テレビ局社員の仕事内容・なり方・年収・資格などを解説
「テレビ局社員」とは
テレビ番組の企画・制作をするテレビ局に勤める人。制作部隊のほか営業職や事務職なども。
テレビ局社員とは、テレビ番組の企画・制作を行うテレビ局に勤務するスタッフのことを意味します。
テレビ局では、番組制作に携わる「ディレクター」や「プロデューサー」のほか、「アナウンサー」「記者」「カメラマン」「営業」「編成」など、多種多様な職種の社員が活躍しています。
一般的な企業と同じように、「経理」や「広報」など管理系の仕事に就く社員もおり、多くの人たちが放送の裏側を支えています。
テレビ局への就職試験では4年制大学以上の学歴が必要となることが多く、とくに「キー局」といわれる大手テレビ局への入社ハードルは高めです。
比較的待遇がよく、高収入が得られる業界として知られていますが、近年ではテレビ離れが加速し、テレビ局の経営は厳しいものとなっています。
「テレビ局社員」の仕事紹介
テレビ局社員の仕事内容
各職種に分かれ、テレビ番組の企画・制作などの業務に携わる
テレビ局社員とは、テレビ番組の企画・制作を手掛ける企業に勤める人のことです。
テレビ局社員の仕事内容は、大きく以下のように分けられます。
<番組の企画・制作に携わる>
・ディレクター
・プロデューサー
・アナウンサー
・記者
・編成
<放送を技術的に支える>
・カメラマン
・音声スタッフ
・照明スタッフ
<その他>
・営業
・経理
・広報
・人事
このように、テレビ局社員の職種は多岐にわたり、部門やチームに分かれて専門知識や強みを発揮しながら働きます。
クリエイティブな仕事だけではなく、裏方として放送の現場を支えていく職人的な仕事もたくさんあります。
番組制作会社社員との違いは?
テレビ局社員とよく似ているのが「番組制作会社社員」です。
番組制作会社とは、テレビ局からの依頼を受け、番組制作を専門に行っている会社やプロダクションのことです。
番組制作会社にもディレクターやカメラマンなどがいますが、基本的にはテレビ局の下請け的な立場となるため、自分たちで企画は行わないことも多く、制作に特化した業務がメインとなります。
テレビ局社員のほうが、より幅広い番組企画・制作に携われるチャンスは大きく、待遇もよい場合が多いです。
テレビ局社員になるには
テレビ局の社員採用試験を受験する
多くのテレビ局では、年に一度の新卒採用を実施しています。
応募にあたって資格や免許はとくに必要ありませんが、学歴に関しては「大卒(見込み者含む)」を応募条件とするのが一般的です。
テレビ業界は昔から就職先として人気が高く、とくに大手のキー局ともなれば、100倍を超える倍率になることも珍しくありません。
テレビ業界を強く志望する人の場合、地方局も含めて、できるだけ多くのテレビ局を受験するケースもよくあります。
テレビ局の社員採用試験はやや特殊
テレビ局の採用試験は、他の企業と同じように書類審査(エントリーシート)から始まります。
その後、一般常識や時事問題の筆記試験、面接(複数回)、ディスカッションなど多様な試験内容が行われ、テレビ局にふさわしい人材であるかが判断されます。
ディレクター志望であれば番組の企画立て、アナウンサー志望であればスタジオで原稿を読むカメラテストが実施されることもあります。
このように、テレビ局の試験はやや特殊で、また難関大学の学生が多く志望するため、十分な就職活動対策が必要となります。
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テレビ局社員の学校・学費
できるだけ難易度の高い大学に進学しておくと有利に
テレビ局社員を目指したい場合は、大学に進学しておくことが推奨されます。
多くのテレビ局では、社員採用試験の応募資格として「大卒以上」の学歴を掲げているからです。
実際に採用される人は難関大学か地元のトップレベルの大学出身者が多いため、できるだけハイレベルな大学に進学するほうが、テレビ局への入社を目指す上ではやや有利といえます。
学部・学科や専攻は問われませんが、学生時代にどのような勉強をしてきたのか、何に深く興味をもっているのかなどは深く問われる傾向が見られます。
自分が学んだことを、わかりやすく他者に伝える練習をしておきましょう。
学生時代に多様な経験を積んでおくことが大切
テレビ局の採用は、学歴ですべてが決まるというわけではありません。
さほど偏差値が高くない大学出身でも、他の人とは異なる光るセンスや豊かな発想力、地頭のよさなどがあると判断されれば採用される可能性はあります。
しかし、現実的には学生時代に十分な勉強をしてきた人が採用されやすく、大手テレビ局になると、大学院の卒業生や留学経験者も少なくありません。
テレビ局への就職を目指すのであれば、できるだけ高い学力を身につけて、多様な経験を積んでおきましょう。
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テレビ局社員の資格・試験の難易度
資格そのものよりも取得した背景や意図が重要
テレビ局の社員になるために必要な資格はありません。
資格よりも、テレビ業界や番組制作に対する情熱や発想力、企画力などのクリエイティブな能力が重要とされます。
就職する際にも、このようなスキルが重視されやすいと考えておいたほうがよいでしょう。
ただ、アナウンサーなど一部の職種では、語学が堪能であることを証明する「TOEIC」や「英検」のような資格や、日本語能力が高いことを証明する「漢字検定」などの資格が業務で役に立つことがあります。
とはいえ、資格があるだけで採用に大きく有利になるわけではありません。
テレビ局社員を目指す人が資格をアピールしたい場合には、資格そのものよりも、それを取得しようと考えた意図や背景、また取得のためにした努力などのストーリーをわかりやすく伝える努力をしましょう。
「情報を相手にわかりやすく、おもしろく伝える」力はテレビ局では重視されるため、その点がうまくいけば、プラス評価されることはあるでしょう。
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テレビ局社員の給料・年収
キー局では平均年収が1000万円を超える
テレビ局社員のなかでも、東京のキー局で正社員として働く人の給料・年収は高めです。
各局とも、社員全体の平均年収は1000万円~1500万円ほどとなっており、一般的な会社員の平均年収の2倍以上の収入が見込めます。
人によっては順調にキャリアを積んでいくと、30代のうちに年収1000万円近くになることもあります。
一方、地方局になると、キー局よりも給与水準はやや下がり、平均年収は700万円~800万円ほどと考えられます。
それでも地方都市の中では高めの収入が得られる場合が多いでしょう。
諸手当が多くついている場合も
テレビ局社員の給料には、時間外割増手当、深夜加算手当、早朝出勤手当、休日出勤手当、出張手当などの諸手当が多くついているケースが見られます。
というのも、テレビ局社員は職種や担当番組によっては早朝や深夜に働くことも多く、長時間労働になりがちです。
基本給はそこそこでも、特殊な働き方に関する手当がつくことで、収入を大きく押し上げているケースも見られます。
ただ、キャリアを重ねて管理職になると、給料は「年俸制」になることが多く、その場合は通常、残業時間がいくら増えても手当がつきません。
待遇は恵まれている反面、生活は不規則になりがちで、あまり休みもとれないなど、ハードワークをしなくてはならない可能性も念頭においておいたほうがよいでしょう。
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テレビ局社員の現状と将来性・今後の見通し
テレビ番組づくりに対する信念や志がある人材が求められる
テレビは昔から、人々の情報入手の手段の一つ、また娯楽の一つとして広く親しまれ続けてきました。
しかし、現代では若者を中心としたテレビ離れが加速し、テレビ局はどこも苦戦を強いられています。
以前のような「高収入」「安泰」だけのイメージではいかなくなっているのも事実です。
スマホやタブレット、ゲーム機などエンターテインメントの種類は多種多様ですし、ネットやSNSを活用して情報入手も容易になっています。
よほどおもしろいコンテンツを生み出さなければ、視聴者の興味を集めることができなくなっているのです。
こうした時代でテレビ番組に関わり続けるには、「テレビの存在意義」を社員一人ひとりが深く考えていかなくてはなりません。
災害時の緊急報道、政治や経済の重要なニュースなど、大きな影響力をもつテレビだからこそ伝えられる情報は多々あります。
「テレビの未来を守りたい」「新たなコンテンツを作ってテレビの魅力を伝えたい」という強い志がある人が、信念や覚悟をもってチャレンジすべき業界だと考えておいたほうがよいでしょう。
テレビ局社員の就職先・活躍の場
民間のキー局や地方局、あるいはNHKで働く
テレビ業界においては、「キー局」と呼ばれている主要放送局が大手にあたります。
一般的にいわれるキー局とは、東京に本社を置く民間の放送局5社「テレビ朝日」「TBSテレビ」「フジテレビジョン」「日本テレビ放送網」「テレビ東京」のことを指しています。
キー局に次いで規模が大きめの企業は「準キー局」ともいいます。
また、東京以外の民間の放送局は「地方局(またはローカル局)」と呼ばれます。
テレビ局社員として働く人は、民放のキー局や地方局、あるいは公共放送であるNHKのいずれかに勤務しています。
テレビ局社員の1日
配属部門や職種、担当番組によって動きがまったく異なる
テレビ局社員の1日の動きは、配属部門や職種によってまったく異なります。
また制作に関わる仕事をする場合、担当番組によってもスケジュールが大きく変わってきます。
早朝や深夜に勤務することも珍しくありません。
ここでは、アナウンサーとして朝の情報番組を担当しているテレビ局社員の1日を紹介します。
テレビ局社員のやりがい、楽しさ
世の中に大きな影響のあるメディアに携わる喜び
テレビは、何十万人、何百万人もの人々に同時に視聴してもらうことが可能なメディアです。
映像を通して伝えられることの可能性や、世の中への影響度も非常に大きなものです。
たとえばドラマや情報番組を通して新たな流行を生み出すことができますし、報道番組が世論や政治を動かすきっかけとなることもあります。
「テレビ番組を通じて伝える仕事がしたい」という情熱がある人にとっては、テレビの仕事は大きなやりがいを感じられる仕事となるでしょう。
自身が手掛けた番組が実際に放送されて、視聴者からのよい反応を得られたときにも、大きなやりがいを得られます。
テレビ局社員のつらいこと、大変なこと
不規則な生活でハードワークになる可能性も
テレビ番組は放送日時に合わせてスポンサーのCMが流れることが決まっており、新聞やインターネットのテレビ欄にも告知が出ています。
これに間に合わせるため、テレビ局の社員は常に「放送日時」という締め切りに追われており、必然的に激務となります。
職種によっては深夜残業が続いて、精神的にも肉体的にもハードな生活となります。
華やかなイメージと泥臭い現場のギャップを感じて、若いうちに離職してしまう人もいるのが現実です。
また、テレビ局の仕事は制作部門を中心に、現場経験を通して学んでいくことが多くあります。
新人や若手社員はとくに長時間労働になりがちですし、良くも悪くも男女関係なくバタバタと働くため、体力面で不安のある女性には厳しい面もあるかもしれません。
テレビ局社員に向いている人・適性
番組づくりへの情熱と、倫理観のある人
テレビ局社員に向いているのは、まずテレビが大好きなことです。
単に視聴者として番組を見るだけでなく、「自分でどうしても作りたい番組がある!」だとか「テレビ業界の将来をこうしたい!」などの志や情熱がある人に向いています。
「テレビは人並みには好きだけれど、深い思い入れはない」という人では、とても採用試験を突破するのは難しいでしょう。
なお、テレビは「真実の報道」という重大な使命を背負っているメディアです。
ニュース番組では偏向的な取材や編集を行うことなく、常に視聴者に真実を伝える姿勢を貫くことが大切です。
最近ではインターネットの発展により、演出側の過剰な演出やごまかしが世間に見抜かれることも多いため、テレビ局社員は高い倫理観をもちながら、おもしろい番組づくりをすることが求められます。
バランスよく、さまざまな視点をもって物事を考えられる人も、テレビ局社員には向いています。
関連記事テレビ局社員に向いている人とは? 適性や必要な能力を紹介
テレビ局社員志望動機・目指すきっかけ
テレビ番組に対する思い入れがきっかけに
テレビ局社員を目指す人の多くが、「昔からテレビが好きだったから」という思いを抱いています。
とにかく暇さえあればずっとテレビを見ていたという人もいれば、大好きなアニメやドラマがあったという人、また人生を変えるほど感銘を受けたドキュメンタリーに影響を受けたという人など、具体的なエピソードはさまざまです。
いずれの場合でも、テレビ局社員を目指すのであれば、視聴者側から作り手側に回ることを強く意識するのが大切です。
自分がどのように番組企画・制作に関わりたいのかを、深く語れるようにしましょう。
また、テレビ局への就職を目指す場合、応募の時点で希望の職種(部門)を決めておかなければならないことが多いです。
応募職種(部門)に関する情報をよくチェックして、自分の強みや個性を存分に生かせる志望動機を考える必要があります。
関連記事テレビ局社員の志望動機と例文・面接で気を付けるべきこと
テレビ局社員の雇用形態・働き方
正社員のほか、契約社員やアルバイトとして働く人も多い
テレビ局の社員を目指す人の多くが正社員として雇用されることを希望していますが、正規雇用の採用は非常に狭き門となっています。
実際には、非正規雇用の契約社員として務めている人も決して少なくありません。
とくに「ディレクター」「アナウンサー」「記者」などの人気職種は、契約社員として働いている人もたくさんいます。
本人の適性や実力、実績によっては、中途採用で正社員になれるチャンスを掴めることもあります。
また、制作部ではテレビADの仕事などでアルバイトを募集することもあります。
この場合のアルバイトはほぼ雑用で、ハードワークですが、番組制作現場の雰囲気や仕事の流れを体感することはできるでしょう。
テレビ局社員の勤務時間・休日・生活
部門や職種によっては不規則な生活となる
テレビ局社員は、会社が定める勤務時間や休日は、あってないような生活となります。
まず、職種によって勤務スケジュールが大きく異なります。
たとえば報道に携わる「記者」「ディレクター」「カメラマン」などの場合は、突発的な事件や事故の速報が飛び込んできたら、一刻も早く現場に直行するのが重要な任務です。
たとえ休日であっても深夜であっても、急に呼び出されることがあります。
また、ロケや編集などの内容や進行状況によっては、時間も曜日も関係なく仕事をすることはよくあります。
テレビ局社員の中でも比較的安定した勤務スタイルとなるのは、広報や経理、人事など、管理系の仕事を担当している人たちです。
このような職種の社員であれば、基本的には急な呼び出しや深夜残業、休日出勤などはありません。
テレビ局社員の求人・就職状況・需要
少ない求人に応募が殺到する
多くのテレビ局では、毎年、新卒の学生向けの採用試験を実施しています。
東京に本社を置く大手のキー局やNHK、もしくは日本各地にある地方局(ローカル局)など、数々のテレビ局がありますが、いずれも倍率は非常に高いものとなります。
ここ数年、キー局の新卒採用人数は全職種あわせても30人ほどであることが多く、ローカル局にいたっては数名のみの採用となる年もあります。
NHKの場合は300人ほどの新卒採用を行いますが、この人数は東京の本部だけでなく、全都道府県にある地方局に赴任する人を含めての人数です。
求人数に対して応募者の数が圧倒的に多く、また難関大学の学生も多数志望することから、ハイレベルな争いとなります。
地方局を複数受験する人が多数
テレビ業界で働くことを強く志望している人の場合、キー局のほか、地方局をいくつも受験するケースが目立ちます。
「できれば大きなキー局で働きたいけれど、地方局でもやむなし」といった考えの人が多いです。
それでも合格できなかった場合、就職浪人をして翌年、また新卒枠でチャレンジし直す人もいます。
テレビ局に正社員で入るのは狭き門であるため、契約社員の求人を探して、正社員になれるチャンスを待つ人もいます。
テレビ局社員の転職状況・未経験採用
マスコミ関係者の転職が多い傾向
テレビ局の採用は新卒採用がメインではありますが、最近では、中途採用を行っているところもあります。
中途採用の場合、新聞社や出版社で働いていたマスコミ関係者、番組制作会社で番組を作っていたディレクター、フリーランスで働いていたリポーターやキャスターなどが採用試験を受けることが多いようです。
基本的には、即戦力となれる人材が歓迎されるため、前職の経験やスキルを生かせる人は転職しやすいです。
未経験からの転職は実現可能?
異業種からの転職を歓迎しているテレビ局もあるため、未経験でも挑戦してみる価値はあるでしょう。
これまでに培ったキャリア、柔軟な発想力、テレビ番組制作に対する思いなどが伝われば、テレビ業界未経験からの転職の実現可能性もあります。
ただし、年齢が上がれば上がるほど未経験の転職は厳しいものになります。
また、中途採用では契約社員からのスタートになることもあるため、その点には注意してください。
番組制作の仕事は意外と下積みが必要な泥臭いものであるため、場合によってはアルバイトからスタートして地道に経験を積む覚悟も必要でしょう。
テレビ局の種類・キー局とは
東京に本社を置く大手テレビ局は「キー局」と呼ばれる
テレビ番組の企画・制作を手掛けるテレビ局は、一般的に、以下のような種類に分けられます。
・キー局:東京に本社を置く民間の放送局。(テレビ朝日、TBSテレビ、フジテレビジョン、日本テレビ放送網、テレビ東京)
・地方局(ローカル局):北海道から沖縄まで、全国各地にある放送局。
系列キー局の番組を放送する時間帯と、独自に制作している番組を放送する時間帯に分かれるのが特徴です。
また、キー局に準ずる規模の地方局は「準キー局」と呼ぶこともあります。
・準キー局:キー局に準ずるテレビ局です。一般的にはキー局の系列局のうち、大阪と名古屋のテレビ局をいいます。
これらはすべて民放のテレビ局で、スポンサー企業から支払われた宣伝費や広告費を財源として、テレビ番組制作を行います。
一方、テレビ局のなかでも性質が異なるのがNHKです。
・NHK(日本放送協会):日本における公共放送です。民間テレビ局とは異なり、視聴者から徴収した受信料を財源として番組制作を行います。
このように、テレビ局といっても、規模も種類もさまざまです。