地方公務員の年収はいくら? 手取りの給料も詳しく解説

地方公務員は日本全国に280万人ほどおり、おのおのが多様な業務・役割を持っているため、給料・年収は人によってもだいぶ異なります。

全体的な特徴としては、長年働いて経験を重ねるほど給料はアップし、待遇も充実していることが挙げられます。

この記事では、地方公務員の給料・年収の仕組みや、実際にどれくらいの給与がもらえるのかについて解説します。

地方公務員の平均年収・給料の統計データ

地方公務員の平均年収・給料に関する統計データをもとに、給料の支給額などを見ていきましょう。

地方公務員の平均年収・月収・ボーナス

地方公務員給与実態調査等の概要

地方公務員の給与は、各自治体が定める給料表に基づいて支給されます。

総務省の調査によれば、令和4年4月1日時点で、地方公務員(一般行政職)の平均給与月額は358,878円(平均年齢42.1歳)です。

この金額には、平均給料月額315,093円に諸手当月額43,785円(国の公表資料と同じベースで算出されたもの)を加えたものが含まれます。

勤続年数が増えるほど給与も上がりますが、20代の若手職員の給与は通常これよりも低い傾向があります。

職種によっても差があり、警察職や高等学校・小・中学校教育職はやや高めに設定されています。

諸手当月額には扶養手当、地域手当、住居手当、特殊勤務手当、時間外勤務手当などが含まれます。

出典:総務省「令和4年 地方公務員給与実態調査結果等の概要」

団体区分別平均給与月額(一般行政職)

令和4年地方公務員給与実態調査結果等の概要によると、都道府県や指定都市など団体区分別の平均給与月額や諸手当月額は以下の通りです。(カッコ内は平均年齢)

都道府県

平均給与月額:411,612円(42.6歳)
平均給料月額:320,171円
諸手当月額:91,441円

指定都市

平均給与月額:431,588円(41.8歳)
平均給料月額: 318,310円
諸手当月額:113,178円

平均給与月額:394,875円(42.0歳)
平均給料月額:315,510円
諸手当月額: 79,365円

町村

平均給与月額:353,417円(41.3歳)
平均給料月額:301,252円
諸手当月額: 52,165円

特別区

平均給与月額:420,478円(43.0歳)
平均給料月額:297,359円
諸手当月額: 122,689円

このように見ていくと、自治体の区分によって給料には大きな差が出ていることがわかります。

都道府県や指定都市など大きな自治体になるほど、平均給料月額は高めの傾向にあります。

また、諸手当に関しては、最も低い町村と最も高い特別区では7万円以上の差がついています。

地方公務員の手取りの平均月収・年収・ボーナスは

地方公務員の手取りは、月給が360,000円の場合、一般的な割合である給与の8割程度として推定され、手取り額は約288,000円となります。

これにより、手取り年収は約3,450,000円になりますが、ボーナスも支給されます。

諸手当月額にはボーナスとなる「期末手当」「勤勉手当」は含まれておらず、別途計算されます。

ボーナスの支給額は「(給料+地域手当+扶養手当)×支給月数」で決まり、近年は年間で約4.5ヵ月分前後が支給されています。

基本給や地域手当、扶養手当の支給対象によって支給額に差があります。

令和3年期の平均の期末・勤勉手当(ボーナス)の支給額は、平均164万6,260円であり、ボリュームゾーンは約100万円~200万円程度とされています。

地方公務員の初任給はどれくらい?

地方公務員の初任給は、採用区分や学歴、自治体の区分によって違いがあります。

たとえば、令和4年4月1日地方公務員給与実態調査を確認すると、一般行政職の試験で採用された人であっても、自治体や学歴によって以下のような違いがあります。

都道府県

大卒:179,397円
短大卒:162,633円
高校卒:150,010円

指定都市(選考)

大卒:183,307円
短大卒:163,145円
高校卒:150,686円

大きな自治体で、学歴が高いほど初任給は高めとなる傾向にあります。

ただし、同じ学歴で同じ自治体区分であっても細かく見ていくと、自治体によって1~3万円ほどの差が出ていることがわかります。

出典:総務省 令和4年4月1日地方公務員給与実態調査

なお、人事労務分野の情報機関である産労総合研究所の調査によると、2022年度の民間企業の初任給額は、大学卒は平均210,854円、高校卒は平均173,032円です。

初任給については、全体でみると民間企業のほうが若干高めに設定されています。

2022年度 決定初任給調査 産労総合研究所

地方公務員の福利厚生の特徴は?

地方公務員の福利厚生は、各自治体が制定した条例に基づいて決められています。

基本的には国家公務員と同様の内容で、休暇制度としては「年次休暇」「病気休暇」「特別休暇」「介護休暇」などがあります。

手当は、職務に関連するものや生活をサポートするものなど多岐にわたります。

「扶養手当」「通勤手当」「住居手当」「単身赴任手当」「地域手当」「特殊勤務手当」などが代表的です。

地方公務員の福利厚生は充実しており、この点が長く仕事を働き続けやすいポイントと考える人も少なくありません。

地方公務員の手当・年金・保険

地方公務員がもらえる手当の種類

地方公務員の給与は、給料表で定められた「給料」と「諸手当」から成り立っています。

諸手当には、職務に関連するものから職員の生活を支えてくれるものなどまでさまざまあり、充実した手当を受けられることが、地方公務員の人気を押し上げる理由のひとつにもなっています。

ここでは、そんな地方公務員に支給できるおもな諸手当について紹介します。

なお、手当の具体的な支給額や支給方法は、各地方公共団体の条例によって定めることとされているため、自治体によって異なります。

職務関連手当

【地域手当】
地域の民間賃金水準を反映するため、主に民間賃金の高い地域に勤務する職員に対して支給されます。

【特殊勤務手当】
高所、水上、山上など、著しく危険、不快、不健康であったり困難かつ特殊な勤務を行い、給与上特別の考慮を必要とする職員に支給されます。

【時間外勤務手当】
いわゆる「残業代」としての手当です。

【宿日直手当】
正規の勤務時間以外の時間および休日などに、本来の勤務に従事しないで行う勤務に対して支給される手当です。

【夜間勤務手当】
22時から翌日の5時までの間に勤務を命ぜられた職員に対して、休憩時間を除いた全時間について支給される手当です。

【休日勤務手当】
残業や深夜の勤務、休日出勤をした場合に支払われる手当です。

このほか、以下のような手当があります。

  • 管理職に就いている職員に対して支給される「管理職員特別勤務手当」や「管理職手当」
  • 都道府県立や市区立の学校に勤務する教員に対する「義務教育等教員特別手当」
  • 定時制学校や農業・水産・工業・商船の教育に従事する教員や助手に対する「定時制通信教育手当」や「産業教育手当」

期末手当・勤勉手当

民間企業でいう「ボーナス」に当たります。

手当の支給時期は自治体によって若干異なりますが、基本的には6月30日と12月10日に支給される国家公務員のボーナスに準じるか、それに近い場合がほとんどです。

生活関連手当

【扶養手当】
配偶者、子等、扶養親族のある職員に支給されます。

【住居手当】
賃貸の物件に住んでいる職員に対して支給されます。

【単身赴任手当】
異動に伴って転居し、やむを得ない事情により配偶者と別居して単身で生活する職員に対して支給されます。

【寒冷地手当】
寒冷地に在籍する職員に対して支給されます。

人材確保手当

【初任給調整手当】
専門的な知識を必要とし、欠員の補充に特別な事情のある職に対して支給されます。

【特地勤務手当】
離島や、生活の著しく不便な地で勤務する職員に対して支給されます。

【へき地手当】
交通条件や自然的、経済的、文化的諸条件に恵まれない山間地、離島等に所在する公立の小・中学校等に勤務する教員と職員に対して支給されます。

その他の手当

自己都合や定年等の理由によって退職した職員に対して支給される「退職手当」、交通機関を利用している職員に対して支給される「通勤手当」などがあります。

地方公務員が加入する年金制度

国民年金と厚生年金

国民年金と厚生年金は、日本の社会保障制度における2つの異なる年金制度です。

公務員は、2つの年金制度に加入します。

国民年金(基礎年金制度)

【加入対象】
すべての国民に加入の義務があります。
主に自営業者や非正規雇用者、学生、主婦などがこれに該当します。

【加入方法】
加入者は個人で保険料を支払います。
自営業者や非正規雇用者は自己納付を行います。

【年金給付】
一律の基本給付があり、収入や職業によって変わりません。

厚生年金(被用者年金制度)

【加入対象】
企業に勤務する被用者、つまり会社員や一定の条件を満たす公務員が加入対象です。

【加入方法】
加入者は雇用主とともに保険料を支払います。
雇用主が事業主の場合は自己納付となります。

【年金給付】
保険料の支払い実績や収入に基づいて給付が計算され、出生から死亡までの間に納付した期間や支払った保険料に応じて変動します。

簡単にいえば、国民年金は個人が自ら納付し、被用者年金は雇用主と被用者が協力して納付するという大まかな違いがあります。

遺族年金

遺族年金は、地方公務員が病気や事故で亡くなった場合に、その家族に支給される制度です。

支給の順位と条件は以下の通りです。

1.配偶者(妻または夫)と子:配偶者と未成年の子供が最優先で受給対象となります。

2.父母:死亡当時に55歳以上であることが条件です。

3.孫:18歳に達する日以後の最初の3月31日までに未婚であることが条件です。

4.祖父母:死亡当時に55歳以上であることが条件です。

※子や孫についても、特定の条件(未婚など)があります。障がいのある子については、20歳未満かつ障がい等級が1級または2級に該当する場合も受給が認められます。

地方公務員が加入する保険(組合)とは?

地方公務員が働く際、加入が可能なのが「共済組合」です。

組合員である地方公務員やその被扶養者の病気やけが、出産などに対して、組合から定められた金額が支払われる仕組みとなっています。

組合の種類は、国家公務員と地方公務員、そして私立学校の教職員などによって異なります。

地方公務員の場合、組合の種類は「地方公務員等共済組合法」によって規定されており、都道府県または政令指定都市ごとに80以上あります。

共済組合は、地方公務員およびその家族の生活安定と福祉向上を目的とし、公務の効率的な運営にも寄与しています。

組合は「長期給付」と呼ばれる年金給付を行うほか、「短期給付」と呼ばれる医療関係の給付、「災害給付」を行っています。

万が一に備える「地方公務員災害補償基金」

基金の内容は?

地方公務員は、日常業務や通勤中に発生する災害や事故に備えて「地方公務員災害補償基金」へ加入しています。

この基金は、公務上の災害や通勤災害を受けた職員やその遺族を支援するための地方共同法人で、東京都に本部を構え、各都道府県や政令指定都市に支部があります。

地方公務員災害補償基金に加入できるのは「常勤のすべての地方公務員」で、この中には常勤的非常勤や再任用短時間勤務の職員も含まれます。

加入者が公務や通勤中に災害を受けた場合、基金からは療養補償などが支給されます。

また、治療に必要な費用や、職員が亡くなった場合には遺族補償年金が受けられます。

基金は、被災者やその家族の社会復帰を促進し、公務上の災害を未然に防ぐ活動も行っています。

公務上の災害とは?

公務上の災害とは、原則として、公務中にけがを負ったり、公務が原因で病気になったりした場合を指します。

これによって障害が残ったり、最悪の場合は死亡した場合も、地方公務員災害補償基金によって補償の対象となります。

ただし、公務中に発生した災害が全てが公務災害とされるわけではありません。

とくに脳血管疾患や心臓疾患などは、加齢や基礎疾患、体質などが原因となることが多く、公務中に発症しただけでは公務災害とは認定されないことがあります。

けがの場合は、通常の職務遂行中の負傷に限らず、出張中や訓練中の負傷も対象となりますが、私意行為や故意な行動、偶発的な事故によるものは対象外とされます。

通勤による災害とは?

通勤災害は、勤務のために「住居」と「勤務場所」の往復、複数就業者の勤務場所から公署への移動、単身赴任者の赴任先住居と帰省先住居間の移動(出勤又は退勤に当たるもの)に起因する災害のことです。

このため、通勤と関係のない目的で経路を逸れたり、合理的な経路上であっても通勤目的から離れた行為をした場合、その間やその後に発生した災害は通勤災害と認められません。

地方公務員の給料・年収の特徴

ここからは、地方公務員の給料・年収の特徴について説明します。

大きく3つの特徴があります。

特徴1.平均給与は自治体によって大きく異なる

地方公務員の平均給与は、民間の景気や自治体の規模によって左右され、年によって若干の変動が見られます。

また、日本には1,718もの市町村があり(令和5年1月1日現在)、自治体ごとに給与に差が出ます。

たとえば、東京都庁の職員の平均年収は例年700万円を超えている一方で、400万円台にとどまる自治体もあります。

全体としては、都市部の自治体が年収が高く、一方で地方の村や島などでは低くなる傾向があります。

特徴2.年齢が上がるほど給与は高くなる傾向に

一般行政職などの地方公務員の給与は、年功序列で上がる仕組みとなっています。

これは、年齢が高くなるほど給与が上昇するという仕組みであり、一般的には勤続年数が長いほど給与が高くなります。

しかし、給与の水準は働く自治体や個々の年齢によって大きく異なります。

公務員が多く集まる自治体では、勤続年数が長い人が多いため、平均年収が比較的高い傾向があります。

一方で、地方の小さな自治体や働く職員の平均年齢が低い場合は、給与水準が低いこともあります。

一般に、公務員は給与が安定しているとされていますが、それでも地域や組織により給与にはばらつきがあり、若手職員が他の職種や地域の民間企業に比べて低い給与水準で働く場合もあることに留意する必要があります。

特徴3.職種によっても給与額が違う

地方公務員の給料表は、職種によって異なる給与水準が設定されています。

この違いは、職務の性格や必要なスキル、専門性、責任の度合いなどに基づいています。

以下にいくつかの例を挙げます。

命の危険をともなう職種(例: 警察官)

命を守るためにリスクの高い状況に直面する職種は、その特殊性から基本給が他の職種よりも高めに設定されています。
警察官の給料・年収

専門性が求められる職種(例: 教員)

特別な資格や免許が必要であり、専門的な知識やスキルが求められる職種は、その専門性を考慮して給与水準が設定されています。
教師の給料・年収

このように、公務員の給与は職種ごとに異なり、その職務の性格や社会的な役割を反映しています。

これによって、各職種が適切に報酬され、適材適所の配置が図られることが目指されています。

地方公務員が収入を上げるためには?

地方公務員の給与体系は一般的に年功序列が基本であり、勤続年数に応じて給与が上昇します。

このため、長く働いていれば自然と収入も増加します。

ただし、自治体ごとに給与水準に差があるため、高収入を希望する場合は採用試験を受験する都市部などでの就職を検討するのがよいでしょう。

年功序列に加えて、昇任試験などに合格することで役職や階級が上がり、給与のアップが期待できます。

昇任によっては別途手当がつくこともあり、成果を上げて能力を発揮することが出世や給与アップにつながります。

「地方公務員の年収・給料」まとめ

地方公務員の給与は、自治体ごとに定める給与表に沿って支給されます。

若いうちはそこまで高収入を望むのは難しいですが、ボーナスの支給もあり、各種手当や待遇も手厚いため、安定した働き方ができるといえるでしょう。

地方公務員として長く働くほか、昇進や出世をすることでも収入は徐々にアップします。