化学メーカー社員の仕事内容・なり方・年収・資格などを解説
「化学メーカー社員」とは
原料を化学反応で加工し、石油、ゴム、プラスチックなどさまざまなものを生み出す。
化学メーカーは、「原料を化学反応で加工する会社」のことです。
ある原材料を仕入れ、それに対して合成・分解・重合反応といった「化学変化」や「分離・精製操作」といった作業を行うことで、価値の高い製品を作り出し、世の中に提供します。
化学メーカーはさらに、石油、ガス、高分子(フィルム、繊維、電子材料)、無機材料(ガラス、セメント)など、さまざまな分野に分けることができます。
大手化学メーカーの多くでは新卒採用を実施しており、総合職は大きく分けると「技術系」と「事務系」の2職種に分かれ、技術系は理工系出身者が中心です。
平均年収は事業の安定性などから他の業界と比較すると高めとなっており、大手化学メーカーで管理職となれば、30代のうちに年収1000万円を超えることも難しくないでしょう。
国内市場が縮小傾向にあるなか、各社は海外へ事業フィールドを広げていくことで、利益の確保に努めようとする傾向が強くなっています。
独自の戦略で、世界市場で競争相手に勝つために生き残りをかける流れがますます加速するものと考えられます。
「化学メーカー社員」の仕事紹介
化学メーカー社員の仕事内容
化学反応を用いて原材料を加工する会社で働く
化学メーカーにはさまざまな分野がある
化学メーカーは、「素材産業」の代表的なものであり、化学反応を利用した製造業の一種で、「原料を化学反応で加工する」ことが仕事です。
仕事の流れとしては、まず必要に応じた原材料を仕入れ、それに対して合成・分解・重合反応といった「化学変化」を発生させたり、「分離・精製」といった操作などを行ったりします。
高度な技術やノウハウを要する複数の工程を経ることで、実用性に優れた付加価値の高い製品を作り出し、それを企業などに販売します。
化学メーカーは、取り扱う原料に応じて、石油、ガス、高分子(フィルム、繊維、電子材料)、無機材料(ガラス、セメント)などの分野に細分化することができ、それぞれに仕事内容は異なります。
化学メーカーの種類
化学メーカーは「総合化学メーカー」「誘導品メーカー」「電子材料メーカー」の3つに分類されます。
総合化学メーカーは、原料の仕入れから製品開発・製造、そして商品化まで自社で一貫して行う企業で、企業規模が大きく、それに準じて部門や職種も多岐に渡ります。
誘導品メーカーは、製品化するために必要な部品、つまり中間財を生産する企業で、最終加工前の製品を作っているため、一般消費者が直接製品を手に取ることはあまりなく、BtoBビジネスが中心です。
電子材料メーカーは、半導体やディスプレイといった電子材料を作る企業で、スマートフォンをはじめとした電子機器にも多く使われているため、実はとても身近な企業です。
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化学メーカー社員になるには
技術系総合職の採用が多い
系統別に就職試験を受ける
化学メーカー社員として働くには、各社が実施する採用試験を受験することが第一歩です。
新卒採用は基本的に毎年実施されており、大手化学メーカーでは毎年100名~150名程度採用しています。
たいていの場合、「総合職」として新入社員を採用するケースが大半で、数年単位で部署異動を繰り返しながらキャリアを積んでいくことになります。
職種としては、研究開発や技術管理、エンジニアなどの「技術系」と、営業や生産企画、購買、物流などの「事務系」の2つの区分があり、それぞれ別枠で採用が実施されます。
業界の特性から技術系の採用が多く、おおむね全体の7~8割が技術系社員として採用されています。
また、メーカーによっては各大学の研究室とつながりがある場合があります。
そうした際は、技術系職種は研究室に直接求人が届くケースもあり、教授推薦というかたちで採用試験が行われるようです。
キャリアアップの道はさまざま
職種も業務も多様な化学メーカーでは、キャリアに関する道もさまざまです。
ずっと技術職で働く人もいれば、数年後に別の部署や部門に転属する人もいます。
技術系から業務企画といった、畑違いの職種に異動を命じられることもあります。
さまざまなキャリアを積ませることで会社の将来をになう人材に成長させるのが目的なので、前向きに取り組めば自分の成長につながるでしょう。
化学メーカー社員の学校・学費
技術系職種には高い学歴が必要となることも
化学メーカーに総合職として就職するためには、基本的に大卒以上の学歴が条件になります。
化学を取り扱う企業とはいえ、事務系については文系・理系問わず採用されますので、文系出身の社員も多く働いています。
技術系については、化学や物理、機械、薬学、電気・電子など、理系の学生が募集対象となり、大学院修士課程や、あるいは大学院博士課程まで修めた、専門性の高い人材が多数採用されます。
各社の事業内容に合わせた分野の習得が条件ともいえるので、入社を希望する化学メーカーの対象分野は事前に調べた方がよいでしょう。
なお、一般事務職として働く場合は、大卒だけでなく、短大や高専、専門学校卒の学生も広く対象となります。
化学メーカー社員の資格・試験の難易度
工場勤務の場合、配属後に資格を取得することも
化学メーカー社員になるにあたって、新卒時点で絶対に必要とされる資格はありません。
実際の業務においては、配属先によって異なる専門性があるため、必要な知識やスキルはそれぞれの職場で身につけていく流れが一般的です。
大手化学メーカーの場合、海外出張や海外拠点スタッフとやりとりも多く、たとえ中小化学メーカーであっても英語力は生かされます。
TOEICなどで高得点を出していれば、有利となる可能性は高いでしょう。
また、生産管理や品質管理など、工場勤務となる業務を担当する技術系職種の場合は、取得しなければならない資格は複数あります。
各種の「危険物取扱者」や、高圧ガス関係の取扱資格、「ボイラー技士」、「機械保全技能士」、「有機溶剤作業主任者」など、取り扱う化学薬品や設備によってさまざまな資格が必要となります。
化学メーカー社員の給料・年収
景気の影響を受けにくく安定した収入が得られる
他業界よりも高い年収が期待できる
化学メーカーの平均年収は、一般的に発表されている数値をもとにすると600万円~650万円程度となっています。
業界としても安定したイメージがあるため、化学メーカーは就職先としても人気が高く、福利厚生も充実していることから、社員としても安心して働けるといえるでしょう。
ただ、統計には本社勤務の総合職だけでなく、工場で働く現場作業員などの給与も含まれるため、総合職は平均よりも高い水準に、工場勤務の場合は平均以下の給与が多いでしょう。
総合職についていえば、化学メーカーは、景気の影響を受けにくい事業を営んでいるため、他業界と比較すると年収は高めといわれています。
大手化学メーカーの総合職社員で、管理職などの役職者となれば、30代のうちに年収1000万円を超えることも難しくありません。
給料をアップさせるには?
専門性の高い化学メーカーでは、経験と実績を積み、地道な努力を続けて社員としての等級を上げたり、役職に就いたりすることで給料がアップしていきます。
ただし総合職として入社し、最初は研究者として業務を続けていたとしても、企画営業やプラントなど専門分野外の管理業務を命じられる可能性もあります。
会社としては多様な業務を経験させることでキャリアを積んでもらい、将来的に会社を支えられる人材になってほしいという考えを持って、ジョブローテーションをするところも多いです。
こうした経験の積み重ねが評価につながり、結果的に給料を上げることにもつながります。
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化学メーカー社員の現状と将来性・今後の見通し
化学メーカーは世界市場に進出していく
資源に乏しい日本がここまで経済的に成長できたのは、化学技術に優れていたことが一因として挙げられます。
今後についても、化学産業はまだまだ発展の余地があるといえますが、その一方で、人口減少などによって国内市場は縮小傾向にあります。
化学メーカーはこれまでのビジネスモデルの見直しを迫られており、日本のみならず世界的に見ても化学業界は転換期を迎えています。
こうしたなか、化学メーカー各社は、収益向上のため海外へとその事業フィールドを広げる動きを活発化させています。
技術力に優れ、国際競争力を有する化学メーカーは、これからより海外市場に注力していくものと想定されます。
また、M&A(企業の合併・買収)も活発化しており、グローバル化による業界の再編が行われる可能性もあります。
化学メーカー社員の就職先・活躍の場
取り扱う原材料は就職先によって異なる
化学メーカーは、石油化学分野、繊維分野、エレクトロニクス分野、医薬品・医療事業など、それぞれの分野に強みを持っているかで、企業の特色や保有する技術などが変わります。
特定の一分野を専門的に手掛けるところもあれば、複数の分野にまたがって事業を展開しているところもあり、財閥系化学メーカーなど、あらゆる分野を網羅している大手企業もあります。
主な製品としては、プラスチック、合成ゴム、化学繊維、電子材料、農薬、医薬品、化粧品、ガラスなど、いわゆる中間財と呼ばれる製品にして販売しています。
製品の供給先や用途、社員の活躍の場などは、企業によってさまざまですが、どこであっても、法人企業を相手としたBtoBビジネスであるという点は共通しています。
化学メーカー社員の1日
法人顧客担当者と連携して業務にあたる
化学メーカー社員のスケジュールは、担当する業務によって異なります。
多くの社員は、納入先であるメーカーと密にコミュニケーションを取りながら、仕事を進めていくことになります。
<研究開発職の1日>
化学メーカー社員のやりがい、楽しさ
専門性の高い仕事ができる
化学メーカーは、大学や大学院で学んだ化学知識を存分に生かすことができる職場です。
それぞれの企業では、自分が手掛ける分野においては誰よりも詳しいという自負をもった社員が多数働いており、プロフェッショナルとしての誇りを持って働くことができるでしょう。
また、各社が保有する技術は、世界でも通用するものがたくさんありますので、専門性を駆使して活躍の場をグローバルに拡げていけることも、大きな魅力となっています。
海外進出しているメーカーで働くことができれば、海外顧客の獲得、事業計画の立案、現地工場の立ち上げなど、世界を舞台に活躍できます。
海外の技術やノウハウを学んだり、触れたりする機会も多く、良い刺激を得られるとともに成長材料にもなります。
化学メーカー社員のつらいこと、大変なこと
化学薬品の取り扱いは細心の注意が必要
業務で用いられる化学薬品のなかには、劇薬に指定されているような危険物、人体に悪影響を及ぼす有機化合物なども少なくありません。
製品を製造するプロセスにおいては、繊細な作業が要求される化学反応や手技も多数あります。
ほんの些細なミスが重大事故につながる可能性も秘めており、過去には実際に、化学工場で大規模な爆発事故が起こり、ニュースに取り上げられたこともあります。
安全に業務を行うため、常に神経を集中させておかねばならない点には、大きな苦労を伴います。
また、拠点や部門が多くあるため転勤や異動の可能性は高く、短期間で別部署へ異動ということも珍しくありません。
プラントエンジニアなどは海外工場へ赴任することも考えられ、新しい環境になじめない人はつらくなるかもしれません。
化学メーカー社員に向いている人・適性
知的好奇心の旺盛な人
化学メーカーでの仕事は、それぞれの職種ごとに異なる専門性があります。
異動などによって取り扱う素材や技術が変わるたび、新しいことを学ばなければなりませんが、化学が好きな人にとっては、自分の知識を幅広くできるチャンスともいえます。
勉強することが好きで、知的好奇心の旺盛な人は、化学メーカー社員の適性があるでしょう。
また、化学メーカー各社は、近年海外との取引を増加させていますので、グローバルに働きたい人も化学メーカー社員に向いているといえます。
特に大手では、部署によっては海外出張も頻繁にあり、場合により現地に数年赴任することも考えられます。
現地スタッフや顧客と仕事し、日々さまざまな経験や刺激を受けることがモチベーションにつながる人にも向いています。
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化学メーカー社員志望動機・目指すきっかけ
ものづくりへの意欲や社会貢献度の高さがきっかけ
ものづくりで社会に影響を与えたい人
普段意識することはあまりないかもしれませんが、私たちの身の回りの製品には、たくさんの化学技術が用いられています。
スマートフォンの半導体やカメラレンズ、自動車のカーボン、飲料水のペットボトル、浄水器のフィルターなど、挙げていけばきりがありません。
いまや当たり前となっている、それらの製品に用いられている化学技術も、化学メーカー社員が研究の結果生み出したものです。
化学メーカーを志望するのは、そうした「ものづくり」の技術で、社会に影響を与えたい人が多いようです。
社会貢献度の高さ
より便利で、より快適な製品を世の中に生み出していくという、社会貢献度が高い業界でもあるので、そこにやりがいを感じて目指す人もいます。
新しい技術や素材を生み出すためには、化学メーカーで働く社員の多大な苦労があるものの、一方でそれらは仕事の醍醐味ともいえ、厳しくも最先端の環境でチャレンジしたい人は志望する傾向が高いです。
また、化学メーカーの職種や分野は実に多種多様です。
自分が活躍したい分野、特に大学で学んできた分野は強みやアピールポイントになるため、自分の知識や経験を生かしたいと化学メーカーを志望する人も非常に多いです。
化学メーカーの研究職は特に人気が高いため、化学業界が果たす役割、動向や問題点などを理解し、入社したいメーカーの企業研究を入念に行う必要があるといえます。
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化学メーカー社員の雇用形態・働き方
企業によっては働き方を選択できることもある
化学メーカー社員のほとんどは、部署異動や転勤を伴う総合職であり、事業規模の大きいところなどでは、頻繁に担当業務が変わったり、転居を強いられたりする可能性があります。
ただ、企業によっては、総合職とは別に、特定の業務を専属的に手掛ける「プロフェッショナル職」の募集が行われることもあるようです。
プロフェッショナル職の場合、基本的に異動も転勤もありませんので、ひとつのことを突き詰めた働き方をしたい人や、家族の事情などで転勤をしたくない人には、メリットがあるといえる制度です。
工場などの製造現場や、事務系仕事の補助などとしてアルバイトやパート、契約社員などが働くこともありますが、その他の業界と比べると数はそれほど多くありません。
化学メーカー社員の勤務時間・休日・生活
他業界よりも働きやすいところが多い
本社勤務する化学メーカー社員の勤務時間は、一般的に9:00~18:00くらいとなっています。
研究所や工場勤務の場合、始業時間・終業時間ともに早めの8:30~17:30くらいとなるところが多く、24時間稼働する工場だと7:30~20:00、20:00~7:30など交代制勤務もあります。
ただし大手化学メーカーの採用情報を確認すると、フレックスタイム制度やテレワーク制度、裁量労働制度を取り入れているメーカーもあり、働き方は多様化しているといえます。
残業時間については、企業によって差がありますが、業界全体でそこまで多くはなく、比較的プライベートと両立させやすいでしょう。
決算期などの繁忙期や、製品の納期前、あるいはトラブル発生時などは忙しくなりがちで、休日出勤が必要となるケースもあるようです。
化学メーカー社員の求人・就職状況・需要
化学メーカーの求人は安定的
大手化学メーカーの求人数は比較的安定しており、毎年総合職全体で100名以上採用するところも珍しくありません。
職種別にみれば、事務系よりも理系学生を対象とした技術系のほうが募集人数はかなり多く、おおむね7~8割が技術系社員として採用されています。
ただ、化学メーカーは安定した事業を営んでいることもあって、給与や福利厚生などの待遇もよいため優秀な学生が集まりやすく、就職倍率は厳しいでしょう。
内定を得るには、希望する企業のインターンシップに参加するなどして、業界や企業についての理解を深めることが重要です。
化学メーカー社員の転職状況・未経験採用
転職者の採用は業務経験者が大半
化学メーカー各社は、新卒採用とは別に、中途採用も随時実施しており、大手企業などでは年間を通じて募集がされているところも少なくありません。
ただ、中途採用については、職種や勤務地などがあらかじめ指定されているケースがほとんどであり、すぐに希望する職種・地域の募集を見つけられるとは限りません。
また、採用対象となるのは、即戦力として活躍できる、募集職種の実務経験がある人に限定されるケースが大半で、未経験者を対象とした募集はかなり少ないようです。
大手化学メーカーの場合、年齢制限はあまりなく誰でも応募できるといえますが、大手以外の求人を確認すると「長期勤続によるキャリア形成を図るため」として年齢制限を設けている会社もあります。