栄養士になるには
栄養士の働き方はさまざまであり、将来は個々のキャリアプランに応じてさまざまな活躍の仕方が望めます。
本記事では、栄養士になるためのルートや学校、資格など、必要な情報をまとめて紹介します。
栄養士になるには
栄養士として働くためには、まず「栄養士」の資格を取得する必要があります。
栄養士の資格は、厚生労働大臣が指定した大学や短大、専門学校の栄養士養成課程を修了し、卒業することで得られます。
これらの学校を卒業すれば、無試験で都道府県知事から免許証が交付されます。
なお栄養士養成課程は昼間の学校のみで、夜間コースや通信課程はありません。
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栄養士の資格・難易度
栄養士の難易度
栄養士の資格は、栄養士養成課程のある特定の学校を卒業することで得られます。
国家試験など特別な試験は設けられていないこともあって、毎年2万人以上が資格を取得しています。
なお、栄養士養成施設は大学から短大、専門学校まで全国に相当な数があり、学校によって難易度が若干異なります。
専門学校であれば入学試験は面接や作文のみとするところもあり、比較的入学はしやすいです。
資格取得のために学ぶこと
栄養士になるためにまず身につける必要があるのは、栄養学をはじめ、食と健康に関する豊富な知識です。
加えて、栄養素を消化・吸収する人体の構造についても知ることになります。
身体機能や構造と食事の関わりについて理解をしておくことは、栄養士として絶対に欠かせません。
また、栄養士は現場で調理も行うため、調理に関する知識、食材別の適した調理方法などまで学びます。
このように、栄養士といっても、教科書に書かれた栄養素についてただ単独で知っていればよいというわけではありません。
栄養に関連する人体や衛生、調理などまで幅広い知識・技術を身につけていくことが必要になります。
栄養士の養成施設では、座学で知識を深めていくだけではなく、実際に学んだ知識を生かして調理をすることによって、現場で力を発揮できるだけの調理技術を高めます。
栄養士になるための勉強は範囲が広く、在学中は忙しい日々を送ることになりますが、学ぶことは栄養士として不可欠なものばかりです。
栄養士になるための学校の種類
栄養士になるためには、栄養士の養成課程を置く学校に通って、栄養士の資格を取得する必要があります。
栄養士の養成課程がある学校は、大きく分けて以下の3種類です。
- 大学
- 短大
- 専門学校
栄養士養成施設はいずれも「昼間部」となっており、それぞれ特色や在学期間などが異なります。
ここでは、各学校の特徴について見ていきましょう。
4年制大学(栄養学科など)
栄養士を目指せる4年制の大学には、「栄養士養成課程」と「管理栄養士養成課程」の両方を置く大学があります。
栄養士と管理栄養士は名称こそ似ていますが、それぞれなるために学ぶこと、資格制度などが異なります。
最もわかりやすい違いとして、管理栄養士になるには学校で学んだのちに国家試験を受験し、合格しなくてはなりません。
管理栄養士国家試験の受験資格を得るためには、管理栄養士の養成課程がある大学に進学する必要があります。
したがって、栄養士に加えて管理栄養士の資格を取得したいかどうかを考えて、学校選びをしましょう。
以下で、栄養士を目指せる主な学部・学科の種類を紹介します。
栄養学部系
栄養学部を設置している大学は少なく、またカリキュラムは理系寄りでハイレベルです。
ただ、栄養学部では奥ゆきのある視点で、より広く、深く栄養学を勉強することができます。
仕事に役立てたい人、教育・研究分野に進みたい人にはおすすめです。
家政学部食物学科系
家政学は、家庭を含む一般社会での人間生活を主に自然科学、人文科学分野から研究し、生活・文化に役立てようと考える学問です。
栄養学をベースに科学知識を身につけたい人や、家庭・一般社会での食生活を指導していきたいという人におすすめです。
4年制大学の学費
私立大学の場合、学費は年間100万円から130万円程度が相場ですが、1年次は入学金が必要となるため150万円ほどになる学校もあります。
このほか、教材代や実習にかかる費用、同窓会費などが合計10万円から30万円ほどかかるのが一般的ですが、国公立大学であれば、私立大学の3分の2程度の学費でおさまるところが多いようです。
短期大学
短期大学には2年制・3年制、専門学校には2年制から4年制までのコースが設置されています。
4年制の専門学校では、大学と同じように「管理栄養士養成課程」が設置されている学校があるため、将来どのように働きたいかをイメージして学校を選びましょう。
栄養学の基礎・実践までを大学で体系的に学びたい、専門科目や他の科目もじっくりと学びたいという人には、4年制がおすすめですが、もちろん、2年制・3年制でも専門科目は学べます。
栄養士になるための短大
短大では、2年間で栄養士になるための知識や技術を基礎から身につけることが可能です。
また、大学と同じように一般教養などの科目も用意されているため、職業人としてだけでなく、人間性を深める教育を受けることができます。
基本的にはそのまま栄養士になる道をたどる人が多いですが、なかにはほかの職業に就く人もいます。
短大の学費
短大での年間学費は100万円から130万円程度が相場ですが、1年次は加えて、入学金が20万円から40万円程度かかります。
このほか、教科書やテキスト代、実習費、課外活動費、卒業準備金などが学校によって必要になります。
専門学校
より実践的な内容のカリキュラム
専門学校の特徴は、栄養士としてより実践的な教育に力を入れている点にあります。
一般教養や語学なども学ぶ大学や短大とは異なり、専門的な科目がカリキュラムの大半を占め、栄養士という職業と密接した科目を中心に学ぶことになります。
学校によって異なりますが、多くは2年制なので少しでも早く卒業して仕事に就きたいと考えている人には適しています。
専門学校の場合、大学や短大以上に実習に力を入れているところが多く、とくに調理技術の向上を目指したカリキュラムを置く学校もあります。
学校の特色によって学費にも幅が出てくるため、よく比較してみることをおすすめします。
専門学校の学費
専門学校の場合、年間の学費は100万円から150万円程度が一般的で、大学や短大と同様1年次には入学金もかかります。
学費のほか、教材費(教科書や白衣、包丁セットなど)および同窓会費などがかかる学校が多いようです。
栄養士養成施設を選ぶポイント
栄養士養成施設を選ぶポイントは、以下の6点です。
- 学校の歴史
- 教授陣の経歴
- カリキュラム内容
- 卒業生の就職率
- 設備や施設
- 自宅からの距離や交通費
また、興味のある学校が見つかった場合には、いきなり受験するのではなく、以下のような事前調査をしっかりしておきましょう。
- 学校のパンフレットを取り寄せる
- 先輩(OB・OG)に学生生活の話を聞く
- 進学相談会、オープンキャンパスに参加する
- 学校見学をする
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独学で栄養士になれる? 勉強内容は?
完全な独学では栄養士の資格が取れない
栄養士の資格は、栄養士養成課程を置く学校で最低でも2年間学ばなければ取得することができません。
したがって、完全な独学のみで栄養士になるのは不可能です。
高校卒業後などに栄養士の勉強ができる学校に通う大変さはありますが、栄養士には国家試験制度がないため、管理栄養士と比べると資格取得はしやすいです。
養成施設に通う時間を確保する
栄養士になるためには必ず養成施設に通わなくてはならないため、通学の時間を確保する必要があります。
また、栄養士養成課程は昼間のみです。夜間部は設置されていないことから、日中に仕事をしながら学校に通うのは難しいため、栄養士への転職を考える人は注意が必要です。
栄養士に向いている人
食への興味がある人
食に深く関わる栄養士は、食べることに関して興味が強い人が望ましいです。
食べ物に対しての好奇心を持ち、食材にどのような栄養があり、どうやって料理を作るのかということを常に考えるような人は栄養士に向いているといえます。
また、子どもから高齢者、健康な人、病気の人といった個人に合わせた食事内容を提供していくことになるため、健康についての関心や料理技術の向上、市場に出回っている食材の把握も重要になってきます。
実際に調理をすることもあるため、料理が好きであると仕事に役立ちます。
体力のある人
栄養士は、長時間の立ちっぱなしで大量の料理を作らなければならない職場もあるため、体力があるに越したことはありません。
サービス精神のある人
栄養士は専門職ですが、「相手のニーズに合わせておいしく栄養のある料理を提供する」といったサービス業的な側面をもっているため、サービス精神があることも必要です。
探究心があり、人と接することが好きで、時代のニーズをつかめるような人は栄養士に向いているといえるでしょう。
栄養士になるために勉強することは?
栄養
栄養学
各栄養素と、年代別に必要な栄養素、また栄養素が体内でどのように消化・吸収され、健康に影響を与えていくのかを学びます。
食生活論
食事と人間の生活について理解し、豊かな食生活とは何かを考えていきます。
臨床栄養学
さまざまな疾病と栄養の関係、栄養の面からの疾病の治療・予防について学びます。
公衆栄養学
集団や地域における人々の健康や栄養の問題について学びます。
栄養指導論
栄養学の知識を基にして、食事療法・運動療法の指導方法について学びます。
食品衛生
食品学
各食品の分類や特徴、その栄養素について学びます。
食品加工学
加工食品の加工技術や微生物、酵素の作用などについて学びます。
食品衛生学
食中毒・食品添加物についてや、微生物や食中毒菌について学びます。
食料経済学
食品の生産や加工、流通、販売、消費の一連の流れのなかで発生する問題について学びます。
公衆衛生学
地域社会で人々の健康を守り、推進する方法について学びます。
給食運営
調理学
食材別のよりよい調理方法や料理の組み合わせなどについて学びます。
給食管理
給食での栄養管理や食材管理、衛生管理、原価計算などについて学びます。
人体
解剖生理学
栄養素が、人体のどの器官でどのように消化・吸収され、代謝されていくのかを学びます。
生化学
生体の仕組み、栄養素や生体成分の化学的な性質、免疫系や遺伝などについて学びます。
運動生理学
人間が運動やスポーツを行った場合に、呼吸や循環といった各機能がどのような変化をし、どのような影響を与えるのかについて学びます。
栄養士の働き方の種類とその特徴
栄養士には、以下のようにさまざまな働き方があります。
- 正社員
- パート・アルバイト
- 派遣社員
- 副業・在宅
- フリーランス
資格の生かし方も多様であり、自分のライフスタイルに合った働き方を見つけやすい職業といえるでしょう。
正社員の栄養士
栄養士になる人の多くが、正社員としての勤務を目指すといわれています。
正社員は他の雇用形態に比べると給与や待遇面では安定していますが、求人数はアルバイト・パートに比べると少ないです。
都道府県庁・市区町村などの地方自治体で採用され、公務員の栄養士として働く人もいます。
派遣の栄養士
派遣の栄養士
派遣の栄養士の仕事は、基本的に正社員と同じです。
福祉施設などで調理業務が中心となることもあれば、病院や学校などで献立作成や栄養指導にまで携わる場合もあります。
派遣の栄養士として働くには
派遣の栄養士として働きたい場合、まずは派遣会社に登録をするところからスタートします。
その際、希望の勤務条件などを派遣会社に伝えて自分に合う仕事を紹介してもらいます。
あらかじめ決められた期間で働くため、契約が終了すれば、また新しい職場を紹介してもらわなくてはなりません。
さまざまな職場で働くチャンスがあることや自分の都合や希望に合わせて職場を選べることは魅力的ですが、正社員よりは待遇面で劣ると考えておいたほうがよいでしょう。
派遣の栄養士として働くのはどんな人?
派遣の栄養士には、フルタイムで働くことが難しい人、正社員を目指すために現場で経験を積みたい人などがいます。
ただし、たとえ派遣であっても、栄養士としての専門的な知識や責任感は正社員同様に要求されます。
もちろん、派遣としてしっかりと働き、実力や意欲が認められれば、そのまま正社員への道も拓けます。
また、その職場では正社員になることが難しかったとしても、派遣として培ってきた経験やスキルはその後も生かすことができるでしょう。
アルバイト・パートの栄養士
栄養士の求人で多いのがアルバイト・パートの求人です。
アルバイト・パートは正社員よりも時間の融通が利き、短時間でも働けるため、育児や介護などと両立しながら働く人も多くいます。
ただし、アルバイト・パートの場合、栄養士として採用されても、実際には調理員と仕事内容が変わらなかったり、専門的な仕事ができなかったりすることもあります。
勤務条件や待遇などをしっかりと確認しておくことをおすすめします。
フリーランスの栄養士
フリーランスで活躍している栄養士もいます。そのような人は「開業栄養士」または「在宅栄養士」と呼ぶこともあります。
フリーランスでの働き方・仕事内容は人によってさまざまですが、いずれにしても自分で仕事を確保すること、知識を常に更新することやスキルを磨き続けるなどの努力が必要です。
副業・在宅の栄養士
副業で栄養士をする場合、アルバイトやパートとして働くほか、フリーランスでも仕事ができます。
最近では、オンラインで一般の人に栄養面のコンサルティングやアドバイスをする需要が高まっているため、在宅で仕事をする栄養士も増えつつあります。
栄養士を目指せる年齢は?
栄養士には特別な年齢制限はないため、いくつからでも目指せます。
栄養士の養成学校には、高校を卒業したばかりの人のみならず、社会経験を積んでいる社会人が入学する場合も少なくありません。
主婦が家族のためにもっと健康に関する知識を修得したいと、栄養士を目指すケースもあります。
栄養学は私たちの生活に密着した学問だからこそ、熱意さえあれば、いつからでも学び目指せます。
栄養士のキャリアプラン・キャリアパス
栄養士は活躍の場が広いため、自分の得意分野や好きなジャンルを選んで働けます。
活躍の一例として、栄養士の上位資格となる「管理栄養士」の資格を取得して仕事の幅を広げる人や、「栄養教諭」の資格を取得して、食育や学校給食に携わって仕事をする人もいます。
独立をし、個人で料理関連の講座やセミナーを開催するような人もいますし、資格の生かし方は本当にさまざまです。
逆にいうと、これから栄養士を目指す人は、将来は栄養士として何をしたいのかをきちんと考えておくことが大事です。
男性の栄養士のメリット・デメリット
「栄養士は女性の職業」というイメージがいまだ根強いですが、もちろん男性の栄養士も活躍しています。
男性でも栄養士になれる?
女性と男性では、栄養士になるための道に違いはありません。
まだまだ数は少ないものの、男性の栄養士も活躍していますし、仕事内容も男女で違いはありません。
職場によっては、男性栄養士を積極的に採用するところも増えていますし、資格を生かして個人で活躍する道を探るのもよいでしょう。
男性の栄養士のメリット・デメリット
男性の栄養士のメリット
栄養士は大量調理を行うことも多く、想像以上に体力を要する仕事です。
重い調理器具や食材を持ち運ぶこともあるため、腕力のある男性を歓迎する職場も多いようです。
男性の栄養士のデメリット
栄養士はさまざまな場所で活躍することができる仕事です。求人数も安定しているため、就職はそれほど難しいことではありません。
しかし、給与水準はそこまで高いわけではなく、平均年収は250万円から400万円程度といわれています。
一家の収入を担うことが多い男性にとっては不安な額かもしれません。
男性栄養士に限ったことではありませんが、安定した雇用形態のもとで収入を得たいと考えている人は、就職先をよく検討する必要があります。
公務員系の栄養士を目指す
栄養士として長く働き続けたい、男性栄養士として活躍したいと考えたときの選択肢として、都道府県庁・市区町村の公務員となり栄養士として働く方法があります。
とくに公務員の場合、長年働き続ければ一般的な栄養士と比べ待遇もよく、昇級も見込めます。
ただし、全体的にみると、同じ栄養士でも「管理栄養士」の有資格者のほうが好待遇で採用されることが多いです。
栄養学の知識・経験を生かして長く働きたいと考える場合は、管理栄養士へのキャリアアップも視野に入れるとよいでしょう。
「栄養士になるには」のまとめ
栄養士になるには、まず4年制大学や短大、専門学校などの栄養士養成課程で学び、資格を取得することが最初のステップとなります。
上位職となる「管理栄養士」の資格取得まで目指す人は、管理栄養士養成課程が設置されている学校を選びましょう。
栄養士は食への関心を持っている人や、サービス精神旺盛な人に向いています。デスクワークばかりの仕事ではないため、体力も必要です。
上記に加えて十分な熱意があれば、何歳になってからでも目指せる職業です。