【2021年版】左官の仕事内容・なり方・年収・資格などを解説

「左官」とは

建築工事において、壁塗りやタイル貼り、レンガ積み、床仕上げなどを専門的とする職人。

左官とは、建築工事において鏝(こて)を用いた「塗り」の技術を駆使する職人のことです。

土、漆喰(しっくい)、珪藻土などを塗って壁を仕上げたりするほか、タイルを貼ったり、レンガやブロックを積んだりすることも仕事に含まれます。

左官になるために資格は不要ですが、一定の技能力を備えていることを示す国家技能検定があります。

左官は、1000年以上の歴史をもつ由緒ある職業であり、近代建築の現場でなくてはならない存在であると同時に、伝統技術の継承者の役割も担います。

また、近年では自然素材がもつ機能性の高さや、職人の手仕事による芸術性などが評価されていること、さらには洋式の近代建築でも左官の技術が取り入れられることが増え、左官の活躍の場が広がっています。

「左官」の仕事紹介

左官の仕事内容

塗りの技術を駆使して建物を仕上げる職人

左官とは、建築工事において、壁や床などの「塗り」を専門とする職人です。

おもに「鏝(こて)」という道具を駆使し、土や漆喰、珪藻土などを塗って壁を仕上げることや、砂とセメントを混ぜたモルタルを用いて床や壁を仕上げる作業を手掛けます。

また、内装にタイルを貼ったり、レンガやブロックを積んだりすることも仕事の一部です。

左官は、さまざまな工程が積み重なる建築工事のなかでも、見栄えに直結する「仕上げ」に関わる部分を担当することが多いのが特徴です。

このため技術力を高め、一つひとつ確実に、丁寧な作業をすることが求められます。

日本では長い歴史をもつ職人

左官の歴史は非常に古く、律令制が敷かれていた平安時代にさかのぼります。

以後、日本建築と深い関わりをもってきた職業で、その伝統と技術は脈々と受け継がれています。

基本的には、和室の土壁をはじめとする日本家屋を得意としますが、昨今では洋式の近代建築においても、左官の技術が取り入れられるケースが増えています。

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左官になるには

現場にはすぐ入れるが一人前になることは難しい

左官は、おもに内装工事会社や左官工事会社などで活躍しています。

左官になるために特別な資格は必要なく、また高い学歴が求められるわけでもありません。

「やりたい」という熱意さえあれば、誰でもすぐ左官見習いとして雇ってもらえる可能性があります。

ただし、他の職人と同じように、この仕事でも一人前になるまでには長い時間がかかります。

親方の下で修業を重ね、さまざまな現場を経験することで、少しずつ確かな技術を身につけていかなくてはなりません。

親方の考え方にもよりますが、一般的に、ひと通りのことができるようになるまでに最低3年、一人前とみなされるには10年ほどかかるといわれます。

現場に飛び込むのは簡単でも、モノになるまであきらめずに続けていけるかどうかはその人次第です。

左官のキャリアパス

建築業界全般で、高齢化と人手不足が大きな課題となっています。

左官も同様で、見習い志望者を歓迎する現場は少なくありません。

なお、左官は女性でも活躍できる職業ですが、体力が必要となる業務も含まれるため、その点はよく理解しておきましょう。

一人前になると、左官技能士などの資格取得に励む人もいますし、後輩を指導する立場にまわる人もいます。

一部の人は独立して親方となり、自身で工務店を経営します。

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左官の学校・学費

仕事で必要な技術は現場で身につけていくのが基本

左官業に携わるために学歴は必要ありませんが、学校で建築および左官の知識・技術を学ぶことはできます。

ひとつは社会人向けの公的な職業訓練施設で、ここでは基礎的な技能を学びます。

修了後には就職あっ旋の体制もあること、学費が安いことなど、上手に活用できれば役立つでしょう。

ただし職業訓練施設では基礎的な部分しか学ぶことができないため、本当の意味での技能は現場で学ぶことが最適です。

建築全般を幅広く学問としても学びたい場合は、大学や短大、専門学校の建築学や工芸学に関する学部・学科が候補に挙がります。

いずれの場合でも、現場に入ってからが本当のスタートと考えておく必要があります。

左官の資格・試験の難易度

左官の技術レベルを認定する「左官技能士」

左官として働くために、資格は必須ではありません。

ただ、左官職人としての技術レベルを認定するための技能検定試験に「左官技能士」があります。

これは、各都道府県の職業開発能力協会が実施する技能検定の一種です。

試験はレベルの高いほうから1級、2級、3級の3種類で行われ、1級と2級の受験には一定の実務経験が必要です。

1級合格者は、当該職種の職業訓練指導員免許を取得できるなどのメリットがあり、社会的地位の高い資格となっています。

こちらは実務経験者向けの資格であるため、左官として働き始めてから、キャリアアップのために取得を目指すのが一般的です。

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左官の給料・年収

技術力と経験が収入を左右する

厚生労働省の令和元年賃金構造基本統計調査によれば、左官の平均年収は、46.5歳で387万円となっています。

技術力や経験が問われる職人の世界であるため、実際には個人の実力によって収入に大きな差が出ます。

腕のよい左官は年収500万円~600万円以上を得ることも可能ですが、一人前になるまでの見習い期間は、同世代の一般的な会社員よりも稼げないことがほとんどです。

キャリアが浅い段階でアルバイトで働く場合は「日当」として給料が支給され、月給にすると20万円にとどかない場合もあります。

また、左官業を営む会社の大半は中小・零細企業のため、福利厚生はあまり充実していない可能性が高いと考えておいたほうがよいでしょう。

独立開業によって収入をアップさせる人も

左官は独立開業も可能ですが、その場合には職人としての技術に加え、提案力や経営力、他のスタッフを束ねるリーダーシップや育成力なども重要になってきます。

また、塗り壁を扱う左官の業務領域では個人のセンスも発揮できるため、他にはない魅力を打ち出せれば、評価される可能性が高まるかもしれません。

確かな技術を身につけ、事業を軌道にのせられれば、収入が大幅に上がることも期待できます。

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左官の現状と将来性・今後の見通し

多様化するニーズに応えられる左官が求められている

左官は、1000年以上昔の平安時代から続く由緒ある職業として、日本の建築業界を支え続けてきました。

しかし、現代では伝統的な和式の住宅よりも、洋式の住宅のほうがはるかに一般的となり、左官を取り巻く状況は変化しています。

一方、人々の「健康志向」「自然志向」が高まり、左官職人の「塗り」の技術を取り入れた洋風住宅のニーズが急激に拡大しているのも事実です。

漆喰(しっくい)や珪藻土、シラス(火山噴出物)、炭などの自然素材が活用される機会も増え、そうしたニーズに柔軟に対応できる左官は、活躍の機会が増しています。

また、現在は建築業界全体で職人の高齢化や人手不足が深刻となり、若い担い手の育成が緊急の課題となっています。

これから左官を目指す若者には追い風といえますが、左官の技術は一朝一夕には身につかないため、続けていくには強い覚悟や熱意が求められます。

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左官の就職先・活躍の場

左官工事を請け負う事業所で見習いからスタート

左官の主要な就職先は、左官工事を手掛ける会社です。

具体的には、左官業専門の工事会社やリフォーム会社、外構工事会社などが挙げられますが、いずれの場でも、技術を習得するまでの期間は何年もかかるとされています。

新人の左官は、親方や先輩とともに建築現場に入り、簡単な作業から経験しつつ、左官の技術を学びながら一人前を目指します。

師匠と弟子のような関係性となり、教えを乞うという立場や意識で業務にあたることが一般的です。

一人前になるには10年かかるとされる世界ですが、技術が十分に習得できたら、独立して工務店等を立ち上げ、経営者として活躍する人もいます。

左官の1日

1日のほぼすべてを現場で過ごす

左官は、朝早くから夕方までのほとんどの時間を、現地での実作業に費やします。

内装の仕上げ塗りやレンガを使った壁づくりなど、どの作業も根気や集中力が求められます。

準備や移動などで朝が早いうえ、納期が迫っていると夕方以降に作業することもあります。

左官は、建築関係の仕事のなかでは労働時間が長くなりがちです。

ここでは、住宅施工現場で働く左官のある1日を紹介します。

6:00 集合・点呼・移動
7:00 現場到着・作業準備
8:00 調合作業
10:00 小休憩
12:00 昼食・軽く昼寝
13:00 塗り作業
17:00 作業終了・後片付け・撤収
17:15 解散

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左官のやりがい、楽しさ

技術力を高めて、お客さまに満足してもらえる仕事をすること

左官のやりがいは、職人として、自分が習得した技術をそのまま発揮できることです。

「技術を身につけたものにしかできない仕事」という誇りがあり、きれいに仕上がったときの達成感は大きいです。

とくに人が利用する建築物は長い年月にわたって残り続けるため、自らの仕事の結果を、形として深く実感することができます。

左官の場合、塗った壁の仕上がりが「見た目」に直結するため、良し悪しを厳しく判断されやすいという苦労もありますが、よい仕事をすれば施主などから高い評価を得られます。

お客さまからのお褒めの言葉は、明日への活力になります。

自分自身でも、経験を積んでいくことで日々成長を感じられますし、技術を生かして長く働き続けられることに魅力を感じている人が多いです。

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左官のつらいこと、大変なこと

左官の業務は、現場によっては重労働となる場合があります。

現場の職人であるため一定の体力も要しますし、「塗り」の作業を続けるなかで、肩やひじの痛みに悩まされていく左官も多いです。

加えて、左官が作業をする新しい建物は電気や各種設備が通っていないことが多く、真夏にはサウナのような暑さのなかで、真冬には凍えるような寒さのなかで、長時間にわたって働き続けなければなりません。

さらに、左官は建築工事最後の「仕上げ」に携わるため、どうしてもスケジュールのしわ寄せを受けやすく、前の工程で遅れが生じていた場合、厳しい日程で作業を進める必要があります。

結果的に、残業時間や休日出勤が増えてしまいがちで、この点が左官の大変な一面です。

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左官に向いている人・適性

技術を貪欲に吸収する向上心が必要

左官の仕事に向いているのは、他の職人とも共通していますが、技術を習得するための努力を惜しまない人、向上心の強い人といえます。

技術を身につけることを優先して考えていけば、厳しい下積みの毎日も「成長のため」と耐えられますし、自ら積極的に学ぶ姿勢をもつことで、どんどん新しいことを吸収できます。

また、左官の仕事では、どれだけ仕上がりにこだわりを持てるかが、職人としての評価につながります。

妥協や手抜きをせず、細かなところまで突き詰めて作業できるような人は、左官の適性があります。

加えて、左官はコツコツと確かな技術を習得するのは大前提ですが、さらに飛躍するには個人のセンスや感性も大事になってきます。

美しいもの、芸術的なものにも興味がある人であれば、なおよいでしょう。

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左官志望動機・目指すきっかけ

左官の技術や伝統に興味を抱く人が多い

左官を目指すきっかけや志望動機は人によって異なります。

もともと建築現場で活躍する職人に興味があった人、生涯にわたり役立つ技術を身につけたい人、あるいは体力に自信があり体を使う仕事がしたい人など、さまざまです。

また、親や友人など近しい人が左官として働いていることや、前職が建築業であることなどがきっかけになることもあります。

あるいは、子どもの頃は大工になりたいと考えていた人が、左官の存在を知り、日本の伝統を伝える姿に魅了されて、この道を志すケースも少なくありません。

近年では、オリジナリティある塗り壁をつくる左官の仕事がメディアで注目されることも増えているため、そうした点で左官に興味をもつ人もいるようです。

左官の雇用形態・働き方

雇われる場合は正社員やアルバイトが中心

左官は、左官業を手掛ける会社の従業員として雇用されるケースが一般的です。

この場合の雇用形態は、正社員であったり、アルバイトだったりとさまざまです。

新人はアルバイトからのスタートになることもあり、この場合の給料は時給や日給が一般的です。

現場が入らない日は給料がもらえないなど、やや不安定な働き方となりますが、一人前とみなされて高い技術があると評価されれば、待遇もよくなります。

経験を積んだ左官は独立して、一人親方として仕事を請け負っていたり、自ら工務店を立ち上げて経営者として働く人もいます。

左官の勤務時間・休日・生活

建築現場では工期によって勤務時間が変わることも

左官の勤務時間は、通常は朝から夕方にかけてです。

8時頃から作業をスタートし、17時頃には作業を終えることが多くなっています。

ただし、年度末の繁忙期や、工期の遅れがある現場などでは残業となったり、休日に出勤して作業を行ったりすることもあります。

とくに左官工事の場合、騒音が発生しづらく近隣に迷惑をかけることが少ないため、夜間にも投光器を点けて屋内作業をすることがあります。

建設現場では、基本的に土曜日も動いており、日曜日は休みです。

しかしリフォームやアフターメンテナンスに携わる場合には、お客さまが休日しか在宅しないこともあるため、日曜日の作業をすることがあります。

左官の求人・就職状況・需要

若い人材は歓迎されやすいが、就職先選びは慎重に

左官を含む建設業界では、職人の高齢化と人手不足が深刻となっているため、求人数は多く、就職状況も悪くありません。

とくに、左官のような技術と経験が重視される職種では、長期的な視野で職人を育成する必要があり、若手人材の確保に力を入れる事業所が多いです。

あわせて、人々の健康志向や自然志向の高まりなどから、塗り壁などの自然素材による効果が見直されており、左官のニーズや需要が拡大傾向です。

左官志望の若者にとっては大きなチャンスがありますが、左官工事会社は零細企業や個人事業主が多く、大手企業のような安定した働き方ができない場合があります。

雇用条件までよく確認して、就職先を探すことをおすすめします。

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左官の転職状況・未経験採用

一人前になるまでに時間がかかることを理解しておく

人手不足が深刻化している建設の世界では、職人経験者はおおいに歓迎されます。

左官の仕事は初めてであっても、現場の職人として働いた経験があれば優遇されることが多いでしょう。

完全な未経験者であっても、熱意や根性があると認められれば、積極的に採用される可能性は十分にあります。

転職をして左官の世界に入ることだけを考えるのであれば、それほど難しくはありません。

しかし、他の職人と同じように、プロとしてのレベルに到達するまでは何年もの時間がかかります。

見習い時代は給料が低めで厳しい生活を強いられがちなため、転職をするなら、できるだけ若いうちに決意するに越したことはありません。

左官工事と塗装工事の違い

使う道具や塗る材料の種類に違いがあり、仕上がりも異なる

左官工事と塗装工事は、どちらも建設現場における「塗り」に関する工程です。

ただし、両者には使う道具や塗る材料に違いがあります。

左官の場合は、「こて」という道具を使って、土やモルタル、漆喰などの材料を壁に塗っていきます。

左官工事では、壁材をきれいに塗るだけでなく、職人の技術により立体的なデザインや印象的な質感を生み出しやすく、オリジナリティある表現もつくれます。

このため、外装だけでなく、内装の壁に左官工事が行われることが多いです。

一方、塗装工事では「ローラー」や「刷毛」を使って、液体の塗料を短時間で一気に塗っていきます。

基本的には屋根や外壁などを塗ることが多く、塗装することで建物を紫外線や傷、雨風などから守る役割を果たします。

現場では、塗る場所や目的、理想の仕上がり方などに応じて、左官工事と塗装工事を組み合わせて行っています。