小学校教師(小学校の先生)の年収・給料はいくら? 年齢別の給料や初任給、ボーナスも解説
しかし、その給料・年収は役職や経験年数、勤務する都道府県によっても異なり、人によって差が出ます。
この記事では、小学校教師の収入事情を、さまざまな角度から解説していきます。
小学校教師の平均年収・給料の統計データ
小学校教師の勤務先は、大きく分けて公立小学校と私立小学校があります。
ただし、私立小学校の学校数は全体の1%程度のため、ほとんどの小学校教師は公立小学校に勤務する「地方公務員」です。
地方公務員となる小学校教師の給料は、自治体ごとの「給料表」によって定められており、突然増減することはなく安定しています。
一方、私立小学校に勤務する場合は、一般的な民間企業と同じように、学校ごとに給料体系や待遇が決められています。
小学校教師の平均年収・月収・ボーナス
賃金構造基本統計調査
厚生労働省の令和5年度賃金構造基本統計調査によると、小学校教師の平均年収は、41歳で661万円ほどとなっています。
出典:厚生労働省「令和5年度 賃金構造基本統計調査」
※平均年収は、きまって支給する現金給与額×12ヶ月+年間賞与その他特別給与額にて計算。
※本統計はサンプル数が少ないため、必ずしも実態を反映しているとは限りません。
小学校教師の手取りの平均月収・年収・ボーナスは
手取り金額は、支給された給与から税金や社会保険料を差し引いたもので、一般的に月額給与の約8割といわれています。
公立の小・中学校教育職の場合、平均給与月額が424,900円であるため、手取りの平均月収は339,920円前後と推定されます。
また同様に、手取りのボーナス額は150万円前後、手取りの平均年収は660万円前後になると推定されます。
ただし実際には扶養家族の人数や前年の年収などにより、控除として差し引かれる金額が変わるため、手取り金額は人により幅があります。
小学校教師の初任給はどれくらい?
公立学校の場合
小学校教師の初任給は、採用された自治体や学歴、採用区分などによって異なります。
総務省の「令和4年 地方公務員給与実態調査結果等」によると、小・中学校教育職の初任給基準は全国平均で以下のようになっています。(※都道府県 選考採用)
- 大学卒:209,570円
- 短大卒:186,601円
地方公務員の一般行政職の初任給は大卒で182,838円、短大卒で165,537円(ともに選考採用)となっており、小・中学校教育職の方が2万円以上高いことがわかります。
地方公務員の中でも小・中学校教師は給与水準が高めとなっており、さらにこの基準額に地域手当、教職調整額、義務教育等教員特別手当などが上乗せされます。
最終的な支給額は、全国的には22万円~26万円程度がボリュームゾーンとなっているようです。
実際の手取り額は20万円前後と、一般的な大卒の会社員と同じくらいになります。
私立学校の場合
私立学校の教師採用は都道府県ごとの採用に委託している学校法人も多く、新卒で採用するところは少ないようです。
一般的に私立学校では公立学校よりも高い傾向にあります。
ただし、地方の私立学校や経営規模によっては公立学校よりも低い可能性があるため注意が必要です。
小学校教諭の勤務先の規模別の年収(令和5年度)
小学校教諭の年収は、勤務先の規模が大きくなるとやや高くなる傾向があります。
10〜99人規模の事業所に勤める小学校教諭の平均年収は559万円、100〜999人規模は628万円、1,000人以上の規模では832万円、10人以上規模の事業所平均は661万円となっています。
上記グラフの基タイトルは「小・中学校教員」で中学校教師など他職業を含むデータです。
※賃金構造基本統計調査より作成。本統計は調査の母数が少ないため、必ずしも実態を反映していない可能性があります。
小学校教諭の勤務先の年齢別の年収(令和5年度)
小学校教諭の年収を年齢別に見ると、年齢の上昇にしたがって、年収も上がっています。最も年収が高い世代は、50~54歳と55~59歳の933万円です。
全年代の平均年収は661万円となっています。
上記グラフの基タイトルは「小・中学校教員」で中学校教師など他職業を含むデータです。
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小学校教師の福利厚生の特徴
小学校教師は、地方公務員として福利厚生も充実しているといえます。
以下では、休暇制度と各種手当に分けて、その特徴を紹介します。
休暇制度について
公立学校で働く小学校教師の場合は、地方公務員として手厚い福利厚生が用意されています。
休暇制度については、有給でとれる年次休暇はもちろん、特別休暇の内容の充実など、民間企業の社員と比べると恵まれているケースが多いです。
産休は基本的に産前・産後各8週間取ることができ、その間も給与は全額支給されます。
また育休は3歳まで取ることができ、1歳までは育児休業手当金が支給され、1歳すぎから3歳までは、給与は出ませんが育休として休みを取ることはかのうです。
このように子育て支援が充実しています。
ただし、実際に担任を持つとなかなか希望通り休めなかったり、休みを取りづらいという実情もあります。
各種手当について
小学校教師の福利厚生の特徴として、基本給とは別で支払われる手当が充実していることも大きな特徴です。
- 教職調整額(校長と教頭以外に一律本給の4%)
- 義務教育等教員特別手当(教員全員に給料の平均約3.8%)
- 管理職手当(給料に対し、校長12~16%、教頭10~12%、部主事8%)
- 給料の調整額(特別支援教育に直接従事する教員に対し支本給の約6%)
- 多学年学級担当手当(2つ以上の学年を1つにした学級を担当する教員に日額約300円)
- 教育業務連絡指導手当(主任を担当する教員に、日額200円)
- 非常災害時等緊急業務(非常災害時における緊急対応時に日額約3,000円)
- 修学旅行等指導業務(修学旅行等で生徒を引率した際に日額1,700円程度)
- 対外運動競技等引率指導業務(生徒を引率した際に、日額1,700円程度)
- へき地手当(へき地学校に勤務している教員に(給料+扶養手当)×25%の範囲内で支給)
こうした手当があることにより、初任給でも基本給に3~4万円ほどプラスされることも珍しくありません。
一方、給与月額の4%が教職調整額として支給されており、どれだけ残業をしても、残業代となる「時間外勤務手当」は支給されません。
私立学校の場合は、各学校で定める内容の福利厚生が適用されるため、勤務先によって内容は異なります。
小学校教師の給料・年収の特徴
ここからは、小学校教師の給料・年収の特徴について、さらに詳しく説明します。
特徴1.小学校教師の給料のしくみは独特
公立小学校に勤務する小学校教師は地方公務員という扱いになるため、給料は各自治体が定める教育職給料表に基づいて決定されます。
給料表は「級」と「号給」で構成されており、その組み合わせで支給額が決まります。
級や号給が上がると、それにともなって支給額も上がる仕組みです。
級とは「職務レベル」のことで、職務の複雑さ、困難さ、責任の度合いに応じて、4~6段階に分けられています。
4段階で分けられている場合、大卒で教諭として採用された1年目の教員は2級からスタートし、昇格していけば3級(教頭・副校長相当)4級(校長相当)と進み、それにより給料も上がっていきます。
号給は級をさらに細分化したもので、その職務の経験年数や習熟の度合い、勤務成績を給料に反映させるためにあります。
基本的には1年に4号給ずつ昇級し、それにともなって給料も約8,000円~10,000円ずつ上がります。
給料表は各地方自治体で異なりますが、「教育職給料表」などという名前で公開されており、検索すると誰でも見ることができます。
私立小学校の場合は、学校ごとに給料体系が決められているため、給料の支給額は各学校の経営状況によって幅があるようです。
特徴2.年功序列で安定して給料が上がる
上記の給料表は年功序列の給与体系となっており、教員の収入は勤続年数の長さによって決まるといえます。
総務省の「令和4年 地方公務員給与実態調査結果等」によると、勤続年数による平均給料月額は以下のようになっています。
- 1年以上5年未満:約25万円
- 5年以上10年未満:約29万円
- 15年以上20年未満:約37万円
- 30年以上35年未満:約43万円
このように、長く勤めれば勤めるほど、給料は安定して上がっていきます。
一方で、どんなに努力しても決められた金額しか支払われないため、努力が報われないと感じる人も少なくないようです。
特徴3.残業代が支払われない
地方公務員のなかでも、教育職の給与水準は、ほかの一般行政職や警察職と比べて高めに設定されています。
教師は、教科指導や生活指導、部活動の顧問、進路相談、保護者対応、行事準備など、普段から多岐にわたる業務を抱えています。
授業の準備や生徒指導等の仕事は明確な終わりがなく、教員という職務や働き方は特殊であるといえます。
そのため、時間外勤務手当は支給せず、代わりに給与月額の4%を「教職調整額」として支給することが法律(給特法)で定められています。
ただし、その影響で、どれだけ残業をしても残業代が支払われないという状況が生まれています。
給与水準は比較的高めといえども、残業時間が増えれば増えるほど、業務量と収入が見合わないと感じる教師が多く、退職を選んでしまう人も後をたちません。
20代で正社員への就職・転職
小学校教師の年代別の給料・年収
20代の場合
厚生労働省「令和5年度 賃金構造基本統計調査」によると、20代の小学校教師の年収は、20歳〜24歳の平均年収が361万円、25歳〜29歳の平均年収が419万円です。
経験が浅いうちは授業に加え、児童の観察や事務分掌などかなりハードと感じることもありますが、年齢が上がるにつれて年収がアップしています。
30代の場合
30代の小学校教師の年収は、30歳〜34歳の平均年収が526万円、35歳〜39歳の平均年収が621万円です。
基本的に同世代は管理職にならない限りずっと同じ級ですが、30代になると、管理職に就く人も出はじめ、徐々に年収にばらつきがみられるころです。
40代の場合
40代の小学校教師の年収は、40歳〜44歳の平均年収が711万円、45歳〜49歳の平均年収が849万円です。
主任教諭や指導教諭、早ければ教頭などの管理職になる人が出はじめ、役職手当等がつくことでぐっと年収が上がります。
50代の場合
50代の小学校教師の年収は、50歳〜54歳の平均年収が933万円、55歳〜59歳の平均年収が933万円です。
このころには教頭、校長といった役職に就く人が増え、年収がぐっと上がります。
小学校教師の給料・年収は公立・私立では差はある?
公立小学校に勤務する場合
地方公務員の身分となり、都道府県や自治体によって定められた給料が支払われます。
役職がついたり勤続したりすることで確実に年収はアップしていきます。
また各種手当やボーナスも充実しており、安定して長く働ける環境が整っているといえるでしょう。
私立小学校に勤務する場合
私立学校は公立とは異なり、学校ごとに給与形態が定められています。
基本的に公立よりも私立学校の方が給与は高いといわれていますが、給与形態を公開していない学校が多く、実際には希望よりも低かったということもあり得ます。
私立学校での勤務を希望する場合は、学校の給与や待遇、昇給のしくみなどをしっかり確認しておくことが大切です。
国立小学校に勤務する場合
私立学校と同様に、学校ごとの給与設定に基づいて支払われます。
公立・私立と比べると国立小学校は金額が低い傾向があるといわれますが、さほど大差はなく、安定して働ける環境が整っているようです。
小学校教師の正社員以外の給料・年収
小学校教師の雇用形態・働き方として、正規雇用される常勤教員のほか、「臨時的任用教員」と「非常勤講師」があります。
働き方別の給料・年収の特徴を紹介します。
臨時的任用教員の給料・年収
臨時的任用教員は通称「常勤講師」とも呼ばれ、正規の教員と同じ「常勤」の勤務形態で働きます。
教員採用試験に落ちてしまった場合に非正規雇用になることが多く、産休・育休や病気による休職などの理由で欠員が出た場合に代替として配置されます
担任や部活動顧問を担当することもありますが、任用期間は採用年度内に限られています。
正規の先生とほぼ同じ仕事を担当し、待遇や給料も正規の教員とほぼ同等で、ボーナスも支給されます。
採用年度内に限っては、正規教員と同じくらいの給料・年収が得られるでしょう。
非常勤講師の給料・年収
一方、非常勤講師は採用年度内の勤務で「非常勤」であることが最大の特徴です。
担任や部活動顧問は担当せず、事前に割り当てられた授業の時間のみ働くことになり、給料については、時間単位での報酬のかたちで支払われます。
賞与の支給もありません。
非常勤講師の場合、複数校を掛け持ちしても収入が低めになることが多いため、塾講師や家庭教師のアルバイトなど「兼業」をしている人も多いです。
正規雇用や臨時的任用教員は兼業が認められていないため、他の仕事ができるのは非常勤講師ならではの特徴です。
小学校の校長先生の年収は?
2019年度文部科学省「学校教員統計調査」によると、校長先生の平均月収は小学校で44万7100円(諸手当および調整額を含まない金額)です。
年収は741万円~876万円がボリュームゾーンで、平均年収は827万円です。
学校の最高責任者の立場となるため、ほかの教師を大きく上回ります。
校長先生の7割以上は55歳~59歳とされ、校長先生になるには「管理職選考試験」を受けて合格する必要があります。
教職経験だけでなく、教頭としての経験を求める自治体も多く、誰でもなれるものではありません。
一方で、管理職は子どもと実際に触れ合うことは少なくなり、学校経営に関する専門知識が求められるようになります。
そのため40~50代になっても、管理職にならない選択をとり、現場で教壇に立ち続ける人も少なくありません。
小学校教師が収入を上げるためには?
公立小学校教師の給料には、地域ごとに金額が異なる「地域手当」も含まれます。
この地域手当の額は地方よりも東京・神奈川・大阪など都市部のほうが高い傾向にあるため、少しでもよい収入を得たいのであれば、地域手当が高めの自治体の教師を目指す方法が挙げられます。
また、管理職へ昇進することで役職に応じた手当もつくため、できるだけ上のポジションを目指すのも収入アップの一つの方法です。
そのほかには、私立学校で入試業務に携わったり、高学年の部活動の指導を行ったりすることなどでも手当が支給されますが、担当業務が増えれば増えるほど、労働時間や精神的負担も増していくものです。
現実的に、小学校教師は勤務時間外にも、授業や生徒のことを考えなくてはならないケースが多いです。
地方公務員として安定した待遇の下で働ける仕事ではありますが、給与額については、必ずしも労働に見合う満足なものが得られるとは言い切れません。
前提として小学校教師の仕事そのものが好きで、やりがいを感じられないと、長く続けていくのは難しいでしょう。
小学校教師は年収1000万円を目指せる?
小学校教師が年収1,000万円を目指すのは難しいです。
地域によって差はありますが、どんなに勤続しても教師の年収は800万円程度が平均的で、給与体系は各自治体によって定められているため、自分で努力しても上がることはありません。
そのため小学校教師が年収1,000万円を目指すには、できるだけ早いうちから校長・副校長・教頭といった管理職の道を目指すことが必要です。
ただし、自治体の給与体系によっては校長になったとしても年収1000万円を下回ってしまうことがあるため注意が必要です。
「小学校教師の年収・給料」まとめ
小学校は、次世代を担う子どもの教育を担う責任ある仕事で、高収入を目指せる仕事です。
一方で、どれだけ働いても残業代が支払われないなど、勤務実態に見合う待遇になっていないと考えている人も増えています。
こうした状況はすぐに改善されるとは限らないため、現状の給与体系をしっかりと調べ、納得した上で働く必要があるといえるでしょう。