不動産鑑定士になるには
不動産鑑定士になるには
資格を取得するまで
不動産鑑定士になるには、不動産鑑定士試験を受けて国家資格を取得する必要があります。
この試験は、年齢や学歴に関係なく誰でも受験可能です。
試験は、短答式の一次試験、論文式の二次試験の二段階選抜で行われ、短答式に合格した人だけが論文式を受けられます。
なお、短答式に合格した年を含めて3年以内であれば、短答式を受けずに論文式を受験することができます。
論文式をパスすると、不動産鑑定士試験合格となります。
資格を取得してから
不動産鑑定士は、試験に合格してもすぐに業務を行えるわけではなく、資格を行使するためには「実務修習」を受けなくてはなりません。
すべてのカリキュラムを終えたら「修了考査」と呼ばれる最終テストを受けることが可能になります。
その修了考査をクリアすると、各都道府県の協会に資格を登録して、不動産鑑定士としてキャリアをスタートさせられます。
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不動産鑑定士の実務修習とは
不動産鑑定士の実務修習制度
不動産鑑定士は、試験に合格してもすぐに働けるわけではありません。
資格を登録して業務を行うためには「実務修習」と呼ばれる所定の研修を受講することが必要です。
これは、弁護士における司法修習と似たような制度であり、不動産鑑定士に求められる高い専門性と知識を身につけるため、新たに資格を取得した人全員に履修が義務付けられているものです。
実務修習は、おおまかに「講義」「基本演習」「実地演習」の3段階で実施され、1年コースと2年コースの2種類がありますが、内容自体は同じです。
1年コースは研修を短期で終えられるメリットがあるものの、基本演習と実地演習を同時並行でこなすなど、スケジュールがかなりタイトであるため、大半の人は2年コースを選択するようです。
さらに、すべてのカリキュラムを終えた後には、3ヵ月以内に「修了考査」を受けなくてはなりません。
修了考査に合格すると、各都道府県の協会に登録し、晴れて不動産鑑定士としてのキャリアをスタートさせられます。
なお、実務修習全体を通して約100万円ほどの研修費用がかかるため、経済的な負担は決して小さくはなく、修習生の間はどの不動産鑑定士も生活が苦しくなりがちです。
実務修習の内容
講義
講義は、不動産の鑑定評価業務に必要となる実務知識を身につける課程であり、統計や登記法などの基礎知識、更地や区分所有建物といった物件ごとの種類別鑑定法などを学びます。
かつては、指定された大学などに集まって講義を受ける必要がありましたが、現在では受講生の負担を軽減するために、インターネットによる「eラーニング」での受講が可能です。
それぞれの科目の講義を視聴し終えた後に確認テストが実施され、それに合格すると修了となります。
基本演習
基本演習からは、宿泊を含めた集合研修となり、鑑定評価報告書を作成する一連の流れについて、実践形式で学びます。
更地や借地、借家などの物件属性ごとに4段階に分けて、1段階ごとに2~3日、合計10日間にわたる演習を行います。
それぞれの段階で、指定期日までに鑑定評価報告書を作成・提出し、それにもとづいて単元認定が審査されます。
実地演習
実地演習は、より不動産鑑定士の実務に即した内容となり、現実に存在する不動産を題材として、鑑定士の指導の下で鑑定報告書を作成します。
宅地、農地、自家用建物、収益物件など、定められた期間内に計13件の物件を調査し、評価書を作成しなければならず、とくに1年コースの場合はかなり厳しい日程です。
基本演習と同様、各修習生が完成させた報告書にもとづいて単元認定が行われますが、不動産鑑定評価の実務経験が一定以上ある人については、一部課程が免除される「みなし履修」制度もあります。
修了考査の内容
講義、基本演習、実地演習すべての単位を修得すると、修了考査を受けることが可能となり、修了考査は「口述考査」と「記述考査」の2形式で実施されます。
口述考査は、修習生が期間中に作成した鑑定報告書の内容について、試験官3名からの質疑に応える形で実施されます。
記述考査は、基礎知識から技術的な専門知識まで幅広い分野から出題され、不動産鑑定士試験さながらに択一式と論文式による試験が行われます。
合格率は例年85%前後で全員が合格できるわけではなく、不合格者は再試験を受けなければなりません。
不動産鑑定士の資格・難易度
不動産鑑定士試験は、司法試験、公認会計士試験と並ぶ三大文系試験に位置付けられており、数ある資格試験のなかでもきわめて難関とされています。
試験の合格率は、近年はやや上昇傾向にあるものの、それでも5%前後の狭き門です。
必要となる勉強時間は2000時間ほどが目安とされており、1年半~2年ほどかけて対策を練るケースが一般的です。
受験者のなかには、仕事を辞めて勉強だけに集中する「専業」で試験に挑む人も少なくありません。
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不動産鑑定士になるための学校の種類
不動産鑑定士試験を受けるには、特定の学校に通わないといけないことはなく、どの学校にも行かず独学だけで勉強することも制度上は可能です。
しかし、不動産鑑定士試験の難易度を考えれば、大学などの教育機関や、民間の資格専門学校、予備校などで専門的に学習することが望ましいでしょう。
大学に進学する場合、試験には民法や経済、会計などの分野が出題される関係上、法学部や経済学部、経営学部を選択すると有利です。
また、民間のスクールでは多数の専門対策講座も開講されています。
初学者向けや既修者向け、あるいは宅建試験経験者向けなど、自身の知識レベルに適したコースを選択することが可能です。
社会人としてすでに働いており、日中に通学することが難しいという場合は、夜間の講座を受講したり、通信教育を利用して自宅で学習を進める方法もあります。
不動産鑑定士になるためにはどんな学校に行けばいい?(予備校・大学・専門学校)
不動産鑑定士に向いている人
不動産鑑定士の鑑定評価には、非常に大きな社会的影響力があるため、あらゆる行程において、曖昧な根拠ではなく、客観性のある一貫した論理にもとづいて作業することが必要です。
また、報告書に文章を記載する際や、クライアントに評価理由を伝える際などにも、わかりやすく論理的にものごとを説明することが求められます。
したがって、理詰めでものごとを考えられる、論理的思考力に優れた人は不動産鑑定士に向いているといえるでしょう。
不動産鑑定士のキャリアプラン・キャリアパス
不動産鑑定士には実務修習が義務付けられているため、まずは不動産鑑定事務所などに勤め、研修生待遇で実務経験を積むところからキャリアをスタートさせることになります。
修了考査に合格し、資格を登録した後には、そのまま不動産鑑定事務所に勤める人もいれば、不動産会社や金融機関などに就職する人もいます。
ある程度のキャリアを積んだ後には、より実力主義の傾向が強まる外資系企業に転職したり、あるいは独立開業して自分の事務所を経営するといったキャリアプランも考えられます。
不動産鑑定士を目指せる年齢は?
不動産鑑定士試験に年齢制限はなく、何歳からでも、また何歳になっても、試験を受けることができます。
実際の合格者をみても、下は10代から上は60代まで、幅広い年齢層の人が合格しています。
ただし、不動産鑑定士として業務を行うためには、試験に合格するだけでなく、実務修習を受けるために不動産鑑定事務所などに勤めることが必要です。
募集条件は企業によって異なるため一概にいえない部分はありますが、大手事務所の求人は28歳~30歳程度を上限としているところが大半です。
30代、40代でも求人がないわけではありませんが、年齢を重ねれば重ねるほど就職が困難になることは間違いなく、できれば20代、遅くとも30代のうちに試験に合格しておくことが望ましいでしょう。
不動産鑑定士の求人・就職状況・就職先選びのポイント
不動産鑑定士の就職先にはどんなところがある?
不動産鑑定士の就職先は、不動産業界に属する企業と、金融業界に属する企業の2種類に大別できます。
不動産業界の企業としては、不動産鑑定事務所をはじめとして、一般の不動産会社や不動産管理会社などが挙げられます。
ただ、鑑定事務所は大小さまざまな規模のところが就職先となり得る一方、それ以外の不動産会社については、不動産鑑定士の求人があるのは社内に鑑定部門をもつ大手企業に限定されます。
金融業界の就職先は、メガバンクの担保評価部門、信託銀行の信託部門、「REIT」と呼ばれる不動産投資信託を取り扱う証券会社、監査法人などです。
また、富裕層向けに資産運用のアドバイスを行う、コンサルティング企業に勤める鑑定士も一定数います。
不動産鑑定士の求人の状況
資格を登録するまでの求人状況
不動産鑑定士は、資格試験に合格しただけでは働くことはできず、不動産鑑定士事務所などで約2年間の実務修習を積まなければなりません。
しかし、見習いである実務修習生に対して、ゼロから仕事の方法を指導することは、事務所側にとって負担が重いため、受け入れ先は決して多くはありません。
また、待遇面などの条件も厳しいうえ、年齢制限も28歳~30歳くらいまでとかなり絞られていることが一般的です。
人によっては、不動産鑑定事務所に直談判しないと就職先が見つからないケースもあるようです。
資格を登録した後の求人状況
実務修習を終え、資格を登録できるようになった後については、不動産鑑定事務所だけでなく、上述のとおりさまざまな業界から求人があります。
とくに近年は、国際会計基準を適用するために、保有する不動産を時価評価してほしいという企業が増えていることもあって、就職先としては不動産業界よりも金融業界のほうが勢いがあります。
不動産鑑定士の需要は広がりを見せており、自分のスキルや意欲次第で、業務内容も待遇面も自由に選択することができるでしょう。
不動産鑑定士の就職先の選び方
手掛けたい業務内容で選ぶ
不動産鑑定士の手掛けられる仕事は幅広くありますので、まずは自身がやりたい仕事、身につけたいスキルを優先して就職先を選ぶという方法が考えられます。
鑑定評価業務だけを集中的に手掛けたい場合、あるいは将来的な独立開業を考えている場合は、不動産鑑定事務所に就職することがおすすめです。
鑑定評価業務だけでなく、建物の管理方法や運営方法など、不動産全般について学びたい場合は、大手不動産会社の鑑定部門や信託銀行などが望ましいでしょう。
また、鑑定評価よりも、むしろ不動産を有効活用する方法や収益を最大化する方法など、投資対象としての不動産に魅力・将来性を感じる人は、コンサルティング業界の企業が向いています。
自身のスキルレベルで選ぶ
不動産鑑定士は、給与などの待遇面が実力に反映されやすい職業であるため、自身の保有スキルに合わせて就職先を選ぶ方法も考えられるでしょう。
実務未経験の場合は、鑑定事務所や鑑定会社しか選ぶことはできませんが、その後のキャリアについては自分次第です。
鑑定スキルを磨いてメガバンクの担保評価部門で働くこともできますし、会計知識を身につければ監査法人で企業会計に携わることもできます。
もしも自分の事務処理スキルに自信があり、ビジネスの現場で通用するだけの英語力があれば、外資系企業で活躍することもできるでしょう。
不動産鑑定士のなかには、転職を経てゴールドマン・サックスなどの有名外資系金融機関に勤め、世界を股にかけて大金を稼いでいる人もいます。
ただ、自分の実務経験やスキルレベル以上の企業を選んでしまうと、まったく仕事がまわらないという可能性もあります。
企業の知名度や収入面に惹かれて、背伸びしすぎないようにすることが大切です。
不動産鑑定士の志望動機・面接
不動産鑑定士は、かつては鑑定評価業務を中心として、不動産業界で働く人が大半でした。
しかし、近年はその不動産知識を金融分野や会計分野に生かす事例が増えており、就職先も業務内容も幅広くなっています。
このため、不動産鑑定士の志望動機を考える際には、まず「どんな業務を行いたいか」を念頭に置いて、そこから各業界・各企業を目指す理由を個別に練るという手順を踏むべきです。
また、活躍の場が広くなっているということは、それだけキャリアが多様化しているということでもあり、面接時には、まず間違いなく将来のビジョンについて問われることになるでしょう。
キャリアアップのために職場を転々としたり、独立開業する人も少なくありませんが、早期の離職は雇用する側にとっては大きなリスクです。
面接の場においては、長期間にわたって腰を据えて働く意思があることを示したほうがよいでしょう。
就職先はどのように探したらいい?
一般的な就職サイトや転職エージェント、ハローワークなどでは、不動産鑑定士の求人情報はそれほど多く出ていません。
また、あっても経験者採用がほとんどであり、実務修習生を対象とした募集はほぼありません。
実務未経験から就職先を探す場合の方法は、おおまかには、不動産鑑定協会のHPから探す、月刊不動産鑑定の求人情報欄から探す、予備校の主催する就職説明会に参加する、の3つが挙げられます。
不動産鑑定協会のHP
3つのなかで最も一般的なのは、日本不動産鑑定士協会連合会のHPにある「求人・求職」のページから探す方法です。
不動産鑑定士を束ねる母体だけあって、求人情報はかなり豊富にあり、実務経験のない資格未登録者から、キャリアアップを目指す転職者を対象としたものまで幅広い募集が掲載されています。
また、近年は働き方が多様化している影響もあって、雇用形態は正社員だけに限らず、パート・アルバイトなどの「補助者」としての募集もあります。
月刊不動産鑑定の求人情報欄
住宅新報社が毎月20日に発行している月刊不動産鑑定という雑誌にも、不動産鑑定士の求人情報が多数記載されています。
一般の書店には流通しておらず、半年間または1年間の定期購読でしか入手できないのは難点ですが、不動産鑑定協会とは違った求人も多く掲載されています。
一風変わったものでは、東京都の保有財産を管理する公務員としての採用情報が掲載されていることもあります。
予備校の就職説明会
就職説明会では、基本的に新たに試験に合格した実務未経験の人を対象に、実務修習生としての就職先をまとめて紹介してもらうことが可能です。
各企業の担当者から直接話を聞くことができる点は、ほかの方法にはない大きなメリットといえるでしょう。
なお、説明会は、毎年論文式試験の合格が発表される10月頃に開催されますが、参加できるのはTACまたはLECの大手予備校受講生だけです。
予備校に在籍していない人については、上記2つの方法で探すか、あるいは都道府県庁などに備え付けてある業者名簿を頼りに、各鑑定事務所に直接問い合わせてみることが必要です。
不動産鑑定士の働き方の種類とその特徴
不動産鑑定士の雇用形態
不動産鑑定士は、資格保有者数が全国で約9000人ほどしかいない希少かつ難関な国家資格であり、資格保有者の大半はフルタイムで働く正社員か、独立開業している経営者です。
しかし、家庭の事情などで働く時間が限られる人や、より自由な働き方を求める人が契約社員やパート・アルバイトを選ぶケースも近年は増加傾向にあり、雇用形態は多様化しています。
なかには、育児のためにほぼ在宅のみで仕事をしている「ママさん鑑定士」もいるようです。
また、勤め先によっては、非正規雇用であれば資格がなくても採用するというケースもあり、「補助者」として働きながら不動産鑑定士試験合格を目指して勉強に励んでいる人も少なくありません。
以下では、それぞれの雇用形態における特徴や待遇面について、比較しながらご紹介します。
正社員の不動産鑑定士
正社員の特徴
正社員として働く不動産鑑定士は、さまざまな業界で幅広く活躍できることが特徴です。
不動産鑑定事務所や大手不動産会社を筆頭に、メガバンクや信託銀行、証券会社、監査法人、ファンド、コンサルティング会社、あるいは鉄道会社や行政機関で人もいます。
転職を重ねながら多様なスキルを身につけて、外資系企業に勤めてビジネスの最前線で働くことも可能です。
ただし、正社員の仕事には、やりがいがあると同時に重い責任ものしかかるうえ、労働時間自体も長くなりがちです。
とくに若手の間は、長期出張を何度もこなさなければならなかったり、短い頻度で転勤を強いられるケースも少なくないため、体力面・精神面双方の負担が大きいでしょう。
正社員の待遇
正社員の不動産鑑定士は、上場クラスの大手企業に勤めるケースが多く、待遇面は非常に恵まれています。
年収は600万円~700万円前後と、一般的なサラリーマンを大きく上回る水準となっているうえ、福利厚生も充実している企業が目立ちます。
キャリアを積んで外資系企業で活躍している人のなかには、年収1000万円を大きく超えている人も少なくありません。
正社員の不動産鑑定士は、資格取得の難しさや求められるスキルの高度さ、労働時間の長さに見合った、手厚い待遇が期待できるでしょう。
派遣社員の不動産鑑定士
派遣社員の特徴
派遣社員や契約社員として働く場合、正社員よりも労働時間が短いこと、そして担うべき責任が軽いことが特徴として挙げられます。
業務内容はさまざまで、高度なスキルを有してほぼ正社員と同じ仕事をこなすケースもあれば、一部業務に特化した専門的な働き方をするケース、正社員の補助業務や一般事務を手掛けるケースもあります。
不動産鑑定士試験の勉強をしたいが、実務経験も積みたいと考える人については、業務後に勉強する時間を確保しやすい派遣社員のほうが、正社員よりも望む働き方に近くなるでしょう。
派遣社員の待遇
派遣社員の給与は、自身のスキルや経験によって大きな差があります。
不動産鑑定士資格を取得・登録していれば、年収400万円以上が相場となり、実務経験次第ではほぼ正社員と遜色ない収入を得ることも可能です。
しかし、契約期間は数か月前後、どんなに長くても3年がひとつの目安となるため、雇用の安定度という点においては正社員より劣ることは否めません。
ただ、企業によっては、将来的に正社員へ登用することを前提としていたり、再雇用制度を設けているケースもあるため、条件面を確認してみるとよいでしょう。
アルバイト・パートの不動産鑑定士
アルバイト・パートとして働くことを選ぶ人の多くは資格未取得であり、これから不動産鑑定士試験を受ける、あるいは短答式試験には合格したが論文式試験には受かっていないというケースが大半です。
実務経験を積むことよりも、資格取得を優先させたいという場合、派遣社員よりもさらに多くの時間を勉強に充てることができるでしょう。
仕事内容は、不動産鑑定士の補助業務が中心となり、役所での情報収集や、計算内容のチェックなどを手掛けるケースが多いようです。
時給は1,000円前後が相場であり、一般的なアルバイトと大差ありませんが、実務経験を試験勉強に生かせる点は大きなメリットといえます。
不動産鑑定士の現場の空気に触れるだけでも、一度アルバイトとして働いてみる価値はあるでしょう。
独立開業して働く不動産鑑定士
不動産鑑定士は独立開業型の資格であり、自分の事務所を経営している人は大勢います。
年収は自身の経営手腕や人脈次第ですが、年収1000万円を超えている人も珍しくないようです。
しかし、公示価格評価などの公的案件は、既存の不動産鑑定事務所によってほぼ抑えられており、新規独立者の参入余地はあまり残されていないのが現状です。
これまでの実績がものをいう不動産鑑定士業界にあっては、後から開業しても古参の鑑定士から案件を奪うことは容易ではありません。
不動産鑑定士には、サラリーマンなどと違って定年退職制度がなく、本人の希望次第でいつまでも働き続けることが可能であるため、こうした厳しい業界環境は当面続く見通しです。
ただ、業界全体で高齢化が進展していることも事実であり、今後緩やかに世代交代が進んでいくにつれ、若い不動産鑑定士にも徐々にチャンスが巡ってくるでしょう。
副業・在宅の不動産鑑定士
不動産鑑定士の鑑定評価業務は、物件調査などのフィールドワークと、情報分析や報告書作成といったデスクワークの2種類の作業から成り立っています。
このうち後者については、パソコンさえあれば自宅で作業することも不可能ではなく、育児や介護と仕事を両立させるために、ほぼ在宅のみで働いている人もいます。
完全にフリーランスで働き、案件ごとに請け負うというよりも、特定の事務所に所属するというケースが目立っており、収入面も安定しやすいでしょう。