社会福祉士と社会福祉主事の違い
社会福祉士と社会福祉主事の仕事内容の違い
社会福祉士の仕事は、病気やけがなどで介護が必要になった人や、心身に障がいがある人、生活困窮者、虐待を受けている子どもなど、なんらかの理由で日常生活を送ることが困難になった人を支援することです。
介護施設や福祉施設、医療施設、行政施設などに勤務し、施設利用者や地域住民からの相談に乗って、アドバイスや指導を行ったり、最適な福祉サービスを紹介したりします。
一方、社会福祉主事については、後述する資格取得方法などは社会福祉士と異なるものの、仕事内容は基本的に社会福祉士と同じです。
もともと社会福祉主事は、市役所の福祉課や福祉事務所など、福祉に携わる行政職員のために設けられた「公務員のための資格」という位置付けでした。
このため、現在でも福祉事務所に勤め、家庭訪問や面談、生活指導などを行う現業員(ケースワーカー)として働く社会福祉主事が多いものの、その職場は介護施設や福祉施設など、民間の施設にも広くおよんでいます。
社会福祉士と社会福祉主事のなる方法・資格の違い
社会福祉士は国家資格であるため、社会福祉士になるには、国家試験を受けて合格することが必要です。
社会福祉国家試験には受験資格があり、4年制福祉大学で指定科目を修めて卒業する、一般の4年制大学卒業後に養成施設で1年以上学ぶなど、全12通りあるいずれかの条件を満たさなければ試験を受けられません。
これに対し、社会福祉主事は任用資格であり、いずれかの要件を満たして福祉事務所などに就職することで、半ば自動的に与えられる資格です。
任用資格要件は全部で5通りあり、大学で指定科目を3科目以上修めて卒業する、都道府県が実施する講習を受けるといった方法で目指せます。
なお、社会福祉士の資格があれば、それだけで社会福祉主事の任用資格要件も満たしますため、社会福祉士は、社会福祉主事の上位資格とみなすことができます。
社会福祉士と社会福祉主事の資格の難易度の違い
社会福祉士国家試験では、福祉、行政、医学、心理学など、複数の分野にわたって問題が出題されるため、幅広い専門知識を身につけなければなりません。
合格するにはおよそ300時間の勉強が必要とされており、1年ほど前から受験対策を始めるケースが一般的です。
大学や養成施設などでしっかりと学んできた人しか受験できないにも関わらず、試験の合格率は25~30%ほどしかなく、非常に難易度の高い試験といえます。
一方、社会福祉主事になるにあたって試験を受ける必要はなく、大学で指定科目を履修したり、講習を受けたりすることで資格が取得できます。
資格取得の難易度としては、社会福祉主事よりも、社会福祉士のほうがはるかに高いといえます。
社会福祉士と社会福祉主事の学校・学費の違い
社会福祉士国家試験の受験資格を得る方法は複数ありますが、どの場合であっても、大学や短大、養成施設など、いずれかの学校で学ぶことが必須となっています。
最もオーソドックスな進学先である4年制福祉大学を例にとると、入学金や授業料を含め、4年間でおよそ400万円ほどかかります。
ただし、夜間課程や通信課程のある学校もあるため、学費負担を半分程度に、あるいは、さらに減らすこともできます。
一方、社会福祉主事になるにあたり、どこかの学校に通うことが絶対必要というわけではないため、資格取得にかかる経済的負担は、講習の受講費用程度に抑えることも可能です。
ただ、社会福祉主事として就職することを考えると、とくに公務員になるためには、ある程度の学歴があったほうが有利なのは間違いないため、一概に比較できない部分もあります。
社会福祉士と社会福祉主事の給料・待遇の違い
社会福祉士の平均年収は380万円~550万円前後、社会福祉主事の平均年収は300万円~500万円前後がボリュームゾーンとされています。
社会福祉士のほうが取得難易度が高く、より専門的な業務を行えるため、収入面においても社会福祉主事を上回っています。
ただ、どちらの資格にもいえることですが、民間の施設で働くか、公共の施設で働くかによって、待遇面には大きな違いが生じやすいといえます。
公共の施設では、公務員として働くことができるため、月々の給料は民間施設と大差なくても、住宅手当や通勤手当が充実していたり有給休暇が取得しやすかったりなど、福利厚生が手厚いケースが目立ちます。
このため、就職先を選ぶ際は、単純に給与の額面だけで比較せず、諸条件を含めて検討することが大切です。
社会福祉士と社会福祉主事はどっちがおすすめ?
社会福祉士と社会福祉主事を比べた場合、専門性の高さ、活躍できる範囲の広さ、収入など、あらゆる面において社会福祉士のほうが上回っています。
公務員の採用試験を受ける際にも、社会福祉士資格があったほうが有利です。
大学や短大のなかには、社会福祉主事の資格取得を売りにするところもありますが、あえて社会福祉主事を目指す特段の理由はありません。
たとえ国家試験の受験勉強が大変でも、がんばって社会福祉士になることをおすすめします。
ただし、経済的な事情でどうしても進学が難しい場合には、社会福祉主事を経由して、社会福祉士にステップアップする道も考えられます。
社会福祉主事として相談援助業務を4年以上経験すれば、養成施設に1年通うだけで社会福祉士試験を受験できるため、学費を工面することはそこまで困難ではないでしょう。