ケアマネジャーになるには? 必要な資格要件は?

ケアマネジャー(介護支援専門員)になるには、通称「ケアマネジャー試験」に合格し、さらに専門的な研修を受けるなど、いくつかのステップを踏む必要があります。

本記事では、ケアマネジャーになるための流れや、必要な資格の概要などについて詳しく紹介しています。

ケアマネジャーになるまでの道のり

ケアマネジャー(介護支援専門員)になるためには、まずケアマネジャー試験(正確には「介護支援専門員実務研修受講試験」)に合格するが必要があります。

介護支援専門員は、国家資格ではなく「公的資格」であり、試験は各都道府県が管轄、実施しています。

ケアマネジャーの試験は、毎年1回、例年10月の日曜日に開催され、試験は居住する都道府県で受けます。

なお、この試験は誰でも受験できる試験ではありません。

受験のためには次の項で詳しく紹介する「基礎資格」を有した上で一定期間以上の実務経験を積むなど、特定の条件を満たす必要があります。

受験資格をクリアしているのかどうか、また、受験資格を証明するための書類が揃えられるかなどを事前に確認しましょう。

ケアマネジャー試験の受験資格・合格後の流れ

ここでは、ケアマネジャー試験を受けるための条件や、基礎資格に関する情報を説明します。

ケアマネジャー試験の受験資格は、以下2つのパターンのいずれかを満たすと得ることができます。

パターン1.ケアマネジャーの基礎資格を取得し、業務経験を積む

ケアマネジャーの基礎資格とは、ケアマネジャー試験を受けるための条件のひとつで、特定の国家資格を指しています。

基礎資格として認められている国家資格には、以下のものがあります。

これらの国家資格に基づく業務の実務経験が「通算5年以上」であり、「従事した日数が900日以上」である場合に、受験資格がケアマネジャー試験の得られます。

ケアマネジャーの仕事は、とくに介護の仕事と親和性が高いこともあって、「介護福祉士」からケアマネジャーの資格を取得する人が多くを占めています。

パターン2.介護施設などで相談援助業務などに一定期間以上従事する

基礎資格を持っていない人でも、介護施設などの場で、相談援助業務を一定期間以上経験した人であれば、ケアマネジャー試験の受験資格が得られます。

具体的には、生活相談員や支援相談員、相談支援専門員、主任相談支援員として通算5年以上かつ900日以上相談援助業務に従事した経験を満たすことが挙げられます。

ただし、詳細については、試験を管轄・実施する各都道府県の情報を確認してください。

合格後には研修の受講が必要

ケアマネジャー試験に合格しても、すぐにケアマネジャーにはなれません。

合格後は「介護支援専門員実務研修」(32時間以上の研修)を受講し、全日程出席して、修了することが必要です。

実務研修は前期と後期に別れ、研修会場での講義が主ですが、前期と後期の間には実際にケアプランを作成する課題が出され、後期の講義に使用します。

この研修ではケアマネジャーとしての理念や実際の業務についての詳しいレクチャーが行われ、研修後、即ケアマネジャーとして活躍できる人材を養成します。

その後、各都道府県に登録申請を出し、受理されると都道府県の知事が発行する介護支援専門員証が交付されると、晴れてケアマネジャーとしての資格を取得できます。

ケアマネジャー試験(介護支援専門員試験)の難易度・合格率

なお、ケアマネジャーの資格は、定期的な「更新」手続きが必要です。

更新は5年おきで、更新の前年に所定の研修を修了することが必須です。

ケアマネジャーの資格取得までに必要な費用

ケアマネジャーの資格を取得するまでには、受験資格を得るまでにかかる費用のほか、ケアマネジャー試験そのものの受験料、研修の受講料、登録手数料などが必要になります。

受験資格を得るための費用

まずは、この受験資格を得るための費用について考える必要があります。

どのような基礎資格を取得してケアマネジャーになるのかなどによって、費用は数十万円~百万円単位で変わってくる可能性があるでしょう。

ケアマネジャー試験の受験手数料

そして、ケアマネジャー試験(介護支援専門員実務研修受講試験)そのものの受験手数料は、試験を実施する都道府県によって異なります。

たとえば令和6年の都道府県別試験受験手数料は、以下のようになっています。
(※一部の都道府県について紹介します)

  • 北海道:11,600円
  • 東京都:12,400円
  • 千葉県:14,000円
  • 山梨県:7,400円
  • 大阪府:13,570円
  • 沖縄県:9,600円

他の都道府県でも、ほとんどが7,000円~14,000円の間となっています。

介護支援専門員実務研修の費用

介護支援専門員実務研修は各都道府県によって行われています。

この研修の受講料も都道府県によって異なり、たとえば令和5年度に実施された東京都の実務研修の受講料は52,800円です。

多くの都道府県で50,000円~80,000円ほどは必要になるため、この費用も念頭に置いて準備する必要があります。

介護支援専門員資格登録申請・専門印象交付申請の費用

実務研修修了後、介護支援専門員資格登録簿に登録し、介護支援専門員証の交付を受けるにも手数料が必要となります。

この手数料も都道府県によって異なり、令和5年度の東京都の場合、介護支援専門員登録申請の手数料が1,500円、専門員証交付申請の手数料が1,000円です。

他の都道府県でも2,000円~3,000円程度がかかります。

試験対策のための学習の費用

介護支援専門員実務研修受講試験対策のために民間のスクールを利用するのであれば、その学費がかかります。

市販の参考書を使えば数千円程度で押さえることができますが、スクールの学費は数万円から10万円程度が相場です。

独学で合格を目指すのも不可能ではありませんが、学習にどれくらいの時間を費やせるかも含めて、どんな学び方をすべきかよく検討することをおすすめします。

ケアマネジャーになるための学校の種類

ケアマネジャー試験は、学歴関係なく受験できます。

ただし、受験のためには一定の「実務経験」が求められることから、受験者の多くが社会人で、働きながらケアマネジャー資格にチャレンジしています。

学歴は必要ないものの、試験対策のためのスクールや通信講座を受講する人もいます。

なお、「基礎資格」と呼ばれる国家資格(介護福祉士、社会福祉士、看護師、理学療法士など)を持たない人の場合は、介護施設などにおいて相談援助業務などで5年以上の経験を積まなくてはなりません。

こういった事情もあり、実際には大学・短大・専門学校などで介護福祉や社会福祉などについて専門的に学んで国家資格を取り、いったん就職して実務経験を積んだ人が、ケアマネジャーを目指すケースが多いです。

通信講座

ケアマネジャーになるための通信講座とは?

働きながらケアマネジャーの勉強をする人は、通信講座を活用することが多いです。

通信講座は、ポイントを絞ったオリジナルの教材によって効率よく学べるように工夫されています。

最近の試験の出題傾向や、試験に出ると予想される重要なポイントがわかります。

また、最新の法改正にも対応しているため、ムダなく合格のポイントをつかめるのもメリットです。

基本的にはテキストを使用しますが、副教材としてDVDやインターネットを駆使した学習、通信添削など、さまざまな学習方法が提供されています。

受講者同士の交流の場をネット上で提供している講座もあり、完全な独学と比べると、モチベーションを保って学習を続けやすい環境があるといえるでしょう。

通信講座によって特色はさまざま

ケアマネジャーの通信講座は、それを提供する企業によって特色があります。

テキストや副教材の内容も異なりますし、疑問点などを質問できるサポート体制にも違いがあります。

専門学校が主催している通信講座の場合、通学での講義にも参加できたり、有料のオプションサービスによって試験直前対策講座を受けられたりするものもあります。

そのほか、AIによる個人弱点克服診断や添削指導、Web学習(eラーニング)など、各社内容を工夫して差別化を図っています。

通信講座の費用

ケアマネージャーの通信講座の受講料金は、一般的に3万円から5万円前後となっています。

なかには「教育訓練給付制度(一般教育訓練)」を使える講座もあるため、自分が対象となる可能性がある場合は情報を調べて活用するとよいでしょう。

なお、通信講座で学習しながらさらに弱点克服や試験に慣れるために、予想問題や模擬問題集を併用している人も多いです。

ケアマネジャー試験は、参考書を活用した独学をはじめ、民間スクールでの勉強、通信講座の利用など、さまざまな方法で目指すことが可能です。

独学

効果的な試験対策が重要

ケアマネジャー試験(介護支援専門員実務研修受講試験)は、独学で合格を目指すことも可能です。

ただし、本試験の合格率は年々低下しており、社会人として働きながら合格をねらうには効率的な試験対策が重要です。

効率よく働くことはケアマネジャーに求められる能力でもあるため、試験対策のときから、それが試されているといってもいいかもしれません。

独学のポイント

独学の場合、まずは問題集をひとつ用意し、何度も繰り返して解いてみましょう。

次は過去問題を入手し、どういう設問パターンがあるかを把握し、問題傾向や設問パターンに慣れていきます。

何度も問題を問いていくうちに、自分はどの分野やどんな問題に弱点があるのか気づくでしょう。

試験が近くなってきたころには、試験本番と同じ条件で模擬試験や過去問題を解くことも有効です。

ケアマネジャーの試験では、基本的な知識を問う問題が多く出題されます。

すでに5年から10年のキャリアのある各種専門職の人たちが受験するため、自分の専門分野については得点を得やすいでしょう。

逆に、他分野には苦手な科目があるかもしれません。

試験ではまんべんなく得点がとれるように、日ごろからこつこつと勉強して、弱点を克服したうえで試験に臨んでください。

ケアマネジャーに向いている人

ケアマネジャーは、介護を受ける人やその家族など、多くの人と接する仕事です。

一方で、書類作成などの事務的な業務も多いため、効率よくさまざまな業務を進めていく能力が求められます。

以下では、ケアマネジャーに向いている人・適性を紹介します。

コミュニケーション能力が高い

ケアマネジャーの仕事では、介護を受ける人にとって最適なケアプランを作成する機会が多くあります。

一人ひとりに合うケアプランを作るためには、まず相手を思いやる気持ちを持ち、どのような要望があるのかを深く聞き出す力が必要です。

介護を受ける本人はもちろん、その家族など、さまざまな人と関わりながら、最善の計画を立てていくことが重要です。

また、業務を通じてさまざまな分野の関係者と連携する機会が多い点でも、コミュニケーション能力は欠かせません。

事務処理能力

ケアマネジャーの仕事では、人と接する機会が多い一方、書類作成や給付管理などの事務業務が非常に多いことも特徴です。

そのため、テキパキと事務処理ができる能力が求められてきます。

細かな事務仕事にも効率よく、丁寧に取り組むことができる人は、ケアマネジャーとして活躍しやすいでしょう。

ケアマネジャーに向いている人・適性・必要なスキル

ケアマネジャーのキャリアプラン・キャリアパス

ケアマネジャーは、現場で働く介護職員のキャリアパスの到達点として考えられることが多く、たくさんの人が目指す資格です。

資格取得後は、さらに経験を積んで、施設や事業所で「主任ケアマネジャー」を務めたり、日本ケアマネジメント学会が設立している「認定ケアマネジャー」を目指したりする人もいます。

また、「施設長」や「事業所長」などの管理職になったり、自分で事業を起こしたりする人もいます。

ケアマネジャーの働き方の種類・雇用形態

ケアマネジャーは正社員・正職員がほとんどで、アルバイトやパートなど、非常勤の割合は決して多くありません。

とくに特定事業者加算の基準を満たそうとする事業所では、常勤のケアマネジャーをメインに配置することで正社員の比率が高くなっています。

予算が限られている施設や事業所では即戦力を求める傾向が強く、まったくの未経験からケアマネジャーの正社員を目指すのは難しいのが現状です。

しかし、パートであればその限りではなく、事業所によっては歴関係なく働ける充実した研修体制を整えています。

常勤・専従の人が多い

ケアマネジャーは正社員・正職員として雇用されることがほとんどです。

居宅介護支援事業所でみると、正社員の割合が大多数を占めており、アルバイトやパートなど非常勤の割合は全体の1割ほどにしか満たないというデータもあります。

他の介護職に比べても、ケアマネージャーは正規雇用される人の比率が非常に高いことが特徴です。

なお、介護系の事業所では、人員基準などの際にしばしば「常勤」「非常勤」という呼び方をします。

ここでいう「常勤」とは、1つの事業所での勤務時間が、常勤としての勤務時間(週40時間)に達している人のことを指します。

加えて、その職種以外の職務に従事しないことを「専従」といいます。

一方、「非常勤」とは、1つの事業所での勤務時間が週40時間に達していない人のことを指しています。

厚生労働省の調べでは、ケアマネジャーの勤務形態は「常勤・専従」が最も多く71.2%、それに次いで「常勤・兼務」が 16.4%という結果となっています。(※平成30年度調査)

→出典:居宅介護支援事業所及び介護支援専門員の業務等の実態に関する調査研究事業

働き方は「勤務型」や「独立型」など多様

ケアマネジャーの働き方としては、企業に勤務する形のほか、独立する形、あるいは自分で居宅介護保険事業所を開業する例も見られます。

介護施設では「介護福祉士」として介護業務を担当しながら、ケアマネジャーの資格を生かして「施設ケアマネ」を兼務する人も見られます。

正社員の特徴

常勤・専従のケアマネジャーがいると介護報酬が加算

介護保険制度では、特定事業者加算として一定の基準を満たしている事業所に対しては、介護報酬が加算される制度があります。

常勤かつ専従の「主任介護支援専門員(主任ケアマネジャー)」の配置や、一定数以上の常勤かつ専従の「介護支援専門員(ケアマネジャー)」を配置することで介護報酬が加算されます。

特定事業者加算の基準を満たそうとする事業所では、常勤のケアマネジャーをメインに配置することにより、とくに正社員の比率が高くなっているようです。

未経験者を対象とする正社員の求人は少なめ

多くの施設や事業所では、介護の現場で働くスタッフに比べるとケアマネジャーの人数は非常に少なく、なかには1人で利用者すべての担当をする人もいます。

とくに予算が限られている施設や事業所では、新人に時間をかけて研修をしたり、手取り足取り仕事を教えたりする余裕がないため、即戦力を求める傾向にあります。

まったくの未経験からケアマネジャーの正社員を目指すのは難しいのが現状です。

正社員は手当が厚い

ケアマネジャーは正社員として就職するとさまざまな手当がつくため、介護職からのキャリアアップであれば、収入もアップすることが多いようです。

資格手当や、夜間の緊急時対応(オンコール)手当、残業手当や休日出勤手当などが加算され、仕事が忙しいぶん、年収も増加しやすい特徴があります。

アルバイト・パートの特徴

ケアマネジャーは、はじめはパートなどの短時間勤務からスタートする人もいます。

ケアマネジャーのパートは、ほかの介護職よりも時給が高めに設定されることがほとんどです。

短時間でそれなりの収入を得られることから、育児中などの理由でフルタイムで働くことが難しい人には人気があります。

パートの場合は、正社員に比べると未経験者でも採用されやすいです。

介護事業所のなかにはしっかりとした研修体制を整えているところもあり、はじめはごく限られた仕事からはじめ、先輩に仕事を教わりながら徐々に担当する人数を増やしていきます。

実務経験を積んで知識・スキルを蓄え、正社員として雇用されることを目指していく人もいます。

ケアマネジャーを目指せる年齢は?

ケアマネジャーの受験資格に年齢制限はないため、何歳からでも働けます。

また、デスクワークが主となるため、年齢を重ねて体力的に現場で介護の仕事をするのが厳しくなってくると、ケアマネジャーとして働くという人も多くいます。

近年では、50代や60代で活躍している人も非常に多くなっています。

「ケアマネジャーになるには・資格」まとめ

ケアマネジャー(介護支援専門員)になるためには、ケアマネジャー試験(介護支援専門員実務研修受講試験)に合格することが必要です。

さらに、合格後は「介護支援専門員実務研修」(32時間以上の研修)を受講して、全日程出席・修了が必須です。

このように、資格を得るまでにはいくつものステップをたどっていく必要があるため、まずは自分が受験資格を満たしているかどうかを確認し、順を追って一歩ずつ進んでいきましょう。

働きながらの資格取得は大変ですが、効率よく働くことはケアマネジャーとして働くうえでも大事な能力のひとつです。

自分に合う学習方法を見つけて、こつこつと勉強を続けましょう。