地方公務員になるには? 【進路選びから公務員試験対策まで完全ガイド】

地方公務員になるには、地方公務員試験に合格する必要があります。

受験資格は問われない職種が多く、地方公務員になるルートはかなり幅広いです。

この記事では地方公務員になる方法、地方公務員を目指す人が知っておきたい情報を網羅してまとめています。

地方公務員になるには【地方公務員試験に合格する必要あり】


地方公務員になる方法を一言でいうと、「地方公務員試験を受けて、採用されること」

ただし、地方公務員試験の条件は目指す職種や自治体によって異なります。

この章では、地方公務員になる方法を紹介します。

地方公務員のなり方の流れ【地方公務員試験に合格する必要あり】

地方公務員になるには フロー

地方公務員になる流れは上の図の通りです。特別な資格がなくとも地方公務員試験を受けることができるので、様々なルートがあります。

地方公務員試験は、都道府県や政令市、市町村といった地方自治体が独自に行っているため、試験内容や受験資格は自治体によって異なります。

自治体によっては4次試験まで行われるなど、狭き門の場合も。

多くの地方公務員試験では以下のようにレベルがわかれています。

求められる学力 年齢 役割
地方上級公務員 大卒程度 21~28歳程度 幹部候補
地方中級公務員 高校・専門学校・短大卒程度 19~25歳程度 中堅候補
地方初級公務員 高卒程度 17~22歳程度 一般職

東京都の場合は「Ⅰ類」「Ⅱ類」「Ⅲ類」となります。

なお、この分類は基本的に試験の難易度の目安を示すものであり、学歴要件ではありません。

高卒から大学院を修了した人まで、あらゆる人に受験のチャンスがあるといえます。

ただし、自治体によっては初級を受験できるのは高卒者のみといったように制限をかけているところもあるため、詳しくは受験要項を確認してください。

地方公務員ってそもそも何?国家公務員とは何が違う?

地方公務員と国家公務員
  • 地方公務員:都道府県や市区町村など地方自治体に勤務。地域密着の行政サービスを行う
  • 国家公務員:省庁などに勤務し、国全体にかかわる業務を行う

人事院によると、国内の公務員は332万人でそのうち国家公務員は58万人、地方公務員は274万人です。

地方公務員は国家公務員よりも地域住民の生活に近い仕事を行います。

例えば、以下の仕事も地方公務員の仕事です。

✅ 地方公務員の例

  • 警察官
  • 消防官
  • 図書館の司書
  • 公立学校の教員
  • ゴミ収集作業員

地方公務員は県庁や市役所など役所で働いているイメージを持つ人も多いですが、勤務先は職種によって様々です。

地方公務員になるには資格が必要?

一般的には資格不要で地方公務員試験を受けられますが、一部、資格が必要な職種もあります。

地方公務員の職種
  • 事務職・技術職:学歴や年齢制限などの応募資格を満たしていればOK
  • 専門職(資格免許職):専門の資格が必要な職種

役所などで働く事務職や技術職では、学歴や年齢制限などの応募資格を満たしていれば、誰でも地方公務員試験を受けることが可能です。

また、警察や消防などで働く公安職を受験する場合も、受験時点で特別な資格は求められません。

一方、資格が必要になるのが、「資格免許職」「専門職」といわれる種類の試験を受ける場合です。

たとえば、公共の機関で働く以下のような職種を目指す人は専門の資格や免許が求められます。

✅ 地方公務員で資格が必要な例

また、心理、福祉、衛生監視などの専門職を目指す場合にも、特定の資格・免許が求められることがあります。

これらの職種では、必要な資格・免許を持ったうえで、自治体が実施する地方公務員の採用試験を受けて合格を目指し、採用される必要があります。

地方公務員採用試験の難易度・倍率

地方公務員は高卒からも目指せる?

地方公務員試験には、試験の難易度や学歴、年齢別などでいくつもの種類の試験が行われており、高卒からも目指すことが可能です。

事務職の試験のほか、専門職や技術職でも高卒程度の難易度の試験が実施されています。

ただし、各試験で年齢制限が設けられている場合がありますので、高校を卒業してから時間が経っている場合には注意が必要です。

また、大卒者向けの試験では、高卒者向けの試験よりも募集される職種が広いなどの違いがあります。

将来、地方公務員としてやりたい仕事が固まっている場合には、どの学校へ進学するのがベストかしっかりと調べてみることをおすすめします。

地方公務員になるには年齢制限がある?

地方公務員を目指せる年齢は、自治体や試験の種類によって異なります。

事務などを担当する行政職であれば、30歳前後を年齢の上限としている場合が多いですが、35歳くらいまで受験できる自治体も存在します。

年齢制限は時代の流れとともに緩和される傾向にあり、まれにではありますが、年齢制限を設けていない試験が行われることもあります。

とくに最近は地方公共団体において、社会人経験があり、即戦力として活躍できる人材がますます求められるようになっており、社会人経験者向けの試験が行われる機会も増えています。

民間企業で働いていた人にもチャンスが広がっているといえるでしょう。大学卒業後に民間企業で数年ほど働いてから、地方公務員への転職を目指す人もいます。

地方公務員になりたい!有利な学部はある?【学校の選び方】


地方公務員を目指したい人が有利になる学部や専門学校はあるのでしょうか。

結論から言えば、どの大学や学部に行ったから採用されやすいということはありません。

地方公務員はどの大学・学部からも目指せる

地方公務員を目指すには、大学などの学部・学科や専攻にも制限はありません。

文系・理系どちらの人にも適した区分で試験が実施されています。

上級地方公務員試験で問われる内容は、政治・経済・法律などが中心なのであえていえば、以下のような学部に進学すると対策が進めやすいでしょう。

✅ 地方公務員試験の対策がしやすい学部

専門職に就きたければ資格取得ができる学部を選ぶ

看護師や管理栄養士、学校の教員といった資格免許職・専門職に就きたい場合は、それぞれの資格・免許を取得するための養成課程のある学校で学ぶことが近道となります。

「地方公務員としてこの職種で働きたい」と決まっている人は高校卒業後はまず資格取得を目指しましょう。

地方公務員になるための学校と学費(大学学部・専門学校)

地方公務員試験の難易度は?勉強の方法は?


地方公務員試験の内容や難易度、勉強の方法について紹介します。

地方公務員試験の内容

地方公務員試験は自治体によって内容が異なりますが、おおむね以下の流れです。

地方公務員試験
  1. 一次試験:教養科目と専門科目の筆記試験
  2. 二次試験:面接。一次試験合格者のみ

一次試験の教養科目と専門科目では、幅広い分野にわたって出題されます。

レベル 内容
教養科目 高校卒業レベル 文章理解(現代文・英語ほか)、数的処理(判断推理ほか)、社会科学(政治、経済、時事ほか)、自然科学(数学・物理・化学ほか)、人文科学(日本史・世界史・地理・文学ほか)
専門科目 大学卒業レベル 行政(政治学・行政学ほか)、法律(憲法・行政法・民法ほか)、経済(ミクロ経済学・マクロ経済学・財政学)

近年では二次試験の面接に重点を置く「人物重視」の採用を行う自治体が多くなっています。

地方公務員の志望動機と例文・面接で気をつけるべきことは?

地方公務員試験の難易度と倍率

地方公務員試験は自治体によって内容も倍率も異なるので、難易度を一概に述べることはできません。

試験の内容自体の難易度が高くても、倍率が低ければ合格点が下がることもあります。

例年の傾向としては、東京・大阪・名古屋といった都市圏の地方公務員は人気があり、倍率が高いです。

また、職種によって倍率に大きな差があります。

東京都を例に見てみましょう。

✅ 令和2年度東京都度職員採用試験

試験区分 最終合格者数 倍率
Ⅰ類A採用試験 事務 79 8.1
土木 31 1.9
建築 17 2
機械 20 2.2
電気 15 3.1
Ⅰ類B採用試験 行政(一般方式) 352 4.6
心理 22 3.1
福祉A 22 2.2
衛生監視 12 4.2
栄養士 15 8.4
薬剤A 10 1.8
薬剤B 6 7.3

年度によって募集人数が変動し、倍率も変わってきます。

参考:東京都職員採用

地方公務員試験の勉強の方法【独学も可能】

地方公務員試験の勉強方法は大きく分けて以下の方法があります。

✅ 地方公務員試験の勉強の方法

  • 専門の予備校に通う
  • 通信教材を使用する
  • 独学

専門の予備校に通うと30~50万円ほどの学費がかかりますが、合格のためのカリキュラムがしっかり組まれていて、同じ志を持つ人が集まるのでモチベーションを保ちやすいでしょう・

自分のペースで学習を進めたい人は通信教材がおすすめです。

書店には公務員試験の参考書がたくさん並んでおり、独学で合格することも可能です。

学習内容を自分で決められる人は、独学が最も金銭負担が少なく公務員を目指せます。

地方公務員になるための学校と学費(大学学部・専門学校)

地方公務員を目指す人が知っておきたい4つのこと


地方公務員を目指す方向けに以下の3つの情報をまとめました。

  • 地方公務員の年収
  • 地方公務員の将来性
  • 地方公務員の中途入社事情
  • 地方公務員になった後のキャリア

地方公務員の給料は?【平均年収は約630万円】

地方公務員の平均月給
  • 都道府県:41万円
  • 指定都市:44万円
  • 市:40万円
  • 町村:36万円
  • 特別区:43万円

総務省「平成31年 地方公務員給与実態調査結果等の概要」より作成

上記は月給で、さらにボーナスが年間100~200万円支給されます。

したがって、地方公務員の平均年収は630万円前後といえます。

なお、地方公務員の給料は自治体が決めますから、規模の大きい都市部と村・島では同じ地方公務員といっても給料に大きな差が出ます。

地方公務員の給料・年収

地方公務員の将来性は?

地方公務員は基本的にリストラがなく、景気に左右されにくい安定した職業です。

今後も、その地域に住む人がいる限りなくなることはない仕事です。

ただし、少子高齢化、地方の人口流出、それに伴う税収の減少、関東都市部への人口の一極集中など、地方自治体は問題を多く抱えています。

最近では、テレワークの浸透によって地方移住を検討する人が増えており、地方自治体にはチャンスです。

緑が多く暮らしやすい、子育てがしやすいといった地域の魅力をアピールすることで若者の定住を増やしている地方自治体もあります。

地方公務員は地域の活性化をができる施策を期待されるでしょう。

社会人から地方公務員に転職できる?

近年、地方公務員は即戦力となる社会人の採用を増やす傾向にあります。

また、一般の地方公務員試験には30歳前後までと年齢制限がありますが、社会人採用においては59歳までとする自治体が多く、実質の年齢制限はありません。

一次試験では教養の筆記試験や論文、二次試験では面接、という流れの自治体が多いです。

「就職氷河期世代採用」など門戸を広くしている自治体もあります。

民間での経験を生かして、地域に貢献したいという人は、チャレンジしてみると良いでしょう。

地方公務員になった後のキャリアは?

地方公務員として自治体に採用されると、社会人としてのしかるべき教育・研修を受け、配属先で先輩に業務を教わりながらステップアップしていくことになります。

数年ごと(3~4年程度が一般的)に異動があるため、さまざまな部署を経験し、幅広い知識・スキルを身につけていくことになります。

地方公務員には階級が定められており、役職も細かく分かれています。

入庁して数年程度の新人時代は定型的な業務を任されるのが一般的ですが、何年か経つと、年齢や能力、成果などに応じて次第に出世のスピードに差が出てきます。

ある段階まで昇格すると、それ以上の出世は昇格試験を受けて合格しなくてはならないなどの条件が出てくる場合が多いです。

日々の仕事や試験でしっかりと成果を出していけば、比較的若い段階で管理職に就くことも可能です。

地方公務員に向いている人の特徴3つ


地方公務員に向いている人の特徴は次の3つです。

地方公務員に向いている人の特徴
  • 社会や人の役に立ちたい人
  • 地域住民に寄り添う仕事がしたい人
  • 新しい環境を嫌がらない人

社会や人の役に立ちたい人

地方公務員は、法律で「全体の奉仕者」と定義されており、いつでも公共のために働くことが求められます。

そのため、正義感や責任感にあふれ、世の中や人の役に立ちたいという気持ちが強い人は、地方公務員に向いているといえます。

公正・公平を重視して動けるようなタイプの人も、地方公務員の適性があるでしょう。

地域住民に寄り添う仕事がしたい人

地方公務員は、公務員のなかでも各自治体において「地域密着型」の仕事をしています。

そこでは、「住民が何を求め、何を不安・不満に思っているのか」といった生の声を拾い上げて、行政の活動に生かしていく必要があります。

自治体によって抱える課題やニーズはさまざまですが、地域のために力を尽くしていける人は、地方公務員に向いています。

新しい環境を嫌がらない人

地方公務員の多くは、3年程度でさまざまな職場を異動します。

異動によって職場環境はガラリと変わり、新しいこともたくさん覚えなくてはなりません。

地方公務員の仕事はじつに幅広いものとなっているため、ときには希望とはまったく異なる部署に配属されることもあるかもしれません。

そんなときでも、変化を「成長のチャンス」と前向きに捉え、いつでも素直に目の前の物事を吸収していける人が望まれます。

地方公務員に向いている人・適性・必要なスキル

地方公務員になるには|まとめ

地方公務員になるには、地方公務員試験に合格して採用される必要があります。

地方公務員試験の受験資格は、高卒から大学院卒まで幅広いため誰にでもチャンスがある就職先です。

専門職と呼ばれる資格が必要な職種の募集もあります。

近年では、社会人採用を増やしている自治体も多いので、民間企業から地方公務員に転職することも可能です。