税理士は文系、理系どっちが有利?資格の取りやすさは?
実際には、文系と理系のどちらが有利ということはありませんが、どちらを選ぶかによって税理士になるまでのプロセスは変わります。
この記事では、文系と理系それぞれのメリットとデメリットを紹介します。
税理士に必要な学歴
さまざまな方法がある
税理士になるための学校や教育機関は多岐にわたり、大学や大学院、民間の資格専門学校、予備校、通信講座などがあります。
重要なのは、受験資格を得るための条件を満たすことであり、そのために通う学校や教育機関を選ぶ必要があります。
税理士試験の受験資格にはいくつかの条件がありますが、学歴に関する条件を満たすために大学に通うことが一般的です。
ただし、大学進学が必須というわけではなく、別の方法で受験資格を獲得することも可能です。
たとえば、一定期間の実務経験を積むことや簿記試験などの資格取得を通じて受験資格を得ることができます。
特定の学部や学科が有利になることはない
税理士を目指す際、大学進路の選択については重要ですが、特定の学部や学科に縛られる必要はありません。
文系と理系、それぞれの進路にはそれぞれの特徴や注意点があります。
学部や学科はスタート地点であり、税理士になるためには専門的な知識やスキルを習得し、税理士試験に合格することが最重要です。
どの学部から進学するかは、将来の興味やキャリアゴールに合わせて選びましょう。
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文系を選択した場合
文系の学部に進学する場合、税理士の仕事に関連する知識を学びやすいというメリットがあり、会計学や税法に関連する科目を学びやすい環境が整っています。
とくに経営学部や商学部では、会計や簿記論、財務諸表論など、税理士試験に直結する講義を受ける機会が多いため、試験対策を早めに始めることができます。
ただし、税理士試験の難易度を考慮すれば、大学の講義だけでは十分とはいえません。
税理士試験は非常に厳しい試験であるため、税理士試験対策の予備校やセミナーを利用して、必要なスキルを身につける必要があるでしょう。
また、税理士試験には学歴や職歴など受験資格に関する条件がありますが、学歴要件のひとつに「社会科学に関する科目の履修」があり、文系学部出身者は条件を満たしやすい場合も多いです。
学部の科目履修によって必要な条件をクリアできるため、学歴に関する問題は比較的解決しやすいでしょう。
総合的に考えると、文系学部から税理士試験に挑戦することは十分に実現可能であり、経済学や法律に興味がある人にとっては魅力的な進路といえます。
理系を選択した場合
理系学部に進学した場合、大学生活そのものが忙しく、税理士試験の勉強を進める余裕が少ないというデメリットが挙げられます。
授業や研究、卒業論文などで多忙なスケジュールをこなす必要があり、税理士試験の勉強にあてる時間が確保しにくいことが挙げられます。
そのため、民間の資格専門学校や予備校などに通うことが必須となる場合があります。
一方で、理系学部出身者の場合、数学や論理的思考力などが備わっていることが多いでしょう。
これは税理士試験においても大いに役立つ要素であり、とくに計算問題の多い科目においては有利になることがあります。
税理士試験においても、全11科目のうち国税徴収法を除いた10科目において計算問題が出題されますし、簿記論にいたっては100%計算問題のみです。
理系の場合は、できる限り計算問題の出題される割合が高い科目を選ぶと、文系出身者より有利に戦えるかもしれません。
また、理系学部の専門知識が特定の業界において有用である場合もあります。
たとえば、メーカーなどの産業に関連する税務問題において、理系出身者の専門知識が生かされることがあります。
したがって、理系から税理士を目指すことは簡単ではないものの、特定の分野での専門知識が役立つ可能性もあることを考慮に入れる価値があります。
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在学中に合格することは難しい
税理士試験合格の平均年齢を見ると、25歳以下で税理士試験の5科目突破は非常に難易度が高く、その合格者数は限られていることがわかります。
税理士試験は、そもそも大学在学中に合格することが難しく、多くの合格者は大学卒業後に税理士試験の合格を目指します。
したがって、大学の学部や学科は税理士試験の合格に直接的な影響を与える要因ではありません。
文系でも理系でも、合格のためには熱心な努力が必要です。
文系か理系かは、個人の興味や適性に合わせて大学進路を選び、その後の努力と学習スキルが合格に影響を与えるといってよいでしょう。
税理士試験受験資格要件の緩和
これまでは、大学在学中に、日商簿記試験1級または 全経簿記試験上級に合格することが税理士試験を突破するための登竜門といわれていました。
そのため、これまでは税理士を目指すには文系学部の方が有利といわれたこともあります。
しかし、令和4年度税制改正大綱では、以下のように「税理士試験の受験資格要件の緩和」が公表されました。
統計学に属する試験科目(簿記論・財務諸表論)は誰でも受験可能になり、税法に属する試験科目(所得税法・法人税法・消費税法など)は受験資格要件は継続であるものの、大学等における履修科目の要件を一部緩和しています。
こうした規制緩和により、令和5年度の受験者数は41,256人で、令和4年度(36,852人)と比べると、前年比112.0%となりました。
具体的な受験資格要件が変更されたため、受験者の多様性が増し、より多くの人が税理士試験に挑戦しています。
これにより、税理士資格取得へのハードルが下がり、文系のみならずさまざまなバックグラウンドを持つ人々が税理士として活躍する機会が広がっているといえます。
「税理士の文系・理系」まとめ
税理士としてのキャリアを築くために、文系・理系の区別はあまり重要ではなくなっています。
現在は試験制度変更により、理系出身者でも税理士試験の合格を目指しやすい環境が整備されました。
合格の鍵は、文系・理系の選択ではなく、高度な簿記知識の早期の習得といえるでしょう。