入国警備官の仕事内容・なり方・年収・資格などを解説

「入国警備官」とは

入国警備官の仕事内容・なり方・年収・資格などを解説

入国管理局に勤務し、日本への不法入国、不法滞在の疑いがある外国人を調査、摘発する。

入国警備官は、日本に不法に入国、あるいは不法に滞在している外国人を取り締まる法務省の国家公務員です。

日本各地の入国者収容所入国管理センターのほか、地方入国管理局や空港、港に勤務し、法律に違反している疑いがある外国人を調査し、違反が判明した場合には、身柄を拘束します。

拘束した外国人を収容施設に収容したり、本国へ送還するのも入国管理官の役割です。

入国警備官になるためには、入国警備官試験に合格することが必要です。

学歴の制限はありませんが、採用倍率は例年30倍前後と非常に高くなっており、難関の職業といえます。

入国警備官には、警察と同様に拳銃の所持などの権限が与えられており、日本の治安を守るための正義感が求められる仕事です。

「入国警備官」の仕事紹介

入国警備官の仕事内容

外国人の入国や滞在に関する不正を取り締まる

入国警備官は、外国人の不法入国や不法滞在を取り締まり、日本の治安を守る職業です。

日本国籍を持たない外国人が、観光や留学、就労などの目的で滞在する場合は、必ず法律に基づいた手続きが必要となります。

なかには不法就労や犯罪目的で在留しようとする人もおり、入国警備官は、そのような疑いのある外国人を調査・摘発し、入国管理局に収容します。

拳銃の所持や強制退去の権限が与えられる

入国警備官は、警察官と同じように、拳銃や警棒、手錠などの所持が認められています。

収容者に対しては、入国審査官による違反審査が実施され、そこで違反が認められた場合、入国警備官は日本から強制退去させる権限も有しています。

違反者の捜索から身柄の拘束、収容、空港や港への移送まで、入国警備官は一連の業務に幅広く携わります。

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入国警備官になるには

入国警備官採用試験を受けて採用されることが第一歩

入国警備官になるためには、法務省が実施する入国警備官採用試験を受け、合格する必要があります。

試験の最終合格者は「採用候補者名簿」に名前が記載され、成績順に、地方入国管理局または入国管理センターに採用されます。

採用者は、合宿形式で約3ヵ月間の「初任科研修」を受けて、難民認定法などの法律や外国語、逮捕術、拳銃の取り扱い、武道などを学びます。

修了すると各施設に配属され、入国警備官として働きはじめます。

高卒でも受験できる試験

入国警備官採用試験は「警備官」と「警備官(社会人)」の2つの区分で実施されており、前者の受験資格は「高校または中学校を卒業してから5年を経過していないこと」となっています。

この条件を満たしていれば、学歴は関係なく、高卒や中卒の人でも受験できる試験です。

また、後者の試験であれば、40歳未満の人が受験可能です。

性別に関しても制限はなく、最終合格者の2~3割ほどは女性です。

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入国警備官の学校・学費

学歴要件は実質的にないが、高卒以上が望ましい

入国警備官採用試験は、受験資格のひとつとして「高校または中学校を卒業してから5年を経過していないこと」があります。

このため、多くの人は高卒で、すぐに入国警備官を目指しています。

入国警備官採用試験の筆記試験は「高校卒業程度」レベルとされているため、そこまで難易度の高いものではありません。

特別に通わなくてはならない学校はありませんし、一般の高校できちんと学習し、試験勉強をすれば合格は目指せます。

なお、もし大学に進学する場合、採用試験を受験できるのは大卒1年目まで(浪人していない場合)となるため、注意が必要です。

入国警備官の資格・試験の難易度

応募者が多く、合格率は1割に満たない難関

法務省が実施する入国警備官採用試験は、高校または中学校を卒業して5年未満の人が受験できる「警備官」と、40歳未満の人が受験できる「警備官(社会人)」の2つの区分で実施されています。

採用人数は例年50人程度で、それ以下になることもあります。

倍率は年度によって異なりますが、応募者が多いために10倍~20倍ほどになるケースもめずらしくなく、狭き門となっています。

とくに社会人枠の採用人数は非常に少なく、学生向けのものよりもハードルは高めです。

入国警備官採用試験の内容

入国警備官採用試験の内容は、一次試験が筆記試験、二次試験では人物試験(面接)と身体検査、身体測定、体力検査が行われます。

勉強はもちろん、体力面もしっかりと鍛えておくことが必要です。

また、視力や色覚異常などに関する基準も設けられているため、事前に募集要項を確認しておきましょう。

試験の合格後は成績上位の人から採用となるため、確実な採用を目指すのであれば、できるだけよい成績で合格することが必要です。

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入国警備官の給料・年収

事務を担当する国家公務員よりも給料はやや高め

入国警備官の給料は、法律に基づく「国家公務員公安職俸給表(一)」が適用されます。

この俸給表は、業務の危険性や不規則な勤務体系を加味して、事務などを担当する公務員よりも12%程度高い給与体系となっています。

諸手当やボーナスを含めた入国警備官の平均年収は600万円~700万円程度と考えられます。

違反調査や摘発は早朝や深夜におこなうこともあり、超過勤務手当や深夜勤務手当がつく分、給料は高くなる傾向です。

階級を上げることで収入アップに

入国警備官には、他の国家公務員と同様に手厚い福利厚生が用意されています。

通勤や家族に対する各種手当が充実していますし、公務員宿舎や共済組合制度なども利用可能です。

また、入国警備官は一人ひとりに階級が割り当てられます。

基本的に年功序列の組織ではありますが、階級を上げる、つまり出世することで大幅な収入アップにつながります。

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入国警備官の現状と将来性・今後の見通し

国際化が進む中、使命感のある人材が求められる

ビジネスや留学、観光を目的として来日する外国人の数は年々増加しています。

日本の魅力が再認識される一方で、不法就労者や外国人犯罪者も後を絶たず、年間5万人程度の違反者が国外への強制退去となっています。

今後も、外国人の入国数はさらに増加する見通しであり、外国人の取り締まりにあたる入国警備官の役割はますます重要になってくるでしょう。

しかし、入国警備官の職務は心身ともにハードで、国家公務員のなかでは離職率がやや高めといわれています。

社会的責任の大きな仕事なだけに、やりがいは十分にありますが、言語や文化、思想の異なる外国人と接するストレスは大きく、続けられるかどうかは個人の資質次第です。

強い使命感をもって、仕事に立ち向かえる人材が求められています。

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入国警備官の就職先・活躍の場

日本各地の地方入国在留管理局を中心に勤務する

入国警備官は、法務省入国管理局に所属する国家公務員の身分です。

主要な勤務先は、全国各地にある「地方入国在留管理局」です。

このほか、外国船の入港が多い港や国際空港の近くに置かれた地方入国在留管理局の「支局」や「出張所」、あるいは違反者を収容する「入国管理センター」に勤務する人もいます。

入国警備官の業務範囲は違反調査、摘発、収容、送還と幅広く、日本各地が活躍フィールドとなります。

このため、数年単位で人事異動が発生し、各部門や職場を移りながら経験を積むのが一般的なキャリアパスです。

また、外務省など他省庁との人事交流も活発におこなわれており、出向を命じられることもあります。

入国警備官の1日

空港などでは24時間勤務を行う

入国警備官の勤務体系は、勤務地や業務によっても異なります。

一例として、ここでは空港における調査業務を行う入国警備官の1日を紹介します。

国際空港は早朝や深夜にも外国人の出入国があるため、24時間体制で勤務にあたります。

12:00 出勤
前日の担当者から引継ぎを受けます。
12:30 パトロール
空港内を巡回し、怪しい外国人がいないかチェックします。
16:00 取り調べ
入国審査官から引き渡された外国人の身辺調査を行います。
0:00 仮眠
5:30 業務再開
再び空港内をパトロールし、外国人の不審な動きなどに目を光らせます。
12:00 帰宅
翌日の担当者に引継ぎを行い、帰宅します。

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入国警備官のやりがい、楽しさ

外国人を母国へ送還できたとき

入国警備官のやりがいは、国際的な問題に携わりながら、日本の治安維持に貢献できることです。

不法入国、あるいは不法滞在している外国人は、麻薬や拳銃の密売をはじめ、国内におけるさまざまな犯罪に絡むケースがあります。

そのような違反者を見つけ出し、国外へと強制退去させる入国警備官は日本の治安維持に欠かせない存在です。

地道な調査や取り調べが実を結び、違反者を無事に送還させられたときには大きな達成感が得られます。

グローバル化が進み、日常生活のなかで外国人と接する機会が多くなっている時代だからこそ、社会を支える重要な役割を担うことに強い使命感と誇りを感じられるでしょう。

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入国警備官のつらいこと、大変なこと

外国人とコミュニケーションをとる苦労

入国警備官は、外国人を相手にした仕事をするため、言葉の壁はもちろん、文化や習慣の違いなど、相手とコミュニケーションをとる際にさまざまなストレスを感じやすいです。

とくに「摘発」や「収容」などプレッシャーのかかる業務に携わる際には、気苦労が絶えません。

ときには体を張って違反者に立ち向かわなくてはならず、その大きな緊張感や責任感で疲れてしまう人もいます。

不規則でハードな勤務体系

不法滞在などの法律違反を犯している外国人は、素直に自分の罪を認めなかったり、はぐらかそうとしたり、なかなか帰国に応じなかったりすることもあり、取り調べには時間がかかります。

状況によっては、ろくに仮眠を取ることもできないまま朝を迎え、そのまま翌日も業務を継続しないといけないケースもあります。

不規則な勤務体系による体力面での厳しさも、入国警備官のハードな一面です。

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入国警備官に向いている人・適性

使命感が強く勇気ある行動ができる

入国警備官は、違反者を取り締まることを仕事としているため、強い責任感や使命感が求められます。

長時間にわたって外国人と向き合い、事実関係を確認し、必要に応じて施設への収容や送還などの手続きを行わなくてはなりません。

そこに至るまでの過程では多大な労力と根気を要し、簡単に物事が進まないことも多いです。

「何としても悪いものを見過ごさない」という強い心は不可欠ですし、相手の出方によっては、体を張って立ち向かっていかなくてはならないこともあります。

自分の役割をまっとうするために、勇気ある行動ができる人も、入国警備官の適性があるといえます。

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入国警備官志望動機・目指すきっかけ

語学力や体力を生かして社会的な問題に向き合いたい

入国警備官は、警察官などと同じく社会の秩序を守る「公安職」であるため、志望するのは正義感の強い人が多いようです。

また、体力が必要になる業務の性質上、体育会系出身者が志望しやすいという傾向もあります。

一方、語学が得意あるいは好きで、語学力を生かした仕事ができることに魅力を感じて志望する人もいます。

ただ、入国警備官と関連性のある職業として「入国審査官」がありますし、公安職への憧れだけなら「警察官」を目指す人も多いです。

面接本番で志望動機を述べる際には「入国警備官でなくてはならない理由」を明確に伝えられるようにしましょう。

関連記事入国警備官の志望動機と例文を紹介 面接でよく聞かれる質問は?

入国警備官の雇用形態・働き方

法務省の国家公務員として働く

入国警備官は、法務省に所属する国家公務員の身分となります。

採用されれば安定した待遇が約束され、基本的には問題を起こしたり、自ら離職を望まない限り、退職まで働き続けることができます。

近年は、治安をつかさどる「公安職」全般で女性が増えつつありますが、なかでも入国警備官は女性比率の高い職業です。

採用試験の受験者のうち、例年20~40%前後が女性で、合格者の割合も同程度となっています。

女性は体力面でどうしても男性に劣るケースが多いことは否めませんが、入国警備官は体力だけでなく語学力や国際経験が必要になる場面も頻繁にあるため、他の公安職よりも女性が活躍しやすいようです。

入国警備官の勤務時間・休日・生活

生活リズムは不規則になる傾向

入国警備官は国家公務員であるため、1週間の勤務時間は38時間45分と定められています。

しかし、勤務体系は勤務地によってさまざまで、毎日決まった時間帯で働く日勤の場合もあれば、早朝勤務や深夜勤務を含むシフト制が採用されている場合もあります。

たとえば空港での調査業務を担当する場合、早朝や深夜にも外国人の出入国があるため、夜間にも働く必要があります。

また、取り調べや違反者の摘発などで、仕事が時間通りに終わらないことも頻繁にあるため、勤務時間は不規則になる傾向です。

休日は完全週休2日制、シフト制勤務の場合は、曜日固定ではなく4週間につき8日の休日を取得します。

年末年始や大型連休など、外国人の入国が増えて業務が立て込む時期には、長時間残業になる可能性もあります。

入国警備官の求人・就職状況・需要

求人数は決して多いとはいえない

入国警備官は、その仕事の責任の重さや、勤務体系のハードさなどから、国家公務員のなかでは離職率が高めの職業といわれています。

このため、毎年の求人数は欠員状況に左右されがちですが、総じてそこまで多いとはいえません。

ちなみに、毎年採用人数よりもかなり多くの人数が、入国警備官採用試験の最終合格者として発表されます。

しかし、基本的にはそこから試験の成績順に採用となるため、試験に合格しても成績次第では内定を得られない可能性があります。

筆記試験・体力測定ともに、できる限り上位の成績で突破することを目指す必要があります。

入国警備官の転職状況・未経験採用

社会人区分もあるが、合格率は極めて低い

入国警備官採用試験は、「警備官」区分であれば「高校または中学校の卒業後5年未満」であれば受験可能です。

このため、高卒で民間企業に就職した人などであっても、期間内であれば試験を受けることができます。

また、規定の期間を超過してしまった人を対象とする「社会人」区分もあり、こちらは40歳未満であれば受験可能です。

ただし、社会人区分の採用人数は数名程度にすぎず、合格率は毎年1%を大きく下回る非常に狭き門となっています。

入国警備官への転職を目指すのなら、なるべく早く、できれば警備官区分で受験するほうが実現可能性が高いでしょう。

入国警備官の高卒と大卒の違い

初任給以外の違いはほとんどない

入国警備官の採用試験は、他の多くの国家公務員試験とは異なり、「高卒・大卒」といった学歴の区分は存在しません。

そのため、高卒でも大卒でも仕事内容はまったく同じであり、入国警備官として採用された人は全員、まずは3ヵ月間の「初任科研修」を受けます。

研修にて入国警備官として必要な知識と技能を身につけると、その後は各配属先で実務経験を積みながらキャリアアップを目指します。

なお、入国警備官には7つの階級がありますが、こちらも最初は全員学歴関係なく、一番下の「警守」からスタートします。

高卒・大卒で違う点を挙げるとすれば、初任給です。

給与を定めた「俸給表」のスタートの号俸は学歴で異なるため、初任給は大卒のほうがやや高くなります。

その後の昇進に関しては、本人の努力や業務適性といった要素が影響するため、学歴で大きな差がつくことはありません。

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入国警備官の階級

昇任試験を受けて上の階級を目指せる

入国警備官には、以下の7つの階級があります。

・警守
・警守長
・警備士補
・警備士
・警備士長
・警備長
・警備監

採用直後は全員「警守」からスタートで、下にいくほど階級が上がります。

昇任のためには組織内の昇任試験を受ける必要があり、現在の階級で一定期間の経験を積むことで試験を受けられます。

昇任試験では法律や出入国管理に関する知識、語学力などが問われるため、階級を上げていくには継続的な勉強も不可欠です。

努力次第では誰でも上位の階級を目指せるのが、入国警備官の特徴です。