生産技術の仕事内容・社内での役割とミッション
目次
生産技術の仕事とは
「生産技術」とは、主に製造業の企業(メーカー)に置かれる部門・職種のひとつで、製品や部品などを効率的に量産するための生産体制や環境を築く役割を担います。
メーカーは、生産工場で同じ製品を何万個、何十万個と量産する必要があります。
さらに、「時間」「コスト」「品質」といったさまざまなポイントをふまえて、安定的に量産していくための体制を築かなければなりません。
そのための仕組み、プロセス、環境を考案し、より効率的に製品を製造できるようにすることすることが、生産技術の仕事です。
生産技術の具体的な業務の内容
生産技術にはさまざまな業務がありますが、とくに次のような業務が代表的です。
- 生産設備の監視、課題検出
- 生産ラインの設計、稼働テスト、改良
- 新規設備の導入計画
- 生産技術の研究開発
それぞれについて、詳しく解説します。
生産設備の監視、課題検出
工場で製品を大量生産する仕組み、流れ、設備などを「生産ライン」と呼びます。
生産技術が担うのは、工場の設備や動線をチェックし、現状の生産ラインが抱えている課題や非効率部分を洗い出す役目です。
この非効率部分の洗い出しによって、生産の効率を高めることができます。
単に設備をチェックするだけでなく、そこで働いている従業員から不満点や改善点を聞き取りすることもあるため、工場を隅々まで見てまわらなければなりません。
生産ラインの設計、稼働テスト、改良
技術的観点から、どこにどの設備、機材、人員を配置するかなどを検討し、生産ライン全体を設計していくことも生産技術の業務です。
効率化、品質、コストなどの要素もふまえて、最適な生産ラインを設計していきます。
また生産ラインを設計すれば、それで終わりというわけではありません。
設計を行った生産ラインを実際に稼働させ、スムーズに量産ができるか稼働テストを行ったり、さらに改善できる部分はいないかをチェックし、より優れた生産ラインに改良・アップデートとしていくことも生産技術の役目です。
導入済みの機材の改造、トラブル部分の対応などを行うこともあります。
新規設備の導入計画
工場内に新たに導入する設備・機材の選定を行い、それを経営陣に提案し、導入計画を取りまとめるのも生産技術の業務です。
生産設備には多大なコストが掛かりますが、新たな設備の導入により、企業経営全体に大きなプラスをもたらすこともあります。
最終的な決定は経営陣が行うものの、生産面の技術的なエキスパートである生産技術は、設備の導入において強い権限をもっています。
単に設備や機材だけでなく、新規工場の全体の設立計画を立てるようなスケールの大きな仕事を任されることもあります。
生産技術の研究開発
生産技術は、これまでにない新たな技術や設備の研究開発にも携わります。
ライバルのメーカーと同じような技術や設備で生産を行っているのでは、生産性やコストも同じようになり、価格的にも似たり寄ったりになります。
しかし、他社とは比べ物にならないほど効率的に量産できる新技術を生みだせれば、販売価格も抑えられ、市場競争で優位に立つことも可能です。
そのための新技術の研究開発が、各社の生産技術部門では日々行われています。
生産技術の社内での役割・ミッション
設計と製造をつなぐ存在
生産技術は、簡単にいえば、製造業の「設計部門」と「製造部門」をつなぐ存在です。
メーカーが新製品を立ち上げる際には、まずは設計部門で「こういう技術で、こういう製品を作る」ということが設計・考案され、その設計をベースに、製造部門が工場で製品の生産を行います。
しかし設計された製品をそのまま工場の生産ラインに乗せられるわけではなく、量産していくには、時間・コスト・品質などを考慮したうえで、別の準備や検討が必要になります。
いわばその部分を担当するのが生産技術です。
生産技術は、設計部門の思いをくみ取ったうえで、製造現場がきちんと動けるように製造に必要な設備やプロセスを考え、生産ラインを作り上げていくポジションです。
そのほか、購買部門、経理部門、経営陣などのさまざまな部門とやり取りすることもあり、いわば社内の調整役でもあります。
役割の範囲は広い
ひとくちに生産技術といっても、業務内容、業務範囲、位置づけは会社によって少しずつ異なります。
生産設備の検討や技術開発などだけでなく、場合によっては製造に必要な基準書などの書類作成・改定や、現場社員の技術教育にまで携わることもあります。
ほかにも購買部門と協力し、生産する材料や機材などの手配などを行うこともあります。
すべての生産技術職の人が同じような仕事を行っているわけではなく、同じ部門内で人によって異なる役割が与えられていることもあります。
生産技術の業界による仕事の違い
メーカーによって扱う技術は変わる
生産技術職の主な就職先は製造業のメーカーとなりますが、メーカーにはさまざまな会社があります。
たとえばインテリア系のメーカーであれば木材などを加工する設備、食品系のメーカーであれば食材や原料から食品を加工し、梱包するまでの生産ラインが必要になります。
勤務するメーカーによって生産ラインの仕組みは大きく異なり、求められる技術、知識、スキルも違います。
大手メーカー
ものづくりの現場において、生産技術を突き詰めることは最重要ともいえるテーマであり、とくに大手メーカーでは生産技術専門の研究所を置く企業も増えています。
勤務地については工場勤務となることが多いですが、大手メーカーでは全国各地、さらには海外にまで工場や開発拠点を設置していることが多く、さまざまな場所へ転勤や異動が発生する可能性があります。
大手メーカーの場合、ひとくちに生産技術といっても、「機械系」「電気系」「開発系」など、専門領域ごとに職務が細かく分けられていることもあります。
大手メーカーでは生産技術職として配置される人の母数も多く、自分の仕事が直接どのような部分に役立っているのか見えにくいこともあります。
しかしその分、生産規模や生産設備のスケールも大きくなり、各関連部署など多くの人と連携しながらダイナミックに働けるのが魅力です。
中小メーカー
製造業には中小企業もたくさんあります。また、最終的に市場に出回る製品ではなく、製品の一部となる個々の部品をつくるメーカーも数多くあります。
自動車業界がわかりやすい例であり、ブレーキ部品を作るメーカー、ベアリング(軸)部品を作るメーカー、電装品を作るメーカーなど、個々の部品ごとに、専門の部品メーカーが存在します。
そのように中小メーカーの場合、部品一つひとつの、より細かい部分の生産に携わることができるでしょう。
対してトヨタや日産といった自動車メーカーでは、それら各部品メーカーが作った部品を組み合わせる生産ラインをもち、最終的に市場に出回る製品に仕上げます。
生産技術は、もともと業務範囲が幅広い仕事といわれていますが、とくに中小メーカーの場合は、大手に比べても個人の仕事の幅がより大きくなっているケースも多く、短期間で多様な経験を積める会社もあります。
生産技術と関連した職種
生産技術と生産管理の違い
生産技術と生産管理のおおまかな業務は以下の通りです。
- 生産技術:生産ラインの設計、新規設備の導入計画、生産技術の研究開発など
- 生産管理:生産に用いる材料や人員および在庫などの管理、生産計画、原価管理、工程管理など
「生産技術」は、技術的な観点から生産を効率化する職種です。
機械工学や電気工学などの知識も必要になることから、採用にあたり、理系学生のみで制限している会社もあります。
これに対して「生産管理」は、生産を行う上での材料、人員、コスト、スケジュールなどの管理・マネジメントを行う職種であり、技術ではなく事務的な面から生産を管理します。
生産管理は、どちらかといえば文系向けの仕事となり、採用時に理系・文系で制限されることはありません。
どちらの職種も、よりよい生産環境を造り上げるという目標は同じです。
また会社によっては生産技術と生産管理の垣根が低かったり、業務が共通することもあります。
生産技術と製造技術の違い
まず言葉の意味として、「生産」と「製造」には次のような違いがあります。
- 生産:生活に必要な物資全般をつくること
- 製造:原料に手を加えてつくること(ただし、製造は生産の一部に含まれる)
たとえば自動車や電化製品など生活に必要な物資をつくることは、「生産」となります。
鉱石や化石燃料などの原料をつかって、自動車や電化製品に使われる鉄やプラスチックなどの素材をつくることは、「製造」となります。
したがって「生産技術」というのは、生活に必要な物資をつくるまでの仕組みや流れについて、技術的に効率化を目指すことが役割です。
対して「製造技術」は、さらに深い部分、「原料をより綺麗に削るにはどうしたらよいか」、「どうすればよりスピーディに成型できるだろうか」など、より原料と近い部分をいかに効率化できるかを目指すことになるケースが多いです。
ただし、「製造」は「生産」の一部に含まれることもあり、会社によっては生産技術と製造技術の業務が重複したり、同様の意味として捉えられていることもあります。