市役所の職員になるには? 知っておきたい採用試験の知識まとめ
「事務系」「技術系」などいくつかの試験区分で実施されますが、事務系を受けるにあたっては「年齢」が条件となり、学歴は問われないことがほとんどです。
この記事では、以下のことをまとめています。
- 市役所の職員になるまでの流れ
- 市役所の職員になるのに有利な学部や学校はあるのか
- 市役所の採用試験の全体的な概要
この記事を読むことで、市役所の職員になるためにまず知っておきたい情報を知ることができます。
市役所職員を目指している人、仕事について詳しく知りたい人は、ぜひ参考にしてください。
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市役所の職員になるには?
市役所の職員になるには、市役所ごとに行われる採用試験に合格し、採用される必要があります。
市役所ごとに試験内容は異なりますが、多くの場合は筆記試験・作文・面接試験です。
この章では、まず市役所で働く人の職種と仕事内容、採用試験の概要についてご紹介します。
市役所の職員の職種と仕事内容
市役所職員は、「市」に置かれる行政機関「市役所」で働く人のことで、身分は地方公務員です。
大きく「事務系(一般行政職)」と「技術系(技術職)」の2つの職種に分かれます。
それぞれの仕事の内容は以下の通りです。
- 事務系職員:住民登録の手続きや各種証明書の発行、地域振興、市の財政運営など、事務作業全般
- 技術系職員:土木、建築、化学、情報などの専門知識や技術を生かして、都市計画、公共施設の設計・工事の監督、通信インフラの整備など
事務系・技術系どちらの職種も、自治体が実施する市役所職員採用試験に合格し、採用されることで、市役所職員になることができます。
なお、事務系職員はほとんどの自治体で毎年募集が出されますが、技術系職員は年度によって募集がなかったり、募集があっても採用数が少なかったりする場合があるため、注意しましょう。
市役所の職員になる方法【採用試験への合格が必要】
市役所の職員になるには、市役所ごとに行われる採用試験に合格する必要があります。
この試験は、「公務員試験」「地方公務員試験」などとも呼ばれます。
市役所職員の採用試験はその難易度ごとに、次の3つに分けられています。
- 上級:大学卒業程度の難易度
- 中級:短大卒業程度の難易度
- 初級:高校卒業程度の難易度
自治体によっては、それぞれの試験区分を「Ⅰ種」「Ⅱ種」「Ⅲ種」または「大学卒業程度」「短大卒業程度」「高校卒業程度」と呼んでいる場合もあります。
なお、これらは難易度を表すものであり、「大卒」「高卒」などの学歴が必要という意味ではありません。
事務系職員の場合には、年齢制限を満たしていれば学歴は問われないことがほとんどです。
また、社会人を対象とした採用試験をおこなったり、一般的な教養試験の代わりにSPI試験を課すなどの「特別枠」を設けている自治体もあります。
自治体ごとに採用試験の詳細は異なるため、市のホームページなどでしっかりチェックしてください。
次の章では市役所職員になるための採用試験について、さらに詳しく解説していきます。
市役所の職員になるための採用試験
市役所の職員になるために、採用試験を避けて通ることはできません。
ここでは試験の難易度や内容などについて紹介します。
市役所職員採用試験の難易度・倍率
市役所の職員になるための採用試験の難易度は、公務員試験の中では最も低いランクに位置付けられることが多くなっています。
しかし、国家公務員や地方上級公務員の倍率が3~4倍なのに対して、市役所職員は採用人数が限られることや、市役所職員よりも早い時期に行われる他の公務員試験で不合格となった人が受験することも多いことなどから、倍率が高くなるケースも見られます。
「地元に戻って働きたい」「転勤を伴う異動がない」という希望やワークライフバランスを重視した働き方に魅力を感じる人も増えていて、自治体によっては非常に狭き門になっています。
✅市役所の採用試験の倍率の例(令和2年度)
都道府県 | 市 | 職種 | 試験区分 | 倍率(受験者数/最終合格者数) |
北海道 | 旭川市 | 事務(一般行政) | 大学卒の部 | 14.7 |
事務(社会福祉) | 3.0 | |||
技術(土木) | 1.8 | |||
技術(建築) | 8.0 | |||
東京都 | 町田市 | 一般事務 | 大卒程度 | 51.0 |
土木技術 | 8.8 | |||
建築技術 | 9.5 | |||
栄養士 | 55.0 | |||
大阪府 | 東大阪市 | 上級事務 | 上級 | 17.6 |
上級土木 | 4.8 | |||
初級事務 | 初級 | 19.1 | ||
初級建築 | 5.0 |
※各市区町村のホームページより作成
市役所の採用試験の難易度は、日程によっても異なります。
例年は以下の日程で試験が行われており、A日程よりB日程、B日程よりC日程、C日程よりD日程と後半に行くほど難易度が上がります。
✅市役所職員の採用試験の日程(例年)
A日程 | 6月第3日曜日 | 教養科目+専門科目のことが多い |
B日程 | 7月第3日曜日 | 教養科目のみのことが多い |
C日程 | 9月第3日曜日 | |
D日程 | 10月第3日曜日 |
市役所職員の募集日程は限られているため、筆記試験・面接試験の対策を計画的に行いましょう。
市役所職員採用試験の受験資格
市役所職員採用試験の受験資格は、自治体によってまちまちです。
事務系の職員の場合は、年齢制限のみが設けられていることが多く、以下が目安です。
- 大学卒業程度の「上級試験」:22歳〜30歳
- 高校卒業程度の「初級試験」:17歳~20歳
ただし、自治体によっては年齢制限を59歳までにするなど、多くの自治体で年齢上限を緩和する動きが見られます。
近年はさまざまな地域課題に対応するために業務が複雑化していることが理由です。
また、民間企業等で働いた経験を持つ人を積極的に採用する動きもあり、人材を柔軟に受け入れるトレンドにあるといえます。
技術系や栄養士、保健師といった専門知識を必要とする職種の場合は、応募資格に資格が必要な場合もあります。
市役所職員採用試験の内容
市役所職員の採用試験は、自治体によって面接の回数や内容などが異なります。
例として、東京都町田市、島根県出雲市の2020年度の採用試験の流れをご紹介します。
- 1次試験:SPI3(基礎能力検査・性格検査)
- 2次試験:Web個別面接
- 3次試験:GAB(知的能力テスト)・作文・最終個別面接
- 1次試験:教養試験・作文試験・適性検査・面接
- 2次試験:面接
このように、自治体によって出題される筆記試験は大きく異なります。
自分が受験したい市役所の募集要項をよく読んでから試験対策をはじめましょう。
近年は面接重視(人物重視)の採用をする自治体が増えています。
「なぜその市を選んだのか」「市役所の職員になってどのように働きたいのか」といった内容に、自信をもって答えられるように対策しておくことが大切です。
市役所で働くのに有利な資格や学部はある?
市役所で働きたい人が進路を選ぶ際に気になるのが、採用試験で有利になる資格や学部があるかどうかではないでしょうか。
この章では、市役所の職員になるための資格や学部、学歴についてまとめています。
市役所職員になるために必須の資格はない
市役所職員の試験では、事務系の区分であれば、とくに必要な資格はありません。
年齢制限さえ満たしていれば、採用試験を受験できることがほとんどです。
一方で、技術系や「資格免許職」と呼ばれる区分で受験する場合は、それらに該当する資格を取得していることが受験の条件となっているケースも多いです。
資格免許職の例としては、看護師、臨床心理士、保育士、栄養士などが挙げられます。
資格免許職も技術系区分と同様に募集が少ない傾向があります。
年度によっては募集自体が出ないことも考えられるため、受けたい市役所の募集要項は早めに確認しておきましょう。
市役所職員採用試験の難易度・倍率
市役所職員を目指すのにおすすめの資格はある?
市役所職員になるために有利な学部や学校は?
くりかえしになりますが、市役所職員の採用試験は以下の3つに分けられていることが多いです。
- 大学卒業程度の「上級」
- 短大卒業程度の「中級」
- 高校卒業程度の「初級」
ただし、これらの区分はあくまで「試験の難易度」を表すものであり、学歴が必要という意味ではありません。
したがって、大卒でなくても、年齢などの受験資格さえ満たしていれば上級試験を受けることは可能です。
ただし実際のところは、上級試験では幅広い教養が求められることもあり、受験者は大卒者が中心となります。
学部や学歴によって優遇されることはなく公平な扱いになりますが、採用試験の内容から考えると次のような学部が試験対策がしやすいといえます。
採用試験のなかで法律や経済について多く問われるため、「法学部」や「経済学部」などを選ぶと、採用試験対策の基礎を大学で学びやすいでしょう。
ただし、大学の授業の内容と採用試験の範囲がまったく同じということはないため、試験勉強は必要です。
技術系職員や資格免許職などを目指す場合には、それぞれの分野を専門的に学べる学校に進学する必要があります。
「自分がどの分野で活躍していきたいのか」をよく考えて学校を選ぶことが大切です。
高卒からも市役所職員になれる?
市役所職員は高卒から目指すことも可能です。
高卒者が採用試験を受ける場合は「初級試験」を受けるのが一般的で、筆記試験では「高校卒業程度の一般知識」が問われることになります。
ただし、これまで説明してきたように、年齢要件さえクリアしていれば大学卒業レベルの「上級試験」を受験することもできます。
その場合は公務員の専門学校や予備校などに通って試験対策をする人も多いようです。
市役所の職員になってからの働き方・キャリアパス
この章では、市役所の職員になった後のことをまとめています。
どんなふうに働いていくのか、イメージしておくことは面接のときにも役立つはずです。
市役所の職員になってからのキャリアパス
市役所職員のキャリアステップとしては、その市役所のなかで昇進していくことが代表的なキャリアパスとなります。
具体的な役職名は自治体によって異なりますが、勤続年数や勤務成績に応じて「主査」「室長」「課長」「部長」といったように、その市役所内で昇格していくのが一般的です。
自治体によっては「昇任試験」などが設定されているケースもあり、筆記試験や面接に合格することで比較的若い年齢で昇格できる場合もあるようです。
市役所は女性も働きやすい
市役所職員は地域社会に貢献できることや、安定して働けるイメージがあることから、女性にも人気の高い職業です。
総務省の発表によれば、地方公共団体における一般行政職の採用者の「4割前後」が女性です。
参考:総務省 参考:地方公務員における女性活躍・働き方改革推進のためのガイドブック
公務員という立場から出産・育児休暇などの制度面も整っており、女性にとって長く働き続けやすい仕事といえるでしょう。
市役所の職員に向いている人の特徴3つ
- 親しみやすい人
- コミュニケーション能力の高い人
- コスト意識を持っている人
市役所職員は、地域の住民が快適な日常生活を送るうえで重要な役割を担う存在です。
市民に対する市役所職員の対応があまり良いものでなければ、市全体のイメージダウンにもつながりかねません。
親しみやすく、人柄のよい人が望まれます。
また、現代の市役所職員は「コスト意識を持っていること」も欠かせない適性のひとつです。
多くの自治体が厳しい財政状況にあるなかで、メリットとコストのバランスを考えながら適切な施策を実行できる市役所職員が求められています。
「市役所の職員になるには」まとめ
市役所の職員になるには、市役所の採用試験に合格する必要があります。
自治体によって募集状況や試験内容は異なるため、希望する自治体の採用情報をよく確認しておきましょう。
筆記試験だけでなく、面接や作文の試験対策も重要です。
独学の難しい面接や作文の試験は、通信講座などをうまく利用すると、自宅でも対策が可能です。