人材派遣会社で働くには(大学学部・学歴)
人材派遣会社社員になるまでの道のり
人材派遣会社社員として働くには、各社が実施する社員採用試験を受ける必要があります。
大手企業では、毎年定期的に新卒採用を実施するところが多いです。
その場合には「総合職」として一括採用するのが一般的で、入社後は会社の研修や教育を受け、本人の適性や希望に応じて「営業」「コーディネーター」といった各部門・職種に配属となります。
「大卒以上」の学歴を応募資格とする企業もありますが、「短大卒・専門学校卒」あるいは「学歴不問」の採用が実施されることもあります。
人材派遣会社の業務に必要なスキルは入社後の研修や実務を通じて習得できるため、学生時代にどのような勉強をしていた人でも人材派遣会社で働けるチャンスはあります。
20代で正社員への就職・転職
人材派遣会社の求人の状況
正社員の求人数は多い
「人材を求める企業と、働きたい人材をつなぐ」人材派遣会社では、そこで働く「人(社員)」こそが貴重な存在となっています。
人材派遣業界では正社員の採用活動が活発に実施されており、大手の人材派遣会社では、新卒採用を毎年必ず行っているところも少なくありません。
人材派遣会社に就職するうえでは、特別なスキルや資格が求められることはほとんどなく、学歴などの条件さえ満たしていれば誰でも応募することができます。
求人数も比較的多いため、就職はそこまで難しいものではないでしょう。
ただし、人間性が強く問われる業界であることから、仕事に対する熱意や誠実さを十分にアピールする必要があります。
離職率には要注意
人材派遣会社を含めた人材業界は、離職率が高い業界だといわれています。
とくに営業職については、企業によっては1年も経てば人がすっかり入れ替わってしまうこともあるようです。
その理由はいくつか考えられますが、ひとつには、仕事でかかるストレスやプレッシャーがあるようです。
人材派遣会社は派遣先企業と派遣スタッフの間に立つため、どうしても両者の板挟みになりやすく、その責任の重さが社員一人ひとりに重くのしかかりやすいです。
また、大手人材派遣会社では、派遣先企業との商談を行う営業と、派遣スタッフとのやりとりを行うコーディネーターの仕事は分業されていますが、中小企業では両方の仕事を一人の担当者が兼務することは珍しくありません。
必然的に業務量が多くなり、深夜まで残って仕事をしたり休日出勤をして対応しなくてはならず、それが離職の理由につながっているケースもあるようです。
そのほか、職場の人間関係、給料や待遇の問題など、さまざまな理由が考えられます。
一概にはいえませんが、年間を通じて求人を出している企業の場合、かなり離職率が高いこともあります。
就職先を探していく際には、その点にも注意するとよいでしょう。
人材派遣会社で働くための学部・学歴
人材派遣会社で働くために、必ず進学しなくてはならない学校の種類や、学部・学科はありません。
大手企業の一部では「大卒以上」の学歴を必須要件とするため、大学に進学しておくほうが、就職先の選択肢は広がるでしょう。
ただし「学歴不問」で応募できる企業もあるため、必ずしも大学を出ていなければ働けないわけではありません。
なお、人材派遣業界で働くうえで、有利になる学部や学科はとくになく、ありとあらゆる学部・学科で学んだ人が活躍しています。
もちろん理系出身者であっても就職することは可能です。
どのような学校・学部出身であっても「なぜ、人材業界で働きたいのか」を明確にしておくことが大切です。
20代で正社員への就職・転職
人材派遣会社社員に必要な資格・スキル
人材派遣会社社員を目指すにあたって、有利になる資格はとくにありません。
業務で必要となる知識・スキルは、入社後の研修や実務を通じて習得可能です。
会社に入るために何か資格を取るのではなく、学生時代に自分なりに打ち込めることを見つけ、それに向かって努力する経験を大切にしたほうがよいでしょう。
人材派遣会社では「人間性」を最大の評価基準とする傾向があるため、若いうちからさまざまな経験をして、人間としての幅を広げていくことは決してムダにならないでしょう。
また、中途採用の場合も、資格は求められない場合が多いです。
前職までの経験やどのようなスキルがあるのかを確認されることはありますが、もともと未経験でも転職しやすい業界ではあるため、資格の必要性はほとんどないと考えておいてよいでしょう。
ただし、一部の職種では、持っておくと役立つ可能性のあるスキルや資格がありますので、それらを紹介していきます。
人材派遣会社の営業に有利なスキル
人材派遣会社の営業は、スタッフの派遣先となるクライアント企業への営業活動を行います。
働き手を探している企業へアプローチし、求める人材像(担当業務、スキル等)について詳しくヒアリング。
さらに就業条件についてすり合わせを行い、企業のニーズを満たしながら、派遣スタッフが安心して働ける状況をつくり出します。
モノを売り込む営業というよりも、企業のニーズをいかに引き出せるかが重要になってくるため、相手の話を正しく聞く力に加え、交渉力や提案力を身につけているとスムーズに事が運びやすいでしょう。
業種問わず、サービスを提案する法人営業として働いていた経験がある人は有利になることが多いでしょう。
人材派遣会社のアドバイザーに有利な資格・スキル
人材派遣会社のアドバイザーは、派遣として働きたいと考える人と面談をし、キャリア相談にのったり、新しい派遣先を紹介したりする仕事です。
その人が転職によって実現したいことや、理想の働き方を聞き出したうえで、最適な企業の紹介につなげます。
ヒアリング力はもちろん、情報を論理的にまとめてわかりやすく伝える力、また不安を抱えている相手の気持ちに寄り添う姿勢などが求められます。
また、さまざまな業界の基礎知識を持っておくと、派遣スタッフに対してより深いアドバイスや理解がしやすくなるでしょう。
そういった意味では、どのような経験を積んできた人にも前職までの経験を生かせるチャンスがあります。
必須ではなくても、国家資格の「キャリアコンサルタント」や「キャリアコンサルティング技能士」、あるいは民間の「キャリアカウンセラー」系資格を取得していると、仕事に生かせることがあるはずです。
人材派遣会社のコーディネーターに有利な資格・スキル
人材派遣会社のコーディネーターは、企業によっては営業やアドバイザーが兼務しています。
働き手を探す企業と、派遣として働く場所を求めるスタッフをうまくマッチングさせるのが、コーディネーターのおもな役割です。
両者の希望や適性をよく把握したうえで、双方にとってメリットのあるマッチングをしなくてはなりませんから、調整能力が必要です。
また、コーディネーター職は企業やスタッフに対して電話やメールで細かく連絡をとったり、書類を作成したりする機会が多いため、事務処理能力が求められます。
アドバイザー職と同様に「キャリアコンサルタント」などの資格を持っていると、携わることができる仕事の幅が広がってくるでしょう。
人材派遣会社社員に向いている人
「人」に対する興味関心がある人
人材派遣会社の仕事では、人と人をつなげるという、形のない「サービス」を提供します。
派遣スタッフとの面談などを通して、ときに人間の心の深いところにまで迫ることもあるからこそ、人が大好きで、人と接する仕事がしたいと本気で思える人に向いている仕事だといえるでしょう。
マニュアル通りにいかないことも多々ありますが、自分で試行錯誤して、目の前の人が喜んでくれたときには、大きな喜びを味わえるはずです。
人のキャリア、活躍を支援したい人
人材派遣会社社員は、人のキャリアに関する「挑戦したい気持ち」や「夢・目標」に寄り添い、後押しします。
人を応援したい、サポートしたいという気持ちを強く持っている人であれば、仕事を楽しめるでしょう。
クライアント企業からも、適切な人材を派遣することができれば大いに喜んでもらえます。
人のために頑張ることが苦痛にならない人、人を助けて喜んでもらえることが自分の喜びになるといった人に向いています。
苦しくても物事をやりきることができる人
人材派遣会社の仕事では、ときにクライアント企業と派遣スタッフの板挟みになることがあります。
また、両者からクレームやお叱りの声を直接受ける機会もあるでしょう。
そんなときには、ただ落ち込むだけではなく、物事を解決させるための方法を冷静に考えて真摯に対応することが大切です。
苦しい状況であっても、自分がやると決めたことを責任もって最後までやり遂げられる人が、人材派遣会社社員には向いています。
人材派遣会社社員のキャリアプラン・キャリアパス
人材派遣会社が新卒採用を行う場合、「総合職」のようなかたちで、一括採用されるのが一般的です。
その場合、たいていは本人の適性や希望、会社の状況などを考慮したうえで、入社後に研修を受けて各部門・職種に配属されます。
大手企業では、さまざまな経験を積むために、営業からコーディネーター、アドバイザーからコーディネーターなど、数年ほどでのジョブローテーションが行われることもあります。
実務を通じて業界のしくみを深く理解し、業務をスムーズに回す力を身につけ、徐々に役職を上げていくのが一般的な昇進ルートです。
一方、アドバイザーならアドバイザーとして第一線で長年働き続け、スペシャリストを目指す道を用意している企業もあります。
人材派遣会社社員は高卒から目指せる?
人材派遣会社は全国にたくさんあり、なかには「学歴不問」で求人を出す企業もあります。
そういった企業であれば、高卒からでも意欲次第で就職できるチャンスはあります。
また、人材派遣会社では、中途採用(キャリア採用)を行っている企業も多いです。
この場合、すでに社会人経験がある人を対象としているケースが多く、それまでに培ってきた経験を生かし即戦力として活躍できる人材が求められます。
「人」に関する仕事をすることから、各業界の営業職、教育関係、サービス業などから転職する人が多いようです。
もし新卒での入社が難しくても、高卒から入れる別の会社で社会人経験を積み、その経験・スキルを強みに、人材派遣会社への転職を目指すことは十分に可能です。
人材派遣会社を起業するには
人材派遣会社は簡単に起業できる?
最近、人材派遣会社を自ら起業しようとする人が増えているようです。
他の国と比べても、日本は人材派遣会社の数が非常に多いことで知られており「人材派遣」というビジネスモデルに魅力を感じている人が多いことがうかがえます。
しかし、人材派遣会社を設立するにあたっては、いくつかの要件をクリアしなくてはなりません。
決して誰もが簡単に起業できるものでないことは事実です。
以下では、人材派遣会社を新規で立ち上げるときの流れについて紹介していきます。
人材派遣会社の起業までのステップ
人材派遣会社を起業するまでには、大きく以下のステップを踏む必要があります。
1.派遣元責任者講習を受講する
↓
2.人材派遣業の許可申請を出す
↓
3.許可が下りる
↓
4.事業開始
重要なポイントについて詳しく紹介します。
派遣元責任者講習とは
人材派遣会社を起業した場合、経営者は派遣労働者の保護を目的として「派遣元責任者」を配置する必要があります。
派遣元責任者の要件はさまざまあり、なかでも注意すべきは「雇用管理の経験」が求められる点です。
雇用管理の経験とは、人事あるいは労務の担当者、または労働者派遣事業における派遣労働者や登録者等の労務の担当者であること指し、この経験を3年以上積まなくてはなりません。
各種要件を満たしたうえで「派遣元責任者講習」を受講することにより、派遣元責任者として認められます。
なお、事業を開始してからも、派遣元責任者の立場に就く人は3年(以内)ごとにこの講習を受け、新たな知識の習得や更新手続きを行うことが求められます。
派遣元責任者の要件や、派遣元責任者講習のさらに詳しい情報は、以下のページで確認できます。
人材派遣業の許可申請について
「派遣元責任者講習」受講が終わったら、申請書類等を準備し、申請手続きを行います。
申請書類には、以下のようなものが必要です。
・法人設立届
・給与支払事務開設届出書
・健康保険者厚生年金保険の資格取得届、雇用保険・労災保険に関するものなど(従業員を雇う場合)
申請から許可が下りるまで2~3ヵ月程度、長ければ3ヵ月以上かかることがあるといわれています。
また資産要件として、基本的には「基準資産額が2000万円以上」と定められています(ただし、小規模派遣元事業主の場合は、緩和条件があります)
このほか、細かな要件等については、申請前に都道府県労働局などで確認しておいたほうがよいでしょう。
人材派遣業を起業する前に考えておくべきこと
現在は小規模の人材派遣会社が乱立しており、競争がさらに厳しくなっています。
開業に必要な準備に漏れがないように気をつけるのは当然のこととして、営業戦略や経営方針をしっかりと定めていかなくては、成功は難しいでしょう。
人材派遣ビジネスでは、派遣スタッフにとっての派遣先となる「企業」と、働きたいと考える「人材」の両方を集めなくてはなりません。
どちらに対しても密なフォローや信頼感が大切ですし、マッチングの質向上にも努める必要があります。
人材派遣会社の起業はさほどハードルが高いものではありませんが、起業前には、数多くの人材派遣会社のなかでどのような強みをもつ会社づくりを目指すのかや、どのように事業展開をしていくのかを深く考えるべきでしょう。