「家庭裁判所調査官」とは

家庭裁判所調査官_画像

家庭裁判所において、家事事件や少年事件の当事者や家族、事件の背景について調査を行う。

家庭裁判所調査官は、家庭裁判所で取り扱う「家事事件」や「少年事件」といった家庭内の身近に起こるさまざまなトラブルに対して、その事件の原因や背景などについての調査を行う仕事です。

当事者や家族をはじめ関係者にも話を聞き、さまざまな角度から事件が起こるに至った原因と適切な改善策について検討します。

この仕事に就くためには、国家公務員試験の中でも難易度が高いといわれる裁判所職員採用試験の総合職試験(家庭裁判所調査官補,院卒者区分・大卒程度区分)に合格し、家庭裁判所調査官補として採用される必要があります。

社会の変化により事件の内容が複雑化する中、時代の変化をしっかりと読みとりながら、当事者や家族の心に寄り添える家庭裁判所調査官の必要性がますます高まっています。

「家庭裁判所調査官」の仕事紹介

家庭裁判所調査官の仕事内容

家事事件や少年事件を調査する

家庭裁判所調査官は、おもに家庭裁判所において、離婚調停などの「家事事件」や、非行少年の処遇を決定する「少年事件」について、その事件の原因や背景などを調査する職業です。

具体的には、事件の当事者や家族、関係者など多くの人と面接を行い、さまざまな角度から事件が起こるに至った経緯を調べるとともに、適切な改善策について検討し、調査報告書に取りまとめます。

法律を取り扱う仕事には変わりありませんが、家庭裁判所調査官は、単に法的な結論を下すだけでなく、当事者たちの入り組んだ事情や感情に寄り添った解決策を見出すことが重要です。

また、家庭裁判所調査官は政策の企画立案を担う「国家公務員総合職」でもありますので、裁判所の運営方法や少年審判手続、家事事件調査業務などの改善・見直し案を検討することも仕事の範疇です。

家庭裁判所調査官の就職先・活躍の場

定期的に全国転勤を繰り返す

家庭裁判所調査官として内定を得てからの勤務地は、ある程度ルートが定まっています。

まず、東京や大阪、名古屋などの都市部にある「大規模庁」に所属して約2年間の研修を受け、研修が修了すると「小規模庁」に3年間、そこから「中規模庁」に異動してまた3年間勤めます。

キャリア9年目から、希望する庁やその周辺地域に配属されることが多くなりますが、各裁判所の欠員状況や自身の勤務成績なども考慮されるため、希望通りの勤務地になるとは限りません。

家庭裁判所調査官の1日

一人で作業を進めることが大半

家庭裁判所調査官は、基本的に個々に事件を担当しますので、その調査も単独で実施することが多くなります。

関係者たちとの面接だけでなく、調停や審判など、さまざまな業務を並行してこなす必要があるため、スケジュール管理能力が問われることになります。

8:30 出勤
スケジュール確認、定例会議などを行います。

9:30 面談
少年鑑別所に赴き、担当している少年に対して面接を実施します。

12:00 休憩

13:00 面談
担当する家庭を訪問し、そこでの生活状況などを調査します。

16:00 打ち合わせ
裁判所書記官や裁判官を交えて、どのような審判が適切かを事前協議します。

17:00 帰宅

家庭裁判所調査官になるには

難関試験を突破したのち、研修を受ける

家庭裁判所調査官になるには、まず裁判所職員採用試験のうちの、家庭裁判所調査官補を採用する総合職試験に合格する必要があります。

試験には年齢制限などの受験要件が設けられており、21歳以上30歳未満であることが一つの条件です。

試験を突破し、家庭裁判所調査官補として採用されると、裁判所職員研修所という施設において約2年間の「家庭調査官養成課程」という研修を受講することになります。

研修を修了すると、役職から「補」が外れ、正式に家庭裁判所調査官として任官されます。

家庭裁判所調査官の学校・学費

大学で専門分野を履修したほうがよい

家庭裁判所調査官補の採用試験には、院卒区分と大学卒業程度区分の2種類があります。

院卒区分については、大学院卒の学歴が必要であるものの、大学卒業程度区分は、試験における難易度を便宜的に表したものにすぎず、大卒の学歴に関係なく、誰でも受験することが可能です。

しかし、試験においては、法律をはじめとして心理学や社会学など、非常に高度な知識が複数問われるため、合格者の大半は大学で専門的に学んだ人です。

公務員試験用の講座を開講している予備校もありますので、そうしたところに通って集中的に対策することも選択肢の一つといえます。

家庭裁判所調査官の資格・試験の難易度

競争は激しく、徹底した準備が必要

家庭裁判所調査官補の採用試験は、いわゆるキャリア官僚となるための「国家公務員総合職採用試験」と同等レベルの難易度といわれています。

また、受験者の出身大学をみれば、超難関大学や法科大学院などの卒業生も数多くみられますので、競争は熾烈を極め、合格するためには長期間にわたる徹底した準備が必要となるでしょう。

さらに、試験成績順に上位合格者から採用されるため、採用枠次第では、合格しても内定を得られないという事態も想定されます。

家庭裁判所調査官の給料・年収

年齢のほか、能力も給与に反映される

家庭裁判所調査官は国家公務員であるため、給料は人事院が定める俸給表に沿って支給されます。

初任給は、大卒程度区分で21万円程度、院卒者区分で24万円程度となっており、そのほか通勤手当、扶養手当などの各種手当も、他の国家公務員と同様に支給されます。

平均年収は30歳前後で450万円程度ですが、その後も勤続年数に応じて昇給することに加え、裁判所では成績主義・能力主義による人事管理が徹底されているため、スキル次第で大幅な収入増も望めます。

家庭裁判所調査官のやりがい、楽しさ

子供たちを助けることが大きな役割

家庭裁判所調査官は、さまざまな理由から困難な境遇に陥ってしまった子供たちを救済するという、重要な社会的役割を担っています。

家事事件においては、両親の離婚などで家庭内の紛争に巻き込まれてしまった子供のため、少年事件においては、非行を犯してしまった子供のため、調査や観察を繰り返し、最良の解決法を導き出します。

社会的弱者である子供たちのために働く家庭裁判所調査官は、道義的にも非常に意義のある職業といえ、大きなやりがいを持って仕事に取り組めるでしょう。

家庭裁判所調査官のつらいこと、大変なこと

取り組む課題自体の深刻さと難しさ

それぞれの家庭や少年少女が抱える問題はいずれも一筋縄ではいかない入り組んだものばかりであり、それらを解決することには大きな困難が伴います。

非行を犯してしまった少年にその理由を問いただしても、ろくに口も聞いてもらえないケースは多々ありますし、どれだけ力を尽くしたとしても、思い通りにいかない場面もあります。

知識だけでなく、さまざまな人生経験や異なる人の立場で考えられる広い視野など、人間としての総合力が問われる大変な仕事です。

家庭裁判所調査官に向いている人・適性

責任感が強く、温かい人

家庭裁判所調査官が作成する調査報告書は、裁判官の下す審判に多大な影響を与えます。

家事事件や少年事件の審判は、当事者である家族や少年少女の、その後の人生を左右する大きな岐路となります。

家庭裁判所調査官に向いているのは、そのような業務の重要性を理解し、幾多の困難に対してもくじけることなく粘り強く取り組める、責任感の強い人です。

また、つらい境遇にある少年少女に心を開いてもらうためには、人間的な温かみや優しさも必要になるでしょう。

家庭裁判所調査官志望動機・目指すきっかけ

薄い志望動機では試験をパスできない

家庭裁判所調査官の採用試験は筆記試験の難易度が高いことで有名ですが、筆記試験の後に実施される人物試験も、非常に高いレベルで選考が行われます。

面接では、家庭裁判所調査官にふさわしい人格を備えているかどうかもチェックされますが、それと同等に志望動機も重視されます。

少年犯罪や児童虐待が盛んに報道される昨今、家庭裁判所調査官の仕事に関心を持つ人は少なくありません。

単に興味があるから、憧れているからというだけでなく、自己分析や職業特性、将来への展望などを絡めて、面接官を納得させられるだけの力強い志望動機を準備しましょう。

家庭裁判所調査官の雇用形態・働き方

全国転勤は不可避だが、福利厚生は整っている

家庭裁判所調査官は、ある程度の勤務年数が経過すると、家庭裁判所だけでなく、高等裁判所や地方裁判所を含めて、全国単位での異動、転勤が3年ほどの周期で繰り返されることになります。

家庭の事情など一定の配慮がなされるものの、キャリアアップするうえで転勤は避けられない側面もあります。

ただし、育児休暇や介護休暇などの福利厚生制度が充実しているほか、早出遅出勤務や育児短時間勤務なども認められており、男女関係なく働きやすい環境は整っているといえます。

家庭裁判所調査官の勤務時間・休日・生活

安定的に働くことができる

家庭裁判所調査官の勤務時間は、他の公務員と同様、1日8時間程度の勤務時間が定められており、多くは8:30~17:00くらいです。

家庭裁判所というだけあって、ワークライフバランスは重視される傾向が強く、比較的仕事と家庭の両立はしやすいようです。

ただし、家庭や学校、少年鑑別所などへ外出・出張する機会が多く、加えて調査報告書の作成などデスクワークも同時にこなす必要があるため、スケジュール管理ができないと勤務時間は長くなります。

家庭裁判所調査官の求人・就職状況・需要

内定を得られる人は一握り

毎年の家庭裁判所調査官の募集人数は、院卒者区分で10人程度、大卒程度区分で30人程度です。

たったこれだけの採用枠に対し、全国から受験生が集まるため、非常に激しい競争となっています。

近年の試験合格率(受験者数に対する最終合格者の割合)をみれば、院卒者区分で7~10倍、大卒程度区分で8~10倍前後という狭き門になっています。

さらに、毎年募集人数の1.5倍程度が最終合格者となっているため、下位3割ほどの合格者は内定を得られていない計算になり、実際の採用倍率はさらに高くなっていると思われます。


(参考:https://90r.jp/kasai.htm)
(参考:http://www.courts.go.jp/saiyo/vcms_lf/03-KCkekka3.pdf)
(参考:http://www.courts.go.jp/saiyo/vcms_lf/03-Ysta3.pdf)
(参考:http://www.courts.go.jp/saiyo/vcms_lf/03-AB-5_Ykekka.pdf)

家庭裁判所調査官の転職状況・未経験採用

転職は可能だが、若いうちから準備しておくべき

家庭裁判所調査官の採用試験では、国籍や年齢制限などの受験条件がありますが、それらをクリアしていれば、たとえば社会人として働きだした後でも、受験は可能です。

ただし、試験は官僚になるための採用試験と同等の難易度であり、大学と予備校のダブルスクールで勉強だけに打ち込んできた学生であっても、合格までに数度の受験を要するケースも珍しくありません。

必要な勉強期間と年齢制限を勘案すれば、できるだけ早いうちに目指すことが望ましいでしょう。

家庭裁判所調査官の現状と将来性・今後の見通し

複雑化する時代に対応できる人材が求められる

少子高齢化が進展していくなかで、家族構成は多様化する傾向にあり、またIT技術の普及により誰とでも簡単につながれるようになった社会で、家事事件や少年事件はより複雑化しています。

そのような中、時代の変化をしっかりと読みとりながら、当事者や家族の心情に寄り添える家庭裁判所調査官の必要性は、さらに高まっています。

また、国民の権利意識の高まりなどから家庭裁判所を活用する人も増えており、専門知識を有する家庭裁判所調査官のさらなる活躍が期待されます。