「建設コンサルタント」とは

ダムや道路などを造る際に、事前調査や事業計画を作成してクライアントをサポートする。
建設コンサルタントは、建設業全般に関するアドバイザーとしての役割を果たします。
ダムや発電所、道路や橋などを造る際に、事前調査や事業計画の作成を行いながらクライアントを総合的にサポートするのが主な仕事です。
専門性の高い職業なので、一般的な事務職に比べると給料は高めの水準になっています。
厚生労働省の平成28年賃金構造基本統計調査によると、国家資格である「技術士」の平均年収は43.8歳でおよそ591万円です。
近年では地震の復旧工事や東京オリンピックに向けての建設事業などが急増しており、建設コンサルタントの需要が高い状況が続いています。
防災への取り組みや都市計画を支えるスペシャリストとして、これからの時代ますますの活躍が望まれることでしょう。
「建設コンサルタント」の仕事紹介
建設コンサルタントの仕事内容
大規模建築における調査や計画策定を担当する
建設コンサルタントは、おもにダムや発電所、防波堤などの大規模建築物を造る際に、建築主に対するアドバイザリー業務を行う職業です。
建物を設計する「建築士」や現場作業を行う「土木作業員」などとは異なり、実際に建築を手掛けるのではなく、クライアントを総合的にサポートすることが役割です。
具体的な仕事内容としては、建築物の規模や構造を計算して企画を立案したり、建設予定地における地盤調査や地質調査を行ったり、工期を計算してスケジュールを組むことなどが挙げられます。
土木や設計に関する専門知識はもちろん、研究者やマスコミ、建設予定地の住民など、さまざまな人たちの立場や考え方を理解できる広い視野が必要となる、難しい仕事です。
建設コンサルタントの就職先・活躍の場
就職先は登録部門を参考に選ぶとよい
建築コンサルタントの就職先としては、専門のコンサルタント会社をはじめ、研究所、シンクタンクなどがあります。
コンサルタント会社は国土交通省の「建設コンサルタント登録規定」に基づいた法人登録が義務付けられており、手掛ける業務によって21の部門に分かれています。
「道路」「鉄道」「トンネル」「電力土木」「造園」など、登録部門によって業務フィールドはさまざまですので、自身の希望する仕事を行っている会社を就職候補先にするとよいでしょう。
建設コンサルタントの1日
クライアントのスケジュールが優先
建築コンサルタントは、事務所内におけるデスクワークだけでなく、クライアントや建設現場へ足を運ぶ機会も多い職業です。
道路工事や橋、トンネルなどの公共工事を手掛ける場合、クライアントとなる行政担当者の予定を優先して1日の予定を組みます。
8:30 出社
メールチェック、案件ごとの打ち合わせなどを行います。
9:00 情報収集
事業計画策定に必要なデータを集め、分析します。
12:00 休憩
13:00 面談
クライアントである地方自治体の担当者を訪問し、事業計画について協議します。
15:00 現地視察
建設予定地を訪れ、現場調査を実施します。
18:00 帰社
建設コンサルタントになるには
基本的には専門知識や関連職種の経験が必要
建設コンサルタントとして働くには、コンサルタント企業の採用試験を受けることが必要です。
採用の対象となるのは、業務に関連性の高い知識を備えた理系学生が中心ですが、研修制度の充実している一部大手企業では、文系学生などでも選考にエントリーできるケースがあります。
また、設計事務所や測量事務所などに就職し、「建築士」や「測量士」、「土木施工管理技士」としての業務を経験した後に、建設コンサルタント事務所に転職するという道もあります。
建設コンサルタントの学校・学費
理系の大学や高専に進学すべき
建設コンサルタントは非常に専門性の高い仕事であるため、就職する前に大学や高等専門学校で必要な知識をある程度身につけておくことが求められます。
大学であれば、理学部・工学部で地質学や地理学、土木工学、建築学を、高等専門学校であれば、設計や土木、造園などを専攻するとよいでしょう。
いずれの学歴にも該当しない場合は、それぞれの企業が推奨する関連資格を取得するなど、独学である程度勉強しないと就職は難しいかもしれません。
建設コンサルタントの資格・試験の難易度
代表的な国家資格と民間資格がある
建設コンサルタント会社では、働きだした後も資格取得が奨励されるケースが多く、「技術士」と「RCCM」が代表的です。
「技術士」は国家試験に合格して登録した人に与えられる技術者の国家資格で、科学技術に関する専門応用能力が必要な計画や調査、研究や設計を行えることを証明するものです。
「RCCM」は一般社団法人である建設コンサルタンツ協会が認定する民間資格で、試験においては、建設事業の計画や調査、立案や助言に関する専門知識が問われます。
いずれも学歴に応じて一定の実務経験が必要となる難関資格ですが、取得できれば建設コンサルタントとして大きなキヤリアアップとなるでしょう。
建設コンサルタントの給料・年収
一般的サラリーマンよりもかなり高給
建設コンサルタントの平均年収は600万円~650万円となっており、専門性に見合った高い給与水準にあるといえます。
基本的には勤続年数に従って徐々に昇給していき、30代で500万円を超え、最大年収となる50代では750万円前後に達します。
ただし、企業や個人によって給与にはかなり差があり、「技術士」や「RCCM」の資格を取得して客観的にスキルを証明できれば、より高給を得やすいでしょう。
大手コンサルタント会社やゼネコンの管理職は、年収1000万円を超えることもあるようです。
建設コンサルタントのやりがい、楽しさ
人々の生活を支える公共性の高さ
建設コンサルタントは、官公庁や地方自治体を依頼主とした、ダムや防波堤建設のような大規模事業を手掛ける機会が多くあります。
地震や台風などの被害が多い日本にとって、災害から人々の暮らしを守る社会基盤整備事業は非常に重要です。
また河川や橋、道路工事のような小規模な事業も、豊かで便利な生活を作る上では欠かせないものです。
建設コンサルタントの仕事はいずれも社会的な貢献度が高く、大きなやりがいを持って仕事に取り組めるでしょう。
建設コンサルタントのつらいこと、大変なこと
スケジュールに追われやすい
建設コンサルタントの手掛ける案件は国や地方自治体からの依頼が多いため、予算や工期が厳密に定められていることが一般的です。
しかし、事業が大規模になれば、それだけ予期せぬトラブルやアクシデントが発生する頻度も高く、大幅な計画の変更を迫られるケースも珍しくありません。
このため、連日深夜まで残業し、休日返上で働いて遅れを挽回しなければならないときもあり、建設コンサルタントの仕事は激務になりがちです。
とくに震災や水害に伴う災害復旧工事では、地域の人々の生活を一刻も早く取り戻すため、タイトなスケジュールを求められるようです。
建設コンサルタントに向いている人・適性
論理的思考力と洞察力のある人
建設コンサルタントは、事前調査などによって計画の問題点を洗い出したり、構造上の欠陥を指摘してアドバイスすることが役割です。
建築や防災、都市計画などについての広範な知識が求められることはもちろん、ミスを見逃さない鋭い観察眼が必要になります。
大量のデータを論理的に読み解ける思考力と洞察力のある人が、建設コンサルタントに向いているでしょう。
これらの資質は、実験や研究において問われる能力と重複している部分があり、文系学生より理系学生のほうが活躍しやすい要因となっているかもしれません。
建設コンサルタント志望動機・目指すきっかけ
社会的意義の高さに魅力を覚える人が多い
建設コンサルタントを志望するのは、その仕事の公共性の高さに魅力を感じ、社会貢献したいという人が多いようです。
普段はあまり表に出る職業とはいえないかもしれませんが、地震や水害などの有事の際は、行政の復旧工事などで被災者のために尽力します。
そうした働きをメディアで目にしたり、あるいは被災者として助けられた経験が、建設コンサルタントを目指すきっかけとなった人もいます。
また、大学や高専で地学などを学んだ人が、専門知識を生かせる職業として選択するケースも珍しくありません。
建設コンサルタントの雇用形態・働き方
実社会に出てからも勉強し続ける
建設コンサルタントの働き方として、就職する前はもちろん、働きだした後もずっと勉強し続けなくてはならないという点が挙げられます。
技術者の継続教育の必要性は「CPD」という言葉で広く認知されており、自身が専門とする技術領域はもちろん、幅広い分野のスキルを習得することが奨励されています。
ときに長時間勤務が連続する激務のなかにあって勉強時間を確保することは容易ではありませんが、求められる社会的責任の重さを自覚し、最新の情報や技術の取得に励み続けることが必要です。
建設コンサルタントの勤務時間・休日・生活
状況次第では長時間残業や休日出勤も
建築コンサルタントの勤務時間は、勤め先によって異なりますが、おおむね9:00~18:00前後に設定されており、休日についても土日が休みの週休二日制となっているところが一般的です。
ただし、コンサルタントという職業全般に共通していることではありますが、クライアントから任された業務を確実にこなす必要があるため、定時になれば帰れるというわけではありません。
大規模な案件を抱えているときや、作業がうまく進捗しないときには、深夜残業や休日出勤をしなければならないケースもあります。
建設コンサルタントの求人・就職状況・需要
建設コンサルタント業界は活況
昨今、東日本大震災をはじめとする大地震や異常気象による水害など、全国各地で自然災害が相次いでおり、復旧工事関係の公共事業が増加しています。
これに伴って建設コンサルタントの需要も増えており、各企業は求人に対して非常に積極的で、多くの採用情報が見つけられるでしょう。
中長期的にみても、防災への取り組みや都市計画の事業を支えるスペシャリストである建設コンサルタントは、安定した需要が継続すると思われます。
建設コンサルタントの転職状況・未経験採用
関連業界での職務経験者は転職しやすい
建設コンサルタントの需要が高まっている一方、専門性を備えた人材数は限られているため、各企業は関連業界も含めて転職者を広く募集しています。
建設コンサルタント業務自体が未経験でも、設計事務所や建設会社、測量士事務所、シンクタンクなどで働いていた経験のある人は、転職することは困難ではないでしょう。
大手コンサルタント会社などではまったくの未経験者でも対象としているケースがありますが、人材の育成にはかなりの時間を要するため、できる限り若いうちに転職する必要があります。
建設コンサルタントの現状と将来性・今後の見通し
安定性はあるが、続けるには努力が必須
近年は公共事業数の増加に加えて、大規模建築物や都市開発案件も多く、建設コンサルタントの需要は非常に高水準で推移しています。
幅広い専門知識だけでなく、予算や工期を組み立てる計画性、依頼主の要望を引き出すコミュニケーション力など、多数のスキルが問われる難易度の高い職業ですが、安定性は十分にあるといえます。
ただ、常に最先端の知識・スキルを習得することが求められるため、建設コンサルタントとして活躍するには継続的な努力が必要不可欠です。