出版社で働くには
出版社社員になるまでの道のり
出版社社員になるには、各出版社が実施する社員採用試験を受け、採用される必要があります。
ひとことで「出版社」といっても、大手企業や中小企業、総合出版社や専門系出版社など、さまざまな会社が存在します。
出版社は高い学歴が求められる傾向があるため、大学へ進学しておくと就職先の選択肢は広がります。
大手出版社は人気が高く、難関大学の学生も多数志望するため、学生時代にきちんと勉強しておきましょう。
正社員として出版社の内定を得るのは簡単ではありませんが、別の方法として、アルバイトで現場に入る道があります。
アルバイトの仕事は、編集部でのアシスタント業務などが中心で、雑用からスタートする場合も多いです。
しかし現場経験を積むことで中途採用の試験を目指したり、頑張りが認められれば社内で契約社などへステップアップできるチャンスがあります。
20代で正社員への就職・転職
出版社の求人の状況
出版社では、大きく分けて新卒者を中心とした「定期採用」と、社会人経験のある人を対象とした「中途採用/経験者採用」が実施されています。
定期採用
4年制大学の卒業(見込み者含む)者や、4年制大学卒業と同等の資格を取得した人を対象とした募集で、大手出版社を中心に毎年行われています。
学部や学科は問われません。
年齢については「〇〇年以降生まれ」のように、新卒や第二新卒といわれる20代の若い世代に制限されるのが一般的です。
定期採用で入社する人材は、実務未経験で才能も未知数であるため、職種別採用をせずに「総合職」として募集することが一般的です。
入社後、本人の希望はなるべく優先するものの、適性によっては希望する分野以外へ配属されることもあります。
採用人数は規模の大きな出版社ほど多いものの、それでも「若干名」です。
中小規模の出版社では、1~2名しか採用されない場合もあり、狭き門となっています。
経験者採用/中途採用
出版社では、出版業界での実務経験者や、各職種に関連する経験・能力がある人を対象とした採用も行われています。
大手出版社では毎年決まった期間に、その年に必要な職種の経験者を募集することが多く、中小の出版社では欠員が出ると不定期で募集をかけることが多いようです。
クリエイティブ職の場合
編集者をはじめとするクリエイティブ職は、経験と能力で合否を判断されることが多いです。
しかし大手出版社では、ここでも大卒の学歴が必須となる場合があります。
クリエイティブ職は多忙になりがちで、他分野の職種に比べて人の入れ替わりが激しいため、求人が出されることは多いです。
営業・管理系職種の場合
営業や経理などの一般企業にも共通する職種では、4年制大学既卒者または同等の資格取得者で、その職種における実務経験のある人を募集するのが大半です。
なかには経験を優先し、能力が高い人なら学歴を問わないという会社もあります。
出版社で働くための学部・学歴
出版社が求める人材として、多くは「大卒以上」の学歴が必要になります。
しかし学部・学科は問われないことが多く、文系でも理系でも応募可能です。
業種柄、やはり文系学部出身者は多いですが、理数系を専門に学んできた人で論理的に物事を考えられたり、自分の好きな分野について熱く語れるような人は、高評価を得ることがあります。
出版社の採用試験では「何を学んできたか」よりも、「何を生み出せるか(何をしたいのか)」が重要視されることが多々あります。
自分が学生時代に何を学びたいのかをハッキリとさせて、一生懸命それに打ち込んでおくことが何よりも大切です。
なお、出版社は昔から就職先として人気がある一方、大手といわれる企業でも採用人数はそこまで多くありません。
難関大学の意欲的な学生が多く志望するため、しっかりとした採用試験対策と準備が必要になります。
20代で正社員への就職・転職
出版社社員になるのに有利な資格はある?
出版社で働くうえで、「この資格があれば試験に通りやすくなる」といったものはありません。
また、いくら履歴書の取得資格欄にたくさんの資格名をずらりと並べて書いてあったとしても、それだけでプラスに評価されることはほとんどないと考えておいたほうがよいでしょう。
ただ、面接の場では、保有資格をきっかけに「なぜこの資格を取ったのか?」という話につながり、面接官と話が盛り上がる可能性はあります。
どのような資格を持っているとしても、それを取得した経緯や理由といった「自分自身のストーリー」を相手に伝えるなかで、人間性が浮き彫りになってきます。
その人間性が評価され、結果的にプラスになることはあるでしょう。
出版社社員に向いている人
人との関わりが苦手でない人
出版社では、それぞれ専門分野の異なる人たちが、「魅力的な1冊の書籍・雑誌をつくり上げる」という大きな目標に向かって、協力して仕事を進めていきます。
自分の意見を述べたり相手の話を聞いたりといったコミュニケーションは、出版社では日常的に行われています。
編集職であっても営業職であっても、人との関わりを苦手にせず、自分から積極的にコミュニケーションをとれる人は、出版社社員に向いているでしょう。
自分なりの「好きなこと」がある人
出版社では、画一的な価値観よりも、多様性が重視される傾向があります。
さまざまな個性や考え方、意見をぶつけ合ってこそ、よりよい書籍・雑誌が生み出せることが多々あるからです。
どのような分野でもいいので、「これだけは人に負けないくらい大好き」というものがある人は、出版社社員の適性があります。
物事を深く考えられる人
出版社で働くということは、書籍・雑誌の「つくり手」になるということです。
いち読者のうちは、ただ単に本を読んで「面白いな」と思ってさえいればよかったのが、つくる側に回った途端「どうすれば、面白くなるのか」と考えなければなりません。
そうした思考を鍛えるには、常に物事の本質や、裏側を探ろうとすることです。
人気があるもの、流行っているものを見たときにも、「これはなぜウケているのだろう」と考えられるような人が、出版社社員に向いています。
出版社社員のキャリアプラン・キャリアパス
「総合職」として採用された新卒社員は、本人の適性や希望、会社の都合などによって、営業・編集・管理などの各部署へ配属されます。
基本的に2~3年は同じ部署で経験を積んでいきますが、その後はまったく異なる部署へ異動することがあります。
たとえば広告営業をしていた人が、雑誌編集の仕事をする、といった形です。
同じ雑誌編集の領域であっても、マンガ誌から週刊誌などへ異動になることもあります。
大手の総合出版社は扱う書籍・雑誌の数が豊富で、その分だけ配属先が変わる機会も多いです。
また、出版社には「ライツ」といわれる権利関連を専門的に扱う部署や、マーケティングや販売・宣伝などの部署、総務・人事といった管理系の部署など、さまざまな仕事があります。
異動を繰り返しながら経験を積み上げていき、編集部であれば副編集長、編集長など管理職へステップアップするのが一般的な流れです。
出版社のアルバイト
意外に求人は多い
出版社の社員は毎日忙しいことがほとんどで、業務には細かな雑用もたくさん生じます。
その雑用的な部分をアルバイトに任せることで少しでも社員の負担を軽減しようということから、アルバイトの募集を行っている企業がたくさんあります。
大手の出版社の場合、正社員の採用には大卒またはそれと同等の学歴が必要ですが、アルバイトは学歴を問われないことが多く、比較的敷居が低いのも出版社アルバイトの特徴です。
アルバイトの仕事内容
出版社でのアルバイトは、電話応対やお茶出し、コピー、スキャニング、ネタ探し、資料整理などといった編集者のアシスタント的な仕事が中心です。
買い物や荷物運び、後片付けのような、出版社の業務内容とは直接関係のない雑用までこなすこともあります。
WordやExcel、PowerPointなどの一般的なパソコン操作のスキルが高いほど資料作成などの重要な仕事を任される確率がアップ。
さらにInDesign、Illustrator、PhotoShopが扱えるとより編集寄りの仕事を任される可能性が高くなります。
ライター志望など文章力がある人の場合、校正や読み合わせの補助を行うこともあります。
時給は1000円から1200円前後とあまり高くはありませんが、長く勤めると昇給も可能です。
出版社アルバイトのメリット
インターン感覚で業界が覗ける
業務の多忙から大手の出版社ではインターンを実施していないところも多いですが、そういった企業でもアルバイトで入ることで、社内の様子や業務内容がよくわかります。
将来、出版関係で働きたいと考える学生にとってはとても貴重な体験ができるアルバイト先だといえるでしょう。
クリエイターへの道が開ける
出版の世界は完全実力主義であるため、実は雇用形態はさほど問題ではありません。
アルバイトであってもDTPのスキルを伸ばせばデザイナーやオペレーターに、ライティングのスキルを伸ばせば編集アシスタントや校正者への道が開けることもあります。
出版社社員は高卒から目指せる?
高卒の人が、出版社の正社員をいきなり目指すのは、やや厳しいと考えておいたほうがよいでしょう。
大手出版社は新卒・中途採用ともに「大卒以上」の学歴を応募条件にしていることが多く、高卒だと応募すら難しいのが現実です。
ただ、高卒では出版社に入れる可能性が1パーセントもないかというと、そうでもありません。
というのも、アルバイトなど非正規雇用から現場に入り、ステップアップを目指すルートがあるからです。
出版社では、忙しい時期にアルバイトや派遣社員を募集することがあります。
仕事の内容は経験や配属される部署によって異なりますが、たとえば未経験者の場合、編集者のアシスタント的な立場で電話応対やコピー、資料作成、情報集めなどをします。
出版業界ではなくてもパソコンスキルのある派遣社員の場合、パソコン入力によるデータ整備やグラフィックソフトを利用したオペレーションなどを任されることがあります。
正社員ではなくても、出版社で働く期間が長くなるほど業界のしくみがわかり、できる業務が広がっていくため、先輩社員の推薦で契約社員や正社員への道が開けることがあります。
このほか、最初は編集プロダクションでみっちりと経験を積み、実力や経験を強みに出版社に応募してみる方法なども考えられます。
意欲的で、出版業界への情熱が認められれば、学歴問わず採用される可能性もゼロではありませんが、まずは諦めない心と行動力が大切になってきます。
出版社でインターンをするには
出版社のインターンとは
インターンは学生の就業体験制度
インターンとは「インターンシップ」の略で、学生の就職先となるさまざまな企業において、就職前の一定期間、実際に働く「就業体験」のことを意味します。
インターンシップに参加する学生は、企業のリアルな様子を肌で感じられ、イメージしていた業務の内容がより具体的になります。
企業側にとっても、早い段階で学生に企業理念・文化や現場の様子、働き方を知ってもらうことにより「採用後のミスマッチ」を防げるなどのメリットがあります。
出版業界でも徐々にインターン実施企業が増えている
もともと出版社は、他業界に比べてインターンを募集する企業や、インターンの実施回数はあまり多くはありませんでした。
出版社は「大手」といわれる企業でも社員数が決して多くなく、少数精鋭で日常の多忙な業務を回していることから、実施したくてもできない事情があったようです。
また、出版社ではインターンを行わずとも、多数の優秀な学生が集まるという背景もあったのでしょう。
しかし、近年は出版業界でも学生に業界や企業に対する理解を深めてもらうべく、徐々にインターンを実施する企業が増えてきています。
「3大出版社」といわれる集英社、講談社、小学館では、2020年夏時点で、集英社と講談社がインターンを実施しています。
その他の中小出版社でも、学生の夏休みや冬休みなどの期間中にインターンを募集する企業があります。
情報は各企業の採用Webサイトなどに公開されるため、こまめにチェックしておきましょう。
出版社のインターンの内容
出版社のインターンの内容は企業によって異なりますが、雑誌・文芸・コミックなどの編集、取材への同行、情報集め、資料制作、企画案出しなどの業務が体験できます。
他業種の企業では中長期インターンを実施するケースもありますが、出版社の場合はほとんどが1dayインターンです。
数時間の限られた時間の中で、出版社の仕事や働き方が体験ができます。
これまで読者側に立ってきた学生にとっては、雑誌や書籍をつくる側、情報を発信する側に立つことで、おもしろいコンテンツをつくる難しさや奥深さを実感できるでしょう。
インターンに参加する魅力・メリット
華やかな世界に見える出版業界ですが、出版物をつくる現場、裏方の「リアル」を感じることによって、ますますこの業界に興味を深める人と、自分には向いていないと感じる人に分かれるようです。
それを感じるためにインターンに参加するのも、非常に価値のあることでしょう。
もちろん各企業の理念や風土を知ることもできますし、出版社の編集や営業以外の部署の仕事(「ライツ」「クロスメディア」など)についての理解も深まるはずです。
出版社のインターンはさほど実施回数が多くないからこそ、少しでもこの業界に興味がある人は、ぜひ積極的に参加することをおすすめします。
出版社への転職を検討するなら、転職エージェントに相談してみよう
未経験や中途で出版社を目指す場合には、転職エージェントに登録しておくのもおすすめです。
出版分野に強い転職アドバイザーから、業界情報を聞くことができたり、出版社の「非公開求人」の情報を得ることができます。
まだ転職するか迷っている、そもそも出版社が自分に合っているか不安という段階でも、専門家のアドバイスを聞くことでキャリア選択の幅を広げることができます。
リクルートエージェントは、転職エージェントの中で最も求人数が多く、転職実績もNo.1となっているので、まず登録しておきたいエージェントです。
また、20代の方や第二新卒の方は「マイナビジョブ20's」に登録してみるとよいでしょう。
20代を積極採用している企業の案件が多く、専任キャリアアドバイザーによる個別キャリアカウンセリングを受けることができます。
なお、対応エリアは「一都三県・愛知・岐阜・三重・大阪・京都・兵庫・奈良・滋賀」となります。
どちらも登録・利用はすべて無料なので、ぜひ登録して気軽に相談してみてください。