医師の仕事内容は? 業務をイメージしやすい詳細解説

医師は、大きく分けると患者を診療する「臨床医」と、病気などについて研究する「研究医」がいます。

また、臨床医は、病院などで働く「勤務医」と、自分でクリニックを開業する「開業医」に分けられるなど、働き方もさまざまです。

この記事では、医師の仕事内容・役割をわかりやすく解説していきます。

医師の仕事内容とは

医師は、病気・怪我の診断や治療・予防、リハビリテーションに当たる「臨床医」と、基礎医学を研究する「研究医」とに大別されます。

この章では、臨床医・研究医それぞれの具体的な仕事内容を紹介していきます。

医師の仕事内容は「臨床医」か「研究医」かで異なる

✅ 医者の仕事内容
医者の仕事内容
上の図から分かるように、医師の仕事は大きく2種類に分けられます。

医師の仕事
  • 臨床医:病気・怪我の診断や治療・予防、リハビリテーションを行う
  • 研究医:病気やメカニズムなど基礎医学を研究する

実際に患者さんを診る「臨床医」をさらに細かく分けると、病院や診療所に勤める「勤務医」と、医院や診療所を自分で経営する「開業医」がいます。

開業医は、たくさんの医師が勤務する大きな医療機関などと異なり、業務が細分化されていないため、多くのことを行います。

病院の経営や医療機器の選定や購入、看護師や事務職員の確保など、診療以外の経営者としての仕事も多くあります。

一方、医学の研究を専門とする「研究医」も、実際は大学病院などで患者の治療をしながら研究活動に勤しむことが多く、日々の仕事はかなりハードなものとなります。

このほか、高齢者対象ホームや介護老人保健施設、教育・研究機関や保健所などの衛生行政、保健衛生業務などでも働いている医師もいます。

臨床医の仕事内容【患者さんと向き合う】

医師の仕事と聞いて多くの人が思い浮かべるのは、白衣を着て患者さんに接し、病院やクリニックで診察や治療を行う姿ではないでしょうか。

こういった医師は、いわゆる「臨床医」と呼ばれます。

臨床医の仕事の流れ

臨床医の仕事の全体的な流れは、以下の通りです。

臨床医の仕事の流れ

  1. 患者の診察をして不調の原因を探る
  2. 診察で病名を特定したら治療・薬の処方
  3. 病気が特定できなければ精密検査や検査機関を案内

病院を訪れた患者さんから症状や困っていることを聞きとり、心音を聴いたり体温を測ったり皮膚の状態を確認したりして、不調の原因を探ります。

診察で病名が特定できたときは、症状に合わせて注射や点滴などの治療行為、あるいは薬の処方をします。

ただし、注射や点滴を実際に行うのは看護師の役割としている医療施設も多く、薬を実際に調剤するのは薬剤師の役割です。

医師の役割は、症状を判断してこういった医療スタッフ(コメディカル)に的確な指示を出すことでもあります。

病名が特定できなかったときは精密検査を行ったり、適切な外部の医療機関に検査に出向いてもらったりして、より詳細な原因究明ができるような働きかけをすることもあります。

他病院との連携も

大きな病気や怪我の場合は手術が必要になることもあります。

精密検査や手術は設備の整った大きな医療機関でしかできないことが多いため、地方の小さなクリニックでは、大学病院などの設備が整った病院に紹介状を書くこともあります。

大きな病院では「内科」「外科」「耳鼻科」「眼科」「産婦人科」「小児科」…と細かく診察の分野が分かれていて、各科でそれぞれを専門にする医師が治療を行います。

一方、町の診療所などでは、さまざまな症状をもった患者が来るので、診療科を横断した診察・治療を行うケースが多くなっています。

研究医の仕事内容【医学の未来を切り開く】

もうひとつ、医師の重要な仕事のひとつが研究活動です。

医学が発達した現代でも、まだまだ原因や治療法が確立されていない病気がたくさんあります。

また、手術の術式や治療法などは日々新しい方法が検討、研究され、日進月歩で医学は進歩しています。

こうした病気を解明するため、またよりよい医療とするために、大学や病院で研究を専門にしている医師のことを「研究医」と呼びます。

研究医は、日々、実験をしたり症例データを収集したりしながら論文を作成しています。

優れた発見をした場合は学会で発表したり専門の学術誌に投稿したりして、大々的に世間に成果を発表します。

研究医の研究は、まさに人類の生活や未来を変えるようなものばかりです。

一人ひとりの患者さんを診る臨床医も、研究の結果で多くの人々を救うことができる研究医も、非常に責任のある役割を果たしています。

研修医の仕事内容

研修医という言葉を聞いたことがある人も多いと思います。

研修医とは、医師免許をとった後に2年間、国が指定した病院などで勤務する医師のことです。短期間の間に内科、外科、救急科、といった具合にさまざまな部署の経験を積んでいきます。

✅ 研修医の業務内容の例

  • カルテの記載や整理
  • 手術のサポート
  • 入院患者の回診
  • 上級医と一緒に患者の診察
  • 当直・救急診療 など

研修医の業務内容は幅広く、病院によっても異なります。

以前は研修医が低賃金で過剰に働かされていることが問題になっていましたが、近年では待遇の改善が進んでいるようです。

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医師の業務内容を勤務先別に紹介


医師の勤務先には、いくつかの種類があります。

また、少子高齢化の昨今では、一昔前の医師の仕事とはまた違った働き方や、勤務先、業務の内容などその活躍の場は多岐にわたります。

この章では、医師の勤務先別の人数データや、それぞれの勤務先別の仕事の内容を細かく見ていきます。

医師の勤務先の種類

勤務する施設ごとに医師数をみると、病院が最も多く216,474人、次いで診療所の107,226人、介護老人保健施設の3,405人、その他12,492人となっています。

医師の施設別人数

医師数施設別_r2
出所:厚生労働省

つづいて、医師の人数を施設別・年齢別に見てみましょう。

医師の施設・年齢別の人数

医師数施設・年齢別_r2
出所:厚生労働省

20代〜30代までは病院や医療機関附属の病院(大学病院)が多く、40代以上は診療所の割合が増えています。これは40代以上となると自ら診療所を開業するためと考えられます。

なお、施設別の医師の平均年齢は、病院47.2歳、医療教育機関付属の病院39.3歳、診療所60.2歳となっています。

医師の勤務先を割合でみると次のようになります。

医師の施設別割合

施設別医師数の割合_r2
出所:厚生労働省

病院、大学病院、診療所で働く医師数の割合は、病院が最も多く49.1%、次いで診療所の33.1%、医育機関附属の病院(大学病院など)の17.8%となっています。

医師の仕事内容|勤務医の場合

医者の中でも割合の多い、病院に勤務する「勤務医」の仕事を詳しく紹介します。

勤務医の仕事内容
  • 患者の診察
  • カルテの作成
  • 診断を下す
  • 治療方法を決めて実施する
  • 入院病棟がある場合は夜勤も

病院で勤務する臨床医の業務内容は、「患者さんを診る」「カルテを作る」「診断を出す」「治療をする」といったことが柱になります。

ただし、手術や経過観察、医療チーム(コメディカル)との連携など、専門とする診療科によって業務の内容は大きく変わります。

入院設備のある病院や診療科の場合は、日勤のほかに夜勤が数日に一度はさまってきます。

また、手術のある診療科の場合、術後の患者がいれば就業時間を越えて経過を見ることもあります。

もちろん休日はありますが、診療科によっては休日や夜間であっても患者さんの容体によって呼び出されることもあります。

医療機関には「病院」と「診療所」がある

医療機関は、「医療法」という法律によって「病院」と「診療所」の2種類に明確に分けられています。

病院と診療所の違いは、患者さんが入院できるベッドの数によります。

患者さんが入院できるベッドの数が20床以上ある医療機関を「病院」と呼び、19床以下の医療機関を「診療所(クリニック)」と呼びます。

小さな診療所にはベッドがない場合も多々あり、それは入院ができない医療機関であることを意味します。

このように入院ベッドのない医療機関で勤務する医師と、入院患者さんがいる病院では、勤務する医師の働き方にも違いが出てきます。

大きな病院は担当科が細かく分かれている

医師の最も代表的な就職先は、大小さまざまな医療機関です。

そこでは患者さんと向き合い、診察や治療、手術やリハビリテーションなどを担当します。

ただ、複数名の医師が在籍しない小さい病院では、一人の医師がいろいろな病気や怪我を見ることがよくあります。

一方、大きな病院では細かく専門科が分かれています。

例を挙げると、「内科」「外科」「産婦人科」「泌尿器科」「小児科」「産婦人科」「麻酔科」「眼科」「耳鼻科」「皮膚科」「整形外科」「形成外科」「精神科」などがあります。

また内科のなかでも「呼吸器内科」「循環器内科」「消化器内科」のように、さらに細分化されていることもあります。

臨床医の世界では、一般的には一度専門を決めるとその道をずっと究めていきますが、途中で専門分野を変えることも可能です。

臨床から研究をメインに変えたり、研究医が臨床医に戻ったりということもあります。

医師の仕事内容|開業医の場合

開業医はいわゆる「町のお医者さん」です。規模については、小さな診療所から大きな病院までさまざまです。

開業医の場合も、患者の診察から治療まで行いますが、さらに以下のような仕事も含まれてきます。

開業医の業務内容
  • 患者の診療・治療
  • スタッフのの採用・マネジメント
  • Webサイトや予約システムの管理
  • 売上や費用の管理

開業医は病院に勤務するのとは異なり、さまざまな事務仕事が発生します。

スタッフを雇えば任せることは可能ですが、軌道に乗るまでは医師が自分で運営の仕方を考えていくことが必要になります。

医師の仕事内容|研究機関や企業で働く場合

研究医の就職先はおもに大学などの研究機関で、実験や利権、症例などのデータの収集をして学会で発表することで医学の発展に貢献します。

このほか、献血者や健康診断の受診者を診る「検診医」や「健診医」、また、特定の会社で社員の健康を守るために働く「産業医」と呼ばれる医師もいます。

産業医は、基本的に大企業の社員として勤務する医師になるため、会社員というくくりでみることもできます。

このように、医師免許を持っていながら会社員になる道を選ぶ人もいます。

たとえば医療や薬に関係する企業で働いたり、医療分野に強いジャーナリストとしてマスコミで働いたりします。

また、大学や専門学校の教授や講師として教鞭をとる医師もいます。

医師の活躍の場は、じつに幅広い分野におよんでいます。

医師の役割とは

ここからは、医者に期待される社会的な役割を紹介します。

医師の役割1.治療

医師の役割は、人々の心と体の健康を支えることです。

人と医療は切り離すことができません。

現代では、多くの人が、この世に誕生するとき、産婦人科医のもとで生まれます。

子どもの頃には小児科で予防注射を受け、大人になれば生活習慣病の検査や風邪の診察などと、日々の暮らしの中でたびたび病院にお世話になります。

さらに高齢になれば、がんや心臓病などの大きな病気の罹患率も高くなり、外科で手術を受けたり、救急でお世話になったりすることもあるでしょう。

死を迎えるときも、病院で、という人が大半です。

医師とはまさに、一人の人間の誕生から最期の瞬間まで、その命を守り続ける存在です。

医師は、人々が健やかに生まれ、長く元気に生きていくために欠かすことができない役割を果たしています。

医師の役割2.予防

医師は、病院や一般、また公共の施設で行われるセミナーで、講演をすることもあります。

講演内容は「成人病の予防」や「長寿のための生活習慣」などさまざまですが、専門的な立場から人々に健康に関する情報を発信します。

また、テレビ番組や雑誌などに出演して病気の予防法などをアドバイスすることや、医学の専門書、一般の雑誌、ダイエットやエクササイズ本などで、医師が記事を監修することもあります。

こうした活動を通し、一般市民の健康への意識を高めるよう働きかけることで、その病気の罹患率が減り、また健康寿命が延びるなどの効果が期待されています。

つまり、医師の役割には「病気を治すこと」だけではなく「病気になるのを未然に防ぐこと」も含まれています。

人々が元気に暮らせるよう、病気の予防の段階から力を尽くすのが、医師の仕事です。

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医師と看護師の仕事の関わり


医師と関連した職業として、「看護師」が挙げられます。

看護師は、医師が患者さんの診察や治療を行う際に補助をしたり、病気や怪我の患者さんの心身のケアを行ったりします。

外来で勤務するだけでなく、入院設備のある病院では病棟の担当、また手術室で勤務する専門の看護師(オペ看)など、ポジションによってその業務は変わってきます。

一般のイメージである病棟に勤務する看護師の業務は、血圧や体温、脈などの測定、注射、点滴、採血などの治療の補助、食事やお風呂、ベッドメーキングなどの入院患者さんの身のまわりの世話などを行うことが主になります。

医師や薬剤師、栄養士などがチームを組んで治療を行う「チーム医療」において、看護師は今まで以上に重要な役割を担うようになっています。

しかしながら、高齢化社会が進む現代の日本で、看護師はまだまだ不足している状況です。

看護師の仕事

医師の仕事内容|まとめ

医師の仕事内容
  • 臨床医と研究医で仕事内容は異なる
  • 臨床医は患者を診察して治療を行う
  • 研究医は新しい治療法などを研究する

多くの人がイメージする、病院で働いているお医者さんや、町のお医者さんは「臨床医」にあたります。

医者の仕事は、患者とのコミュニケーションや経営の方法などさまざまな能力が問われるといえます。

収入が高いイメージがありますが、仕事内容はハードで命を扱う責任の重たいものです。一方で大きなやりがいを感じられる仕事でもあります。