理容師の仕事とは? 仕事内容から理容師にしかできないことまで徹底解説
カットやシェービング、パーマなど、さまざまな技術を駆使してお客さまの容姿を整え、清潔感と魅力を引き出す専門職です。
この記事では、理容師の仕事内容から法律で定められた独占業務、美容師との違い、勤務先の種類まで、理容師という職業の全体像をわかりやすく解説します。
- 理容師は理容師法で定められた国家資格職で、髪のカットや顔そり(シェービング)で容姿を整えます
- 2022年時点で理容所は112,468軒、従業理容師数は204,883人です(厚生労働省『衛生行政報告例』)
- カミソリを使った顔そりは理容師だけに許された独占業務で、美容師にはできません
- 理容師の主な勤務先は個人経営の理容室、チェーン店、訪問理容サービスなど多岐にわたります
- 理容師になるには専門学校で2年以上学び、国家試験に合格する必要があります
理容師とは?
理容師とは、理容師法に基づいて髪のカットや顔そりなどで人の容姿を整える国家資格職です。
理容師法第1条の2第1項では「頭髪の刈込、顔そり等の方法により、容姿を整えること」と定義されています。
カットだけでなく、シャンプー、シェービング、パーマ、カラーリングなど、幅広い技術を用いてお客さまの身だしなみをサポートする仕事です。
厚生労働省『衛生行政報告例』(2022年度)によると、日本全国の理容所数は112,468軒、従業理容師数は204,883人です。
理容師の定義と役割
理容師は単に髪を切るだけではなく、お客さまの要望を聞き取り、髪質や骨格に合わせた最適なスタイルを提案します。
多くの人の美容と健康を支える役割を担っており、地域の身近な相談相手としても信頼されています。
理容室に来店されたお客さまに、ひとときのやすらぎと整った外見で快適な生活を送ってもらうことが理容師の大切な役割です。
美容師との違い
理容師と美容師は似ている職業ですが、法律上の定義と業務範囲が異なります。
美容師法第2条第1項では、美容師の業務を「パーマネントウエーブ、結髪、化粧等の方法により、容姿を美しくすること」と定義しています。
つまり、理容師は「容姿を整える」ことが目的で、美容師は「容姿を美しくする」ことが目的という違いがあります。
実際の業務では両者とも髪のカットやパーマを行いますが、カミソリを使った顔そり(シェービング)は理容師だけに許された独占業務です。
厚生労働省『衛生行政報告例』(2022年度)によると、美容所数は269,889軒、従業美容師数は571,810人です。
理容師と美容師の違いでは、法的な業務範囲の違いや資格取得方法について詳しく解説しています。
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理容師の主な仕事内容
理容師の仕事は、カット、シェービング、シャンプー、パーマ、カラーリングなど多岐にわたります。
それぞれの施術には高度な技術と経験が必要で、お客さま一人ひとりに合わせた対応が求められます。
ここでは、理容師の主な仕事内容を具体的に見ていきましょう。
カット・散髪
カットは理容師の仕事の中心です。
お客さまの要望を聞き取り、髪質や骨格、ライフスタイルに合わせて最適な髪型を提案します。
ハサミ(シザー)を使ったカットやバリカンでの刈り上げなど、さまざまな技法を駆使して髪を整えます。
jobtag(厚生労働省職業情報提供サイト)によると、理容師の実施業務として「お客の髪をとかしながら切りそろえる」が実施率100%で、すべての理容師が行う基本業務です。
1人のお客さまのカットにかかる時間は平均30分から40分程度ですが、スタイルの複雑さや髪の長さによって変わります。
顔そり(シェービング)
顔そり(シェービング)は、理容師だけに許された独占業務です。
理容師法により、カミソリを使った顔そりができるのは理容師だけで、理容師法第6条の規定により、美容師が業としてカミソリで顔を剃ることはできません。
カミソリでヒゲや顔のうぶ毛を剃ることで、清潔感のある爽快な仕上がりを提供します。
jobtag(厚生労働省職業情報提供サイト)によると、「かみそりを使用し、シェービングローションをつけてお客のひげや眉をそる」業務の実施率は100%です。
シェービングは肌を清潔に保つだけでなく、古い角質を除去する効果もあり、肌の健康維持にも役立ちます。
近年では女性向けのレディースシェービングも人気で、結婚式前のブライダルシェービングなど需要が広がっています。
僕が理容師の良いところだと思っているのは、【お客さまをマンツーマンで担当できる】という点。美容師さんだと、カット担当者とカラー担当者が分かれていることもありますが、理容師は最初から最後まで1人で担当するので、お客さまに喜んでもらえたときの達成感が大きいです。
出典:note | はじめまして。銀座でフリーランス理容師をしている斉藤です。|斉藤
シャンプー
シャンプーは、カット前後に髪を洗う作業です。
頭皮の汚れや余分な皮脂を落とし、髪を清潔に保ちます。
jobtag(厚生労働省職業情報提供サイト)によると、「お客にシャンプーをする」業務の実施率は100%で、すべての理容師が行います。
シャンプーの際には、頭皮マッサージを行うこともあります(実施率98.2%)。
マッサージによって血行を促進し、お客さまにリラクゼーションを提供します。
パーマ・カラーリング
パーマやカラーリングも理容師の重要な業務です。
パーマは薬剤とロッドを使って髪にウェーブをかける技術で、カラーリングは髪を染めて色を変える施術です。
jobtag(厚生労働省職業情報提供サイト)によると、「お客の髪にカラーリングやパーマをする」業務の実施率は100%です。
最近では白髪染めの需要も高く、年齢を重ねた男性客からの依頼が増えています。
カラーリングの際には、お客さまの髪の色合いを確認する「カラーコーディネイト」も行います。
その他の施術サービス
理容師が提供する施術は、カットやシェービングだけではありません。
近年では、ヘッドスパ、眉毛カット、フェイシャルエステなど、付加価値の高いサービスを提供する理容室も増えています。
jobtag(厚生労働省職業情報提供サイト)によると、「お客の顔、首、頭皮をもみほぐす」業務の実施率は98.2%で、ほとんどの理容師がマッサージサービスを提供しています。
また、「ローション、トニックなどの男性用化粧品を販売する」業務も実施率85.7%と高く、物販も理容師の業務の一部です。
理容師にしかできないこと
理容師には、法律で定められた独占業務があります。
ここでは、理容師だけが行える業務とその専門性について詳しく解説します。
法律で定められた独占業務
理容師の独占業務は、理容師法で明確に定められています。
理容師法第6条では「理容師でなければ、理容を業としてはならない」と規定されており、無資格者が理容業務を行うことは禁止されています。
具体的には、カミソリを使った顔そり(シェービング)が理容師の独占業務です。
理容師法第6条の規定により、美容師が業としてカミソリで顔を剃ることはできません。
この規定は、衛生面の安全性を確保し、専門的な技術を持つ理容師だけが刃物を扱うことで事故を防ぐためです。
理容師と美容師が法律で分けられたのは、衛生管理の観点からです。明治時代、理髪業(現在の理容業)は男性客中心で顔そりを伴う業務でしたが、美容業は女性客中心で化粧や結髪が主でした。カミソリを使う理髪業は感染症リスクが高いため、厳格な衛生基準と専門技術が求められました。この違いから、1947年に理容師法、1957年に美容師法が制定され、それぞれ別の国家資格として確立されました。
出典:e-Gov法令検索 理容師法
カミソリを使った顔そりの専門性
カミソリを使った顔そりは、高度な技術と経験が必要な専門業務です。
刃物を直接肌に当てるため、適切な角度や力加減、肌の状態を見極める技術が求められます。
シェービングの技術には、肌を傷つけずに深剃りする「レザーシェービング」、肌に優しい「ソフトシェービング」など、さまざまな手法があります。
また、シェービングは古い角質を除去する効果もあり、美肌効果が期待できます。
近年では女性向けのレディースシェービング市場も拡大しており、ブライダルシェービングなど特別な日の準備として需要が高まっています。
メンズグルーミングの総合サービス
理容師は、男性の身だしなみを総合的にサポートする役割を担っています。
カットやシェービングだけでなく、眉毛の手入れ、フェイシャルケア、ヘアスタイルのアドバイスなど、男性の外見を整えるトータルサービスを提供します。
最近では「バーバーブーム」と呼ばれる流行があり、クラシカルな理容技術とモダンなデザインを融合させたオシャレな理容室が若者に人気です。
理容師は、時代のニーズに合わせてサービスの幅を広げながら、男性美容の専門家として活躍しています。
理容師のやりがいと魅力|現役理容師が語る仕事の楽しさでは、理容師ならではのやりがいについて詳しく紹介しています。
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理容師の勤務先の種類
理容師の勤務先は、個人経営の理容室からチェーン店、訪問理容サービスまで多岐にわたります。
それぞれの勤務先には特徴があり、働き方や収入も異なります。
個人経営の理容室
個人経営の理容室は、地域密着型の店舗が多く、常連客との信頼関係を大切にします。
店主が一人で経営する小規模店から、数人のスタッフを雇う店舗まで規模はさまざまです。
個人店では、お客さま一人ひとりとじっくり向き合えるのが魅力です。
長年通ってくださる常連のお客さまの好みや髪質を把握し、細やかなサービスを提供できます。
チェーン店・大型店
QBハウスに代表されるカット専門チェーン店も、理容師の主要な勤務先です。
QBハウスは全国に約585店舗(国内、公式公表値)を展開し、カット料金は2025年2月1日から1,400円(税込)です。時間効率を重視した短時間カットを提供しています。
チェーン店では、効率的なオペレーションとマニュアル化された技術が特徴です。
短時間で多くのお客さまに対応するため、スピードと正確性が求められます。
また、大型ショッピングモール内の理容室やホテルの理容室など、企業が運営する店舗もあります。
訪問理容サービス
訪問理容は、高齢者や身体が不自由な方の自宅や介護施設を訪問して理容サービスを提供する業務です。
高齢化が進む日本では、訪問理容の需要が年々増加しています。
リクルート「ホットペッパービューティーアカデミー」の調査では、施設の訪問理美容サービス利用は継続的に行われており、直近1年以内の利用経験や実施回数の増加傾向が報告されています。需要は高齢化に伴い拡大しています。
訪問理容では、限られたスペースと道具で施術を行う技術と、お客さまやご家族とのコミュニケーション能力が求められます。
理容師の勤務先の種類を徹底比較|個人店・チェーン店・訪問理容の違いと選び方では、勤務先ごとの特徴と選び方を詳しく解説しています。
理容師の働き方
理容師には、正社員、アルバイト、独立開業、フリーランスなど、さまざまな働き方があります。
自分のライフスタイルやキャリアプランに合わせて働き方を選べるのも、理容師の魅力の一つです。
正社員・アルバイト
理容室に雇用される働き方が、最も一般的です。
正社員として働く場合、安定した収入と福利厚生が得られます。
アルバイトやパートタイムとして働く選択肢もあり、子育て中の方や副業として働く方にも適しています。
厚生労働省『賃金構造基本統計調査』(2024年)によると、理容師の平均年収は約371.7万円です。
独立開業・フリーランス
経験を積んだ理容師の中には、独立して自分の店を持つ人もいます。
独立開業には初期費用がかかりますが、自分の理想の店づくりができるメリットがあります。
また、近年では「面貸し」と呼ばれるフリーランスの働き方も増えています。
面貸しとは、理容室の椅子(面)を借りて、個人事業主として施術を行うスタイルです。
フリーランス理容師として活動すれば、働く時間や料金設定を自分で決められる自由度があります。
理容師の働き方5選|正社員・独立・フリーランス・訪問理容を徹底比較では、それぞれの働き方のメリット・デメリットを詳しく紹介しています。
まとめ
理容師は、髪のカットや顔そりを通じて人の容姿を整える国家資格職です。
カミソリを使った顔そりは理容師だけに許された独占業務で、高度な技術と専門知識が求められます。
理容師の仕事は多岐にわたり、個人経営の理容室からチェーン店、訪問理容まで、さまざまな働き方が選べます。
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この記事の参考資料・データ出典
政府統計
- 厚生労働省「令和4年度衛生行政報告例」(2023年9月公表)
- 厚生労働省「令和6年賃金構造基本統計調査」(2024年7月公表)
- 厚生労働省「職業情報提供サイト(jobtag)理容師」
- e-Gov法令検索「理容師法」
業界団体
民間調査
- J-Net21(中小企業基盤整備機構)「理容業調査」
- リクルート「ホットペッパービューティーアカデミー」施設訪問理美容サービス利用調査




































