幼稚園教諭を辞めたくなったとき(体験談)

自問自答の日々

どうして、話を聞いてくれないんだろう? 隣のクラスはまとまっているのに…。
次の行事に向けて、どうするべき? 子どもたち、楽しくないだろうな…。
どうしてできない? 楽しくない、辞めたい…。

幼稚園教諭になって3年目はずっとそんな自問自答を繰り返していました。好きだった仕事なのに、なぜこんな風になってしまったのか?

そんな時期を越えられたきっかけは何だったのかを振り返ってみます。

憧れの先輩のようにならなくてはいけない

一年目に一緒に組んだ先輩先生。キャリアは5年、素晴らしいお人柄で子どもたちはもちろん、同僚や保護者からの信頼も絶大でした。

後輩へのフォローも温かくて、本当にたくさん助けていただきました。

私が3年目に入る年に、先輩は退職。そして、3年目の私が実質的に最年長になってしまいました。

この幼稚園で、最年長になったということは、先輩がしてくれたように全体を見渡して、後輩もフォローして、子どもたちを愛おしんで…。

こうして挙げるだけでも三年目の私には到底不可能な理想ばかりが、私の頭の中を占領していました。

心ここにあらず=子どもは正直

こんな気持ちを抱えて担任したのは、年長組。幼稚園生活にも慣れて、心がグンと成長する学年です。

表向きは担任として、毎日を大切にそして、子どもたちと楽しく過ごし、かわいい!と思っていたはずですが心の奥で毎日、自分にダメ出しばかりしていた毎日。

子どもたちは、そんな担任の心を映す鏡のようにざわつき、クラスもバラバラでした。そんな子どもたちを見て、こんなはずではないのに…と落ち込む日々。

完全に悪循環でした。

もう、辞めます

そんな中迎えた、運動会。子どもたちは、実力以上の素晴らしい力を発揮して、立派な姿を見せてくれます。

行事のたびに、感謝と感動で胸がいっぱいになって、やっていてよかった。と思うのですが、この年はもう終わりにしよう。その気持ちが感動と同じくらい湧きあがりました。

そして、運動会の数日後に同僚に「もう今年で辞めます」と告げました。

誰も望んでいなかった

ずっと胸に抱えていた想いを打ち明けて、同僚との話し合い。とても驚いていて、話を聞いてくれました。

そして、気づいたこと。誰も、私に偉大な先輩のようになって欲しいなんて思っていませんでした。

逆に、まだまだ経験の浅いメンバーの中で、上に立たざるを得ない私が、どうしたら楽になれるのか…。

そんなことを、みんなが考えてくれていたのです。

一人ではない

辞めたい気持ちがすぐに解消した訳ではありませんでしたが、自分がやらなくてはいけない!と勝手に抱え込んでいたことを、手放してもいいのかも知れないと思い始めました。

「できないことは、同僚を信じて頼ってもいいのかも知れない。」

そう思い始めたら、本来のように純粋に保育が楽しくて、子どもたちが愛しくて仕方のない気持ちが蘇ってきました。

そう思ったら、面白いようにクラスがまとまり始めました。

恵まれていることに気づく

3年目の私を筆頭に、2年目が2人、1年目が2人。小規模な幼稚園で、経験の浅い担任たちを信じて、見守ってくれる温かい上司と、その他のスタッフさんたち。

そんな幼稚園を選んで、入園してきてくれる園児とそのご家族たち。

悩んで周りの見えない時期は、自分がどれだけ恵まれた環境で仕事をしているのかまったく気づきませんでした。

それに気づいてからは、背伸びせずに、私だからできることは何だろうと考えて過ごすことができるようになりました。

と同時に、まだまだこの幼稚園で、この同僚たちと仕事をしたいと思ったのです。

1年目、2年目は初めて尽くしで、悩む暇もなく毎日を過ごしていました。

そして3年目。一通りの経験を積んで余裕が出てきたことで、欲が出たり、勝手な理想像を作り上げてしまっていたのだと思います。

理想ばかり見上げて、目の前のかわいい子どもたち、幸せな環境にいる現実が見えなかったこの時期は、本当に苦しかったです。

過去でもなく、未来でもない、今の自分や周りの人を大切にすることが、仕事をしていく上でとても大切だということがわかった3年目でした。