入国審査官の仕事内容・なり方・年収・資格などを解説

「入国審査官」とは

入国審査官の仕事内容・なり方・年収・資格などを解説

空港や港の地方入国管理局などに勤務し、日本に出入国する外国人の審査と管理を行う。

入国審査官とは、日本各地にある空港や港において、日本へ入国する人の審査や日本にいる外国人の管理をし、国の安全を守る仕事をします。

具体的な業務としては、日本に訪れる外国人の入国の可否を決定する「出入国の審査」、不法入国や不法滞在者を取り締まる「違反審査」、在留期間の変更を審査する「在留資格審査」などがあります。

外国から日本へ、禁止されている薬物や武器などが持ち込まれないかや犯罪者が入ってこないかないか、あるいは定められた在留期間を超えて不法滞在をしていないかなどを厳しくチェックします。

入国審査官は法務省に所属する国家公務員であり、なるには国家公務員採用試験に合格したうえで、各地方の出入国在留管理局によって法務事務官として採用され、経験年数を重ねる必要があります。

外国人とコミュニケーションをとる機会が多いため、働く際には語学力が求められます。

「入国審査官」の仕事紹介

入国審査官の仕事内容

出入国する人を管理し、国内の治安を守る

入国審査官は、おもに空港や港などにある地方入国管理局や出張所に勤務します。

そのような場で、日本に出入国する外国人や、出帰国する日本人の審査・管理を行います。

入国時に、パスポートやビザ、入国目的、滞在日数などを確認する「入国審査」を行うことがおもな業務で、不法入国や犯罪者の入国、拳銃や麻薬の密輸などを事前に防ぎます。

また、入国後の外国人について、不法入国が発覚したり、滞在期間が許可日数を超過していた場合などは、入国警備官と共に容疑者を取り調べる「違反審査」を行います。

そのほか、日本に滞在する外国人に対して、在留できる期間を定めたり、滞在延長や滞在目的変更の申請があった際にそれらの審査を行うことも、入国審査官の仕事の一つです。

入国警備官との違い

入国審査官と関連する職業に「入国警備官」というものがあります。

入国警備官も国家公務員であることは同じです。

ただ、入国審査官が、これから日本へ入国しようとする外国人を対象とするのに対し、入国警備官は、すでに日本への不法入国や不法滞在の疑いがある外国人を調査し、必要に応じて摘発を行います。

さらにわかりやすくいうと、入国審査官は日本への入国に問題がないか審査する役割を担い、入国警備官は外国人専門の警察官のような役割を担います。

どちらもグローバル化が進むなかで、日本の安全を維持するために非常に重要な業務に携わっています。

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入国審査官になるには

国家公務員試験を受けることが第一歩

国家公務員である入国審査官として働くには、いくつかのステップを踏む必要があります。

まずは高校や短大、大学などへの進学後に「国家公務員採用試験(一般職・総合職)」を受け、合格する必要があります。

この試験に合格後、各地方の出入国在留管理局による面接を受けて採用されると「法務事務官」として働けます。

この時点ではまだ入国審査官ではありませんが、そのまま総務や会計といった多様な業務を数年間経験すると、ようやく入国審査官へのキャリアが開けます。

幅広い学歴の人が入国審査官を目指せる

入国審査官を目指す人が受験する国家公務員採用試験にはいくつかの種類があり、高卒向けの「一般職試験(高卒者試験)」も存在します。

したがって、高卒からでも、また学校の偏差値なども関係なく、採用試験にさえ合格すれば誰でも入国審査官を目指せます。

ただ、年齢については総合職試験も一般職試験も「30歳未満」という制限があるため(ただし一般職試験の社会人試験は40歳未満まで受験可能)、その点は気をつけておきましょう。

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入国審査官の学校・学費

受験する試験区分に応じた学歴が必要

入国審査官を目指す人が受験する国家公務員一般職採用試験は「大卒程度」と「高卒程度」、また、国家公務員総合職採用試験は「院卒者」と「大卒程度」の各区分で試験が実施されます。

受験にあたっては、各区分に応じた学歴を有することが条件になりますが、学部・学科や専攻などはとくに問われません。

ただ、大卒程度試験では、法律や政治、行政、経済、国際社会などに関する問題が出題されるため、法学部や政治経済学部などで学んでおくと、試験勉強の際に理解が早いかもしれません。

また入国審査官は語学力が求められる職業であることから、外国語系の学部でしっかりと学んでおくと、採用後に役立つこともあるでしょう。

なお、国家公務員試験は非常に競争率の高く狭き門であるため、大学などとは別で、公務員試験対策講座のある予備校・スクールに通う人もいます。

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入国審査官の資格・試験の難易度

難関の試験で採用倍率は高くなりがち

国家公務員採用試験は、非常に倍率が高くなっています。

一般職試験の合格倍率は、大卒程度で4倍前後、高卒程度で6倍前後であり、一時期に比べれば倍率はやや低くなっているものの、いまだ難関であることに変わりはありません。

また、試験に合格しても、その後の入国管理局での面接などで不採用となるケースもあるため、入国審査官となるための実質的な倍率はさらに高くなります。

ちなみに総合職試験の受験者に関しては、例年、そこから入国管理局に採用される人数は5名前後ときわめて少ないことが特徴です。

非常に厳しい競争を勝ち抜かなくてはならないでしょう。

入国審査官の給料・年収

経験や勤務年数が上がると昇給する

入国審査官の給料は「国家公務員行政職俸給表(一)」の内容が適用されます。

この俸給表は、「級(役職)」と「号俸(勤務年数、能力など)」の組み合わせで決定するため、基本的に長く働いて昇進すれば確実に収入はアップします。

「法務事務官」として採用される1年目は年収300円~400万円ほどとされますが、入国審査官全体の平均年収は600万円~700万円前後となるでしょう。

また、上級入国審査官、統括審査官、主席審査官、係長などの幹部職へ昇進すると、より収入は上がり、年収1000万円以上を得ることも可能です。

国家公務員としての手厚い福利厚生も

入国審査官には、他の国家公務員と同じように、手厚い福利厚生が適用されます。

住居手当、家族手当、地域手当などの各種手当のほか、休暇制度も充実しています。

さらに、全国に用意されている公務員専用の宿舎を利用できたり、国家公務員の共済組合制度や退職金制度もあり、長く安定的に働ける基盤は整っているといえます。

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入国審査官の現状と将来性・今後の見通し

入国審査官の仕事は今後も増え続ける見通し

日本を訪れる外国人の数は、時代が進むにつれて増え続けています。

現代のようにグローバル化が進展する社会は一長一短があり、観光面などで経済的メリットが得られる一方、外国人の不法滞在やテロなどで治安が悪化する恐れもあります。

しかし、少子高齢化が進む日本においては、労働力確保のためにより一層の外国人労働者を受け入れる必要があることは間違いなく、今後も外国人の入国は増え続ける見通しです。

こうしたなか、入国審査官の審査内容は多様化し、より高度で幅広い専門的な知識を身につける必要があります。

空港や港などの玄関口で不法入国や犯罪を食い止める入国審査官の役割は、ますます重要性を増してくると考えられます。

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入国審査官の就職先・活躍の場

日本各地の出入国在留管理庁や関連機関に勤務する人が多い

入国審査官は、法務省出入国在留管理庁に所属する国家公務員の身分となります。

おもな配属先・勤務地は、地方の出入国在留管理局や支局、出張所、また入国管理センターなどです。

空港や港など、出入国審査が必要となる海外との玄関口は全国各地にあるため、入国審査官も北は北海道から南は沖縄まで、日本中で働いています。

他の国家公務員と同じように、引っ越しをともなう異動(転勤)が発生する可能性も十分にあります。

本人の希望などによっては、霞が関にある法務省で一定期間働けるチャンスも得られます。

また、人材交流や育成のために、他の省庁に出向したり、海外にある在外公館に勤務するケースもあります。

入国審査官の1日

勤務先によって異なる入国審査官の業務

入国審査官の業務は、勤務地によってその性質が大きく異なります。

管理局などでのデスクワーク中心の場合は、基本的に毎日同じ時間に勤務する固定的な勤務形態となります。

一方、空港などで勤務する場合はシフト制で働くため、変動的な勤務形態になります。

ここでは、空港で働く入国審査官の1日を紹介します。

10:00 起床
12:00 出勤
12:30 審査業務の開始
17:00 デスクワーク
22:00 前半業務の片付け
0:00 仮眠
5:30 審査業務の再開
11:00 業務終了・退勤

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入国審査官のやりがい、楽しさ

高い専門性を生かして日本の治安を守る

入国審査官は、外国人の不法入国を食い止め、犯罪を抑止して日本の治安を維持するという重要な役割を担っています。

審査の結果、不正入国の外国人を発見したり、現地調査によって虚偽の申告を暴いて不正在留する外国人を退去させたりしたときには、日本の治安維持のために役に立てたというやりがいを得られるでしょう。

業務を通じて、社会的な貢献度の高さを強く実感できる仕事といえます。

また、入国審査官は、さまざまな国籍の外国人と関わるため、英語をはじめ、中国語やスペイン語など、複数の外国語のスキルが必要になります。

学生時代などに培った語学力や海外経験を、日本を守るために生かせるという点も入国審査官の大きな魅力です。

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入国審査官のつらいこと、大変なこと

業務が複雑化、多様化し、難易度が増している

業務が複雑化、多様化し、難易度が増している

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入国審査官に向いている人・適性

正義感や使命感があり、ルールをしっかりと守れる人

入国審査官に向いているのは、正義感がある人です。

在留している外国人のなかには、定められた期間を超過していたり、不法目的で滞在していたりする人もいます。

外国人在留者を直接取り締まるのは「入国警備官」の仕事ですが、入国審査官もそれらの在留者に対して、違法であるかどうかを審査する役割を負っています。

不法滞在者に対しては、ひるむことなく掘り下げた質問をしなくてはなりませんし、危険人物と判断した場合は、関係各所に引き渡すなど然るべき処置を取らなくてはなりません。

したがって、入国審査官には、不正や悪事を見逃さない正義感や強い心が求められますし、有事の際には毅然とした態度で相手に接することができる、物怖じしない人が向いているでしょう。

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入国審査官志望動機・目指すきっかけ

語学力や法律知識などの専門性を生かしたい

入国審査官は、入国管理法や難民認定法などの法律知識と、複数の言語を使いこなせる語学力が必要になる、専門性の高い仕事です。

そのため、学生時代に法律や語学を学んだ経験があり、それらのスキルを仕事に生かせる職業として、入国審査官を志望する人が多いようです。

また、入国審査官は日常的に外国人と接する機会があるため、海外留学などでグローバルコミュニケーションの楽しさを知った人が、この仕事を目指すケースも珍しくありません。

国際関係の仕事や、語学を活用できる職業は他にもたくさんありますが、そのなかでも国家公務員という身分や、社会貢献性の高い仕事内容に惹かれて、入国審査官を志望する人が目立ちます。

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入国審査官の雇用形態・働き方

法務省の国家公務員として働く

入国審査官は、法務省の出入国在留管理庁に所属する国家公務員の身分になります。

試験に合格し出入国在留管理庁職員として採用されると、まずは「法務事務官」として、事務など幅広い業務を担当します。

その後、経験年数を重ねると「入国審査官」になり、各地の出入国在留管理局に配属され、空港などに勤務します。

近年は外国人観光客が急増していることもあり、入国する外国人が多い年末年始や連休の時期は、空港の審査ブースに長蛇の列ができてしまうことも珍しくありません。

厳格に入国審査をしつつも、お客さまを長く待たせないよう迅速に処理しなくてはならないため、入国審査官の負担は重くなっています。

業務はハードですが、国家公務員としての待遇は充実しており、安定した働き方が可能です。

入国審査官の勤務時間・休日・生活

空港などでは早朝勤務や当直もある

入国審査官は国家公務員であり、勤務時間は1週間あたり38時間45分と定められていますが、勤務体系は職場によって大きく異なります。

出入国在留管理局などでデスクワークを行う場合、8:30~17:00前後の日勤となることが一般的ですが、国際空港などでは24時間飛行機が離発着するため、早朝勤務や夜勤を含めたシフト制になります。

休日については、基本的に週休2日制です。

シフト勤務の職場では4週間に8日と定められていますが、交代で休みを取得することになるため、必ずしも土日祝日に休めるとは限りません。

ハードな仕事ではありますが、休暇制度や福利厚生は充実しているため、働きやすい職場環境と感じてる人が多いようです。

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入国審査官の求人・就職状況・需要

外国人の入国が増えるにともなって需要も拡大

日本経済や文化の発展のために、政府は「観光立国」を掲げており、今後も多くの外国人観光客が日本を訪れることが予想されます。

こうした状況に対応するため、近年、出入国の多い7つの空港(新千歳、羽田、成田、中部、関西)を中心に、入国審査官は増員されました。

国家公務員には定員があり、また毎年、定年などによる退職者が出るため、一定の求人は出続けるものと考えられます。

ただ、国家公務員試験は難関ですし、採用ハードルは高めで、さらに年度によって採用数に違いが出るため、狭き門であることは間違いありません。

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入国審査官の転職状況・未経験採用

転職は可能だが採用試験は難関

転職によって入国審査官を目指す人は、新卒者と同様、国家公務員試験を受験する必要があります。

国家公務員試験は「大卒程度区分」「高卒程度区分」とも、学歴要件に加えて30歳未満という年齢制限がありますが、それらを満たしていれば前職が何であろうと受験することが可能です。

また、30歳以上の人でも、40歳未満であれば国家公務員一般職試験の「社会人区分」を受験する資格があるため、民間企業などである程度のキャリアを積んだ人が、入国審査官を目指すケースもゼロではありません。

ただし、社会人区分の採用人数は他の区分と比べて圧倒的に少なく、合格率は1%に満たない非常に狭き門となっているため、20代のうちに転職することが望ましいでしょう。

女性でも入国審査官として働ける?

男女の区別はなく活躍できる仕事

入国審査官は、国家公務員のなかでも女性の割合が大きな職種となっています。

業務上で男女の区別はありませんし、身体を動かすよりも頭を使う仕事であるため、体力面で不安がある女性でも問題なく働けるでしょう。

この仕事では、入国希望者のコミュニケーションも重要になるため、さまざまな人との対話が得意な女性は活躍しやすいです。

また、国家公務員の職場では、女性にとっての働きやすい環境づくりも進んでいます。

結婚・出産・介護などのライフイベントをサポートする休暇制度なども充実しているため、長く働き続けることが可能です。

ただ、入国審査官には異動があるため、遠方への転勤をともなう異動が発生することは頭に置いておいたほうがよいでしょう。

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