医師の転職理由・転職事情
医師の転職事情
医師は、自身のさらなるキャリアアップやスキルアップを求めて、転職する人も少なくありません。
一方では、転職に興味はあるものの、「本当に転職していいのか」や「転職してキャリアとして失敗しないか」などの不安もあり、なかなか踏み出せない人もいます。
とくに出身大学の医局に籍を置く医師たちは、なじみ深い医局を離れることが不安に感じるケースが多いようです。
しかしながら、医師の転職自体はまったくめずらしいものではないのです。
最近では「医師専門の転職エージェント」も登場し、フルタイムでの転職をはじめ、アルバイトや派遣など多様な働き方のニーズをカバーしています。
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医師の転職理由
医師の転職理由として多いのは「スキルアップしたいから」という前向きな思いによるものです。
このほか、「休日も24時間オンコールが対応あって休む暇がない」「もっと自分や家族のために時間を使いたい」といった、時間的ゆとりを持ちたいといった理由なども、転職を考える医師が挙げる理由として多く聞かれます。
また、「同僚など職場関係者とうまくいかない」「勤務先と医療に関する考え方が合わない」といった人間関係の悩みや、「年収をもっと上げたい」といった待遇改善の理由、さらには「ゆくゆくの独立開業を見据えて」など、転職したいと医師が考える理由は人によってさまざまです。
何度も転職を重ねてキャリアアップし、自分の経験値を積み上げていく医師も少なくありません。
こう見ていくと、医師の転職理由は、一般企業に勤めるサラリーマンなどのものと大差ありません。
とくに専門性の高い医師の転職は、回数を重ねてもマイナスに受け取られにくいことが特徴です。
医師から異業種への転職
医師が異業種に転職する場合、公務員になる道や、大学・研究所などの研究者や職員として活躍する道が考えられます。
医師になるためには、6年制大学の医学科を卒業して医師国家試験に合格する必要がありますが、その医学生たちを教えるのも、多くは現役の医師や医師免許を持つ先生です。
なかには医師免許を持った医学部専門の予備校講師もおり、医師にとって「教鞭をとる先生」という職種は近しいものといえます。
また、大学や研究所などでも、医師が新たな治療法や知見、病態の解明についてさまざまな分野の研究をしています。
数はさほど多くありませんが、医療機器メーカーや製薬会社などで、治験などに携わる研究職で働く医師も存在します。
このように、医師免許を持つ人の活躍の場は、病院やクリニックなどの臨床現場で以外にもたくさんあります。
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未経験者から医師への転職
社会人として一般企業で勤務していた人でも、医師に転職することは可能です。
しかしながら、そのためには長い道のりを歩まなければなりません。
異業種から医師への転職を目指す場合、まずは医師の国家試験を受験するため、通常は大学の医学部医学科に6年間通う必要があります。
ただし、すでに大学を卒業、もしくは大学に一定期間在籍し、必要な単位を修得している人は、医学部に編入もしくは学士編入する道もあります。
具体的には4年制大学の卒業者や卒業見込者などが、教養課程を飛ばして編入学部の専門課程から学んでいける制度です。
たとえば「医師」と「歯科医師」のダブルライセンスを持っている人は、学士編入で2つ目の大学に入学するケースも多いです。
学士編入は、医師を志す本人はもちろん、医学業界にとっても他業界の知識を有した医師を育成して世に貢献できるメリットがあります。
実際、もともとはさまざまなスキルを身につけて、円熟した人間が医師を目指すのを奨励するアメリカの教育システムを模倣したのが、学士編入制度のはじまりです。
卒業見込みの場合はもちろん、社会人になってからでも医学部で学びたい熱意があるなら、ぜひ学士編入の利用を検討をおすすめします。
医学部に学士編入する方法
実際に医学部への学士編入するためには、編入制度のある大学を探し、試験に合格する必要があります。
以下で、大学と試験についての情報を紹介していきます。ぜひ参考にしてください。
医学部編入制度のある大学
全国に医学部がある大学は2018年時点で81校ありますが、学士編入制度のある大学はそのうち全部で34校にとどまります。
その内訳は、私立大学が5校、国立大学が28校、公立大学が1校となっており、私立大学の学士編入は少ない傾向にあります。
さまざまな理由で突然編入制度を廃止にするケースもあり、実際、愛知医科大学なども学士編入を受け入れていましたが、2017年度に廃止しています。
また、多くの大学で学士編入の募集人数は5~10名程度と狭き門になっているのが実情です。
競争倍率も10~20倍、場合によっては50倍を超えるケースもあり、熾烈な競争環境にあるといえます。
上記の理由から、あえて一般入試での入学を目指す場合もあるほどです。
試験内容自体は、高校・大学の教養課程レベルとされているため、大学の卒業者であれば、きちんと対策すれば十分対応可能な範囲でしょう。
医学部編入試験の内容
医学部への編入試験は、1次試験で小論文を含めた筆記試験、2次試験で面接が課せられるのが一般的です。
一部の私立大学では、学士編入用の試験を設けず、一般や推薦入試、AO入試で対応しているケースもあります。
面接試験が重視されがちで、これは編入試験のみならず一般入試でも見られる傾向です。
2018年度の時点で、神戸大学では面接試験が設けられていませんが、今後もこのまま実施されるかどうかはわかりません。
筆記試験について
1次で行われることが多い筆記試験においては、英語がほぼ必須です。
なかにはTOEFLで一定以上の点数をとっていることを合格の条件にしているケースもあります。
TOEFLの点数の目安は120点満点中80点以上となり、高いレベルが求められます。
また、医学を学ぶにあたって必要になる基礎知識を測るために、化学や生物、物理といった理系科目もほぼ必須です。
国語系の試験を課している大学はほぼありませんが、小論文は課せられるケースは多く、医療問題をはじめ、生命倫理や社会問題などのテーマが出題されることが多いようです。
面接について
2次試験の面接は大学によってさまざまです。
個人面接やプレゼンテーションが実施される場合もあれば、集団面接やグループワークが含まれる場合もあります。
志望校の過去の面接内容の情報を調べて、対策しておくとよいでしょう。
医学部の学士編入に年齢制限は基本的にない
医学部の学士編入は難易度が高いですが、年齢制限は基本的に設けられていません。
2018年度の時点で年齢制限を設けているのは、獨協医科大学における「26歳まで」というケースのみで、40代や50代で医学部へ入学を果たした人もいます。
意欲があれば社会人として長年活躍してからでも医学部への学士編入は十分可能です。
もっとも、あくまでも入学するのがゴールではなく、医師になるための医学部の勉強はハードなものですから、学士編入を決意したら早め早めの行動を心がけるべきでしょう。
ハードルこそ高いものがありますが、憧れを捨てきれない人にはチャレンジする価値が十分にあります。