鉄鋼メーカー社員の仕事内容・なり方・年収・資格などを解説
「鉄鋼メーカー社員」とは
輸送機や建築、家電などに用いられる、素材の一種である「鉄」を作り出す。
鉄鋼メーカーは、素材の一つである「鉄」を作り出し、世の中に供給する企業のことをいいます。
地球上に存在するさまざまな天然資源のなかでも、鉄は固くて強く、さらに自在に加工しやすいことから、自動車、鉄道、船舶などの輸送機をはじめ、ビルやマンションなどの建築、産業機械、家具・家電、さらにはジュースの缶など、身の回りのありとあらゆるものに利用されています。
鉄鋼メーカーの採用試験は、本社などで幅広い職務に携わる「総合職(事務系・技術系)」と、製鉄所などで製造関連に携わる「技術職」に分けて実施されることが多いです。
平均年収は500万円~600万円程度といわれますが、最大手企業とそれ以外の企業では大きな差も出ているようです。
近年の鉄鋼業界では世界的な大型再編が相次いでいますが、需用は世界的に見るといまだ伸びている現状です。
まだまだ可能性を秘めた産業として将来性にも期待できるでしょう。
「鉄鋼メーカー社員」の仕事紹介
鉄鋼メーカー社員の仕事内容
鉄を作り出し、官公庁や企業などに販売する
鉄鋼メーカーは、さまざまな製品の素材となる「鉄」を作り出し、企業などに供給する「BtoB(企業間取引)」型のビジネスを手掛ける企業です。
さまざまな天然資源のなかでも、鉄は固くて強く、さらに自在に加工しやすいという特徴を兼ね備えているため、その用途は幅広く、私たちが使っている金属の90%は鉄といわれています。
鉄は、自動車、鉄道、船舶などの輸送機をはじめ、ビルやマンション、橋梁などの建設物、産業機械、家具・家電、さらにはジュースの缶など、身の回りのありとあらゆるものに利用されています。
官公庁や、建設、鉄道、自動車、資源、商社、エネルギー、IT、家電などの業界に属する企業に対して、質の高い鉄を提供していくことが、鉄鋼メーカーの基本的な役割です。
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鉄鋼メーカー社員になるには
職種別に実施される試験を受ける
鉄鋼メーカー社員として働くには、各鉄鋼メーカーが実施する採用試験を受験する必要があります。
新卒採用については、異動を繰り返しながらさまざまな仕事を経験する「総合職」と、製鉄所などの勤務を専属的に行う「技術職」に分けて募集されるケースが一般的です。
総合職についてはさらに「事務系」と「技術系」に大別することができ、事務系では営業、企画、原料購買、人事などの職種が、技術系では研究開発や製造技術、生産管理といった職種があります。
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鉄鋼メーカー社員の学校・学費
職種によって必要な学歴は異なる
鉄鋼メーカーの総合職採用については、大手メーカーでは大卒以上の学歴が条件となっているケースがほとんどですが、中小企業など、高等専門学校卒を対象としているところも一部あります。
一方、製鉄所などでオペレーターや設備メンテナンスを行う技術職については、高卒や短大卒など、幅広い学歴の学生が対象となります。
なお、総合職事務系では、学部・学科は不問ですが、総合職技術系の場合、採用の中心となるのは理工系出身の学部生や大学院生です。
鉄鋼メーカー社員の資格・試験の難易度
鉄鋼メーカー社員にとって語学力は重要
鉄鋼メーカー社員となるために必須となる資格などはとくになく、実務に必要な知識やスキルはそれぞれの配属先で働きながら、あるいは社内研修を受けて、身につけていくことが一般的です。
ただ、鉄の原料となる鉄鉱石は、100%オーストラリアやブラジルからの輸入によって調達していることもあり、海外とのやりとりは大抵の部署で少なからず発生するようです。
社員向けに語学研修を実施している企業もあり、入社後に外国語を学ぶことも可能ですが、鉄鋼メーカーへの就職を志すなら、学生のうちからある程度語学力を身に付けておいたほうがよいでしょう。
鉄鋼メーカー社員の給料・年収
企業間や職種間の差が大きい
鉄鋼メーカー社員の平均年収は、500万円~600万円程度といわれています。
ただ、鉄鋼メーカーは大手から中小までたくさんの企業があるため、規模などによってだいぶ差があるほか、総合職と技術職の職種間でも、相当な違いがあります。
平均年収は企業や職種に関係なくまとめて算出されているため、たとえば大手企業に勤める総合職の給与は、業界平均年収をかなり上回る水準となるでしょう。
福利厚生の内容についても、大手企業ではかなり手厚いうえ、働きやすい組織づくりを推進していたり、会社の魅力付けの一環として独自の制度を設けていたりと、充実しているようです。
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鉄鋼メーカー社員の現状と将来性・今後の見通し
鉄鋼の可能性はまだまだ拡がっていく
鉄は固くて強く、加工が自由といった優れた特性を持つことから、古くから人々の暮らしに欠かせない金属として用いられてきました。
近年の鉄鋼業界は、世界規模で事業再編が相次いでおり、日本においても大手同士の経営統合によって当時世界第2位の鉄鋼メーカーが誕生するなど、目まぐるしい動きが継続しています。
人々の環境意識が高まっている昨今、鉄は100パーセント再生可能な資源として注目を集めており、また需要自体も、世界的に見れば未だ右肩上がりの状況です。
鉄鋼にはまだまだ多くの可能性があり、今後についても鉄鋼業界の見通しは明るいといえるでしょう。
鉄鋼メーカー社員の就職先・活躍の場
保有設備などによって企業の特徴が異なる
鉄鋼メーカーは、鉄鉱石から鉄を精製することのできる「高炉」を持つメーカーと、鉄スクラップを溶解してリサイクルし、鉄を製造する「電炉」を持つメーカーに大別することができます。
高炉メーカーはその事業規模や知名度において電炉メーカーを凌駕しており、国内の高炉メーカーとしては、新日鐵住金、神戸製鋼所、日新製鋼、JFEスチールの4社のみが挙げられます。
このほか、「特殊鋼」と呼ばれる鉄合金を製造する鉄鋼メーカーもあり、事業内容や活躍の場はそれぞれに異なっています。
鉄鋼メーカー社員の1日
多くの人と連携しながら業務をこなす
鉄鋼メーカーで働く社員のスケジュールは、担当する職務によってさまざまですが、一例として、購買部門に属する社員の1日をご紹介します。
鉄鋼メーカーの事業は一般的に非常に大規模となるため、社内外を問わず多くの人とコミュニケーションを取りながら仕事を進めます。
9:00 出社
メールチェック、案件ごとの打ち合わせなどを行います。
10:00 海外打ち合わせ
鉄鉱石原産国の鉱山担当者とやりとりし、生産量などを協議します。
12:00 休憩
13:00 供給量管理
全国にある鉄工所の鉄鉱石使用量をリアルタイムで把握し、供給量を制御します。
15:00 船舶会社打ち合わせ
鉄鉱石を運搬する船舶会社と、最適な配船内容を協議します。
18:00 帰社
鉄鋼メーカー社員のやりがい、楽しさ
あらゆる産業に関わることができる
鉄の用途は非常に幅広く、建設業界、鉄道業界、造船業界、エネルギー業界、家電業界、商社など、さまざまな産業と密接に関わっています。
鉄という素材を通じて、複数の業界に対して横断的に関わる仕事ができるという点は、鉄鋼メーカーで働くうえでの大きな魅力といえます。
また、鉄鋼産業は、自動車業界やエレクトロニクス産業などと並び、日本が世界をけん引している業界ですので、国内にとどまらないスケールで、グローバルに活躍できるチャンスがあるでしょう。
鉄鋼メーカー社員のつらいこと、大変なこと
ひとつひとつの事業規模が大きい
鉄鋼メーカーが手掛けるプロジェクトは、非常に事業規模が大きくなることが多く、社内外の人間を含め、大人数のチームを組んで仕事を進めます。
それぞれの意見が合わなかったり、互いの利害関係がバッティングしたりして、案件がスケジュール通りに進まないことは日常茶飯事です。
また、金額的にみても、数億円単位、ときに100億円を超える規模となるため、鉄鋼メーカー社員は重い責任を負い、のしかかってくるプレッシャーと戦いながら働かなければなりません。
鉄鋼メーカー社員に向いている人・適性
熱意とバイタリティーのある人
鉄鋼メーカーでの仕事は、その事業規模が大きく、またフィールドも幅広いため、やりがいや楽しさもありますが、さまざまな苦労や困難も伴います。
立場も年齢も異なる多くの人と難しい折衝をしなければなりませんし、日本全国を、あるいは海外を慌ただしく飛び回り、精神的にも体力的にも厳しい激務となることもあります。
忙しく働くなかにあっても、仕事への熱意を失わない、バイタリティーに溢れた人は、鉄鋼メーカー社員の適性があるといえるでしょう。
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鉄鋼メーカー社員志望動機・目指すきっかけ
社会を支えるものづくりに携わりたい人が多い
鉄は、私たちの身の回りにある、ありとあらゆる製品の基になっています。
世界的にも評価の高い日本の「ものづくり」を支える存在として、鉄鋼メーカーはなくてはならないものです。
鉄鋼メーカーへの就職を志望するのは、鉄の重要性に惹かれ、産業全体に広く貢献したいと考える人が多いようです。
また、工場見学や会社説明会、各社が学生向けに実施しているインターンシップに参加して、実際の製鉄現場を見学し、そのスケールに圧倒されて、鉄鋼メーカーを志望する人も少なくありません。
鉄鋼メーカー社員の雇用形態・働き方
大企業化とグローバル化が進展する
鉄鋼業界での働き方として、「大企業化」と「グローバル化」の2つのキーワードが挙げられます。
鉄鋼メーカー各社は、世界市場で戦えるスケールメリットを得るため、大手同士の経営統合を積極的に推進しており、就職した企業が別会社と合併するというケースも十分に想定しておかねばなりません。
また、新興国を中心として、他国での建設事業や自動車産業に携わる鉄鋼メーカーが増加傾向にあるため、社員の働き方は、今後よりワールドワイドになっていくと想定されます。
鉄鋼メーカー社員の勤務時間・休日・生活
勤務地や担当業務によって勤務時間はさまざま
鉄鋼メーカーの勤務時間は、本社や事業所に勤める場合、他の業界のオフィスワーカーとほぼ変わらず、9:00~18:00くらいの間で働くことが一般的です。
一方、研究所や製鉄所で働く職種の場合、勤務時間は1時間ほど前倒しになり、8:00~17:00のところが多くなります。
また、基本的に製鉄所は24時間稼働しているため、設備のオペレーター業務やメンテナンス業務を担当している場合は、「交代制勤務」となり、日によって夜勤や当直をこなすことになります。
鉄鋼メーカー社員の求人・就職状況・需要
大手企業には学生が殺到する
鉄鋼メーカーの就職状況は景気の波に左右される側面もありますが、近年は世界規模で鉄鋼需要が伸びていることもあり、大手を中心に比較的安定した求人数で推移しています。
なかでも高炉メーカーである業界最大手の4社では、毎年100名以上の採用が実施されています。
ただ、大手鉄鋼メーカーは、どれも歴史ある伝統企業であり、その組織規模も非常に大きいことから、就職先としての人気が高く、難関大学の学生が多く集まります。
採用数が多いとはいえ、内定を得るには厳しい競争をくぐり抜けなければなりません。
鉄鋼メーカー社員の転職状況・未経験採用
多くは関連する実務経験が求められる
鉄鋼メーカーでは、実務経験があり即戦力となれる「キャリア採用」を中心として、中途採用も行われています。
職種ごとに募集条件は異なりますが、事務系であればBtoBの営業経験や、TOEICスコアが一定水準に達していること、技術系であれば、電気・制御に関する知識や図面を読める能力などが必要になります。
ただし、製鉄所において生産設備の運転操作を担うオペレーターや、機械・電気設備の保守点検業務などを行うメンテナンス職は、未経験でも採用されるチャンスがあります。