なお、歯科技工所によっては基本給や手当の中に「みなし残業代」を含めている場合があります。

その場合、一見、月給はそこそこ恵まれているように見えても、いざ働いてみると実際の残業時間と給料が割に合わないと感じている人もいます。

歯科技工士は残業時間が長めといわれるため、福利厚生や労働条件は就職前によく確認しておいたほうがよいでしょう。

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歯科技工士の給料・年収の特徴

20代のうちは収入が低めになりやすい

歯科技工士の平均年収は350万円~400万円程度とされ、他職種と比較すると、決して高いものとはいえません。

歯科技工士は自分の手を動かしてモノを作る技術職であるため、経験・キャリアを積んでいけば、年齢とともに年収は少しずつ上がっていきます。

しかし昇給ペースはさほど早くない場合が多く、若いうちはいいのですが、年齢が上がると給与面や体力面で厳しさを感じて転職を考える人も少なくありません。

歯科技工業界全体が厳しい競争下にあることから、大きな収入アップが望みにくい現状です。

大手と個人経営では仕事の流れや学べることが異なる

歯科技工士の就業先は数多くあるため、給与水準が高めで、待遇がよい職場で働けるチャンスもあります。

大手企業では月給60万円ほどの求人もあり、特殊な技術や豊富な経験があれば高い収入を得られるでしょう。

しかし条件のよい職場は人気が集まり、採用ハードルが高くなります。

また、必ずしも大手の歯科技工所が自分の肌に合うとは限りません。

組織が大きな職場では仕事が効率化・システム化されており、個々の技工士は流れ作業としてしか業務に携われない場合があります。

単調な一部の業務だけを続けていると、なかなか技術力が上がらず、理想と違うと感じ、早くに離職してしまう人もいます。

一方、個人経営の技工所では、さまざまな業務を幅広く新人のうちから任せてもらえることがあります。

決して最初の給料は高くなくても、短期間で技術力を備え多様なスキルを身につけることで、より良い条件の職場へ転職したり、独立開業して収入アップにつなげることも可能です。

目先の給料や待遇だけで考えず、自分が何を求めているのかを明確にし、自分にとって最適な職場を見つけることが大切です。

歯科技工士の勤務先別の給料・年収

歯科技工所

厚生労働省の令和2年衛生行政報告例によれば、歯科技工士の73.4%(25,561人)が歯科技工所で勤務しています。

歯科技工所は大手企業が経営するところもありますが、個人経営のほうが圧倒的に多いとされています。

大手は給料が安定しており、福利厚生も充実している傾向にあり、ボーナスの支給なども含め、安定感をもって働きたいのであれば、大手の技工所を選択するほうがよいでしょう。

しかし個人経営の技工所のすべてで待遇が悪いわけではありません。

小さな技工所でも、大先輩の技術を間近で見て覚えながら、生活に困らないくらいの給料と最低限の福利厚生の下で働けるところもあります。

参考:厚生労働省 令和2年衛生行政報告例

歯科医院・診療所

歯科技工所に勤務しない歯科技工士のほとんどが、病院・診療所で働いており、歯科技工士全体の約3割に当たります。

院内に「ラボ」と呼ばれる技工所を併設している病院や診療所では、患者さんの要望やニーズに対して、より素早く応えらることができ、歯科医師と歯科技工士の連携がスムーズになりやすいのもメリットです。

ラボを備える病院や診療所は比較的規模が大きな場合が多いため、給料や待遇はある程度安定しているケースが多いです。

自費診療を多く行うなどで、大きな利益が出ている医院・診療所では、年に2回ほどのボーナスが毎年支給されているところもあります。

自営業の歯科技工士

全国にある歯科技工所のうち、1人技工所は76.7%となっており、歯科技工士はキャリアを重ねると独立開業して自分で運営する人も非常に多く見られます。

自宅でひとり開業する場合、設備や機材・道具などで1000万円近くの資金が必要だと言われているため、知識や経験の積み重ねも大切ですが、資金も必要です。

厚生労働省のデータなどから平均年収は400万円前後と考えられますが、一方で技術を生かして年収1000万円を超える歯科技工士もいます。

他の歯科技工士よりも技術や知識があり、歯科医師に頼られるようなプロフェッショナルであれば、高額を得ることも夢ではありません。

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歯科技工士の正社員以外の給料・年収

アルバイト

歯科技工士は正社員のほか、アルバイト・パートの求人も出ています。

時給は地域によって異なりますが、新卒者や歯科技工の経験がわずかである場合、各地域の最低賃金程度の時給からのスタートになる場合も多いです。

国家資格を持っていることが前提の職種である割には、やや低水準の時給といえるでしょう。

ただ、ある程度の経験を積んでいると、時給2,000円程度で雇用される場合もあります。

独立・開業

歯科技工士は独立・開業が目指せる職種です。

しかし、歯科技工所をつくるには専用の機器を導入するなど設備投資が必要です。

数百万円程度の融資を受けて開業する人が多く、開業後、数年間は厳しい経営状況になることも覚悟しておいたほうがよいでしょう。

事業が成功すれば年収1000万円以上など、雇われて働く歯科技工士よりも高額な収入を手にできます。

歯科技工士の年収は男女で違いはある?

厚生労働省「衛生行政報告例」によると、全歯科技工士における女性の割合は平成28年度で19%です。

歯科技工所勤務では男性84%に対し女性が16%、病院や歯科医院勤務では男性70%に対し女性が30%となっています。

男性歯科技工士の平均年収は400万円前後とされており、日本人の平均年収よりも低い傾向にあります。

それに対し女性歯科技工士の平均年収は300万円前後で、歯科技工士は女性よりも男性の方が年収が高いことがわかります。

一方で、他の職業を含めた女性全体の平均年収は約300万円であり、女性歯科技工士の年収はさほど低いわけではないことがわかります。

歯科技工士の年収は低い?他の医療系の専門職との違いは?

歯科技工士には技工所や病院に勤務する人と独立開業して働く人の大きく2つにわけられます。

そのため平均年収にはばらつきがありますが、平均年収をほかの医療系職種と比較すると、歯科技工士の平均年収は低めです。

近年、歯科技工士の平均年収は400万円前後で推移していますが、ほかの医療系の専門職は以下のようになっています。

看護師や薬剤師、臨床検査技師などの医療系国家資格と比較すると、高いとは言えないでしょう。

一般的な会社員と比べても、低めとなっています。

歯科技工士が収入を上げるためには?

近年、歯科技工所の数は右肩上がりで、歯科技工士の求人数は決して少なくありません。

しかし歯科技工業界で価格競争が厳しくなっており、日々汗水たらして働く現場の技工士にしわ寄せがきているのが実情です。

20代の若いうちはよくても、薄給激務に耐えられずベテランになる前に離職してしまう人も多く、「若手が安い給料で激務をこなす」という労働状況がなかなか改善されていません。

ただ、当然すべての職場が厳しい労働環境なわけではありません。

歯科技工士には職人的な要素が強い一面があることから、何よりも「技術力」を高める意識が重要です。

将来の目標を明確に定め、コツコツと目の前の仕事に取り組んで高い精度で技工物をつくれるようになると、周りの見る目も変わってきます。

早く技術力を備えれば、若いうちに良い条件の職場へ転職できるチャンスが出てきますし、独立開業の選択肢も視野に入ってくるでしょう。

この職種で大きな収入アップを望むのであれば、やはり独立開業し、事業を軌道に乗せることが一番です。

経営するのも大変な道ではありますが、一朝一夕で技術力は身につかないことを理解し、地道に成長していく姿勢が求められます。

歯科技工士は年収1000万円を目指せる?

歯科技工士が技工所で雇われて働く場合、年収1000万円を目指すのは難しいといえます。

年収1000万円を目指す場合は、次の2つの方法が考えられます。

まずは自営で独立開業する道です。

独立開業して個人事業主になれば、働いただけ収入が増えますし、スキルや知識があれば年収1000万円を超える人も少なくありません。

しかし、独立開業は経営や営業の知識が求められたり、設備投資が必要だったりと、誰でもできる事ではありません。

失敗してしまえば、雇われていたときより年収が下がる場合もあるため注意が必要です。

もう一つは、海外で仕事をする方法です。

海外では歯科技工士に資格が必要ではない国もあり、日本の高い技術を持つ歯科技工士は高く評価されやすいのです。

国によっては歯科に関する知識や技術がまだあまり浸透しておらず、歯科技工士の社会的地位が非常に高いところもあります。

語学力は必要ですが、海外に働く場を移すことで年収1000万円を稼ぐという道もあります。

歯科技工士の年収・給料のまとめ

歯科技工士は、職場に有資格者が少なく、残業が多かったり、福利厚生が整っていなかったりと働きやすい環境が整っていないことも少なくありません。

給料の低さに加え、待遇の悪さや将来への不安からせっかく資格を取得しても仕事を辞めてしまう人は後をたちません。

こうした歯科技工士の労働環境を改善しようと、近年国を挙げて取り組みをしています。

今後は徐々に給料もアップしていくことがのぞまれます。