【2021年版】労働基準監督官の仕事内容・なり方・年収・資格などを解説

「労働基準監督官」とは

労働者と事業者の間に立ち、双方のトラブル解決や労災に関する予防・調査業務を行う。

労働基準監督官とは、厚生労働省に所属する国家公務員で、労働基準法や労働安全衛生法に基づき労働者と事業者のトラブルの解決、労働災害の予防、労働災害の調査などを行います。

不正をしている事業者を監督、指導したり、立場の弱い労働者の権利を守る仕事をしたりしているため、労働関係における警察のようなイメージを持つとわかりやすいかも知れません。

労働基準監督官になるには、労働基準監督官試験を受け合格しなければなりません。

主な勤務先には、全国の労働局、労働基準監督署になり、数年に一度転勤のある全国型の勤務となります。

給料は法律によって定められており、公務員のため待遇は悪くありません。

受験資格も制限が少ないため、各部学科関係なく大学を卒業すると受験することができます。

日本では近年不景気が続き、労働者と事業主をめぐるトラブルは頻発する傾向にあります。

そのため近年は労働基準監督官が仲裁に乗り出すケースも増えつつあり、労働環境の改善に努める労働基準監督官の仕事は、今後も重要性を増していくと思われます。

「労働基準監督官」の仕事紹介

労働基準監督官の仕事内容

労働者を守るために事業者の監督や指導を行う仕事

労働関係のトラブル解決のために事業所を監督・指導する

労働基準監督官は、自身の管轄内にある事業所(企業)が、法律に定められた労働環境を適性に維持しているかどうかを監督する国家公務員です。

きちんと残業代が支払われなかったり、給与自体が未払いだったり、長時間労働を強要されたり、昇進が不平等だったり、不当な理由で解雇されたりと、労働関係のトラブルは多種多様です。

労働基準監督官は、そういった問題が発生しないよう、日々企業を監督するとともに、なんらかの法令違反が疑われる際には自ら調査に乗り出し、適切な事業所運営を行うよう経営者を指導します。

また、労働基準監督官は「司法警察員」という犯罪捜査を行う権限を与えられた立場でもあるため、悪質な違反者に対しては、指導するだけでなく、犯罪者として逮捕することも可能です

労働基準監督官の3つの業務

労働に関する法律に違反している場合、労働基準監督官は捜査、逮捕、差し押さえなどの権限を持つほか、事件捜査を行ったあとは送検もできます。

これを「司法警察事務」と呼びます。

労働災害(労災)が発生した際、災害の現場に行き発生状況や原因を調査する「安全衛生業務」も労働基準監督官の業務です。

また、業務中または通勤中に不幸にも労働災害(負傷、傷害、疾病など)に遭った労働者に対し、保険給付のために必要な事実関係の調査を行う「労災補償業務」も重要な仕事のひとつです。

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労働基準監督官になるには

できる限り優秀な成績で労働基準監督官採用試験に合格する

労働基準監督官採用試験に合格する

労働基準監督官は国家公務員であるため、まず公務員試験の一つである労働基準監督官採用試験に合格する必要があります。

受験年度の4月1日の時点の年齢が30歳未満の人までが労働基準監督官採用試験の受験資格があるため、29歳までが労働基準監督官を目指せる限界となります。

中途採用はほぼ実施されていないため、年齢の範囲内で労働基準監督官採用試験を受ける以外に道はありません。

ただし、資格取得など特別な条件はないため、社会人をしながら目指すこともできますし、社会人経験があるということを強みにして受験を目指す方法もあります。

できるだけいい成績で試験を突破することが重要

労働基準監督官採用試験は、おもに文系科目が出題される「法文系」と理系科目が出題される「理工系」の2種に分けて実施されますので、出身学部が文系・理系どちらであっても、有利不利なく受験することが可能です。

受験資格には学部などの制限はありませんが、大学を卒業することが最低条件といえます。

ただし、労働基準監督官試験では、成績上位者から順番に採用が行われるため、試験合格者全員が内定を得られるわけではありません。

ただ単に試験に受かるだけではなく、できる限り優秀な成績で試験を突破し、実際に採用されることを目指すことが必要です。

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労働基準監督官の学校・学費

年齢要件さえ満たせば、学歴や学部は不問

大学卒業程度の知識レベルが求められる

労働基準監督官採用試験を受験するためには、21歳以上30歳未満であるか、21歳未満でかつ大学卒業見込であること、いずれかの条件を満たす必要があります。

つまり、年齢さえ指定された範囲内におさまっていれば、必ずしも大学を卒業している必要はなく、たとえば高卒などの学歴でも受験は可能です。

ただし、試験自体は「大学卒業程度」となっており、問われる知識レベルも非常に高度ですので、四年制大学で専門的に学ばなければ、合格は難しいでしょう。

文系だけでなく理系の知識も求められる

受験資格には学部などの制限はありませんが、大学を卒業することが労働基準監督官になるための近道と言えるでしょう。

試験は労働基準監督A(法文系)と労働基準監督B(理工系)では共通している問題と、異なる問題があります。

労働基準監督官は多種多様な事業場に立ち入り、賃金・労働時間や安全衛生などが法律に則って行われているかを調査するため文系的な知識に加え、理系的な知識も求められます。

そのため試験は「A(法文系)」と「B(理工系)」の区分に分けられていますが、どちらの区分で合格しても採用後の処遇に違いはありません。

労働法、労働事情といった労働に関する問題は当然共通ですが、それぞれの専門試験になるとかなり専門的な知識が必要になるため、こうした分野を専門的に学んでいた人は有利となるでしょう。

労働基準監督官の資格・試験の難易度

合格者は1割前後という非常に狭き門

労働基準監督官採用試験を受けて採用される

労働基準監督官は厚生労働省に所属する国家公務員なので、労働基準監督官採用試験を受け、合格しなければ勤務はできません。

国家公務員の区分は専門職員となり、全国にある労働局または労働基準監督署で勤務します。

労働基準監督官採用試験の最終合格者は、勤務を希望する都道府県の労働局で採用面接を行うため、合格となればその労働局管内の労働基準監督署が勤務地となります。

ただし、試験に合格したとしても、採用は成績上位者から順番に決まっていきます。

そのため、試験に合格したからといって、必ずしも労働基準監督官として採用になるとは限らないことをあらかじめ知っておきましょう。

倍率が非常に高い難関の試験

国家公務員という安定した身分が得られることもあり、労働基準監督官採用試験には例年多くの受験者が集まります。

合格倍率は年度によって若干上下しますが、近年は7倍~13倍前後で推移しており、かなりの難関といえます。

試験においては、公務員に必要な一般知識や労働事情に関する問題に加えて、法文系ならば法律や経済問題が、理工系ならば数学や物理、化学の問題が出題されます。

自身の専門分野はもちろん、他の科目も広範囲にわたってしっかり学習する必要があるといえます。

人事院ホームページには過去問題が公開されていますし、公務員試験のための予備校や対策本などもありますので、情報を集めながら対策をしていくとよいでしょう。

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労働基準監督官の給料・年収

公務員として安定した給料と手厚い待遇が期待できる

公務員として定められた給料が支払われる

労働基準監督官は公務員であるため、給料は法律によって定められており、「国家公務員行政職俸給表(一)」という給与体系に従って支給されます。

大学卒業時の初任給は17万円強ですが、ボーナスにあたる期末・勤勉手当をはじめとして、超過勤務手当、通勤手当などの各種手当が充実していますので、他の公務員と同様、待遇は手厚いといえます。

勤続年数や役職に応じて徐々に昇給していき、30歳の平均年収は500万円前後、40歳で600万円前後に達するようです。

給料や福利厚生、業務のレベルに応じた等級などは法律で定められているほか、社会情勢にさほど左右されないため、収入の面で心配する必要がなく将来を見据えた働き方ができるでしょう。

安定した収入と待遇が期待できる

労働基準監督官は、国家公務員という安定した立場であるため、経験年数に応じてある程度まで給料は上がっていきます。

労働基準監督官のキャリアは労働局や労働基準監督署でキャリアを積む方法と、厚生労働本省でキャリアを積む方法がありますが、本省で働く方が給料は高い傾向にあります。

なお労働基準監督官は、不況の時こそ激務になることが予想されますが、景気に左右されることなく安定した収入が得られますし、残業代もしっかりと支払われます。

また労働基準監督官の異動は、基本的に採用された都道府県労働局管内であるため、住居の移動が伴う場合は少なく、これも安心して働ける要因でもあります。

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労働基準監督官の現状と将来性・今後の見通し

労働者保護のために、労働基準監督官は不可欠の職業

一般的に不景気の時代ほど労働者と事業主をめぐるトラブルは頻発する傾向にあり、不況が続く近年は労働基準監督官が仲裁に乗り出すケースが増加しています。

労働者を守るために必須の職業であるといえますが、現状では十分な数の労働基準監督官を確保できているとはいえず、慢性的な人手不足が問題視されています。

諸外国と比較しても、日本の労働者の権利は保護されているとはいいがたく、労働環境の改善に努める労働基準監督官の仕事は、今後も重要性を増していくと思われます。

また、業務に関連する資格として社労士があり、資格を取得することによってさらに自身の専門性を高めたり、あるいは独立開業したりするなど、複数の働き方を選択できるようになる点も魅力です。

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労働基準監督官の就職先・活躍の場

全国各地にある労働基準監督署または都道府県労働局

労働基準監督官のおもな勤務先は、全国各地にある労働基準監督署または都道府県労働局ですが、それぞれの組織は、設置目的や業務内容が異なります。

労働基準監督署は、労働基準法違反を取り締まるための機関であり、企業を監督することが役割で、労働者からの相談にも乗りますが、基本的にトラブルの仲裁に乗り出すことはありません。

これに対し、労働局は企業と労働者の間に立って仲介役となることが業務の中心であり、不当解雇や雇止めから男女差別、セクハラ・パワハラまで、公正中立な立場でトラブル解決にあたります。

本人の希望により、採用後3年目以降は厚生労働省本省で勤務することもできますが、仕事の違いはあまりありません。

労働基準監督官の1日

対象企業の調査に多くの時間を費やす

労働基準監督官のスケジュールは、その勤務先や部署によって異なります。

「臨検」と呼ばれる立ち入り検査をするため、日中は外出する時間が長く、スケジュールは日によって変わることが多いです。

<労働基準監督署で働く職員の1日>

8:30 始業、メールチェック、スケジュール確認など
9:00 臨検(工場や事業所に出向き、労働環境に違法な点がないか調査)
12:00 休憩
13:00 電話や訪問などの相談受付
14:00 報告書作成などのデスクワーク
15:00 臨検(相談者からの訴えに基づき抜き打ち調査)
18:00 終業

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労働基準監督官のやりがい、楽しさ

厳しい環境にある労働者を助けることができる

近年は長引く景気低迷の影響もあって、厳しい経営状況にある会社が決して少なくないことから、過重労働や未払い賃金など、労働関係のトラブルは社会的に深刻化しています。

労働に関する問題は、人々の生活や生命の危機に直結するため、安心・安全な職場で働くことは、労働者とその家族のために非常に重要です。

労働基準監督官は、事業主に労働関連法令を遵守させることによって、労働災害を未然に防ぐことが使命であり、その仕事には大きな社会的意義とやりがいがあるでしょう。

また、労働関連法令を熟知していることから、専門知識を生かして社会保険労務士にキャリアチェンジする道もあります。

高度な専門知識を習得するとともに、成長する機会が多いのも魅力のひとつです。

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労働基準監督官のつらいこと、大変なこと

問題解決には粘り強く事業主と向き合う必要がある

精神的な負担が伴う仕事

調査によって法令違反が判明した場合のために、労働基準監督官には、差し押さえや逮捕、検察庁への送検といった、司法警察員としての非常に強力な権限が与えられています。

しかしそれらはあくまで最終手段にすぎず、事業主に自ら違反を認めてもらい、反省を促すことが基本的なスタンスです。

ただ、事業主すべてが労働基準監督官に協力的であるとは限りません

労働基準監督官を「厄介な存在」ととらえている事業主もいるため、そうした相手にも根気よく説明し改心してもらう必要があります。

なかなか調査や面談に応じなかったり、労働環境の改善に消極的であったりするケースもあり、改善を促すには心身ともに相当なストレスを感じるでしょう。

ネガティブな問題を扱う難しさ

労働基準監督官に寄せられる相談は賃金未払い、超過労働、労災によるけが、身に危険がおよぶ職場環境など、基本的にネガティブなことばかりです。

労働環境改善が職務なので仕方ないですが、そういった現状を解決するには、「労働環境を是正して労働者を守る」という高いモチベーションをもっていなければなりません。

なかなか問題が解決しなかったり、話しを聞いてもらえない事業主を相手にしたりすると、自分のモチベーションを保つのに苦労することもあります。

また、事業主や労働者に納得してもらうためにはていねいな説明も必要なため、一つひとつの案件対応に時間がかかるのも苦労のひとつです。

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労働基準監督官に向いている人・適性

体力と精神力があり、使命感を持つ人

事務作業を主体とした他の公務員とは異なり、労働基準監督官は工場や工事現場、事業所などに出向き、長時間歩き回ることが多い職業です。

また、傷害事故や死亡事故、自殺現場など、労働災害が起こってしまった場所に出向き、現場を細やかに調査し、原因を突き止め、再発防止のために取り組むことも重要な責務です。

労働基準監督官には、長時間の調査を行える体力と、悲惨な現場でも冷静さを失わない精神力を兼ね備えた人が向いているでしょう。

また、労働基準監督官は、どうしても弱い立場になりがちな労働者の声を聴くのが仕事です。

労働基準監督署に相談に来るのは困っている人たちであり、そういった人たちを助けたいという使命感を持っている人は向いています。

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労働基準監督官志望動機・目指すきっかけ

困っている人を助けたいという正義感の強い人が多い

労働基準監督官は、劣悪な環境に陥って苦しんでいる労働者を助けることが役割です。

このため、労働基準監督官を目指すのは、社会的弱者を助けたいと思う、正義感の強い人が多いようです。

近年は、慢性化した長時間残業や精神的プレッシャーを苦にして、うつ病を発症したり自殺したりする人が増えており、メディアで大々的に取り上げられる機会も少なくありません。

そうした報道を他人事と捉えず、労働環境改善のために尽力したいと考える人が、労働基準監督官を志望するのは自然な動機といえます。

労働基準監督官は事業主に職場環境の改善を説明し説得することもあるため、相手に分かりやすく伝える能力が求められます。

しっかりと考えを整理し、面接の練習をしておきましょう。

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労働基準監督官の雇用形態・働き方

近年は全国転勤は少なくエリア内での異動がメイン

労働基準監督官は管轄エリアの企業との癒着を防ぐため、また労働関連法令を扱う専門職として経験を積むために、かつては数年単位で全国転勤がありました。

しかし近年では制度が変わり、頻繁に全国各地への異動することはありません

基本的には採用された都道府県労働局管内の労働基準監督署や労働局が勤務地となりますが、数年ごとに異動は行われます。

労働局内の機関となる労働基準監督署は各都道府県によって数は変わり、例えば北海道の場合は17カ所、東京都の場合は18カ所、大阪府の場合は13カ所、沖縄の場合は5カ所と地域によってばらばらです。

なお、労働基準監督署だけでなく、厚生労働省や労働局に配置転換となるケースもあります。

労働基準監督官の勤務時間・休日・生活

ワークライフバランスは配慮される傾向にある

労働基準監督官の勤務時間は、他の一般的な公務員と同様、8:30~17:00くらいに定められています。

事業場の検査や事業主への監督・指導、労働災害発生時の現場検証など、日中は外出することも多く、残業が必要な時もありますが、労働環境を守る組織というだけあって、職員の働きやすさは徹底されています。

ただし、勤務する労働基準監督署の管轄地域によって多少変則的な対応が必要で、夜間営業の事業場、24時間稼働の工場などの立ち入り検査を行う際は夜間勤務することもあります。

休日については、基本的に土日を休みとする週休二日制となっており、休日出勤するケースはほとんどありませんので、仕事とプライベートを両立させやすい職場といえるでしょう。

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労働基準監督官の求人・就職状況・需要

社会情勢を反映し、求人数は増加傾向にある

「ブラック企業」や「過労死」という言葉に代表されるように、近年は労働環境についてのトラブルが続発していることから、厚生労働省は労働基準監督官を増員しています。

規制は厳しくなったものの、チェックを行う労働基準監督官が不足したままでは、すべての事業所を適正な労働環境にするのは物理的に不可能だといえます。

このため、採用人数は増加傾向にあり、法文系・理工系合わせて200名近い採用枠が設けられており、理工系よりも法文系のほうが採用人数は毎年かなり多めに設定されています。

ただし、日本の厳しい財政事情を勘案して公務員全体の削減が推し進められているため、今後も増員され続けるかどうかは不透明といえ、人員が充足すれば採用人数が絞られる可能性もあります。

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労働基準監督官の転職状況・未経験採用

社会人としての経験が生きるケースも

労働基準監督官は中途採用をしていないため、労働基準監督官採用試験を突破する以外に方法はありません。

労働基準監督官採用試験は30歳未満という年齢制限がありますが、それさえクリアしていれば、試験に合格して社会人などから労働基準監督官となることも可能です。

業務の性質上、実際の労働現場を知っているという点は非常に重要ですので、筆記試験をクリアしたあとの面接試験において、社会人経験やアルバイト経験が評価されることも少なくありません。

ただし試験は年1回しかありませんし、合格率も非常に低く、合格のハードルは高いです。

働きながら試験合格のために必要な勉強時間を捻出することは、決して容易ではないことを覚悟しなくてはならないでしょう。

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