社会福祉士の役割・高齢化社会で求められることは?
社会福祉士の役割
社会福祉士は、あらゆる分野に精通した福祉のエキスパートとして、介護、障がい、貧困、児童虐待、DVなど世間に蔓延するさまざまな問題を取り扱う職業です。
このため、社会福祉士の勤め先も高齢者施設や介護施設、医療施設、障がい者支援施設、福祉事務所、児童福祉施設など多岐にわたっています。
さらに近年では、福祉ニーズの多様化に伴って、司法施設や教育施設で働く社会福祉士も増加しており、社会福祉士は各地域社会のいたるところで幅広く活躍しているといえます。
そうした環境下、社会福祉士は個々の相談者に対応することはもちろん、横のつながりを生かし、各施設間の連携を強化していくことも大事な仕事のひとつとなっています。
つまり、社会福祉士は、福祉の相談に応じる「ソーシャルワーカー」であると同時に、地域支援のために働く「コミュニティワーカー」でもあるということができます。
介護、医療、行政など、業界の垣根を超えたネットワークを構築し、年齢や障がいに関係なく、誰もが安定して暮らせる「地域共生社会」を実現させることが、現代の社会福祉士に課せられた大事な役割です。
高齢化社会における社会福祉士の役割
社会福祉士は、上述したようにさまざまな社会問題の解決にあたる職業であるため、その支援対象となる人も、高齢者もいれば、身体障がい者や精神障がい者もおり、また子どもやその保護者もいます。
しかし、これからの日本は、団塊の世代の高齢化が進むにつれて人口全体に占める高齢者の割合が高まり続け、2036年には人口の3人に1人が65歳以上の高齢者となる見通しです。
そうした環境にあっては、社会福祉士の役割も、高齢者支援の比重がより高まっていくことは間違いないでしょう。
すでに現代においても、配偶者の死亡や生涯独身率の増加によって、一人暮らしの「独居老人」が増え、介護してくれる人が誰もいない「介護難民」や、老人性うつを発症する人、孤独死する人が増えています。
また、配偶者や子どもがいる場合であっても、そうした介助者も高齢になることで、「老老介護」という別の問題も発生します。
そうした問題に対処するためには、専門知識と幅広い人脈をもった社会福祉士が病院や介護施設、自治体などと情報を共有しつつ、各自に合わせた適切な福祉サービスを提供していくことが不可欠です。
歴史上類を見ない「超高齢化社会」に突入しようしている日本にあっては、社会福祉士が担うべき役割は、より一層重くなっていくでしょう。
成年後見人制度における社会福祉士の役割
成年後見人制度とは、知的障がいをもつ人や、認知症を発症して判断能力が衰えてしまった人などに代わって「後見人」として認められた人が、その財産を管理したり、生活面をサポートしたりする制度です。
一般的に、家族の申し立てに基づいて成年後見人制度が利用されるケースが多く、その際に後見人となるのは本人の家族や親族、あるいは弁護士や司法書士といった法律関係の有資格者です。
しかし、身寄りのない人や、虐待やDVなど、家庭環境になんらかの問題がある人については、家族ではなく市町村が申し立てを行うことがあり、その場合、社会福祉士が後見人となるケースもよくあります。
今後、人口の高齢化が進むにつれ、成年後見人制度の利用が必要となる老人も増え続ける見通しです。
財産トラブルや身内での争いを未然に防ぐため、そうした老人の後見人となることも、さまざまな福祉ニーズに対応できる社会福祉士の役割の一つとして期待されています。