薬剤師になるには? 資格はどうやってとればいい?
資格取得まで時間がかかるため、きちんと将来の目標を定め、学業に打ち込むことが重要です。
この記事では、薬剤師になるための代表的なルートと、通う必要がある学校の種類、資格の取り方などについてまとめて解説しています。
薬剤師になるまでの道のり
薬剤師を目指す場合、特定の学校で薬学に関する専門的な学びをし、国家試験に合格する必要があります。
ここでは、薬剤師になるまでの道のりの全体像を説明します。
6年制の薬剤師養成課程で学び国家試験を受験する
薬剤師になるには、薬剤師養成課程のある学校で薬剤師として求められる知識・技術を学び、国家試験に合格する必要があります。
薬学系の学科を設置している大学(薬学部・薬科大学)は、国立・公立・私立と全国に79校(令和3年現在)あります。
参考:厚生労働省 薬学部(学科)数及び入学定員の推移
参考:日本薬剤師研修センター 全国の薬科大学及び薬学部のある大学
薬学系の学科は、北は北海道、南は宮崎まで全国の都道府県に設置されています。
在学中に学ぶことは「有機化学」「生物化学」「薬剤学」「疫病学」などの授業から、調剤薬局等での実習まで多様です。
所定のカリキュラムを修了し、6年制の課程を卒業した人もしくは卒業見込みの人だけに、薬剤師国家試験の受験資格が与えられます。
なお、かつて薬学部は4年制でしたが、制度の改革によって、平成18年4月の入学者からは6年制の課程を終えなければ国家試験を受験できなくなりました。
現在も4年制の薬学部は存在しますが、そちらでは薬学の研究者を養成することを目的としています。
希望の就業先を見つけて就職する
国家資格を取得した薬剤師は、希望の就職先を決めて採用試験を受けることになります。
薬剤師の活躍の場には、以下のような場があります。
なかでも調剤薬局は、薬剤師の主要な勤務先となっています。
公務員の薬剤師になるには
薬剤師のなかには、数はあまり多くないものの、公務員として働く人もいます。
薬剤師の公務員は、国で採用される「国家公務員」と、地方自治体で採用される「地方公務員」に分かれます。
地方公務員の薬剤師としては、各地方自治体の薬務課や保健所に勤務する「薬事監視員」「環境衛生監視員」などの職種があります。
都道府県立・市立病院の病院薬剤師として採用される例もあります。
国家公務員としては、厚生労働省の「薬系技術職員」として、医薬・生活衛生局、保険局、医政局、食品基準審査課および食品安全委員会などで、行政や研究に関連する業務を担当する人がいます。
このほか、薬剤師としての専門知識を生かし、違法薬物の取締を担当する「麻薬取締官」として活躍する例もあります。
公務員薬剤師になりたい場合には、薬剤師免許を取得したうえで公務員試験にも合格する必要があり、募集人数も少ないことから狭き門です。
薬剤師の資格・難易度
薬剤師国家試験は年1回実施され、「物理・化学・生物」「衛生」「薬理」「薬剤」「法規・制度・倫理」など、薬学に関する幅広い分野から出題されます。
受験会場は全国の大都市に設置されており、通常、北海道・宮城県・東京都・石川県・愛知県・大阪府・徳島県及び福岡県で行われています。
合格率は、例年平均で70~90%ほどとなっており、不合格の場合はまた翌年受験しなくてはなりません。
試験に無事合格して申請をすると、厚生労働省の薬剤師名簿に登録され、薬剤師免許が与えられます。
なお、薬学部では6年生のうちに就職活動をしますが、3月の国家試験に合格することができないと内定を取り消されてしまうことがあるため、誰もが全力を入れて国家試験に臨みます。
薬剤師になるための学校の種類
薬学について学べる大学には、4年制の「薬科学科」と6年制の「薬学科」の2つの学科が設けられていることがあります。
このうち、薬剤師を志す場合は、6年制の薬学科を卒業しないと薬剤師国家試験の受験資格が得られないため、注意してください。
4年制の薬科学科には、主に薬学領域の幅広い知識を習得し、将来的にMRや教員、研究者を目指す人などが通っています。
受験しようとしている学科が、本当に薬剤師国家試験の受験資格が得られるカリキュラムかどうか、入学前にしっかりと確認しておくことが必要です。
なお、短期大学や専門学校、通信教育などでは薬剤師国家試験受験資格や薬剤師資格は得られません。
なお、私大の薬学部はその他の理系学部よりも実習費などが高額になるケースが多く、6年間で1000万円以上かかることもあります。
国公立大学に関しては、薬学科の学費も他の学部と同じ金額になっています。
薬剤師に向いている人
ここでは、薬剤師として働くうえで求められる資質はどんなものか、この職業に向いている人の特性などを紹介します。
集中力がある人
薬剤師の代表的な活躍の場である薬局においては、次から次へと異なる調剤をしていかなければなりません。
人の健康に関わる医薬品を扱う以上、ミスは許されない仕事のため、集中力を持続し、頭を働かせながら仕事をしていくことが必要です。
健康に関心があり、注意力と責任感の強い人
薬剤師の仕事は、患者さんの治療や健康に大きな影響をおよぼす薬を扱います。
ただ調剤し手渡すだけではなく、患者さんの体調の変化や他の薬との飲み合わせなど、あらゆる情報にアンテナを張り、注意深く患者さんに対応する責任感が求められます。
また、新しい医薬品は次々に開発、発売されているため、医薬品や業界についての知識を常にブラッシュアップし続けていく姿勢が重視されます。
コミュニケーション能力のある人
薬剤師は、医薬品の専門家としての役割はもちろん、ときに接客業としての性格もあわせ持つ職種です。
高いコミュニケーションスキルが求められることが少なくありません。
患者さんから医薬品に関する相談を受けたり、医薬品について説明したりする際に、優れたコミュニケーション能力を発揮すれば、患者さんの安心にも繋がります。
親身になって人の話を聞くことができる人や、相談しやすい雰囲気の人が薬剤師に向いているといえるでしょう。
薬剤師のキャリアプラン・キャリアパス
薬学科の新規設置が増え、薬剤師資格を取る学生は年々増加しています。
この傾向が続けば薬剤師は増える一方ですが、需要は減少していく可能性があります。
処方せんや薬歴の電子化が進んだことで、かつては薬剤師が自分の手で行ってきた入力作業がどんどん簡略化され、薬局の人手そのものが少なくても調剤作業ができるようになってきました。
調剤作業に関しても、医療機器の発達で大幅に時間の短縮が叶うようになっています。
また、規制緩和の流れで、コンビニやインターネットなどでの医薬品販売が可能になってきています。
薬局での対面販売も減る傾向にあり、薬の種類によっては、薬剤師ではなく「登録販売者」という資格があれば販売できるようになったことなどから、薬剤師の需要は減少傾向にあるとみられています。
とはいえ、人の健康に深く関係する分野である以上、医療業界自体が大幅に縮小していくことは考えにくいです。
たとえAIやインターネット販売などで薬剤師の需要が減った場合でも、薬の専門家としての薬剤師が求められる場は必ず残るでしょう。
しっかりとキャリアプランを描き、それに応じた知識の研鑽やスキルアップを積んだ薬剤師は、医療現場で今後も必要とされ続けると考えられます。
薬剤師を目指せる年齢は?
薬剤師を目指す人は、まず薬学科(薬剤師養成課程)で6年間学び、卒業試験や国家試験をパスして、ようやく薬剤師資格を手にすることができます。
薬学科の入学に年齢制限はなく、薬剤師国家試験の受験に関しても年齢での受験資格制限はありません。
したがって、その気になれば、何歳からでも目指すことのできる職業だといえるでしょう。
ただし、私立大学の薬学部の場合、6年間通うとなると1000万円以上の学費がかかるケースは珍しくありません。
在学中、お小遣い稼ぎのアルバイト程度はできるかもしれませんが、本格的な仕事と両立して学生生活を並行することは基本的に不可能です。
ですから、よほど金銭面に余裕がある人でないと、社会人が一から薬剤師を目指すことは難しいかもしれません。
また、薬剤師資格を取った後の就職活動においては、年齢がネックになるケースがまったくないとは言い切れません。
他の職種同様、新卒の薬剤師の就職でも「できるだけ若い人を採用したい」と考える施設は少なからず存在します。
ただし、向上心・熱意が認められれば年齢不問で採用されるケースもあるため、年齢が多少高くなっていてもそれだけであきらめる必要はないでしょう。
薬剤師の欠格事由とは
薬剤師の欠格事由とは「薬剤師として働いてはいけないとみなされ、国の公的機関から許可申請が下りないこと」に対する理由を意味します。
欠格事由は薬剤師に限らず、さまざまな職業でも取り決めが行われています。
薬剤師の欠格事由は薬剤師法によって、「絶対的欠格事由」と「相対的欠格事由」の2つが存在しています。
どのような内容なのか、それぞれについて紹介します。
絶対的欠格事由
「絶対的欠格事由」の一つに、未成年者、成年被後見人又は被保佐人には、免許を与えない、というものがあります。
成年被後見人とは、精神障害によって判断能力が欠如していることによって、後見人が必要な人のことで、被保佐人とは、同じく精神障害があることで保佐人(助ける人)が必要な人を示します。
上記に上げた成年被後見人も被保佐人もいずれも精神障害があるために薬剤師免許を与えることができないということになっています。
相対的欠格事由
「相対的欠格事由」として、次の各号のいずれかに該当する者には、免許を与えないことがあると定められています。
- 心身の障害により薬剤師の業務を適正に行うことができない者として厚生労働省令で定めるもの
- 麻薬、大麻又はあへんの中毒者
- 罰金以上の刑に処せられた者
- 前号に該当する者を除くほか、薬事に関し犯罪又は不正の行為があつた者
相対的欠格事由とは、絶対的欠格事由のように、どうしても薬剤師になれない、といったものではありません。
しかしながら、絶対的欠格事由も相対的欠格事由もいずれにせよ、薬剤師の欠格事由として当然といえることが規定されています。
【参考】薬剤師に関するデータ
薬剤師数の推移
薬剤師の人数は年々増えてきています。令和2年度の薬剤師数は321,982人になっています。
薬剤師の男女比
令和2年時点における薬剤師の男女比率は、男性38.6%、女性61.4%となっています。
性別・年齢別の薬剤師数
年齢別に薬剤師の人数を見ると30代、40代の比率が高くなっています。
薬剤師の女性比率はどの年代でも高くなっていますが、40代、50代が約70%であるのに対して、20代64.6%、30代は59.6%と比較的少なく、男性薬剤師が増えているといえます。
「薬剤師になるには」まとめ
薬剤師になるには、薬学系の大学で6年間の専門教育を受けたうえで、国家試験を受け、合格することが必要です。
就職先は調剤薬局を中心に、病院、ドラッグストア、一般企業、研究機関など多様です。
勤務先によって、任される業務内容や仕事の進め方などは変わってくるため、薬剤師になりたい人は、将来どのような場で働きたいのかまで考えておきましょう。