大学職員は留学生にどんな支援をしている?
留学生支援をめぐる状況
日本の留学生支援方針
社会のグローバル化がいっそう進むと予想されるなか、国際交流・協力を推進するため、グローバルに活躍する人材の育成が重要となっています。
そのため、国は日本人学生の海外留学を支援すると同時に、外国人留学生を積極的に受け入れようとしています。
平成30年6月に閣議決定した「第3期教育振興基本計画」では、令和4年をメドに、大学等の日本の海外留学生数を8万4千人から12万人に増加させる方針が発表されました。
また、外国人留学生数を24万人から30万人に増やし、外国人留学生の日本での就職率を35%から50%に引き上げるという目標を掲げています。
この計画の実現に向けて、交換留学や協定校における現地研修・実習のための留学が重視されています。
大学間交流協定の数は、平成29年度には41,626件、平成30年度には44,814件、令和元年度には47,954件と、着実に増え続けています。
参考:海外の大学との大学間交流協定、海外における拠点に関する調査結果
大学における留学生支援事情
このように協定校留学が増える背景には、国の方針であること以外に、大学の経営上の課題もあります。
現在、大学を取り巻く大きな課題が「少子化」と「大学全入時代」です。
少子化によって18歳人口は年々減少しており、現在、定員割れを起こしている私立大学は約4割におよびます。
そこで、生き残りをかけて、何としてでも留学生を増やして学生数を維持したいという、大学側の思惑があります。
海外の大学と交換留学の協定を結べば、海外から留学生が入ってくれるうえに、日本人学生がその大学に留学することもでき、留学生増加という国の目標も満たせます。
20代で正社員への就職・転職
留学生を支援する取り組み
海外に留学する日本人学生を支援する取り組み
文部科学省は、留学意欲のある学生に対して、経済的負担の軽減措置を大学に求めています。
そこで、各大学では給付型もしくは無利子貸与型の「学内奨学金制度」や「宿泊費・滞在費等の支給」「留学期間中の学費の減免制度」などを用意しています。
また、支援策とあわせて、姉妹校締結や海外の大学と単位互換の取組等、大学の教育環境整備を進めることなども課題です。
これに対しては、学部ごとに留学単位互換用科目を定めたり、語学の必修科目との単位互換を認めたりといった措置が設けられています。
海外留学の盛んな大学では、留学相談専任の職員を配置したり、プロの留学カウンセラーを中途採用したりして支援を充実させています。
大学職員を目指す人は、勤務校にどのような留学形態があり、期間や費用、単位互換有無はどうなっているのかなどの情報をしっかり持っておくことが大切です。
海外からの留学生を支援する取り組み
外国人留学生が通常の開講科目を履修するには、日本語の理解力が不可欠です。
そこで、大学によっては外国人留学生向けに日本語講座などを特別に開講して、留学生の語学サポートを行っています。
また、夏期など交換留学生の多い期間には、英語だけで授業を行う科目を設け、交換留学生への便宜を図ると同時に、日本の学生にもその科目を履修させて留学準備に役立ててもらうなどの取り組みが始まっています。
外国人留学生が安心して学業に専念するためには、住居や学生生活全般におよぶ支援策も必要です。
外国人留学生に対し、日本人の学生が一人つき、授業や生活のサポートをする制度などをしっかり整えている大学も増えています。
日本人学生にとっても外国人留学生と密に交流し、国際感覚や語学などを習得することはよい経験となり、双方にとってのメリットがあります。
留学生に対する就職支援
海外に留学した日本人学生、日本で学んだ外国人留学生どちらにとっても、卒業時の就職支援は大学職員の重要な役割です。
留学時期の影響で、春の内定に間に合わない学生もいるため、大学のキャリアセンターではお盆明けから秋採用の支援活動が本格化します。
秋採用を実施している企業の情報収集をし、学生に公開することはもちろん、学内の合同説明会に企業を招くなど、企業とのパイプ作りも欠かせません。
個々の留学生が置かれている状況はさまざまであるため、帰国した学生に対するガイダンスを実施している大学や、滞在国からメールによる就職相談を受け付けている大学もあります。
外国人留学生に対する就職支援のメニューも増えてきており、外国人留学生対象就職ガイダンス、インターンシップ先の紹介、日本で就職した先輩留学生との交流会など、多岐にわたっています。
20代で正社員への就職・転職
留学生就職支援の課題
大学での就職支援はあくまでも、日本の雇用慣行や選考基準に沿ってスムーズに就職活動させることを前提にしています。
留学生がもっている専門的知識・技術が生かせるような、高度人材マッチングまでは、十分に対応できていないのが現状です。
ただし、産業界では外国人留学生および外国に留学経験がある日本人学生を「グローバル人材」と呼び、優秀な人材の獲得を目指す動きがあります。
大企業のみならず、国内では知名度が低い企業や中小規模の企業であっても、独自の技術を強みとして海外進出が盛んになり、対象国の事情に詳しい人材を求めています。
大々的な求人が行われておらず、要件を満たす学生も少ないとなると、通常の就職支援とは異なる手法を開発しなければなりません。
日本で学んだ優秀な留学生が、日本で就職しその知識や経験を還元してくれるとよいのですが、自国に帰ってしまったり、よその国の企業に就職したりといったことはもったいないことです。
留学生に対する就職支援は、まだまだ開発途上にあるため、そこでも大学職員の新しいアイデアや実行力が求められています。