泌尿器科医になるには 学校や仕事内容・必要な資格・年収を徹底解説
診療範囲が幅広いだけあって、泌尿器外科としての側面、泌尿器内科としての側面があるため、外科も内科もバランスよくできる人が向いています。
泌尿器科は比較的緊急手術が少ないため、夜は早めに帰り、他院でアルバイトをして収入をプラスさせる方法をとっている医師も多く、やり方次第では高収入が期待できるといえるでしょう。
ここでは泌尿器科医の仕事内容や一日の流れ、雇用形態や勤務時間などについて解説していきます。
また、やりがいや大変なことなどにも触れているので、参考にしてみてください。
泌尿器科医の仕事内容
尿の通りみちと男性生殖器が守備範囲
泌尿器科では主に扱うのは、尿を作る臓器である腎臓から、尿を溜めて排出する膀胱・尿道と、その周辺の臓器です。
その他、男性生殖器である前立腺、精巣、精嚢の病気や、腎臓の上にある副腎という臓器の手術も担当します。
- 腎がん
- 膀胱がん
- 前立腺がん
- 副腎腫瘍
- 前立腺肥大症
- 尿路結石症
- 腹圧性尿失禁
- 骨盤臓器脱
- 男性性機能障害(ED)
- こどもの泌尿器疾患(先天性水腎症、停留精巣)
- 包茎
- 腎不全(透析) など
泌尿器科には泌尿器外科としての側面、泌尿器内科としての側面があります。
たとえば消化器外科では内科と外科で分業していますが、泌尿器科では診断から治療まで、薬物療法から外科手術まで、幅広く対応するのが特徴です。
20代で正社員への就職・転職
泌尿器科医の就職先・活躍の場
病院やクリニックなどの医療機関に勤務
泌尿器科医の一般的な勤務先は、病院やクリニックのなどの泌尿器科です。
泌尿器科医は、内科的治療(薬の処方など)も外科的治療(手術)も行います。
基本的に外科的治療は病院で行いますが、内視鏡手術はクリニックでも行っている場合があります。
病院やクリニック以外には、
などがあります。
泌尿科医といっても、専門は何種類にも分かれており、
- がんを専門とする場合
- 排尿を専門とする場合
- 結石を専門とする場合
- 男性不妊を専門とする場合
- 小児泌尿器を専門とする場合
などがあります。
泌尿器科医の一日
午前の診察・昼休み・午後の診察
泌尿器科医の一日は曜日によって異なりますが、日中は外来・病棟患者の処置・手術が主な業務です。
長時間の手術を行う場合もあります。
病院勤務であれば、朝は病棟で入院患者を診察し、外来を行い、午後からは手術。
手術が終われば夕方に再度病棟にいき、回診や患者家族への病状説明を行う、といったケースが一般的です。
泌尿器科の手術の中には8〜10時間かかるものあるので、そういった場合は朝から晩まで手術室にいることもあります。
また、尿路結石症の治療として体外衝撃波結石破砕術(ESWL)という治療があり、専用の部屋で治療にあたる場合もあります。
20代で正社員への就職・転職
泌尿器科医になるには
医師資格を取り泌尿器科医を目指す
泌尿器科医になるには、まず大学(医学部)の入学試験に合格する必要があります。
受験競争を勝ち抜いて医学部へ入学後は、6年間医師になるために必要なことを学習します。
医学部卒業後、医師国家試験に合格することが泌尿器科医になるためのスタートラインです。
泌尿器科医になるためには、医学部卒業後、2年間の初期臨床研修を終えてから、泌尿器科専門医を取得するための後期研修
を行います。
後期研修を終えて泌尿器科専門医試験に合格すると泌尿器科専門医になりますが、一般的には後期研修の段階から泌尿器科医として扱われます。
泌尿器科専門医を取得した後は、サブスペシャリティとして各専門の資格をとったり、ロボット手術や腹腔鏡手術の認定医を取得したりします。
泌尿器科は外科学の一分野であることから、アメリカなどではまず一般的な外科医としてのトレーニングを積んだ後に泌尿器科医としてのトレーニングを受け、ようやく泌尿器科医になれるようです。
泌尿器科医の給料・年収
やり方次第で高収入も
泌尿器科医の給料・年収は、他科の医師と基本的には変わりません。
日中の忙しさはどの医師も変わらないのですが、外科分野の中では比較的緊急手術が少ないため、日中にしっかり働いて夜は早めに帰り、余力でアルバイトをするという医師が多いようです。
そのため比較的高い年収を得やすい環境にあります。
泌尿器科は、尿路結石、精巣捻転症、尿路外傷などで夜間呼び出されることもありますが、外科分野の中では救急疾患はそれほど多くなく、ほとんどの手術は事前に予定され・計画された手術です。
その特性から、他のクリニックなどでアルバイトすることによる収入アップは行いやすい科です。
泌尿器科医のやりがい、楽しさ、魅力
診断から治療、看取りまで 良性疾患から悪性腫瘍まで
泌尿器科の大きな魅力の一つは、その診療範囲の幅広さです。
医学が発展し、医療が細分化されてきている中で、診断・治療・看取りまでを連続的に行う科はあまりありません。
泌尿器科では、前立腺肥大に対する内視鏡手術や、男性不妊の手術、EDの治療など、「命に関わらないものの、生活の質に大きく関わる」病気を多く扱います。
さらに、副腎・前立腺・精巣など、ホルモン関連の臓器も多く、内分泌外科としての側面もあります。
最近では副腎腫瘍による高血圧について広く知られるようになってきており、「手術で高血圧を治せる」ケースがあります。
昔であれば何種類もの薬を半永久的に飲まなければならなかった病気が、手術で治るとすれば、本人にとってはかなり嬉しいことです。
また、泌尿器科では先進的医療も積極的に取り入れられており、例えば、ロボット支援手術は泌尿器科で行われる前立腺全摘除術が最初に適用されました。
また、新規抗がん剤の研究・開発も積極的に進められていて、最新の医療技術をフットワーク軽く取り入れやすい特性もあります。
泌尿器科医のつらいこと、大変なこと
科の名前がかっこ悪い
泌尿器科のデメリットは、「科の名前がかっこ悪い」と思われがちなところではないです。
泌尿器科医の中でも、「腎臓外科」「腎泌尿器外科」「後腹膜外科」などに変えよう、という意見もたびたび話題に上がるくらいです。
ですが、デメリットといえばはそのくらいではないでしょうか。
海外ではトップクラスに人気のある科です。(英語では泌尿器科のことをUrologistといいます)
もし「アメリカにいって医者をやりたい」という場合にはかなり難易度の高い科です。
アメリカでは成績順に科を決めるシステムが採用されているので、日本の医学部を出てアメリカのトップクラスの医学部生の成績を上回り、泌尿器科医として採用されることは極めて困難です。
泌尿器科医に向いている人、適性
外科も内科もバランスよくできる人
泌尿器科は、外科も内科も扱いますので、外科的な側面(不器用でないこと)、内科的な側面(薬物療法の知識や全身管理)、両方こなせる性格の人が向いているといえるでしょう。
海外では泌尿器科医は外科医としての側面が強く、毎日朝から晩まで手術をしていて、術後管理は行いませんし、がんの薬物療法は腫瘍内科医が行います。
しかし、日本では手術だけというわけにはいかず、術前から術後まで、場合によっては亡くなるまで診ますので、患者さんとの長期的な付き合いが求められます。
泌尿器科医を志望する動機・目指すきっかけ
オンとオフをどちらも充実させたい人にお勧め
診療科として幅の広さがあることから、いろいろなスタンスで働きやすいのが泌尿器科の特徴です。所属する医師も多様で、志望するきっかけはさまざまです。
- 内科も外科もやりたい
- 良性疾患もやりたい
- 診療だけでなく研究する時間もとりたい
- 親が泌尿器科医で開業している
- 将来開業したい
- 医師としても忙しく働きたいが、オフは大切だし、家族との生活も重視したい
「どちらかというと手術は好きだし、日中忙しいのはまったく構わないけど、1日3時間睡眠でバリバリ働き続けられるほどの体力はないし、年中病院に寝泊まりして週に1回しか家に帰れないような生活は避けたい」というイメージでしょう。
泌尿器科医の雇用形態、働き方
個人の事情に合わせた働き方が可能
泌尿器科医は、病院やクリニックで雇用されて働く場合や、自身で開業する場合などがあります。
泌尿器科を開業するにあたり、透析をやるかどうかで必要な資金が変わってきます。
開業医の中でも泌尿器科は年収1億円をこえる割合がやや高いのは、透析をやっていることが影響しているといえるでしょう。
昨今、徐々に診療報酬が厳しくなってきていますので、これから透析で新規開業するのは難しいところです。
子育て中の女性の泌尿器科医も、時短勤務やパート・アルバイトなど、個人の事情に合わせた働き方をして活躍しています。
泌尿器科医の勤務時間・休日・生活
平日朝から夕方で土日休みが基本だが
泌尿器科医の勤務時間は、勤め先によって大きく異なりますが、救急疾患が多いわけではないので、基本的には平日朝から夕方まで働いて土日休みというパターンが一般的です。
ただし、泌尿器科ではがんの治療や重症患者の治療もありますので、土・日曜日のどちらかは回診に行くことが多いでしょう。
泌尿器科医は、休日や夜間に緊急対応をすることは比較的少なく、勤務時間を調整するなど、生活を大切にしたいという人には適しているかもしれません。
泌尿器科医の求人・就職状況・需要
排尿トラブルをもつ人は多くニーズは多い
高齢化に伴い、泌尿器科医の需要は年々益々増えてきています。
排尿トラブルを抱えているのは老若男女とも多く、前立腺がんの患者数も近年かなり増加しています。
今後も泌尿器科の需要がなくなることはないでしょう。
出産・子育て後の再就職についても、パート・アルバイトで働くことも含め、就職先は多くあります。
泌尿器科医は、消化器外科医のように、離島や地方に常に常駐していなければならないというわけではありませんから、地方では今でもかなり不足しています。
泌尿器科医の転職状況・未経験採用
泌尿器科専門医を取得できる施設での研修
泌尿器科医を求めている医療機関は多くあります。
泌尿器科専門医になり経験をつめば、高条件での転職も希望どおりできる可能性が高まります。
泌尿器科未経験の場合は、まず泌尿器科医専門医を取得できる施設で研修することを目指しましょう。
また泌尿器科は幅が広いため、すべてをカバーすることは困難です。
将来どういった専門性をもつべきかをよく考えて、その資格・スキルを取得可能な医療機関で働くことが大切です。
泌尿器科医の現状と将来性・今後の見通し
地方や高齢者向け医療でもニーズが高い
泌尿器科は潜在的な需要は大変高い科です。
「お腹が痛い」となればすぐに病院にかかろうと思いますが、「頻尿だけど年齢のせいだろう。近くに泌尿器科もないし……」という症状は緊急性が高いというわけではありません。
そのため、症状はあるけれど治療していないというケースが多々あるのです。
そうした層に対してまだ需要を掘り起こすことは十分可能でしょう。
とくに、地方や高齢者向け医療において、泌尿器科医の活躍の場は今後ますます増えると予想されます。
泌尿器科医の仕事内容のまとめ
泌尿器科は「泌尿器外科」としての側面と「泌尿器内科」としての側面をもっており、診断から治療まで、薬物療法から外科手術まで、幅広く対応するのが特徴です。
泌尿器科の医師になるためには医学部卒業後、医師国家試験に合格後、研修を行い泌尿器科専門試験に合格することが必要となってきます。
泌尿器科医は診断から治療、看取りまで診療範囲の幅広さが魅力だといえるでしょう。