整形外科医の仕事内容・なり方や必要な資格・給料を解説
整形外科医の仕事内容
運動器を専門に治療する
整形外科医とは、骨、靭帯、筋肉、運動神経などの運動器のけがや病気を専門に治療する医師です。
一般的な外科医が胃や心臓、脳、血管などの内臓を治療するのに対し、運動器を改善することを目的としているのが、整形外科医の特徴です。
断絶した靭帯を縫合したり、粉砕骨折などで失った骨格を骨移植手術や人工骨置換手術で再建して、運動機能を元通りに近づける治療をします。
よく間違われやすいのは「形成外科」ですが、形成外科は体の表面を治療する診療科で、事故やケガなどで失われた箇所や機能を手術で治療することを専門とし、整形外科とは異なります。
整形外科は、スポーツや事故でけがをした子どもから、老化による膝や肩の痛みを訴えるお年寄りまで幅広い年齢の患者さんがおり、治療する内容や人数も必然的に多い診療科になります。
整形外科での治療は手術だけではなく、薬を用いて痛みを取り除いたり、理学療法士と連携し、リハビリテーションや運動療法によって運動機能の改善を目指すこともあります。
20代で正社員への就職・転職
整形外科医の就職先、活躍の場
勤務医として経験を積み、開業も
整形外科医は治療する人数が多いため、総合病院でも医師の人数は多く配置される傾向です。
とくに、学校やクラブでスポーツをする学生と、老化に伴い関節痛に悩まされる高齢者が患者さんに多くみられます。
どちらも温存療法で完治が難しいときは手術をしなければならないこともあります。
そこで、手術室のある病院に勤務して、さまざまなケースの患者さんを診療した経験を積んだのち、高齢の患者さんが通いやすい場所に診療所を開くといったことも少なくありません。
整形外科医の1日
診察と研究に追われる1日
整形外科医は、患者さんの診療はもちろん、新たな治療に関わる研究も日夜おこなっています。
ここでは、ある総合病院に勤務する整形外科医の1日を追ってみましょう。
整形外科医の1日のスケジュール
20代で正社員への就職・転職
整形外科医になるには
研修後、整形外科医局に入る
医学部を卒業し、国家試験に合格すると、医師の国家資格を得ます。
その後、研修医として2年間、志望する診療科に関わらず、内科・外科すべての診療科を回り研修を行います。
2年間の研修修了後、整形外科の医局に希望を出し、許可されると整形外科医局に入局することができます。
整形外科ではベテラン医師の指導の下、まず病棟患者さんの診察・治療を行い、手術をする際は指導医の助手としてつき、技術を学びます。
病棟でおおかたの手技を習得すると、外来診療も任されるようになります。
整形外科医局に入局したあと、日本整形外科学会に入会し、4年間整形外科医として経験を積むと、整形外科専門医の受験資格を得ます
試験に合格すると、日本整形外科学会認定の「整形外科専門医」の資格を得ることができます。
整形外科医の給料・年収
年齢が上がるごとに優遇される
整形外科医の年収は、その病院の規模や地域、併設された介護施設の有無などにより差がありますが、新卒で700万円~1000万円程度です。
また、認定資格を取ったり、整形外科医としての勤続年数が長くなるごとに年収は増えていき、1700万円ほどになる人も見受けられます。
早番・遅番・時間外勤務のある病院では手当が付くほか、労災保険、医師賠償責任保険、学会参加のための交通費・宿泊費などを負担してくれる病院もあります。
業績による昇給の可能性もあり、役職に就いた際は役職手当がつきます。
整形外科医のやりがい、楽しさ、魅力
治療だけでなく「予防」もする
高齢化社会が叫ばれる昨今では、老化による痛みなどを抱えた高齢の患者さんが増えています。
お年を召している患者さんの中には、痛みを起こしている場所だけでなく、骨粗しょう症などにより全身の骨格が弱くなっている人もいます。
また、スポーツクラブに入って活躍している若い患者さんには、若さゆえにムリをしすぎ、将来的に大きな障害に繋がるような体の使い方をしている人もいます。
そのような患者さんに対して、現在抱えている痛みや障害の治療もさることながら、今後起こりうる状態を分かりやすく説明し、予防するためにはどう生活すべきかをお伝えしていきます。
治療だけでなく予防にも力を入れることによって、患者さんが笑顔で過ごすことに貢献できるのは、整形外科医にとっても嬉しいことです。
整形外科医のつらいこと、大変なこと
サルコペニア、慢性患者さんへの配慮
サルコペニアとは、加齢や病気、栄養不足、運動不足などにより、筋肉量が標準よりも低下してしまった状態です。
体を動かすのが難しい高齢者だけでなく、最近では極端なダイエットやデスクワークにより、20代の若者にもサルコペニアの人が増えています。
このような人は将来早い段階から介護が必要になったり、ロコモティブシンドローム(骨折等により寝たきりが続いた結果、筋量が落ち、歩行困難になること)になる可能性が高くなります。
高齢の人はもちろん、若い人にも運動や食事の大切さを訴えてゆかなければ、整形外科の患者数は飽和状態になってしまうことも考えられ、憂慮されています。
また、慢性的な痛みや動きづらさと付き合ってゆかなければいけない患者さんは、思い通りに動くことができない苦しさを抱えています。
その心に寄り添って、親身になって診療ができる人でなければ、今後ますます高齢者が増えていく中で整形外科医として仕事をしていくのは難しいかもしれません。
整形外科医に向いている人、適性
コミュニケーション力と研究心
日々思うように動くことのできない慢性疾患の患者さんでも、見た目は健康な人とあまり変わりがないためつらさを理解されにくい面があります。
ですから、患者さんの気持ちになって親身にコミュニケーションを取れる人は、おのずと患者さんから慕われ、求められるでしょう。
また整形外科にはさまざまな年齢層の患者さんがやってきます。そのような意味でも、どんな人ともスムーズにコミュニケーションの取れる力が必要です。
それだけでなく、今までの治療は治せない疾患に対してもたゆまず研究し、新たな医療を取り入れていく姿勢が問われます。
整形外科医の志望動機・目指すきっかけ
怪我が治っていく喜び
整形外科医を目指すきっかけはさまざまにありますが、とくに目立つのは、近しい人が怪我をしたときに治癒する過程を見て、やりがいを感じたという人です。
お年寄りですと、腰痛や関節痛など、お子さんだと捻挫や靭帯の怪我で整形外科にかかることが多く、そこに付き添いで行ったときに整形外科の重要性を感じる人が多くいます。
体が動けないと心もふさぎがちになりますが、そのほうな患者さんのメンタルケアにも配慮した治療課程を実際に見て、自分も同じような働きをしたいと思う人は少なくありません。
整形外科医の雇用形態、働き方
常勤、週1日のアルバイトなど様々
整形外科医は、常勤以外にも、週に1日午後のみなどのアルバイト勤務も数多く見つけることができます。
勤務する病院によりますが、常勤ですと主治医制となり、当直が月4回ほど、学会は出張扱い、休暇は年末年始と夏期休暇、有給10日程度という病院が多いです。
整形外科は再診の患者さんが多いため、主治医制を取っているところが多く、休日の融通は利きにくいかもしれませんが、年収は卒後5年で1200万円以上になる病院が多くあります
週に1~3日のアルバイト・パート勤務の場合は、夜勤、土曜勤務、救急受け入れを任されたりすることが多いようです。
子育てしながらの勤務を希望するなら、土曜勤務のみなど、夜間に家を空けずにすむ求人に応募するか、託児所のある病院を選ぶのもおすすめです。
整形外科医の勤務時間・休日・生活
残業はあまりないが休みが少ない傾向
整形外科医の勤務時間は、だいたい外来診療時間と同じ、8:30~17:30の間で実勤8時間前後の定時制の職場が多いです。
手術施設がある病院では、これに当直勤務もあります。
休日は日曜・祝日を基本に、4週6休、または週5日勤務というところが多くみられます。
残業は少ない病院が多いようなので、宿直の前後を除いては生活のリズムが大きく崩れる因子は少なそうです。
なかには年末年始の休み以外は各自有給を取らないといけないところもあります。
新人医師で、しっかりと臨床経験を積みたいなどの理由があれば、敢えて休暇の少ない病院を選ぶのもよいと思われます。
整形外科医の求人・就職状況・需要
常勤・パート共に多くある
高齢化によって整形外科医が多く求められているため、求人はたくさんあります。
手術施設のある病院では、手術の執刀医や助手もこなす必要があるため、とくに人員確保の動きがあるようです。
整形外科医そのものも高齢化している今では、手術での力仕事や細かい作業のために、若い医師も積極的に受け入れているところがほとんどです。
若く、育児中の女性医師も活躍できるよう、時短勤務に対応した病院や、託児所完備、パート勤務できる病院も多くあります。
病院以外の企業で整形外科医を募集していることはほとんどないようです。
整形外科医の転職状況・未経験採用
転職・未経験ともに豊富
整形外科では処置の内容も幅広く、理学療法士と連携して行う業務も多いので、まずは大学病院などの研修機関で経験を積む人がほとんどです。
そのあとは、各々の希望や働きたい地域の病院に就職することになります。
求人は、どの地域でも常に一定数の求人がありますので、即戦力となれる人材ならば転職は難しくはないと思われます。
また、医師は国家資格取得後、2年間にわたり内科・外科に関わらずすべての診療科で研修をするため、未経験採用はありません。
整形外科医は地域に密着した診療を旨とすることが多く、そのため開業する医師も少なくありません。
整形外科医の現状と将来性・今後の見通し
高齢化に向け更なる活躍が期待される
整形外科の分野で診療する年齢層は広いですが、とくに現在では高齢化に伴い、慢性症状のあるお年寄りの患者さんが多くなっています。
そのような患者さんを身近に感じ、うまく動けないことからの精神的抑圧のケアも含めた診療が、今後ますます期待されていくでしょう。
また、今後予想される超高齢化社会に向けて、動けなくなってしまう因子を持った人を1人でも減らす、予防の分野でも活躍が期待されます。
医師も患者も超高齢化に備え、自分の手足を自在に使える健康寿命を延ばすために、さらなる啓蒙活動を広げていくべき分野であるといえます。