弁護士へ転職するには? 働きながら合格できる?
弁護士への転職状況は?
弁護士は、一般的な職業と比べると年齢制限のハードルが低いこともあって、別の職業から転職してくる人は決して珍しくありません。
司法試験の受験資格を得るための予備試験の統計をみても、受験者の約4割は社会人であり、会社員、公務員、教職員、法律事務所職員、塾講師など、その職業もさまざまです。
そのなかには、もとから弁護士を目指していたものの、学生・浪人生の身分の間に合格できなかったため、いったんは企業などに就職し、働きながら司法試験の勉強に励んでいる人も大勢います。
また、もともと弁護士志望ではなかったけれども、社会人として働くなかで弁護士に憧れたり、組織から離れて独立するために弁護士を目指すという人もいます。
仕事のやりがい、社会的身分、収入面など、多くの魅力がある弁護士は、社会人からでも目指したいという人も多いようです。
ただし、近年は司法試験合格者の急増によって、弁護士は供給過剰状態となっています。
転職者に限った話ではありませんが、たとえ司法試験に合格できても、望む業務内容・望む待遇で就職できるとは限りませんので、環境の厳しさにはあらかじめ覚悟しておく必要があるでしょう。
20代で正社員への就職・転職
弁護士への転職の志望動機で多いものは?
弁護士は多くの人が憧れる人気職業であり、転職を志望する動機も人によってさまざまです。
比較的多いのは、元々法学部で学んだ経歴があり、かつては弁護士になることが夢だったという人が、社会人になってから目指すというケースです。
とくに現在の仕事になんらかの不満がある場合、ふとしたきっかけで過去の弁護士への思いが再燃することもあります。
また、近年は長引く景気低迷の影響もあって、将来の生活に不安を覚える人も少なくなく、経済的な安定を得るために弁護士資格を目指すというケースも見受けられます。
会社員や経営者から転職する人もいれば、主婦から弁護士になったという人もいます。
さらに、公認会計士や司法書士といった別の士業資格者が、手掛けられる業務の幅を増やすため、あるいはキャリアアップのために、弁護士になるという例もあるようです。
働きながら司法試験に合格するには
司法試験の受験資格を得るには、「法科大学院課程を修了する方法」と「予備試験に合格する方法」の2通りがあります。
働きながら司法試験合格を目指す場合、まずどちらの方法を選択するか決めるところがスタート地点です。
一般的なのは予備試験を受けるルートで、大手予備校などでは、社会人を対象とした夜間の対策講座が開講されています。
社会人は、1日のうち勉強にかけられる時間が限られるため、3年程度の期間をかけ、予備試験合格を目指すケースが多いようです。
また、法科大学院によっては、社会人などを対象とした夜間コースを設けているところもあり、予備試験ルートではなく法科大学院ルートから弁護士を目指す社会人もいます。
授業は仕事の終わる夜18時頃から始まり、平日に足りないぶんの時間割は土曜日に終日授業を行うことで補うというカリキュラムになっています。
いずれかの方法で受験資格をクリアしたら、あとは学生などと同じように、司法試験本番に向けてできる限り多くの勉強量をこなすだけです。
ただし、司法試験を受けられるのは、受験資格を得てから「5年以内かつ3回まで」と定められているため、社会人は時間的制約がかなり厳しいといえます。
期間内に合格するためには、リスクを背負ってどこかの時点で仕事を辞め、追い込みをかけるといったこともあるいは必要かもしれません。
20代で正社員への就職・転職
弁護士への転職に必要な資格・有利な資格
法律事務所で働きたい場合、上述のように弁護士が増えている影響もあって、転職活動に苦労することもあるかもしれません。
その際、持っていると他者よりも有利となりやすい資格としては、マイクロソフトオフィス検定、秘書検定、英検やTOEICなどの語学力系資格、簿記などが挙げられます。
小規模な法律事務所の場合、移動などにかかった経費などを自分で精算したり、顧問税理士とやり取りする機会も頻繁にありますので、簿記の資格があると代表弁護士に重宝されやすいでしょう。
大手事務所に就職する場合は、海外案件を手掛けることが多い関係上、簿記よりも語学系資格のほうが評価されやすい傾向にあり、TOEIC700以上のスコアがあれば、有力なアピール材料になるでしょう。
弁護士への転職に役立つ職務経験は?
弁護士への転職に役立つキャリアとしては、法務事務を取り扱った職務経験がまず挙げられます。
弁護士をはじめ、司法書士、行政書士、税理士などの各種士業系事務所における事務スタッフとしてのキャリアがあれば、たとえアルバイトでも評価されるかもしれません。
また、一般企業における法務部や総務部での業務は、契約書のチェックや顧問弁護士とのやり取りなど一定の法律知識が必要となり、弁護士の実務にかなり似通っていることから、このような経験があればかなり有利です。
さらに、近年の弁護士は案件獲得競争が激しくなり、法律以外にも独自の得意分野を持つことが求められるようになりつつあるため、まったく畑違いの知識が役に立つこともあります。
たとえば、IT業界での職務経験があれば、Webに関する法律トラブルや訴訟を手掛けられたり、IT関連会社の企業法務を扱えるため、事務所によっては強力なアピール材料になります。
弁護士への転職面接で気をつけるべきことは?
かつての法律事務所では、看板さえ掲げていれば仕事が舞い込んでくるという時代もありました。
しかし現在では、ほかのサービス業と同様、顧客を獲得するための営業努力が不可欠となっています。
弁護士一人ひとりに対しても、顧客に親近感を抱いてもらえる対人スキルが必要になっているため、とくに社会人経験のある転職者の場合、新卒者よりも高いコミュニケーション能力が求められます。
採用面接においては、髪形や服装、挨拶、立ち居振る舞い、声のトーンなどを意識して、話しやすく、好感の持てる人物であるという印象を持ってもらえるよう努めましょう。
また、面接官から投げかけられる質問に対しては、弁護士にふさわしい、論理的に破綻なく、かつ要点をまとめた簡潔な回答を心掛けるとよいでしょう。
もしも、あらかじめ面接を担当する弁護士が誰なのかわかっているなら、面接官の経歴や扱った事件について事前に調べておくと、面接がスムーズになるかもしれません。
弁護士に転職可能な年齢は何歳くらいまで?
司法試験の平均合格年齢は毎年30歳前後であり、ほかの一般的な職業と比較すると、弁護士はキャリアをスタートさせる時期がかなり遅いという特徴があります。
このため、通常の転職市場においては即戦力となることが求められる30代後半~40歳くらいの年齢であっても、弁護士業界においては、まだまだ新人や若手という扱いです。
弁護士は、新卒採用で一般企業に就職し、数年のキャリアを積んだ人などであっても、十分に転職が成功するチャンスがあるといえるでしょう。
ただし、司法試験はきわめて難関であるため、合格までに何年かかり、合格時点で自分が何歳になっているのかという点をよく考慮して転職可否を見極めることが必要です。
仮に、まったく法律知識ゼロの状態からスタートし、働きながら弁護士への転職を目指すなら、できれば20代のうちに、少なくとも30歳までには勉強を始めることが望ましいでしょう。
未経験から弁護士に転職する際の志望動機
弁護士は、資格を取得するまでも大変ですが、働きだしてからも苦難の連続です。
数多くの作業をこなすため、深夜残業や休日出勤に追われることも珍しくありませんし、またどれだけ依頼者のために一生懸命働いても、その努力が必ず実るとも限りません。
交渉結果や裁判結果次第では、依頼者の期待に応えられず、叱責されたり恨みを買う可能性もあります。
志望動機については、そのような厳しい仕事内容についてきちんと理解していること、そして、それに耐え得るだけの明確な目的意識をもって弁護士になったことを含めるとよいでしょう。
転職者は、どんな理由があるにせよ、一度は勤めた職場を辞めている事実には変わりありませんので、志望動機が曖昧だったりすると、面接官に「また辞めるかもしれない」という印象を抱かれかねません。
未経験から弁護士を志望する場合であっても、これから弁護士として手掛けていきたい業務分野などをできる限り具体的に述べて、漠然とした憧れなどで目指していないことをアピールしましょう。