税理士になるには
税理士になるには
税理士試験を受けるルート
税理士は国家資格であるため、税理士として働くには、基本的に国税庁が実施する税理士試験を受けて合格する必要があります。
ただし、税理士試験は誰でも受験できるわけではなく、大学の法学部や経済学部などで税法や会計を学ぶ、税理士事務所などに3年以上勤める、日商簿記1級を取得するなど、いすれかの条件を満たす必要があります。
試験に合格してもすぐに税理士として働き出せるわけではなく、合格後に2年間の実務経験を積み、その後に税理士会に登録することで晴れて税理士としてのキャリアをスタートさせることができます。
税理士試験を受ける以外のルート
また、税理士試験を受けなくても、税理士資格を得られる方法もいくつか存在しています。
代表的なのは、税務署をはじめとした国税官公署で23年以上働いた後に、指定の研修を受けるというルートです。
税務の実務に精通しているとみなされるため、試験が免除されるというのは大きなメリットであり、この制度を用いて退職後に税理士業を営んでいる人も多く、そうした税理士は「国税OB」と呼ばれます。
しかし、必要な経験年数を考えると、これから税理士として活躍したい学生にとって、あまり現実的な選択肢とはいえません。
同制度は、あくまで公務員として働いた後のセカンドキャリアとして考えるべきです。
このほかにも、弁護士資格や公認会計士資格を取得すると、税理士会に登録するだけで税理士として働くことが可能です。
ただ、こちらの方法についても、必要となる資格の難易度が税理士資格よりも高いという関係上、決して有効とはいえないでしょう。
20代で正社員への就職・転職

税理士の資格・難易度
税理士試験では、「簿記論」「財務諸表論」「所得税法」など、税や会計に関する全11科目のうち5つの科目において、それぞれ60%程度以上得点することが必要とされています。
1科目に合格するだけでも数百時間の勉強が必要となる難関試験ですが、一度にすべての科目に合格する必要はなく、各科目の合格は次年度以降に持ち越すことが可能です。
このため、いくつかの科目に分けて毎年試験を受け、数年間かけて5科目の合格を目指す人がほとんどです。
税理士になるための学校の種類
税理士を目指せる学校は複数あり、大学や大学院などの教育機関もあれば、民間の資格専門学校や予備校もあります。
ただ、税理士を目指す人の多くは、受験資格を得るためにも、税法や会計学を学べる大学の法学部や経済学部などに進学するようです。
大学卒業後に大学院まで進み、会計学や税法に関する学位を習得できれば、税理士試験で課される11科目のうち一部の試験が免除されるというメリットもありますので、ほかの受験生よりもかなり有利といえます。
また、高卒や、大学の理系出身者が税理士を目指すなら、まず受験資格を得るところからスタートしなければなりません。
受験資格を満たすために、税理士事務所や会計事務所に勤める場合、大学などに通うことは困難ですので、夜間に開講している社会人向けの予備校や通信講座を利用する必要があるでしょう。
税理士になるための学校・費用(大学・大学院・専門学校、スクール)
20代で正社員への就職・転職

税理士に向いている人
税理士は、伝票や領収証、財務諸表など、膨大な量の資料をひとつひとつチェックし、法律に基づいて適正に処理していかなければなりません。
このため、几帳面な性格で、地味な作業をコツコツと続けられる忍耐力のある人が税理士に向いているでしょう。
また、クライアントからの信頼を勝ち取り、税理士として安定的に働くためには、企業経営者や個人事業者と人間関係を築けるコミュニケーション能力も必要です。
とくにコンサルティングを手掛けるなら、自分から情報を発信していく提案力、わかりやすくものごとを伝えられる表現力やプレゼンスキルなどが重要になるでしょう。
税理士の雇用形態
税理士は、その難易度から資格を取得できる人が限られており、また税理士にしか行えない独占業務が法律で定められているため、働き方としては非常に独立する人が多い職業です。
税理士会の取りまとめた統計をみても、資格保有者の7割以上が開業しており、企業などの組織に勤めている税理士は少数派です。
しかし、個人の考え方や生活事情はさまざまであるため、正社員として勤務したほうが望んだ働き方ができる場合や、出産や育児などの都合で派遣社員、パート・アルバイトのほうが働きやすいケースもあります。
ほかの職業と同じように、税理士も多様な働き方が可能です。
正社員の税理士
正社員の特徴
税理士試験は、通常、合格までに数年間という長い期間を必要とする難関であることから、正社員として就職する場合であっても、入社時点で試験に合格していることが必須というわけでありません。
このため、熱意次第では、多くの人に正社員として働くチャンスがあるでしょう。
ただ、ほかの雇用形態と比較すると、身分としては安定しており給料や福利厚生面も手厚い一方で、勤務時間も業務量も多くなり、背負うべき責任も重いことが特徴です。
資格未取得の場合、働きながら試験勉強に励むことになりますが、フルタイムで働きつつ試験対策もこなすのは並大抵の苦労ではないでしょう。
学習の進捗状況によっては、できる限り資格取得の支援体制が充実している就職先を選んだほうがよいかもしれません。
資格取得を優先させるために、派遣社員などを選択する人も見受けられるため、たとえ雇用形態としては安定しているとしても、正社員の選択肢がベストでない可能性もあります。
正社員の待遇
企業に正社員として勤める場合の税理士は、勤務先や勤続年数によって差があるものの、平均年収は700万円前後とされています。
資格を未取得の場合、そこまでの高給は期待できませんが、税理士資格を得られた時点で月額5万円前後の資格手当が加算され、大きく昇給するケースが一般的です。
なお、税理士事務所は比較的規模の小さいところが多いため、より安定した環境で働きたいのなら、メーカーなどの大手一般企業に就職し、経理部や財務部で資格を生かす選択肢もあります。
派遣社員の税理士
派遣社員の特徴
ある程度契約期間を区切って、派遣社員として税理士が募集されるケースも珍しくありません。
派遣社員として働くには、税理士や公認会計士の派遣を専門的に取り扱っている人材派遣サービス会社に登録する方法が代表的です。
税理士資格を保有していなくても、試験のうち一部科目に合格していれば派遣社員として登録できる場合もあります。
派遣先としては、時期によって業務量が上下する一般企業が多く、とくに決算期前後の企業や上場を準備している企業は派遣税理士の需要が高まります。
派遣の税理士は、正社員と比較すると、残業時間などがない分、業務後の資格勉強に充てられる時間が増えるため、目先の収入よりも資格取得を優先するなら派遣社員の働き方は有効といえます。
派遣社員の待遇
派遣社員の場合、給与は月給制よりも時給制のほうが多いですが、一般的な事務職の派遣社員と比較すると、専門知識を必要とする分、かなり高時給です。
ほとんど未経験の場合でも時給1,500円前後、ある程度の経理経験や税務知識があれば時給3,000円~5,000円となることも珍しくなく、なかには時給10,000円を超えている人もいるようです。
働きながら資格を取りたい人や、そこまでの高収入はいらないから自分のペースで働きたいという人、独立するための準備にまとまった時間が必要な人などにとって、派遣税理士の働き方はかなり魅力的といえるでしょう。
アルバイト・パートの税理士
アルバイト・パートの特徴
税理士事務所や会計事務所などでは、税理士をサポートする補助スタッフとして、アルバイトやパートの求人が募集されていることもよくあります。
アルバイトやパートは、基本的に会計ソフトを用いた仕訳の入力作業や税務申告書類のチェック作業など、簡単な事務作業を手掛けるため、そこまで詳しい税務知識やスキルなどは必要ありません。
税理士資格も求められないことが一般的ですが、経理経験があったり、簿記2級、3級の資格を持っていることが望ましいでしょう。
アルバイト・パートの待遇
待遇は勤務先や個人のスキルによって若干の幅がありますが、おおむね時給1,000円~2,000円前後と、一般的なアルバイトよりやや高い程度で、そこまで高単価というわけではないようです。
事務所によっては、将来的に税理士・公認会計士を目指している学生に対し、インターンシップ形式でアルバイト採用を実施しているところもあります。
実務経験を積みつつ給料がもらえるうえ、実際の税理士の働きぶりを間近で見られるメリットもあるため、学生の間にアルバイトとして税理士事務所で働いておくことも非常に有効といえます。
フリーランスの税理士
フリーランスの特徴
独立開業する税理士の最大の特徴は、働き方を自分で自由に選べるということです。
納税者や法人企業は全国いたるところに点在しているため、税理士は都市部でも地方でも仕事を見つけることが可能です。
また、手掛ける仕事内容も自分次第で、中小企業を主要顧客として決算整理などをおもに取り扱う人もいれば、個人顧客を相手に相続や資産運用の相談に乗る人もいます。
さらに、事業形態もさまざまで、個人でフリーランスとして働く人もいれば、法人を組織して手広く事業展開する経営者もいます。
フリーランスの待遇
税理士は働き方が自由である以上、収入面も人によって大きく差があり、年収3000万円を超えている人もいれば、民間会社員の平均年収程度か、それ以下という人もいます。
ただ、年収1000万円を超えている人も珍しくなく、独立には相応のリスクが伴う分、勤務時よりも高収入を期待できます。
しかし、誰もがお金を求めて独立するわけではなく、仕事のやりがい、私生活とのバランスなど、働き方に何を求めるかは人それぞれです。
副業・在宅の税理士
電子申告に代表されるように、近年は税理士業界においてもIT化が進展しており、インターネットを利用して在宅でできる税理士の仕事も増えています。
副業程度に収入を得る手段として最も一般的なのは、クラウドソーシングを用いて会計や給与計算、記帳代行など一部の業務を受注する方法です。
発注する税理士事務所・会計事務所側からしても、繁忙期と閑散期に分かれやすい税理士の仕事は、人件費を減らすために外部委託するメリットが大きくなっています。
また、一部の税理士事務所では、スタッフに対し在宅勤務(テレワーク)を認めているところもあり、今後さらに通信技術が進化すれば、より多くの税理士が在宅で勤務する時代になるかもしれません。
税理士のキャリアプラン・キャリアパス
税理士のキャリアプランを考えるうえで最も重要になるのが、法人と個人、どちらを主要顧客とするのかという点です。
法人を担当する場合、記帳代行や月次試算表の作成、決算処理や税務申告などの基本業務からスタートし、節税対策や経営面のサポートなど、コンサルティング領域に進んでいく流れが一般的です。
また、製造業や流通小売業、サービス業など、顧客の業種によっても必要なスキルは異なりますので、担当業種の幅を拡げることでキャリアアップを図るという選択肢もあります。
個人を担当する場合は、年末調整や給与計算といった確定申告業務が中心ですが、事業承継対策や相続、贈与など、個別案件に対応するための専門知識を順次学んでいくことになります。
個人事業主や不動産オーナー、医師、スポーツ選手など、クライアントの属性はさまざまですが、一般的には法人よりも個人のほうが報酬単価は下がりますので、どうやって付加価値を高めていくかも重要です。
企業や組織で十分に経験・ノウハウを積み、人脈を培えば、独立開業して自分の事務所を持つというキャリアも見えてくるでしょう。
税理士を目指せる年齢は?
税理士試験は合格までに長い年月のかかる難関試験であり、試験合格者の平均年齢がかなり高いことで知られています。
年齢別にみれば、40代以上の合格者が毎年4分の1以上を占めており、このことからも試験がいかに難しいかがわかります。
しかし逆に考えれば、年齢に関係なく何歳からでも税理士を目指すことが可能といえます。
実力主義の傾向が強く、また定年退職もないという特徴をみても、税理士としてのスタートが多少遅かったとしても、キャリア上そこまで不利にはなりにくいでしょう。
ただ、資格取得までに数年、人によってはそれ以上かかる可能性もありますので、できる限り若いうちに勉強を始めるに越したことはありません。
参考:税理士の人数の推移
日本税理士連合会の統計資料によると、税理士の人数は2020年時点で79,404人となっています。毎年、一定数増えてきている状況です。

出所:日本税理士連合会
税理士を目指すなら転職エージェントに相談してみよう
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