電気通信工の仕事内容・なり方・年収・資格などを解説

「電気通信工」とは

電気通信工の仕事内容・なり方・年収・資格などを解説

携帯電話やパソコンなど、さまざまな情報通信設備に関する工事を行う

電気通信工とは、インターネットで使う回線の配線や設備の工事など、さまざまな情報通信設備に関する工事を行う職業のことです。

情報通信設備の例としては、携帯電話やスマートフォン、パソコン、テレビ、防犯カメラ、放送設備などが挙げられます。

これらの設備をオフィスや一般家庭に設置したり、設置にともなう工事を行ったりするのが電気通信工の役割です。

5Gの登場など、IT化が進んだ現在では欠かせない職業のひとつでしょう。

なお電気通信工事とよく似た言葉に「電気工事」がありますが、両者のもっとも大きな違いは「扱う電力の大きさ」です。

電気工事はさらに「建築電気工事」と「鉄道電気工事」に分かれ、建築電気工事では送電設備や変電設備、鉄道電気工事では電車に送電するための電気設備や踏切などのように、いずれも大規模場な工事を担当するのが一般的です。

電気通信工事と電気工事では必要になる資格も異なるため、混同して考えないよう注意しておきましょう。

「電気通信工」の仕事紹介

電気通信工の仕事内容

LAN工事や携帯電話基地局工事など多岐にわたる

電気通信工の仕事内容は多岐にわたります。

そのなかでも電気通信工が行う代表的な5つの工事についてみていきましょう。

LAN工事

「LAN」とは、パソコンなどの接続機器同士を繋げた限定的なネットワークを指します。

オフィス内のパソコンやプリンター、通信機器などからインターネットを使えるようにする工事がLAN工事です。

テレビ共聴設備工事

テレビ共聴設備工事は地上局や放送衛星からの電波を受信するアンテナを、マンションやアパートなどの屋上に設置する工事です。

盆地や山岳部などの電波障害が発生しやすい地域に、電波の共同受信施設を構築する工事を行う場合もあります。

弱電設備工事

「弱電設備」とは、電話やテレビなどのおもに60V以下の電圧で使用される設備のことです。

これらの設備を新しく設置するのが弱電設備工事であり、防犯カメラやインターホン、自動火災報知器なども弱電設備にあたります。

放送設備工事

放送設備工事は、学校や工場、店舗などの施設における構内・館内放送を行うための放送設備に関わる工事です。

放送設備には大きく「一般業務用放送設備」と「非常用放送設備」がありますが、そのほかにも「音響設備」「AV機器設備」「会議室放送設備」なども含まれます。

携帯電話基地局工事

携帯電話基地局工事は、携帯電話やスマートフォンに効率よく電波を届けるための工事です。

携帯電話の各キャリアからの依頼を受け、屋外・屋内基地局の建設やアンテナの設置、通信試験などを実施します。

電気通信工になるには

業務未経験者でもチャレンジできる仕事

電気通信工になるには、電気通信工事を請け負う会社に就職する必要があります。

近年の都市開発化や5G登場などの動きも影響し、全体の求人需要は増加傾向にあります。

その一方で人手の足りていない会社がほとんどであるため、電気通信工は専門的な仕事内容ではあるものの、多くの会社が出身学部や資格などに関係なく採用を行っている状況です。

未経験者を受け入れている会社のなかには新人教育に力を入れているところも少なくないため、そのような会社であれば新卒者や業務未経験で転職する人も安心して就業できるでしょう。

未経験での就職を考える場合は、会社説明会やホームページなどで、どのようなサポート体制があるのか事前に確認しておくのをおすすめします。

電気通信工になりたい気持ちが早めに固まっている場合は、電気・電子工学や情報工学を学べる大学・専門学校に通うとよいでしょう。

なお電気通信工事には携帯電話基地局工事や放送設備工事などさまざまな種類がありますが、各企業によって主力とする工事には違いがあります。

自分自身がどんな領域に興味があるのかを考え、各企業の強みや特徴をしっかりリサーチしたうえで就職先を選んでいきましょう。

電気通信工の学校・学費

多くは学歴不問で採用が行われている

電気通信工になるのに通わなくてはならない学校はありません。

多くは学歴不問で採用が行われているため、文系・理系にかかわらず就職を目指せる仕事です。

高卒で働いている人も多い業界であるため、無理して大学に通う必要もないでしょう。

「しっかり知識を身につけてから就職を考えたい」という場合は、電気・電子工学や情報工学系の大学・専門学校に通うことで仕事に繋がる知識を勉強できます。

たとえば電子系の専門学校に通う場合なら、学費の相場は2年間で200万円〜250万円程度です。

電気通信工の資格・試験の難易度

給与面で優遇される資格もある

近年の電気通信工事業界では人材不足の影響もあり、無資格者でも問題なく就職できるケースが多くなっています。

とはいえ資格がなければできない工事や入れない現場もあるため、現場で経験を積みつつ資格取得にも挑戦する人が多くみられます。

代表的なものでは「工事担任者」という国家資格があり、これは公衆回線やケーブルテレビなどの配線工事を行うための資格です。

参考:一般財団法人日本データ通信協会 工事担任者試験

また事業用電気通信設備工事の監督を行うための国家資格「電気通信主任技術者」も、持っていれば非常に重宝される資格といえます。

参考:一般財団法人日本データ通信協会 電気通信主任技術者試験

これらは基本的には就職後に取得を目指す資格となりますが、給与面で優遇されることもあるため積極的にチャレンジしていくとよいでしょう。

電気通信工の給料・年収

保有資格によっては毎月数千円〜数万円の資格手当が支給される

求人サービスなどの調査データから、電気通信工の平均年収は350万円~450万円程度になると考えられます。

電気通信工は学歴や業務経験の有無に関係なく誰でも目指せる仕事ではありますが、全業界の平均年収と比べると若干低い傾向にあるといえるでしょう。

初任給は20万円前後からスタートする場合が多く、その金額に各種手当や残業代がついて毎月の給料が決定します。

ただし上記はあくまで平均としての金額であり、就職先の企業規模や業務の複雑さなどによっても年収は大きく変わってきます。

完全未経験から就職した場合であっても、現場で経験を積んでいくことでゆくゆくは大きな現場を任されるようになり、そうなれば責任も重くなる分年収アップが期待できます。

また資格手当の制度を設けている会社も多く、保有している資格にあわせて毎月数千円〜数万円程度の資格手当が支給される場合もありす。

取るのが難しい資格を持っていれば毎月2万円程度の資格手当が付く場合もあるため、資格を持っているかどうかで年間数十万円の差が出てくるでしょう。

資格は社内の昇進だけでなく転職時のアピール材料として使えますので、なるべく取得しておくのがよいでしょう。

電気通信工の現状と将来性・今後の見通し

5Gの普及にともない需要はますます高まっている

情報通信技術が発達した現代において、スマートフォンやモバイルコンピューターの通信量は大幅な増大をみせています。

増大し続ける通信量に対応するために、新世代の移動通信システム「5G」が登場しましたが、この5Gの普及に欠かせないのが携帯電話基地局の新設工事です。

5G環境を全国的に整備していくには膨大な数の基地局が必要になるため、工事請負業者の電気通信工に対するニーズはますます高まっています

もちろんそのほかの分野においても電気通信工事は安定した需要が見込まれており、さらなる成長が期待できる優良な業界といえるでしょう。

電気通信工の就職先・活躍の場

電気通信工事の請負会社に就職する

電気通信工のおもな就職先は、電気通信工事の請負会社です。

電気通信工事の請負会社のなかには「携帯電話基地局工事」や「テレビ共聴設備工事」など特定の工事を専門としている会社もあれば、さまざまな工事を包括的に請け負っている会社もあります。

業界全体的に人手不足の状況にあるため、業務未経験者を受け入れている企業も数多く見つかるでしょう。

なお担当する工事内容によっては屋外や高所での工事を頼まれることもあるため、就職先を選ぶ際には自分の適性や極めていきたい分野などをよく考えておきましょう。

電気通信工の1日

1日で数件の工事を担当することも

担当する工事内容によって電気通信工の1日の流れは大きく変わります。

ここでは、LAN工事を担当する電気通信工の1日を紹介します。

8:00 出勤・朝礼
会社での朝礼が終わったのち、早速工事現場へ出発します。
9:00 一件目のLAN工事
本日一件目のLAN工事です。まずは危険なポイントを洗い出して安全確認を行います。
12:00 昼休憩
持参したお弁当を食べることもあれば、近くのお店に食べに行くこともあります。
13:00 二件目のLAN工事
本日二件目の工事現場へ移動し、作業を進めます。作業中に小休憩を挟むこともあります。
16:00 作業終了・帰社
工事が終わったら道具を片付けて、一度会社に戻ります。会社に着いたら作業報告書を記入します。
17:00退勤
翌日のスケジュールを確認し、とくに問題がなければ退勤します。

電気通信工のやりがい、楽しさ

お客さまから暖かい言葉をかけてもらえること

電気通信工事がなければ通信環境を整備できず、私たちが毎日当たり前に行っている「電話をかける」「テレビを視聴する」といったことはできなくなってしまいます。

電気通信工は現代社会において必要不可欠な存在であり、「自分の仕事が社会を支えている」という部分にやりがいを感じる人は多いでしょう。

このように社会性の高い仕事であるため、お客さまから無下にされるケースもほとんどありません。

「暑い中お疲れさま」「迅速に対応してくれてありがとう」など暖かい言葉をかけられることも多く、そういったお客さまからの感謝の声を仕事の励みとしている人もたくさんいます。

電気通信工のつらいこと、大変なこと

屋外の工事も多く、天候に関係なく仕事を進めなければならないこと

屋外の工事も多く、天候に関係なく仕事を進めなければならないこと

電気通信工に向いている人・適性

屋外での工事も問題なくこなせる体力・精神力のある人

電気通信工は屋外での工事も多いため、夏は猛暑にさらされ、冬は極寒の環境下で仕事をしなければいけません。

また回線の開通工事を担当する場合は一日で4件以上の現場を割り当てられることもあり、その場合は死に物狂いで工事を進めなければノルマを達成できません。

これらに耐えられるだけの体力と精神力を持っていなければ、この仕事を長く続けることは難しいでしょう。

工事内容によっては高所での作業を求められることもあり、高い場所が苦手でないことも大切な資質の一つです。

電気通信工志望動機・目指すきっかけ

機械を組み立てたり分解したりするのが好き

電気通信工を目指すきっかけとして多いのが、「もともと機械を組み立てたり分解したりするのが好きだった」というものです。

通信業界は技術革新のスピードがとくに速い業界であるため、機械の構造に興味のある人や、最新技術に触れながら仕事ができることに楽しさを感じられる人は電気通信工に向いているでしょう。

また 実際にLAN工事や携帯電話基地局工事などに携わる人たちを見て憧れを抱き、電気通信工を目指すようになった人もいます。

電気通信工の雇用形態・働き方

非正規雇用の求人も数多く見つかる

電気通信工は正社員のほかにも、契約社員や派遣社員、アルバイトの求人も数多く見つかります。

アルバイトの場合は時給ではなく日給で給与が支払われることも多く、その場合は実働8時間で日給1万円〜1万2,000円程度が相場となるでしょう。

正規雇用・非正規雇用に関係なく、業務未経験であっても問題なく採用されるケースがほとんどですが、特定の現場でスポット採用を行う場合は業務経験が求められることもあるため注意しましょう。

電気通信工の勤務時間・休日・生活

工事内容によっては土日に対応する場合も

電気通信工の勤務時間は就職先によっても異なりますが、8:00〜18:00前後の日中の時間帯で働くことが多いでしょう。

休日は週休二日制を採用している企業が多くみられますが、休みの曜日については工事現場・内容によって変わります

たとえば一般家庭で防犯カメラやインターホンの設置工事をする場合は、平日だけでなく土日の工事を希望するお客さまも少なくありません。

そのような要望にも対応できるように休日はシフト制としている企業もありますので、各求人内容をよくチェックしておくことが大切です。

電気通信工の求人・就職状況・需要

雇用形態を問わず多くの求人が出されている

大手転職サイトなどを使えば電気通信工の求人はたくさん見つけられます。

その背景には、IT技術の発展により情報通信設備が高度化し、それにともない電気通信工事に対する需要が高まっている点が挙げられます。

しかし需要の高まりに対して職人の数がまだまだ足りていないため、雇用形態を問わず多くの求人が出されている状況です。

体力が必要な向き・不向きの分かれる仕事ということもあり、全体的な倍率はそこまで高くありません。

電気通信工の転職状況・未経験採用

まったくの別業界から転職するケースも多い

電気通信工は中途採用も積極的に行われています。

多くの企業では未経験者の受け入れも行っているため、畑違いの業界からの転職であっても十分採用される可能性はあるでしょう。

年齢の間口も比較的広い傾向があり、なかには「40代・50代未経験者も歓迎」といった求人もあります。

なお未経験から採用された場合は、まずは現場で使う道具の名前や使い方を覚えるところから始まり、その後は先輩社員の補助作業をしながら仕事の流れを覚えていくという流れが一般的です。