助産師の需要・現状と将来性

助産師の需要

助産師として働くためには、助産師を養成する大学や養成学校で数多くのことを学び、実習も受け、国家試験に合格しなくてはなりません。

そのような長いプロセスを経て、ようやく助産師の免許を手にすることを考えると、「少子化が進む世の中では、助産師の仕事がなくなってしまうのでは?」と不安に思う人も多いようです。

1人の女性が生涯に何人の子どもを産むのかを推計した「合計特殊出生率」は、2020年は1.34となり、前の年を5年連続下回っている状況です。

少子高齢化が進み、たしかにお産の数は減ってはいますが、分娩・出産というニーズ自体がゼロになることはあり得ず、助産師の仕事が消えることはありません。

国の調査によれば、就業助産師は、全国に36,911人(平成30年末時点)いるといわれています。

保健師の52,955人、看護師の1,218,606人と比べると、全体としての数は少なく、まだまだ不足しています。

定職・離職により活躍している現役の助産師が現場を退くことに加え、年間1,500人ほどしか新しい助産師は誕生しないため、そのバランスはまだまだ助産師不足に傾いているといえます。

助産師の現状

産科医・助産師が不足している大学・総合病院や産科クリニックをはじめとする医療施設では、助産師へのニーズが高くあります。

看護師資格も必要になる助産師は、助産師と看護師どちらの仕事もできるため、働く場所の選択肢が広く、専門的な知識とスキルに期待が集まっています。

産後ケアや不妊治療など、近年新たに需要が増している分野もあるため、助産師が活躍できる場所や分野はむしろ広がっていると考えていいでしょう。

また、晩婚化に伴う高齢出産の増加など、ハイリスク分娩の管理の必要性が高まっていることから、それに対応できる知識も助産師に求められるようになってきています。

また、少子高齢化に伴い、母親や家族、それぞれ独自のこだわりや希望を反映させたバースプランに基づき、出産に臨むケースも増えています。

一人ひとりの分娩出産に、より手をかけじっくりと向き合うニーズが増しており、この先、助産師の役割は拡大していくと考えて間違いありません。

助産師の将来性

助産師の役割というと、昔から出産・分娩時の介助にスポットが当てられがちです。

しかしながら、最近では、産前及び産後の母子ケアにかかわる助産師の重要性が世間一般にも認められるようになっています。

核家族が多い現代では、退院後、新生児を連れて自宅に戻った母親を迎えてくれるのは夫だけという家庭が大部分を占めます。

その夫も仕事が忙しく、育児については母親がワンオペレーションで抱え込んでしまう状況を問題視する声が上がり始めています。

いわゆる密室育児と呼ばれる環境で、育児に慣れない母親の負担が増え、産後の不安定な時期と重なって心や身体を病んでしまうケースも少なくありません。

地域の助産師が産後も母子の生活に少しでも接点を持ち、ささいなことであっても相談相手にとして寄り添うと、孤独な中で育児をする母親の不安が減ることでしょう。

出産を終えた母子が、その後の暮らしも不安なく営んでいけるよう、助産師は母子ケアのプロである助産師の力が今あらためて注目されています。

助産師の活躍の場

産科を専門とする助産師の就職先は、産科を置く大学病院や総合病院、産科クリニック、助産院が主ですが、ほかにも市町村の保健センター、母子健康センターなどもあります。

また、教育者や指導者として助産師養成学校なども活躍の場に挙がります。

助産師は開業もできますが、実際に開業しているのは助産師全体の3%程度で、残りの97%は病院やクリニック勤務という統計が出ています。

しかしながら、昨今の全国的な産科医不足などにより、産科医師の代わりに助産師が妊婦健診を行う「助産師外来」を設置する病院や産科クリニックが増えています。

助産師外来のメリットは、産科医の不足をカバーできることだけではありません。

妊婦が助産師に対し、妊娠・出産において不安や疑問を相談しやすい相手だと感じ、信頼関係を築いていくなかでリラックスして診察に臨めるようになります。

助産師外来で妊婦健診を受ける妊産婦からは、「妊娠や出産に対しての精神的な不安や緊張が減った」「前向きな気持ちで楽しみながら妊婦生活を送れる」といった声も出ています。