【2022年版】司法試験の難易度・合格率は? 法科大学院と予備試験のルートを比較
司法試験自体の合格率は25~40%前後を推移していますが、受験資格を得るまでのハードルが非常に高いことが特徴です。
令和3年度試験の合格率は直近10年で最も高い41.5%となりました。
この記事では、以下について解説します。
- 法科大学院・予備試験2つのルートの合格率とメリット、デメリット
- 司法試験合格にかかる勉強時間、費用の目安
- 最新の司法試験の受験者数・合格率の推移
司法試験を受ける前に知っておきたい情報を網羅しています。
ぜひ、参考にしてください。
目次
司法試験とは
司法試験とは、「裁判官・検察官・弁護士(法曹三者)」になるための国家試験です。
法曹三者になるために必要な知識・能力を有していることを判定します。
難易度は非常に高く、最難関試験の一つといわれており、合格には5年かかる人もいます。
司法試験を受験するためには、法科大学院修了程度の知識があることが必要で、受験資格を得ること自体が難しい試験でもあります。
司法試験の受験資格を得る方法は2種類
司法試験の受験資格を得るには、以下の図の通り2つのルートがあります。
このように、司法試験の受験資格を得るためには、「司法試験予備試験に合格する」もしくは「法科大学院課程を修了する」のいずれかが必要です。
この章では、それぞれのルートについて解説します。
司法試験の受験資格を得る方法①予備試験に合格する
予備試験に合格すると、司法試験を受ける資格を得ることができます。
予備試験は、法科大学院修了者と同程度の知識があるかどうかを判定するための試験です。
したがって、法科大学院の入試よりも難易度が高いです。
学歴などの受験資格は必要ありません。
法科大学院に通う時間や経済的余裕のない人も、法曹への道を目指すことができます。
ただし、予備試験の難易度は非常に高く、例年の合格率は3%程度で推移しています。
司法試験の受験資格を得る方法②法科大学院課程を修了する
法科大学院課程を修了すれば自動的に司法試験の受験資格が得られます。
なお、法科大学院に入学するためには、法科大学院の入試に合格する必要があります。
法科大学院には2つのコースがあり、大学で法律について学んでいたか否かで卒業までの期間が異なります。
【法科大学院のコース】
- 既修者コース:法学部出身者などが対象。在学期間は2年
- 未修者コース:法学部出身者以外が対象。在学期間は3年
法科大学院を修了すれば、司法試験の受験資格が得られますが、期限と回数制限があります。
司法試験を受けられるのは資格を得てから5年間のうちに最大3回までとなっています。
もしもその間に司法試験に合格できなければ、再び受験資格を得るところからやり直しとなります。
司法試験合格実績の豊富な大学ほど人気が高く、そのぶん倍率が高くなる傾向にあります。
東京大学、京都大学、一橋大学などがその筆頭格として挙げられます。
法科大学院と予備試験の比較
司法試験を受けるためには、今まで述べた通り法科大学院を修了する、もしくは予備試験に合格することが必須条件です。
この章では、司法試験を受ける2つのルートについて、以下の4つの観点から比較します。
- 司法試験受験資格を得るまでに必要な勉強時間
- 司法試験の受験資格を得てからの勉強時間の比較
- 司法試験の合格率
- 経済的・時間的負担
法科大学院に通いながら予備試験を受ける人もいます。
法科大学院・予備試験それぞれのメリット、デメリットを把握して自分に合うルートを選びましょう。
司法試験受験資格を得るまでに必要な勉強時間の比較
司法試験の受験資格を得るまでにかかる時間は、法科大学院ルートの方が長くなる場合が多いです。
【司法試験受験資格を得るまでに必要な勉強時間】
- 法科大学院ルート:既修者コース6年(大学4年+法科大学院2年)
- 予備試験ルート:最短で2年程度(個人差あり)
大学で法学部以外だった場合は、法科大学院に3年通うことになるので、司法試験の受験資格を得るのには7年かかることになります。
法科大学院の既修者コースへ進学する場合、その入試の難易度は大学によって大きく幅がありますが、必要な勉強時間の目安は最低2,000時間とされています。
一方、予備試験合格にかかる勉強時間は3,000時間~8,000時間と言われています。
元々の法律知識量や勉強の得意不得意、予備校利用の有無などの事情で個人差が大きくなりやすく、2,000時間ほどで合格できる人もいれば、10,000時間以上かかる人もいます。
予備試験は短期間で合格できる人もいますが、個人差があるために法科大学院課程以上に時間がかかることもあります。
確実に受験資格を得られるのは、法科大学院課程を修了することです。
司法試験の受験資格を得てからの勉強時間の比較
司法試験合格のために必要な勉強時間は、さらに各人の能力や環境による差が大きくなりますが、以下が目安の勉強時間になります。
【司法試験受験資格を得てからの勉強時間の目安】
- 法科大学院:入試を含めて総計10,000時間
- 予備試験:予備試験合格を含めて総計10,000時間
法科大学院既修者コースに進んだ人の例を見てみましょう。
大学院での勉強に加えて、授業後に4~5時間ほど、土日は1日10時間ほど勉強すれば、大学院課程終了後の一発合格も不可能ではないようです。
在学中の勉強時間は2年間で約8,000時間、入試を含めると総計10,000時間ほどかかる計算です。
法科大学院未修者コースの場合、知識ゼロの状態から既修者と同レベルにまで達しなければなりません。
10,000時間よりもさらに多くかかるとみておくべきです。
仮に未修者コース3年間を修了した後の一発合格を目指すなら、1日10時間ほど毎日勉強し続けても足りないかもしれません。
予備試験からの合格を目指す場合、予備試験対策がそのまま司法試験対策に直結しているというメリットはあるものの、やはり予備試験を含めて合計10,000時間ほどが目安となるでしょう。
なお、司法試験の合格率は、どの法科大学院出身者よりも予備試験合格者が最も高くなっており、近年予備試験を受験する人が増加傾向にあります。
弁護士に最短でなるには? 予備試験の難易度・合格率
司法試験の合格率の比較
司法試験の合格率は、予備試験合格者が最も高い傾向が続いています。
令和3年度の司法試験合格者の合格率は、法科大学院修了者69.4%、予備試験合格者93.5%となっています。
【令和3年度司法試験合格率上位】
合格率 | |
---|---|
予備試験合格者 | 93.5% |
愛知大法科大学院 | 66.7% |
京都大法科大学院 | 61.6% |
一橋大法科大学院 | 58.2% |
慶応義塾大法科大学院 | 55.1% |
法科大学院修了者全体 | 69.4% |
予備試験の難易度が高く、合格した時点で司法試験に合格できる知識と能力が身についているために合格率が高いと言えます。
経済的・時間的負担の比較
一般的に、法科大学院への進学にかかる学費は高額で、修了までに最低6年かかります。
予備試験は、合格までに要する年数によって経済的・時間的負担が大きく異なります。
【法科大学院と予備試験の経済的・時間的負担】
- 法科大学院:学費は総額で300万~500万円、修了まで最低6年
- 予備試験:スクールの受講料など50万円~150万円、合格までは2年~
法科大学院は奨学金制度を設けているところも多いです。
予備試験に短期間で合格できれば経済的・時間的にも有利ですが、合格までにかかる期間には個人差があるので、一概にどちらが良いとは言えません。
【最新】令和3年度司法試験の受験者数・合格率推移
この章では、最新の司法試験に関するデータの推移を紹介します。
司法試験受験者数
司法試験の受験者数は平成23度をピークに減少の傾向にあり、令和3年度の受験者数は3,424人となりました。
司法試験合格率
新司法試験開始から合格率は下降の傾向にありましたが、令和3年度試験の合格率は直近10年で最も高い41.5%となりました。
令和3年度 司法試験合格者男女比率
令和3年度の司法試験合格者の男女比率は、男性72.2%、女性27.8%となっています。
令和3年度 司法試験合格者受験回数
令和3年度の司法試験合格者の受験回数は、1回目が67.1%、2回目が11.3%、3回目が6.6%となっています。
令和3年度 司法試験 合格者の既修・未修別
令和3年度試験合格者の既修・未修別の人数は、既修者法学部が64.2%、既修者非法学部が5.6%、未修者法学部が12.8%、未修者非法学部が5.6%となっています。
弁護士資格を得るには?司法試験合格後にも試験あり
弁護士は、裁判官、検察官と併せて「法曹三者」と呼ばれ、法律系国家資格のなかでも最高峰に位置する資格です。
弁護士資格を取得するためには、まず司法試験の受験資格を満たし、試験を受けて合格する必要があります。
さらに、1年間の司法修習を修了して、その後に実施される考試、通称「2回試験」にも合格しなければなりません。
また、実際に弁護士として業務を行うためには、日本弁護士会に資格を登録し、入会金や登録料、年会費などを支払うことも必要です。
近年は司法制度改革によって司法試験合格者が増加しており、弁護士資格保有者は全国で約4万人ほどにのぼっています。
令和4年度 司法試験の概要
試験日 | 令和4年5月11日(水)、12日(木)、14日(土)、15日(日) |
---|---|
試験地 | 札幌市、仙台市、東京都、名古屋市、大阪市、広島市、福岡市 |
受験資格 | 1. 法科大学院(学校教育法(昭和二十二年法律第二十六号)第九十九条第二項に規定する専門 職大学院であつて、法曹に必要な学識及び能力を培うことを目的とするものをいう。)の課程 (次項において「法科大学院課程」という。)を修了した者 2. 司法試験予備試験に合格した者 |
試験科目 | (1) 試験は短答式(択一式を含む。以下同じ。)及び論文式による筆記の方法により行われます(法 第2条第1項)。短答式試験と論文式試験は同時期に行われ,受験者全員が両方の試験を受けるこ とになります。 短答式による筆記試験は,裁判官,検察官又は弁護士となろうとする者に必要な専門的な法律知識 及び法的な推論の能力を有するかどうかを判定することを目的とし,次の科目について行われます (法第3条第1項)。 ・ 憲法 ・ 民法 ・ 刑法 (2) 論文式による筆記試験は,裁判官,検察官又は弁護士となろうとする者に必要な専門的な学識並 びに法的な分析,構成及び論述の能力を有するかどうかを判定することを目的とし,次の科目につ いて行われます(法第3条第2項)。 ・ 公法系科目(憲法及び行政法に関する分野の科目をいう。) ・ 民事系科目(民法,商法及び民事訴訟法に関する分野の科目をいう。) ・ 刑事系科目(刑法及び刑事訴訟法に関する分野の科目をいう。) ・ 専門的な法律の分野に関する科目として法務省令で定める科目のうち受験者のあらかじめ選択 する一科目(選択科目) (3) 選択科目は,次の8科目とされています(施行規則第1条)。 ・ 倒産法 ・ 租税法 ・ 経済法 ・ 知的財産法 ・ 労働法 ・ 環境法 ・ 国際関係法(公法系) ・ 国際関係法(私法系) |
合格基準 | 合格者の判定は,短答式試験の合格に必要な成績を得た者について,短答式試験及び論文式試験の成績を総合して行われます。なお,合格者は,司法試験考査委員の合議による判定に基づき,司法試験委員会によって決定されます。 |
合格率 | 41.5%(令和3年度) |
合格発表 | 令和4年9月6日(火) |
受験料 | 28,000円 |
詳細情報 | 法務省 司法試験の実施について |