国立大学職員採用試験の難易度や倍率はどれくらい? 試験内容についても解説
国立大学の採用試験では、大学卒業レベルの知識が求められます。
ここでは、国立大学職員の採用までの流れや試験内容、難易度・倍率などについて詳しく解説していきます。
国立大学職員採用までの流れ
まずは、国立大学職員として採用されるまでに、どのようなルートをたどる必要があるのかを、3つのポイントに分けて説明します。
ポイント1.「国立大学法人等職員採用試験」とは統一試験のこと
「国立大学法人等職員採用試験」は、国立大学法人等で働く職員を採用するための統一筆記試験です。
「国立大学法人等」とは、国の指定を受けた特別な法人のことです。
この法人に含まれるものとして、全国には208の機関があります。
- 国立大学法人:東京大学や京都大学、大阪大学などの有名な国立大学
- 大学共同利用機関法人:国立歴史民俗博物館、国立国語研究所など
- 独立行政法人:大学入試センター、国立映画アーカイブなど
これらの法人では、以下のように、さまざまな役割をもつ職員が活躍しています。
なお、こうした機関や職種すべてで毎年採用が実施されるわけではありません。
採用予定のある機関のみ、一次試験を突破後に面接を受けることができます。
ポイント2.国立大学法人等職員採用試験の受験の流れ
国立大学法人等の職員採用試験は、統一試験形式の「一次試験」と個別に実施される「二次試験」で構成されています。
試験案内は3月上旬に公開され、受験申込は5月半ばまでとなります。
国立大学法人等のグループ会員サービスに登録し、必要に応じて合同採用説明会に参加するとよいでしょう。
一次試験は7月上旬に実施され、北海道、東北、関東甲信越、東海・北陸、近畿、中国・四国、九州の7つの地区に分けられます。
この全国7地区の一次試験は同一日程で実施されるため、複数の地区を同時に受験することはできません。
二次試験は、一次試験に合格した個々の国立大学法人等ごとに日程が設定されます。
選考や採用は各国立大学法人等が行い、二次試験に合格した人には採用の日時などが通知されます。
一般的に、採用は翌年の4月1日に行われますが、既卒者は空きポジションの状況によってそれより前に採用されることもあります。
なお、試験には受験区分があります。
たとえば、2023年度の受験区分は以下の通りで、その年の必要に応じて募集職種が決まります。
国立大学法人等の職員採用試験を受けるにあたり、特定の学歴制限はありません。
ただし、年齢に関しては「平成○○年4月2日以降に生まれた者」という表現で、一般的には受験資格を30歳までとしています。
ポイント3.大学独自の採用試験の受験の流れ
最近では、国立大学でも独自の採用試験を行う場合が増えています。
試験内容や採用スケジュールは、各大学によって異なりますが、ここでは東京大学を例に説明します。
- 3月1日:職員採用情報が公開
- 3月から4月中旬:大学内で採用説明会が開催される
- 5月中旬:大学のウェブサイトの「マイページ」に登録し、エントリーシートを提出
- 5月下旬:書類選考開始・適性検査
- 6月中旬以降:二次選考(面接)開始
- 6月下旬から7月上旬:最終合格の通知
新卒者は翌年の4月1日から採用となり、既卒者は大学の状況によって、それより前に採用される場合もあります。
私立大学職員の採用までの流れは、民間企業とほぼ同じです。
職員の募集情報は、各大学のウェブサイトや「リクナビ」「マイナビ」などの就職情報サイトで掲載されます。
まずはウェブからエントリーし、応募書類を送付します。
書類選考の後、筆記試験や面接などを経て、最終的な採用が決まるのが一般的な流れです。
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国立大学法人等職員採用試験の内容・難易度
国立大学法人等の職員採用試験の一次試験は、多肢選択式の筆記試験です。
この試験では、大学卒業程度のレベルの知識や教養が求められます。
試験時間は2時間で、試験内容は「一般知識」と「一般知能」の2つの部分からなります。
一次試験は、いずれの地域・区分も同一内容で実施されます。
文章理解(7問)
判断推理(8問)
数的推理・資料解釈(5問)
社会(7問)
人文(7問)
自然(6問)
二次試験は、各機関が独自に行うため具体的な内容は異なります。
主なものとしては個別面接のほか、集団面接や集団討論などの面接で、なかには採用まで複数回面接が行われることも珍しくありません。
なお、図書区分の場合は図書系専門試験(筆記試験)を受けたあとに面接が実施されます。
一方、国家公務員試験や地方公務員試験では、一次試験に加えて専門知識を問う「専門試験」も行われることが一般的です。
国立大学法人等の職員採用試験では、一次試験は「教養試験」のみが行われます。
難易度としては、市役所の職員や警察官、消防官の採用試験と同程度といわれています。
国立大学法人等職員採用試験の合格率・倍率
ここからは、国立大学法人等職員採用試験の実際の合格率や倍率について見ていきましょう。
過去の試験の合格者数・倍率
国立大学法人等職員関東甲信越地区が発表したデータによれば、2022年度の国立大学法人等職員採用試験では、事務職の応募者数は8031人、その中で一次試験に合格したのは1981人でした。
競争倍率は2.6倍であり、申込者の3人に2人が不合格となっていることがわかります。
二次試験を突破した最終的な合格者は181名で、最終的な倍率は9.1倍となっています。
また、令和元年度(2019年)の国立大学法人等職員採用試験(全国)では、事務職の応募者数は26,358人、その中で一次試験に合格したのは6,668人でした。
競争倍率は3.9倍であり、合格率は25.3%となっています。
つまり、申込者の4人に3人が不合格となっていることがわかります。
採用試験の倍率は地域・職種によって差がある
国立大学法人等の採用試験は、地域によって競争率に差があることも特徴です。
関東甲信越地区では事務職の倍率が6.4倍で合格率が15.6%である一方、中国・四国地区では倍率が2.4倍で合格率が40.9%。
大学職員の採用申し込みは都市部に集中している傾向があります。
また、職種によっても競争倍率は異なり、関東甲信越地区では事務職が6.4倍であるのに対し、技術系の建築職種の倍率は1.6倍と大きな差があります。
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【参考】私立大学職員の採用試験について
ここまで、国立大学法人等職員採用試験の情報を詳しく紹介しました。
最後に、私立大学職員の採用試験に関する情報にも触れます。国立大学の試験との違いを知るにあたり、ぜひ参考にしください。
試験内容は各大学独自のもの
私立大学では、国立大学法人等のような統一的な試験制度は存在せず、試験内容や採用方法は各大学が独自に決めて実施します。
一般的に、試験は一次試験と二次試験の形式を取ります。
一次試験はおもに筆記試験であり、合格した受験者が二次試験の面接に進みます。
一次試験の内容は、一般常識や志望動機に関連する小論文、民間企業のSPI(適性検査)に相当するような項目が含まれることが一般的です。
難易度は大学によって異なるため、各大学の試験内容に合わせて準備する必要があります。
なお、公立大学も私立大学と同様に、大学ごとに内容が異なります。
受験資格・年齢制限について
私立大学や公立大学の受験資格は大学ごとに異なりますが、学歴に関しては「4年制大学卒業以上」としていることが一般的です。
直接的な制限の記載がなくても、大学職員を目指す場合、一般的には大学卒業程度の学力が必要とされると考えられます。
年齢に関しては、一般的には「30歳まで」という制限が多いですが、大学によっては新卒者に限定している場合や「40歳以下」としている場合、あるいは年齢制限を設けていない場合もあります。
地方の公立大学などでは、大学職員の職務経験者や移住定住者を受験資格としているケースもあります。
採用試験倍率は200倍近くになることも
私立大学の場合、競争倍率や合格率などを公開している大学は多くありませんが、国立大学法人等に比べて倍率が高いことが知られています。
年によっては100倍を超え、200倍近くになるケースもあるようです。
また、一般的には都市部の大学や有名大学の職員採用は倍率が高く、地方の大学や知名度の低い大学は倍率が低くなる傾向があります。
例えば、令和4年度の立教大学では、3名の採用に600名以上がエントリーしており、採用倍率は200倍近いといわれています。
「国立大学職員採用試験の難易度・倍率」のまとめ
大学職員採用試験は、国立大学法人等や私立大学において行われる採用試験です。
競争倍率や合格率は大学や年度によって異なりますが、一般的に倍率が高く難易度が高い試験として知られています。
大学職員採用試験は、事務職や技術系など職種によって倍率に差があります。
求職者にとっては過酷な競争となる一方で、採用された人々は大学での仕事にやりがいを感じることができます。