普段の生活にはない、非現実を味わえるキックボクサー!

(読了時間:7分31秒)

キックボクサー紅絹(もみ)さん

1984年2月26日東京生まれ。A型。身長:148センチ。所属:フォルティス渋谷。2006年10月29日プロデビュー。戦績:26戦14勝7敗5分1KO(2012年8月1日現在)。得意技:鎖鎌(くさりがま)。入場曲:ONE OK ROCK『完全感覚Dreamer』。WEBサイトの作成、デザインの仕事をしながら、キックボクシングの選手として活躍している。

格闘家という仕事は他の仕事と両立しなければ経済的に厳しい状況だと言われていますが、仕事内容や一日の流れを教えて下さい。

キックボクサーは「仕事」というより、「選手」という形になります。私の場合は、昼間は会社で働き、それ以外の時間で練習をしてます。普段はデザインの仕事をしていますが、勤務時間は10時~20時ぐらいです。キックボクサーとしての練習は、だいたい週5日2~3時間くらいになります。

選手にもよりますが、私の場合、2カ月に1回ぐらい試合をしています。試合があるときもないときも練習の流れはほとんど変わらないですね。ただ、試合前は練習内容がかなりハードになります。

現在、プロとして活躍されている紅絹さんですが、プロになるまでの経緯を教えて下さい。

私の場合はやるからにはプロになろうと思って始めました。女性の場合は、フィットネスから入られる方も多いんで、女性で初めからプロを目指しているのは特殊かもしれないですね。

キックボクシングを始めたときに大学を休学したんです。バイトはしていたので、バイトをしながらプロを目指しました。バイトが終わったら、今と同じく練習を週5日ぐらいしていましたね。

始めてから半年ぐらいでアマチュアの試合に出るようになって、アマチュアで10戦ぐらいしてからプロテストに合格し、プロになることができました。

大学を休学した後、復学はされたんですか?

美術系の大学に入ったんですけど「なんで美術系やってんだろう?これやりたいのかな?」と迷ってしまって、やめたかった時期があったんです。そこで、衝動的にキックボクシングを始めました。

キックボクシングをやって成長したというのもあると思うんですが、「ちゃんと大学を出て、就職しながらやっていった方がいいだろうな」と考えて、あと一年で卒業なんだから、しっかり卒業してからキックボクシングをやっていこうと思い復学しました。

プロになるまでの苦労はありますか?

今活躍している選手はだいたいそうなのですが、普段の仕事もやりながら練習するので、体力面でキツイ部分はありました。今は数年やっているので慣れましたけど。

最初は、昼間バイトをして、終わったらすぐにジムで練習して、またバイトをして、帰ったらすぐ寝て、という感じでやっていたんです。復学をしてからはさらに学校にも行かなければならず、学校、バイト、練習と、すべてをこなしていくのは本当にキツかったです。

苦労してプロとなった今、やりがいを感じる瞬間はどんな時ですか?

やりがいを感じるのはやっぱり試合の時ですね。なぜ疲れた体で苦しい練習を週5日もやるかと言ったら、試合という舞台でお客さんに見てもらって、そこで自分が勝ちたいからなんですよね。

試合の舞台って、異空間というか、非現実的なところなので、そういうものを求めて試合を楽しんでいるんだと思います。普通の私があそこにいるとなんか特別な感じがするんですよね。

逆に現在、プロとして苦労している部分はありますか?

どちらかというと、精神的なことですね。勝たなきゃいけない試合で勝てなかったり、技術の伸び悩みを感じたりと、そういった苦労は、一回一回の試合にあります。

どんなにがんばって勝っても、そこで終わりじゃないんで。毎回毎回、試合の度にやらなきゃいけないことが出てきます。それも、楽しいといったら楽しいところなんですけどね。

女性の格闘家の方はまだ少ないと思いますが、女性だからこそ苦労する部分みたいなものはありますか?

減量ですかね。女性は男性よりも脂肪が多くないと、体の機能がちゃんと働かなくなります。

男性だと、直前に水分で3、4キロぐらい落とす方もいるんですが、女性はなるべく自然な形で体重を落とすのがいいと私は考えています。女性があまり急に水分を少なくしたり、過激な減量、偏った減量をしたりすると、生理が止まったり、肌荒れがひどくなったり、女性ホルモンのバランスが崩れちゃったりするので。

正しい食生活にして、体に良いものを食べてと男性よりも丁寧に減量しなければいけない部分はあります。一ヶ月半で8.5キロ減量しなければならないときもあるので、本当に大変です。

減量以外で言うと、女性の場合は腹部へのダメージとかもよくないですね。

一ヶ月半で8.5キロの減量は大変ですよね?

もともと体重が重いってのはあるんですけど、この身長(148センチ)でそこまで落とす人はいないのかもしれません。男性の体の割合で計算すると12キロぐらい減量する感覚じゃないですかね。

減量はちゃんと食べつつ運動するとういうのを意識しています。ちゃんと栄養を取らないと練習で体が動かないので。あまり減量をしない選手もいるので一概に言えないですが、やっぱり全部がいいよってオススメできるって競技ではないですね。

それは、女性に限らず男性も含め、キックボクシング全体がということですかね?

やっぱり、自分の体をさらして、肉体にダメージを受ける競技なので。試合のダメージもそうなんですが、スパーリングとかハードな練習をしていかないと試合で勝てないので、そこでも体を酷使します。

けれど、それ以上にキックボクシングが楽しいと思っています。ただ、楽しいだけじゃない競技ってのは、みんな選手はわかってやっています。リスクがあるって。でも、それ以上に得ることがたくさんある競技だと思っています。

そうなんですね。では、趣旨を変えて。仕事以外の楽しみはありますか?

食べることですかね(笑)。減量のときは好きに食べられないですしね。私の場合、試合の前に一ヶ月ぐらいかけて減量します。年に6回試合をするので、半年ぐらい減量してますね。

試合が終われば好きに食べれるので、かなりリバウンドします。1週間で大体5キロぐらい戻ります。体重をグラフにすると上がり下がりすごいですよ。私が死ぬときは、一番に体に謝りますね。

では、もし高校生に戻れるとしたらどうしますか?

早めにキックボクシング始めたかったかもしれないです。

女性の場合は、仕事が個人的に落ちついてから始める方も多いので、始める年齢は他の競技よりは全体的に遅いです。女子ボクシングや総合格闘技なども同じだと思います。

それを考えると紅絹さんは、早い方ですよね?

私は20歳で始めたので、早い方だと思います。中には小学生の頃から空手をやっていて、キックボクシングに転向する選手もいますが、それもほんの一部ですね。

部活で一般的にあるものでもないし、近所にジムがいっぱいあるものでもないし、親も積極的に勧める競技ではないので、身近にきっかけはないですよね。でも、若いうちの方が体力があり余ってるんで、そういうものをキックボクシングにぶつけたかったっていうのは、ありますね。

今後のキックボクシング含めての、格闘技界はどうなっていくと思いますか?また、格闘技界としての展望はありますか?

私があまり言える立場ではないですが…。K-1がテレビで放送しなくなったり、格闘技の番組が民放でやらなくなったってことで、露出はすごい減ってきてますね。まあ、ここでドカンと盛り上がるのは正直難しいと思います。

だけど、今いる選手が続けていって、残しとかなきゃいけないという部分はあります。これから先、競技人口も増えて、もっと、注目されて欲しいし、民放でもバンバン放送されてほしいし、憧れられる職業になって欲しいです。

女性が殴り合う部分も世間的に良く思われていない部分もあるので、そういった認識も変わっていってほしいですね。

女性の格闘技界については、今後どうなると思いますか?

今後、どうなっていくかは正直わからないです。女性の場合は見た目だったり、爽やかさを楽しみに来るお客さまもたまにいらっしゃいます。

女性は男性と比べるとどうしても迫力に欠ける部分があるので、男性と違う部分のアピールや魅せ方も必要だと思います。一人ひとりの女性選手がもっと個性を出して、どんどんオリジナルのアピールをするようになれば、少しずつファンも増えていくんじゃないかと思います。

女性にしかできないというよりも、自分にしかできない部分を全面に出していくと、男のキックボクシングとは違う形で見てもらえるんじゃないかと思います。あとは実力世界なので、そこは結果を出すしかないです。

紅絹さんの夢はありますか?

チャンピオンになって、日本も世界も関係なく、強い人と戦って勝つのが目標です。ただ、選手というのは一生できるものじゃないので、年齢的にはあと数年が勝負だと思ってやっています。

だけれど、引退してからもキックボクシングには関わっていきたいです。ジムをするとかトレーナーをするとかではなく、デザイン面でサポートをしたり、WEBサイトを作ってそこで選手のアピールする場を作ったりと、コンテンツとして広げるという方面で関わっていきたいですね。

すごく大きな夢で言うと、仕事面で現役選手の働ける場を作ったり、引退後の選手をサポートできるぐらいの力を持てるようになりたいです。選手が安心して競技に打ち込める環境をサポートできたら最高ですね。

最後に、キックボクサーを目指す人にメッセージはありますか?

目指している人は、そのままの気持ちで突き進んでがんばってほしいです。

ちょっと興味があるとか、どんな世界だろうと思ってる人も、気軽に見学しに行ったり、体験してみたりして、直接キックボクシングに触れて欲しいです。大丈夫です、最初から殴られるとかはないですから(笑)

普段にはない刺激やおもしろさが体験できると思うので、初めはスポーツ感覚でジムに来てみて下さい。実際、やってみて感じるものがあると思うので。

ただ、真剣に選手としてやると、常に危険が伴う競技なので、ケガをしたり、後々ダメージが残るかもしれないというリスクはあります。でも、それ以上にやっぱり充実したものを得られる競技だと思います。達成感だったり、やりがいだったり。

それに、ジムで尊敬する人や、一生付き合っていきたいと思える仲間に出会えました。普段の生活では味わえないもの、出会えないものがたくさんあるので、本気で熱くなりたい人は是非キックボクシングをはじめてみて下さい。

(取材:舟崎 泉美)