病理医の仕事内容・なり方や必要な資格・給料を解説

病理医の仕事内容

病気の原因解明を専門とする医師

「病理」とは、病気になる理由や過程、根拠のことを指します。

病理医の仕事は、この「病理」を確定診断するのが主な仕事になります。

病理医の具体的な仕事内容には以下のものがあります。

・病理解剖:病気で亡くなられた方の体を解剖し、死因・病状を解明したり、治療の効果を検討する
・生検:体の組織を採取して、病気がないか顕微鏡などで観察診断する
・組織診断:手術で切除した病変部を顕微鏡で観察し、診断が正しいか確認したり、進行度を診断する
・細胞診:採取した病変部を薄くスライスして染色を施し、顕微鏡を使って、細胞の観察・診断を行う
・術中迅速診断:手術中に病変部を診断して、手術の方向を決める参考にする

こういった仕事内容の性質上、病理医は患者さんと直に接する機会は少なく、主に病理検査室で業務を行います。

他の科の治療方針を方向付ける役割もあり、その立ち位置から「ドクターズ・ドクター」とも言われます。

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病理医の就職先・活躍の場

入院施設のある大きな医療機関で活躍

病理医の約半数は大学附属病院に所属しています。

大学附属病院は、病棟ベッド数、患者数、手術件数が多く、病理医が活躍できる場面が多いのです。

大学病院以外に所属している病理医のほとんどは、二次医療機関(精密検査を必要とする、緊急性が高い、病状が重いなどの患者さんを治療する)に所属しています。

二次医療機関においても、病理医は患者さんの病気がどのようなものか、治療が適切かなどを主治医と協力して検討する、大事な役目を負っています。

また、研修医を受け入れる病院ではCPC(臨床病理検討会)が行われるので、病理医が必ず1名は必要とされます。

病理医の1日

検体の診断が主な業務。解剖する日も

他の科の医師と違い、病理医の主な仕事場は診察室ではなく検査室になります。

ここで病理医の1日の例を見てみましょう。

病理医の1日のスケジュール

08:00 出勤
病理検査部の始業点検をします。
08:30~17:30 病理診断業務
病理検査部にて、順次検体の診断業務を行います。

・手術部・内視鏡検査室・放射線部からの検体受付
・組織の切り出し
・組織診
・細胞診
・術中迅速診断
・病理解剖(患者さんがいつ亡くなるかは分からないため、イレギュラー業務となります)

17:30 ケースカンファレンス(症例検討会)
ケースカンファレンスに出席し、病状の経過、治療効果などについて検討を行います。
18:30 終業準備
病理検査室の点検、当直医への引継ぎ等をおこない、業務終了となります。

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病理医になるには

病理専門医の資格を取る

病理医として働くには、病理専門医の試験を受け、資格を取得します。

病理医は医師の種類の一つですので、まず医学部で6年間学び、医師国家試験の受験資格を得ます。

国家試験に合格して医師になってから2年間研修医として初期研修を受けたのち、

・死体解剖保存法による死体解剖資格を取得していること
・3年以上継続して日本病理学会の正会員であること
・厚生労働省の指定する病院において臨床研修を修了していること
・臨床研修修了後、日本病理学会の認定する研修施設において3年以上人体病理学を経験すること
・人体病理業務に就いていること

以上の条件を満たすと、病理専門医の受験資格を得ます。

受験に合格すれば、晴れて病理専門医の資格を取得することができます。

病理医の給料、年収

専門性の高さのため高年収の傾向

病理医の年収は、1年あたりの解剖症例数や病理診断数、病院の規模などにもよりますが、1000万円~2000万円と比較的高年収です。

昇給もあり、10年勤務ごとに200万円くらいずつ昇給していく病院が多いようです。

週に1日は通常業務でなく研究にあてられる日を設けている病院がほとんどで、研究論文や学会ポスター作成もできるスケジュールになっています。

病理学会などへの出席も、ほとんどの病院で許可されています。

病理医のやりがい・楽しさ・魅力

「縁の下の力持ち」として活躍する

病理医は、ドクターズ・ドクターと言われるように、あらゆる診療科にまたがって活躍しています。

自分の診断によって、さまざまな疾患を持つ多くの患者さんの治療方針の決定にも関わります。

病理解剖では、亡くなられた患者さんが遺してくださった症例に当たることで、今後の治療方針に貢献することができます。

患者さんと直接顔を合わせることは少ないものの、縁の下の力持ちとして重要な役割を担っているのが病理医の仕事です。

病理医のつらいこと、大変なこと

多くの患者さんの治療方針に関わる責任

一人前の病理専門医として働くためには、医学部を卒業後、最低でも6年はかかります。

その間、体のさまざまな部位の、あらゆる病変を診断できる技術を習得し、病理専門医認定試験に合格しなくてはいけません。

そして病理専門医となったあとも、自分の診断が患者さんの治療方針の根拠となるため、正確な判断と責任が求められます。

他の科の医師と比べて患者さんの認知度は低いですが、病院にとってはなくてはならない存在なのが病理医なのです。

病理医に向いている人、適性

観察力と判断力、想像力が求められる

病理医に向いている人として、細かな作業が苦でなく、丁寧に検体を観察することができる人が挙げられます。

術中迅速診断などでは、検体を素早く的確に処理し、診断しなくてはならないので、冷静な判断力が必要です。

また、病理医が日々観察診断をするのは主に検体ではありますが、その背景には患者さんの命が関わっていることを忘れてはいけません。

患者さんのつらさ、大変さを想像でき、それに貢献しようと努力できる人には適性があるといえます。

病理医の志望動機、目指すきっかけ

病理学特有のおもしろさと興味

病理医になるきっかけは人によってまちまちですが、「病理学特有の側面に惹かれた」という人が多く見受けられます。

・予防や治療よりも、診断のみを専門に追求していきたかった
・形態観察が好きで、細胞の働きや分化していくさまを想像すると興味深い
・実習で患者さんを前に学んだ疾患と、病理部で見た病理組織を結びつけ、純粋な感動を覚えた
・自分の診断によって患者さんに大きな利益があったときにやりがいを感じるから

など、いろいろな理由で病理専門医になる人がいます。

病理医の雇用形態、働き方

ほとんど全ての病理医が常勤

病理医の業務は多岐にわたり、また責任も大きいものなので、ほぼ全ての病理医の雇用が常勤となり、パート求人は基本的にありません。

病理医の人数自体が少なく、ケースカンファレンスなどへの出席などもあり、残業が多い傾向にあります。

また、それに比例して年収は高くなります。

病理医は受け持ち患者がおらず、業務も比較的マイペースにこなせることから、女性の病理医も多くいます。

産休・育休などは取りづらいかもしれませんが、子育てが落ち着いた頃に、病理医として職場復帰するかたもいます。

数は少ないものの、女性医師が子育てをしながら働ける環境を整えている病院もあり、病理医も時短勤務や勤務日の調整ができるようになっています。

病理医の勤務時間、休日、生活

所属する医療機関に準ずる

病理医の勤務時間は所属している医療機関に準じます。平日は8時前後~17時前後、土曜診療は8時前後~12時前後が目安です。

業務は比較的自分のペース配分でできるため、時間の融通がつきやすい職種ではあります。

ただし、平日は通常業務のあとに症例検討会が行われることがあり、週に10時間前後の残業があることが多いです。

病理医の所属する医療機関は、入院施設のある大きな病院が多いので、月に4回~5回の当直があることもあります。

また、大学附属病院に勤務している病理医は、教員活動を行うときもあります。

病理医の求人・就職状況、需要

就職・転職共に需要が高い

病理医は患者さんの診療方針に影響を与えるにも関わらず、常に人数が不足している状況です。

ですので病理医の需要は高く、どこの地域でも求人は豊富にあります。

首都圏でないと求人がない、などということはなく、常にどこかしらで病理医は求められています。

病理専門医の資格があれば就職できる、と言っても過言ではないと思われます。

現在、300床以上の総合病院で常勤の病理医がいる病院は、半数程度しかありません。

求人情報を出している病院も、ほとんどがベッド数200床以上の病院です。

複数名募集ということはなく、だいたい1名のみの募集です。

病理医の転職状況・未経験採用

転職先は豊富だが未経験採用はない

病理医は常に需要の高い職種のため、転職や再就職は非常にしやすいといえます。

出産のため退職したのち、病理専門医として再就職する女性医師もいます。

病理医は、病理専門医に認定される過程で少なくとも4年は研修を受けており、認定試験にも合格しているため、未経験での採用は必然的にありません。

また未経験の状態から病理医になるには指定の研修機関に行かなければいけないので、そういった意味でも未経験採用はないといえます。

病理医の現状と将来性、今後の見通し

病理医は慢性的に不足している

昨今は、医療の世界でもデジタル化・簡易化が進んでおり、簡単な検査なら血清をテストツールにひたすだけで結果が出てしまいます。

それでも、組織の微妙な変化をとらえる病理検査、特に細胞診の分野では、今でも人の目でないと診断することは難しいのが現状です。

また、CPC研修の必修化にともない、研修医を受け入れる病院には必ず1名は病理医が必要になりました。

参照元:リクルートドクターズキャリア

しかし病理医の絶対数が少なく、さらに半数近くは大学病院所属なので、病理医は慢性的に不足しています。

病理医の存在意義をもっと多くの人に知ってもらい、病理医になる医師を増やすことは、医学界全体の課題でもあります。