「消防士」とは

地方自治体の消防本部や消防署に所属し、火災の消火や救急活動を行って住民の安全を守る。
消防士(消防官)は、地方自治体の消防本部や消防署に所属し、火災の消化や救急によって、人々の安全を守る仕事です。
消防士は「消火」、「救助」、「救急」、「防災」、「予防」の5つの活動が主な任務となります。
消防官になるためには、消防士採用試験に合格することが必要です。
採用は各自治体ごとに行われるので、自分が受験する地域の採用試験について確認する必要があります。
地域によって異なりますが、採用倍率はおおむね10倍以上です。
試験は、学力試験だけでなく、体力検査も行われます。
勤務体系は、24時間勤務→非番日→週休日というように、交代制となります。
火事や災害の際には、危険な中に飛び込まなければならない仕事ですが、その分福利厚生は充実しています。
「消防士」の仕事紹介
消防士の仕事内容
災害現場で消火活動や人命救助にあたる
消防士は、火災の消火活動や救急活動によって、人々の安全を守る仕事です。
消防士というと消火活動のイメージが強いかもしれませんが、任務は大きく「消火」「救命」「救急」「防災」「予防」の5つに分けられ、消火活動以外にもさまざまな業務を行っています。
5つのなかで最も活動頻度が高いのは、消火活動ではなく救急活動で、出動回数は消火活動の数十倍にのぼります。
救急活動では、事故などが発生した際に「救急救命士」と共に救急車に乗り、けが人や急病人に対する応急手当と、医療機関への搬送を行うことが役割です。
また、山や河川などでの事故や交通事故などの現場において、災害に巻き込まれた人々の救助をすることもあります。
このほか、火災を起こさないための啓蒙活動や、建物や設備の耐火性・安全性を確認する検査業務なども担っています。
消防士の就職先・活躍の場
キャリアによっておもな活躍の場は変わる
消防士の勤務先は、各地方自治体が運営する消防本部や消防署です。
若手のうちはおもに消防署に勤め、火災や事故などの災害現場で消火活動や救急活動にあたります。
また、災害現場や消防署以外でも、学校などで消火器の使用方法や応急手当の方法を指導したり、オフィスや商業施設でスプリンクラーやシャッターなどの防火設備の検査をすることもあります。
しかし、ある程度のキャリアを積んで相応の役職に就き、一方で体力が衰えてくると、消防本部などでデスクワークを担うことが多くなり、やがて現場に出る機会はなくなります。
消防士の1日
出勤日は24時間勤務が基本となる
消防士の勤務体系は地方自治体によって多少の差があります。
ただし、消防署ではいつ何時発生するかわからない119番通報につねに備えており、複数の消防士が24時間ごとに交代しながら働くケースが一般的です。
<消防士に勤務する消防士の1日>
8:30 出勤・前日の当直者から引き継ぎ
9:00 出動に備え、車両の点検や装備の確認
12:00 休憩
13:00 放水・救急・救助などについて部隊単位での訓練
19:00 空いた時間を使って勉強会
23:00 深夜でも迅速に出動できるよう、制服を着用して仮眠
6:30 ミーティングで引き継ぎ事項を確認
8:30 翌日の当直者へ申し送り・勤務終了
消防士になるには
いずれかの自治体の試験を受ける
消防士になるには、各自治体が実施する消防士採用試験を受けて合格する必要があります。
地方自治体によって試験区分はさまざまですが、東京消防庁を例に挙げると、大卒程度のⅠ類、短大卒程度のⅡ類、高卒程度のⅢ類、専門系のⅣ類に分けて試験が実施されます。
採用試験に合格した後は、いずれの区分であっても、全寮制の消防学校に入学して、消防士に必要な基礎的知識や機材の取り扱い方法などを学びます。
半年間の研修を修了すると、各自治体の消防署へ配属され、消防士として働くことになります。
消防士の学校・学費
専門系以外は学歴不問
消防士採用試験には、大卒程度や高卒程度など、いくつかの区分がありますが、それらは筆記試験で問われる難易度を表したものにすぎず、学歴要件ではありません。
このため、基本的に学歴は不問であり、たとえば高卒者が大卒程度試験を受けることも可能です。
ただし、例外的に専門系の区分だけは大卒の学歴が必要で、法律、建築、電気、電子などの専門知識を持った人が対象となります。
どの区分を受けて消防士になったかによって、初任給や階級が昇進するスピードには違いがありますので、どの区分を受験するのか、希望するキャリアと合わせて考えてみるとよいでしょう。
消防士の資格・試験の難易度
どの地方自治体でも競争は激しい
消防士採用試験の採用倍率は、地方自治体や区分、年度によってかなり差がありますが、消防士は人気の高い職業であり、10倍を超える厳しい競争となるケースが多いようです。
基本的に合格ラインが定められているわけではなく、成績上位者から順番に採用となりますので、筆記試験・体力試験ともに、できる限り優秀な成績を収めることが求められます。
また、同じく消防署で働く救急救命士になるためには、消防士採用試験とは別に、救急救命士の国家資格試験を受けることが必要です。
消防士の給料・年収
高い給与水準に加え、補償制度も整っている
消防士の給料は、職務の危険性や特殊な勤務体系が加味された「公安職俸給表(一)」が適用され、一般の公務員よりも12%程度高い金額が支給されます。
地方自治体や階級などによって差がありますが、危険な業務に従事する際の各種手当が充実しており、30代の平均年収は600万円前後、40代で700万円前後となっているようです。
また、業務上怪我することはある程度避けられませんが、入院などで働けない期間には「療養補償」や「休業補償」が、障害を負ったり殉職した場合には「障害補償」や「遺族補償」が受けられます。
消防士のやりがい、楽しさ
地域や人の役に立てる
消防士は、実際の現場における災害救助活動はもちろん、常日頃からの防災訓練や啓蒙活動などによって、地域社会の安全強化のために役に立てる職業です。
直接的・間接的に、さまざまな面から人助けができる消防士の仕事は、とくに「誰かの役に立ちたい」という人にとっては、大きなやりがいに満ちているといえます。
感謝の言葉をもらったり、感謝状を贈られたりする機会も珍しくなく、世のため人のために働いているという確かな手ごたえが得られやすいでしょう。
消防士のつらいこと、大変なこと
求められる身体能力の高さ
消防士が消火活動の際に着用する防火服や酸素ボンベなどの装備は、合計で20キロを超える重量があり、ただ動くだけでも大きな体力を消費します。
また、火災現場の温度は1000度を超す場合も珍しくなく、そうした過酷な環境下において、救助活動などの難しい任務をこなさなければならない消防士は、並大抵の体力では務まりません。
このため、消防士には、常日頃から厳しいトレーニングを積んで、強靭な体力と技術を身につけておくことが必要です。
消防士に向いている人・適性
体だけでなく心も強い人
災害現場で救助活動を行う際には、台風で水かさを増した濁流に飛び込んだり、地滑りの危険が伴う山に入っていったりと、己の勇気と判断力を問われる場面が多々あります。
そうした災害現場や火災現場などで活動したときに判断を誤り、自分自身が危険な目に遭遇すると、トラウマを抱えて働けなくなってしまう消防士もいるようです。
厳しい現場で働く消防士には、屈強な体力に加えて、どんな難しい局面においても自分を見失わない、強いメンタルを持った人が向いているでしょう。
消防士志望動機・目指すきっかけ
消防士の活躍を目にしたことがきっかけ
消防士を志望する動機はさまざまですが、多くの人の根底には幼少時からの消防士への憧れがあるようです。
ドキュメンタリーや報道番組などで、ときに自分の身を危険にさらしながらも懸命に消火活動や人命救助に当たる姿を見て、自身も消防士として活躍したいと思う人は少なくありません。
ただ、採用試験で実施される面接においては、単なる憧れだけで目指しているのではなく、消防士という仕事の実務内容や過酷さも理解していることを、面接官に示す必要があるでしょう。
消防士の雇用形態・働き方
少数だが女性の消防士も活躍している
消防士は屈強な体力が求められる職業であるため、そのほとんどは男性ですが、近年では男女平等が重視される風潮もあって、女性の消防士が徐々に増えつつあります。
採用試験についても、かつてはほとんどの地方自治体で男女が同じ枠のなかで競争していましたが、男女別々の採用枠を設けているところも散見されます。
女性で消防士を目指すなら、さまざまな地方自治体の募集情報を広くあたり、女性採用枠のあるところを受けてみるのも有効かもしれません。
消防士の勤務時間・休日・生活
当番と非番を繰り返す
消防士は、基本的には24時間勤務の当番と非番を交互に繰り返す勤務体系になります。
ただ、地方自治体によって多少の差があり、「当番→非番→休み」というローテーションを繰り返すところもあれば、8:30~17:30程度の日勤を間に挟むところもあります。
また、デスクワークなどを担当する場合は、当番を行わず、日勤のみを毎日行うケースもあります。
しかし、非番の日や休日、あるいは早朝や深夜などの時間帯であっても、災害発生時などに緊急の呼び出しがかかるケースは珍しくないようです。
消防士の求人・就職状況・需要
自治体によってかなり差が激しい
消防士の求人数は地方自治体の規模によってかなり差があります。
政令指定都市クラスの自治体では、おおむね100名単位で採用を実施しており、東京消防庁では全区分合計で600人前後の求人を行っています。
一方、地方都市では各区分10名に満たない採用枠のところも多く、年度によっては地方のほうが都市部より採用倍率が高くなるケースもあるようです。
日程さえ重複しなければ複数の自治体を併願することも可能ですので、勤務地などにこだわらず、選択肢に幅を持たせることも必要かもしれません。
消防士の転職状況・未経験採用
諸々の条件をクリアしていれば受験は可能
消防士採用試験には、各自治体や区分ごとに年齢制限が定められており、たとえば東京消防庁では30歳未満であることが条件ですが、26歳未満やそれ以下としているところもあります。
年齢のほかにも、身長や体重、視力、聴力、肺活量などの基準がありますが、それらをクリアしていれば、社会人などから消防士採用試験を受けて消防士になることも可能です。
年齢を重ねるほど受験できる自治体はどんどん限られてきますので、体力面を考えても、できる限り早いうちに試験を受けることが望ましいでしょう。
消防士の現状と将来性・今後の見通し
消防士の必要性は変わらない
鉄筋コンクリート造の建物が増え、燃えやすい木造家屋が減少しているにもかかわらず、相次ぐ地震や異常気象による災害などで、消防士の出動回数は依然として高止まりしています。
景気や時代に影響されることなく常に必要とされる仕事であり、また公務員という保証された身分であるため、消防士の安定性は将来的にも変わることはありません。
人の命を助ける尊い仕事であり、安定性に加えてやりがいも社会的意義もありますが、業務がはらんでいる危険性や過酷さについては、あらかじめ十分に理解しておく必要があるでしょう。