通訳の仕事内容・なり方・年収・資格などを解説

「通訳」とは

通訳の仕事内容・なり方・年収・資格などを解説

ビジネスや観光の場で、二つ以上の異なる言語を、お互いの国の言葉に訳して相手に伝える。

通訳とは、2つ以上の異なる言語を、お互いの国の言葉に訳す人のことです。

通訳は、活躍する場面や分野によって、いくつかの種類に分かれます。

・国際会議での通訳を行う「会議通訳」
・商談などのビジネスの話で通訳をする「ビジネス通訳」
・スポーツ選手や来日する芸能人の通訳を担当する「スポーツ・芸能通訳」
・日本への観光客を案内する「通訳案内業」

通訳として働くためには、通訳のエージェントや派遣会社に登録し、仕事をあっ旋してもらう方法が一般的です。

通訳案内業以外で必須の資格はありませんが、通訳の養成スクールで訓練してから仕事をはじめる人が多いです。

また、医学や法律など特定の専門分野に強みがあると採用されるチャンスが広がり、よい待遇で働きやすくなります。

「通訳」の仕事紹介

通訳の仕事内容

異なる言語をお互いの言葉に訳すプロフェッショナル

通訳は、異なる言語をお互いの国の言葉に訳す人のことです。

活躍の場や分野によって、以下のような種類の通訳に分かれます。

・政治の場で各国間の通訳を行う「政治通訳」
・国際会議での通訳を行う「会議通訳」
・ビジネスの場で商談などの通訳をする「ビジネス通訳」
・スポーツ選手や来日する芸能人の通訳を担当する「スポーツ・芸能通訳」
・日本への観光客を案内する「通訳案内業」

また、通訳の手法は、話し手の言葉を聞くと同時に訳す「同時通訳」や、ひと呼吸置いてから話をまとめる「逐次(ちくじ)通訳」通訳者がその場に立ち会って聞き手の耳元で訳した言葉をささやく「ウィスパリング」など、さまざまなものがあります。

言葉の裏の感情やニュアンスも伝える

グローバル化が進むなか、政治や文化、スポーツ、ビジネスなどのあらゆる場面で通訳のニーズが増しています。

優れた通訳を行うためには、高度な語学力の習得はもちろんのこと、活躍する場に関連する専門知識も身につけなくてはなりません。

また、通訳には、対象者が発する言葉のニュアンスや、「行間を読む」といった人間的なぬくもりを一緒に伝えることも求められます。

そのためには、各言語が話されている国の歴史や文化を深く理解し、その国ならではの言い回しや精神性までをも理解する必要があります。

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通訳になるには

大学の外国語学部や通訳の専門学校に通う人が多い

通訳になるにあたって必須の資格や学歴はありません。

ただし、高度な語学力が求められ、少し語学が得意な程度では、なかなか仕事としては務まりません。

そのため、通訳を目指す人の多くは大学の外国語学部など、語学系学部の出身者や海外留学経験者です。

加えて、通訳の専門学校や語学学校の通訳養成コースに通い、通訳の手法や通訳ならではのスキルを身につける人も多くいます。

いずれにしても、常に語学力を研鑽する環境に身を置くことが大切です。

通訳の多くはフリーランスで働く

通訳の多くはフリーランスで仕事をしており、一般企業で正社員として働ける例はあまり多くありません。

一般的には、通訳のエージェントや派遣会社に登録することで、仕事を紹介・あっ旋してもらいます。

継続的に勉強を続けつつ、受注できた小さな案件からコツコツと実績を重ねて、少しずつ大きな案件につなげるための信頼と人脈を獲得していきます。

人によって異なりますが、安定して仕事ができる通訳になるまでには時間がかかることも想定しておく必要があるでしょう。

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通訳の学校・学費

通訳養成を目的としたスクールに通う人が多い

通訳を目指すのであれば、まずは語学力を身につける必要があります。

大学進学を希望する場合は、外国語学部が有力な選択肢になるでしょう。

大学によっては通訳者を育成するコースが設置されており、語学に限らず幅広い勉強をして、一般常識を身につけることができるのは大学の魅力です。

また、民間の通訳養成スクールでは、通訳を目指すことに特化した勉強に打ち込めます。

スクールによってカリキュラムはさまざまですが、ビジネスの分野で活躍するための通訳、国際会議で活躍するための通訳など、目的別にコースを選べるスクールが多いです。

通訳を志す多くの人が大学卒業後、あるいは社会人として働きながらこうしたスクールに通い、さらに高い実地レベルの語学の勉強をしています。

通訳の資格・試験の難易度

語学力を証明する資格が役立つことも

一般的な通訳を目指すにあたって、必ずしも資格を得る必要はありません。

資格そのものよりも、語学力を高めていくことが重要であり、さまざまな実務経験を積み上げることで評価も上がります。

ただし、一定の語学レベルに達していることを示す意味では、各言語の資格が役立ちます。

英語系の資格でいえば「TOEIC」860点以上を得ると、Non-Nativeとして十分なコミュニケーションができるとみなされます。

しかし、プロの通訳を目指すのであれば、さらに高得点を得る努力が求められます。

なお、通訳ガイドとして活躍したい場合には「通訳案内士」の資格が役立ちます。

この資格は日本で唯一の語学通訳に関する国家資格で、取得すれば日本を訪れる外国人観光客に対して、有償で日本の観光地や文化を案内したり、旅行中のサポートを行うことができます。

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通訳の給料・年収

個々の実力や経験、キャリアによって収入差が出やすい

通訳の収入は、個々の働き方や能力、実績などによって大きな差が出やすいです。

フリーランスで働く通訳の場合、時給もしくは日給、あるいはプロジェクト単位の報酬で契約することが一般的です。

報酬額は、キャリアがある人ほど高くなる傾向です。

どうしても実績がある人のところに仕事が集まりやすいため、駆け出しの頃はなかなか依頼を受けることができず、思ったような収入を得ることができない場合があります。

また、フリーランスでは会社員のような福利厚生も見込めないため、不安定な生活を送る心構えで経験をコツコツと積んでいかなくてはなりません。

通訳として収入を上げていくには

あまり例は多くありませんが、企業に就職して、正社員として働く通訳も一部います。

その場合は決まった給料が得られ、会社の福利厚生も適用されるため、安定した生活を送りやすいでしょう。

通訳として活躍していくには、語学力に加え、特定の分野(医学系や理工系など)の得意分野があると強みになります。

とくにフリーランスの場合は、どれだけ自分の専門性をアピールし、実力を発揮できるかが評価につながっていきます。

新人時代は厳しい日々が続くかもしれませんが、専門分野や語学に関する学習を続け、与えられた仕事に誠実に向き合っていくことが重要です。

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通訳の現状と将来性・今後の見通し

国際化が進み、ビジネスの現場をはじめ、各業界で通訳を必要とする場面が増えています。

とくにビジネス通訳・会議通訳の需要は大きくなっており、貿易商社や輸入関連企業のみならず、メーカーをはじめとするさまざまな業種業態で、通訳が求められることがあります。

また、文化やスポーツなど、特定のジャンルに関する詳しい知識をもった通訳のニーズもあります。

どの言語を扱う場合でも安定した需要は見込めますが、一定以上のスキルがなければ務まらない専門職であり、仕事として十分に稼げる人・稼げない人の差が開きやすいのも事実です。

これから通訳を目指し、長期的にキャリアを築いていくには、最初は小さな仕事からでも着実に成果を積み上げていく努力と「この分野は負けない」といった専門性を磨いていく姿勢も必要になるでしょう。

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通訳の就職先・活躍の場

企業や行政で勤務する人のほか、フリーランスで働く人が多い

通訳の就職先のひとつは、民間の企業です。

貿易関係の企業や総合商社、製造メーカーなど、国際的な取引を活発に行う企業では、社内に専任の通訳を配属する場合があります。

また、営業や事務の仕事をしながら通訳の仕事を兼任しているケースも見られます。

次に挙げられるのが政府や自治体で、国際交流の窓口や産業活性化などを目的として、まれに通訳の求人が出ることがあります。

あるいは通訳スクールで、講師として後進の通訳の育成に励む人もいます。

ただし、通訳全体で見ていくと、上記のような企業や組織には所属せずにフリーランスで活動する人も非常に多い職業です。

フリーランスで通訳として活躍する場合は、多くはエージェントに登録して仕事の依頼を受け、単発で派遣先の企業や行政の職場や取引先で通訳を行っています。

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通訳の1日

フリーランスの通訳は案件によって動き方が異なる

企業内で通訳の業務に従事する場合は、各職場が定める勤務時間に沿って、担当業務をこなしていきます。

一方、フリーランスで活躍する場合には、案件によってその日の動き方がまちまちです。

「1日に2時間だけ」の案件もあれば、早朝や夜遅い時間に動くこともあります。

依頼が立て込むと、1日に複数の案件を手掛けたり、決まった休みが取れなかったりすることもあり得ます。

ここでは、フリーランス通訳のある1日の流れを紹介します。

9:00 現場に出勤
9:30 担当者との打ち合わせ
10:00 通訳開始
13:00 通訳終了・報告書作成
14:00 報告書提出
15:00 帰宅・翌日の準備
19:00 個人的な勉強

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通訳のやりがい、楽しさ

自分の通訳によって人と人の架け橋になれること

通訳にとってのやりがいは、自分の通訳によって「双方が通じ合えた」という事実を目の当たりにできた瞬間です。

異なる言語を扱う人たちの架け橋となれたと感じたときに、達成感が味わえます。

また、通訳として満足のいく仕事をするためには、よりネイティブに近い表現や言い回しを身につけるのみならず、文学的な表現からスラングといった新語まで、言語とともにある文化に対する知識をアップデートし続けなければなりません。

そうした知識を身につけて、現場で生かしていくことにやりがいを感じている通訳も多いです。

また、ビジネス通訳であれば、重要な取引になればなるほど専門用語や微妙な言い回しなどが頻繁に出てきて、難しいと感じる場面が増えるでしょう。

しかし、自分の通訳で大切な話がまとまったときなどには対象者から感謝され、喜ばしい気持ちになります。

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通訳のつらいこと、大変なこと

言葉の微妙なニュアンスや意図を的確に通訳する難しさ

言葉の微妙なニュアンスや意図を的確に通訳する難しさ

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通訳に向いている人・適性

語学を学ぶことが好きで、人との関わりも楽しめる人

通訳には語学力が求められるため、まずは語学を学ぶことが好きで、自主的に勉強できる人に向いている仕事といえます。

また、通訳は「言葉で人と人をつなぐこと」がメインの仕事です。

仕事では、初対面の人とコミュニケーションをとって通訳業務をすることも多いため、人とのふれあいや関わりを楽しめる人に向いています。

逆に、対人関係でストレスを感じてしまうような人にとっては、通訳は難しいかもしれません。

また、集中力があって、いざという局面で機転が利いたり、臨機応変に対応できるような人も、通訳の適性の一部があるといえるでしょう。

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通訳志望動機・目指すきっかけ

語学や海外の人とのコミュニケーションが好き

通訳を目指す人の多くが、学生の頃から外国語を学ぶのが好きだったり、海外の文化に関心があったと話します。

自分の適性や好きなことを生かせる仕事がしたいと考え、語学に関連する職業を検討した結果、通訳にたどりついたというケースが多いようです。

また、海外旅行先で言葉が通じずに困った経験がある人や、身近に外国人の友人がいてコミュニケーションをよくとっていた人など、外国語に触れる機会が多かった人が通訳を目指すこともしばしばあります。

新卒で通訳を目指す人が多くいる一方、いったん社会に出てから自分の得意な語学を生かせる仕事に転職したいと考えて、あらためて通訳を目指すケースも見られます。

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通訳の雇用形態・働き方

正社員として働く人は少なく、フリーランスが大多数

通訳として活躍している人の多くは、フリーランスの形態です。

一部、企業に所属して自社で通訳業務にあたる通訳者もいますが、あまり求人は多くありません。

フリーランスは自分で仕事を獲得していくため、比較的自由な働き方が可能です。

しかし、通訳として継続的に仕事を得て、収入を安定させることは簡単ではありません。

同時通訳ができたり、国際会議での通訳経験が豊富だったりなどハイレベルなスキルがある場合は、名指しで仕事が入ってくる場合もありますが、ごく一部のベテランに限られます。

多くの若手通訳は、派遣や単発通訳の案件で実績を積み、少しずつ信頼を得て仕事を増やしています。

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通訳の勤務時間・休日・生活

フリーランスは自己裁量で仕事をする

通訳としてフリーランスで活動する場合、案件ごとに仕事をする時間が異なります。

丸一日通訳の業務に携わるケースよりは、「数時間」「半日」などの短い単位の案件が多いでしょう。

なお、国際会議やビジネス通訳などの場合は年間を通じて不定期で発生しますが、観光通訳などはシーズンごとの繁忙期・閑散期があります。

ある程度の実績を積んでいくと、かき入れ時は多くの仕事の依頼が入って多忙になることもあります。

ただし、基本的には自己裁量で仕事量を決めていけるため、さほどムリのないかたちで、余裕をもって働いている人も多いです。

通訳の求人・就職状況・需要

ビジネス通訳の需要は拡大しているが、積極的にアピールを

グローバル化が進んだ現代社会では、とくにビジネス通訳の需要が拡大しています。

国際的な取引を積極的に進めている企業では、業務上日常的に通訳が必要なことも多いため、自社で通訳を採用することもあります。

ただし、全体としてはやはりフリーランスとして活躍する人が大半を占めており、正社員雇用の求人は非常に少ないです。

通訳者の多くは通訳エージェントなどに登録をし、案件を紹介してもらうかたちで仕事を得ています。

フリーランス通訳の場合、黙っていて仕事がもらえる人は限られているため、積極的に自分をアピールして仕事を獲得することが必要となるでしょう。

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通訳の転職状況・未経験採用

未経験者はとにかく経験値を高めていく

未経験の状態から、転職後すぐにプロの通訳として働くことは、ほぼ不可能に等しいといえます。

現在、通訳の募集はインターネットを通じて行われることも増えていますが、経験者を想定した募集になっていることがほとんどです。

経験値がものをいう通訳業界では、どうしても経験のあるベテラン通訳に仕事が集まる傾向が強く、未経験者にまで仕事が豊富に回ってくる機会が少ないのが実情です。

したがって、実績に乏しい通訳者は、まず複数の通訳エージェントに登録し、小さな仕事を地道にこなして実績を積みましょう。

そこから信頼を得て、徐々に大きな仕事につなげていく努力が求められます。

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通訳コーディネーターになるには

未経験でも採用されるが、営業力やビジネススキルの高い人は歓迎される

通訳コーディネーターとは、通訳を必要とする企業や個人のクライアントと、実際に業務を行う通訳者をつなぐ人のことです。

おもに通訳派遣会社で活躍しており、クライアントから「通訳者を探している」という依頼があった際には、その窓口となって、クライアントとの折衝を担当します。

相手の要望や仕事の内容、予算などを細かくヒアリングしたうえで、スタッフ登録している通訳者をアサインします。

クライアントのニーズを満たせる最適な通訳者を選定するための重要な役割を担います。

基本的に、通訳コーディネーター自身が通訳をすることはないため、高い語学力は求められません。

未経験者でも採用される可能性は十分にありますが、営業力や折衝力、企画提案力などが求められるため、人材関連の仕事をしていた人、法人営業経験者は優遇されることがあります。

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医療通訳士になるには

医療通訳に関連する資格取得がおすすめ

「医療通訳士」とは、さまざまな場で活躍する通訳のなかでも、病院などの医療現場において通訳を担当する人のことです。

日本国内の場合、日本語を話せない・理解できない外国人患者が適切な医療サービスを受けられるように、医師など医療従事者と患者の間に立ってコミュニケーションを手助けします。

医療通訳士は民間の資格制度があり、有名なのが一般社団法人日本医療通訳協会が実施する「医療通訳技能検定試験」です。

言語は英語と中国語、ベトナム語、韓国語に対応しており、医療全般に関わることができる「1級」と、健康診断や検診に対応できる「2級」が実施されています。

もうひとつ、一般財団法人日本医療教育財団の「医療通訳技能認定試験」もあり、こちらは英語と中国語に対応しています。

医療通訳の勉強ができる民間スクールもあるため、調べてみるとよいでしょう。

このような資格を取得し、通訳としての実務経験を積んで、医療現場での通訳の求人を探していくのが一般的なルートです。