キックボクサーの現状と将来性

キックボクサーの現状

かつては国民的人気を誇ったキックボクシング

キックボクシングは、日本で興行の始まった1966年から約10年間、非常に高い人気を誇りました。

沢村忠という国民的ヒーローがいて、試合はゴールデンタイムにテレビ中継されていました。

また、沢村忠の生い立ちや活躍ぶりを描いた漫画『キックの鬼』が、当時の子どもたちにも大人気で、プロ野球やプロレス、大相撲などと並ぶ人気スポーツの一つでした。

しかし沢村の衰えとともに、国民的な人気も衰えていきます。

1976年に沢村が現役引退を発表すると、キックボクシングの人気もあっという間に低下しました。

1990年代になると、ルールの近いK‐1が大ブームになりましたが、キックボクシング界は選手を送り込むだけで、キックボクシングの人気まで回復することはありませんでした。

現在の人気は高くないが、熱心なファンは存在

現在、キックボクシングの人気はそれほど高くないものの、熱心なファンは全国に存在しています。

いくつものキックボクシング団体が、それぞれに興行を行っており、約2000人収容の後楽園ホールは、いつもほぼ満員です。

また、CSのスポーツ専門チャンネルでは、試合の様子も放映されています。

キックボクシング関係のジムも、数は多くありませんが、全国の大都市にはあります。

キックボクシングを始めようと思えば、近くのジムに入門して練習生になることができます。

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キックボクサーの今後の動向

いくつもの団体が乱立し、ルールもバラバラ

キックボクシング界の問題は、ボクシング界の日本ボクシングコミッション(JBC)のような統一組織がないことです。

いくつもの団体が乱立し、それぞれが興行を行っていますし、プロテストも各団体が実施しています。

日本チャンピオンも団体ごとに存在するような状態で、そればかりか、ルール自体も団体によって微妙に違っています。

そもそも、世界を見渡しても、キックボクシングとして統一されたルールはありません。

呼び名もタイの「ムエタイ」をはじめ、「タイ式キックボクシング」、「キックボクシング」、「キック・ボックス」など世界各地でさまざまです。

世界チャンピオンも、日本人が創設したWKBA、アメリカで設立されたWKAやISKA、イタリアに本部のあるWAKO、タイ政府公認のWMCなどがありますが、どれも認知度が低く、本当の世界一を決める体制にはなっていません。

もちろん、それぞれの団体にはそれぞれの主張やこだわりがあって、それぞれの方針に基づいて運営されているのですが、外から見ると、非常にわかりにくいというのが現実です。

そして、このわかりにくさが、キックボクシングの人気が上がらない最大の理由だと指摘する声もあります。

現在、日本のキックボクサーは、タイのムエタイ王者をめざすことが主流になっています。

ですが、ムエタイの主要スタジアムには軽量級と中量級しかないため、重量級の選手は出場できません。

K‐1や総合格闘技などの大会に出場することになりますが、かつて大ブームとなったK‐1や総合格闘技も、現在は人気が衰えています。

国民的ヒーローが出現するかどうかが、将来のカギ

日本のキックボクサーは、金銭的にはプロボクサーと比べても恵まれていません。

プロボクサーは、日本チャンピオンになれば、ファイトマネーだけで生活することもできますし、世界チャンピオンになれば、他のプロスポーツの一流選手並みの収入を得られます。

しかし、キックボクシングでは、世界チャンピオンになってもファイトマネーだけで生活するのは難しいです。

そのため、プロのキックボクサーといっても、ほとんどが他に仕事をもつか、アルバイトをしています。

日本では、かつての沢村忠のような超人気選手が登場すれば、キックボクシングの人気も復活するかもしれません。

キックボクサーでは魔裟人が有名になりましたが、その強さで一躍人気選手となったのはK−1が舞台でした。

キックボクシングの人気が復活するかどうかは、世界的にも強さが認められるヒーローが出現するかどうかにかかっているのではないかといわれています。

那須川天心が、国民的なヒーローになり、再びキックボクシングの人気を牽引できるか注目です。

キックボクサーの将来性

エクササイズとして始めるOLが増えている

エクササイズやダイエット、ストレス解消のため、キックボクシングを始めるOLが増えています。

キックボクシングのジムには、女性限定クラスを設けるところもありますし、女性の入門を受け付けるジムも多くなっています。

更衣室も男女別々で、シャワーを完備するところも多いです。

最近は、キックボクシングを始める女性の9割以上が格闘技未経験者だそうです。

友人に誘われたり、アメリカのハリウッド女優などが格闘技エクササイズを取り入れていると聞いて、興味をもつ人が目立っています。

キックボクシングの魅力にはまり本格的に始める人も

当初は、週1〜2回ジムに通ううち、キックボクシングの魅力にはまったり、試合に出てみたいと、本格的にキックボクシングを始める人もいます。

ジムに通う日数は自由ですが、試合への出場をめざすなら週5日は通いたいです。

ほとんどの選手が、他の仕事をもっていたり、学生ですので、仕事や勉強後ジムに通うのは大変ですが、基礎からしっかり学べば、早い人で半年、通常は1年前後でビギナーの試合に出場できるようです。

実力の世界ですから、試合に勝っていけば、日本チャンピオンや世界チャンピオン、さらにはタイなどの世界で試合をできるチャンスもあります。

他の格闘技から、キックボクシングを始める女性も

空手など他の格闘技から、キックボクシングを始める女性もいます。

たとえば小学生で空手を始め、中1でキックボクシングのジムに入門した神村エリカは、16歳で世界女子ミニフライ級に挑戦しました。

そして、同い年のタイ人王者を破り、みごとに世界チャンピオンとなりました。現在も世界のリングで活躍しています。

ただし女子でも、キックボクシングの稼ぎで生活できる人はほとんどいません。

出版社編集者をしながら戦っている高橋藍をはじめ、ほとんどの選手が仕事やアルバイトをしています。

世界的な選手になるとスポンサーがつくこともありますが、高収入を得ることは難しく、キックボクシングのトレーニングに打ち込むことのできる環境が整うくらいです。

女性ホルモンのバランスが崩れ、心身に影響がでることも

キックボクシングは激しいスポーツで、急激に減量をしなければならないこともあるため、母体への負担が大きいようです。

人気選手だった渡辺久江のように、女性ホルモンのバランスが崩れ、心身に影響が出たことで現役引退を決意したケースもあります。

ふだんから体調や体重に気を配り、とくに急激な減量をしなくてもいいように気をつける必要があります。

エクササイズとしてのキックボクシング

キックボクシングのジムには、現在、キックボクサーに加え、フィットネス目的の人たちが通っています。

キックボクシングのトレーニングをベースとしたエクササイズをするために、ジムに通う人が増えているのです。

ダイエット効果はもちろん、筋力や持久力の向上、肩こりや腰痛の緩和、さらにはストレス解消などの効果があるといわれています。

通っているのは女性が中心で、年齢層は幅広いです。

キックボクササイズの効果

有酸素運動を1時間は繰り返すので、脂肪を燃焼させ、ダイエット効果があります。

また、パンチやキックで全身を動かすため、肩こりや腰痛予防、シェープアップ効果も期待できます。

サンドバックやミットをめがけて、パンチやキックをすることでストレス解消にもなります。

ただし、エクササイズは、どんなものでも、1回に20分以上行い、定期的に続けることが大切です。

そういう意味では、少なくともキックボクシングやボクシングに興味をもっていなければ、長続きしないでしょうし、効果もあがらないようです。

また、当たり前のことですが、パンチやキックをして楽しいと思わなければ、いくらトレーニングをしてもストレス解消にもなりません。