工作機械業界研究・仕事内容や求人状況、今後の動向を解説





工作機器業界とは

「工作機器」というのは、“機械をつくる機械”のことであり、別名「マザーマシン」、「母なる機械」とも呼ばれます。

たとえば自動車には、ボルトやシャフトなど、さまざまな金属部品(機械部品)が使われています。

それら金属部品を作り上げるために、金属を加工(切削・研削・研磨など)する機械が工作機器です。

最近主流の「マシニングセンタ」と呼ばれる工作機器では、コンピュータ制御により、複数の加工工程をまとめて行うこともできるようになりました。

このような工作機器を作っている業界が、「工作機器業界」です。

工作機器は、自動車の他にも、電化製品・スマホ・カメラ・航空機・電車・船まで、あらゆる業界の生産工場で使われています。

日本の工作機器業界の市場規模は、2018年度において1兆8157億円です(日本工作機械工業会 工作機械主要統計より)。

市場規模自体はさほど大きくはありませんが、それでも日本の工作機器産業は世界トップクラスの生産量を誇っています。

日本は、2008年まで「工作機器生産額27年連続世界一位」の座を死守してきた功績もあります。

工作機器業界の役割

工作機器業界の社会的役割は、より品質の高い工作機器を市場に提供し、日本のものづくりを足元から支えることです。

元を辿れば工作機器があることにより、私たちが普段使っている自動車や電化製品などの大量生産が可能となっています。

また品質の高い工作機器があるからこそ、高性能で便利な製品が私たちの手元に届いています。

そのような機器をつくる工作機器業界は、いわば縁の下の力持ち的な存在であります。

工作機器の品質を追求し日本のものづくりの土壌を固めることが、この業界の役割でありミッションです。

加えて、単に品質だけでなく「いかに効率よく大量生産を可能にできるか」を追及することも、この業界の目標となります。

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工作機器業界の企業の種類とビジネスモデル

工作機器業界の一般的なビジネスモデル

工作機器業界の主なお客さまは「メーカー」や「部品メーカー」となります。

工作機器業界の主なお客さま

自動車メーカー・電化製品メーカーなど
・またそれらの部品を作っているメーカー(部品会社、サプライヤー)

メーカー側から工作機器の案件を受注し、メーカーの生産工場に卸すことで利益を得ています。

また工作機器は、15年〜20年の長い期間使用することになります。

その期間は機器の点検や修理なども必要になり、「保守・アフターサービス料」としても利益を得ています。

大手工作機器メーカーのビジネスモデル

大手の工作機器メーカーとしては、「DMG森精機」、「オークマ」、「牧野フライス製作所」、「アマダ」などが挙げられます。

大手の工作機器メーカーは、「マシニングセンタ」のようなコンピュータ制御の工作機器を得意としています。

また、コンピュータ制御するためのソフトウェア開発にも力を入れています。

さらに大手の工作機器メーカーでは、工場の生産体制全体をソリューション(提案、解決)するサービスも用意しています。

たとえば金属加工機械大手の「アマダ」では、工作機器のハードウェア面、生産工程を管理するソフトウェア面の両方から、工場の生産体制をトータルソリューションするサービスを行っています。

中小工作機器メーカーのビジネスモデル

中小の工作機器メーカーとしては、「長島精工」、「イワシタ」などが挙げられます。

中小の工作機器メーカーは、「汎用工作機械」を得意としています。

「汎用工作機械」というのは、従来のハンドルやレバーで手動操作する工作機器です(コンピュータ制御のない工作機器)。

汎用工作機器の場合、お客さまの要望に合せた細かなカスタマイズも必要になるため、中小企業であっても戦える環境があります。

国内と海外の違い

日本の大手工作機器メーカーが得意としている「マシニングセンタ」などのコンピュータ制御の工作機器は、世界的にみても評価が高いです。

一方でアメリカなど諸外国の海外工作機器メーカーは、この分野では技術競争で一歩出遅れている状況です。

ただし最近は、中国や韓国の工作機器メーカーがコンピュータ制御の分野に力を入れており、徐々に追い上げてきています。

工作機器業界の職種

工作機器を作り上げるにはたくさんの人の力が必要になり、職種もさまざまなものが用意されています。

ここでは、工作機器業界の特有の職種のうち代表的なものを紹介します。

設計開発

「設計開発」では、技術エンジニアとして次のような仕事を行います。

・新技術の研究
・今後新規で販売する工作機器の設計
・試作品の製作やテスト
・プロジェクトの管理
など

設計開発は、工作機器をつくる上での最初の部分を担当します。

どのような工作機器にするかのコンセプトを決め、仕様や機能を細かく設計していきます。

設計開発をするには技術的な専門知識が必要となるため、機械系・材料系・制御系・電気電子系の学部出身の人が活躍しやすい環境となります。

なお工作機器を制御する「ソフトウェア」の設計開発においては、情報系学部出身の人が活躍しやすい環境となります。

生産管理・生産技術

工作機器メーカーも自社で工場を持っており、販売する工作機器を生産(量産)しています。

生産管理生産技術」は、工場で生産する上での管理を行う職種であり、よりスムーズに工作機器が生産できるように、働きかけていきます。

生産管理と生産技術の大まかな違いは次の通りです。

<生産管理>
生産体制の立案、工場での人員管理、原料の発注管理など、文系よりの職種

<生産技術>
生産ラインで用いる機器の設定や改良、生産設備の技術的サポートなど、理系よりの職種

なお、生産管理・生産技術の職種は自社の生産工場で働く機会が多いです。

営業

「営業」は、取引先となるメーカーに出向き、自社の工作機器の提案や販売交渉を行う職種です。

工作機器業界の営業は、販売交渉をするだけでなく、お客さまが抱えている課題や問題点を探ることも仕事となります。

このため単に営業力だけあれば良いわけではなく、技術的な知識も必要になってきます。

もともとは技術エンジニアだった人が、営業を担当することもあります。

保守・アフターサービス

工作機器は15年〜20年の長い期間にわたって使用されます。

その期間に取引先を訪問し、点検・修理・改良などを行うのが「保守・アフターサービス」の仕事です。

大手の工作機器メーカーでは24時間体制のサポートセンターを用意していることもあり、お客さまが安心して工作機器を利用できるようにサポートも行っていきます。

工作機器業界のやりがい・魅力

あらゆる産業を支える喜び

工作機器は、自動車業界・電機業界・航空業界・鉄道業界など、あらゆる業界の生産工場で使われています。

マザーマシンとなる工作機器がなければ、私たちが普段使用しているほとんどの機械製品は作れません。

工作機器があるからこそ、私たち現代人の便利な生活が成り立っているといっても過言ではありません。

そのように現代の産業を根本から支えられるということが、この業界ならではで得られるやりがいです。

難しい仕事だけれど、達成感も大きい

工作機器は機械をつくるマザーマシンですので、精度の高さ、品質の高さが強く求められます。

1ミリの誤差も起きないように何度もテストを重ね、精度の高い工作機器をつくっていくことになります。

苦労もありますが、その分、工作機器が完成した際にはいい表せないほどの大きな達成感が得られます。

不況も乗り超える安定業界である

工作機器は、世の中から機械製品がなくなりでもしない限り、将来的にも安定した需要があります。

工作機器業界は景気変動に左右されやすい欠点がありますが、好況期に利益を溜め込むなど、不況を乗り切るノウハウも持ちあわせています。

実際に2008年の「リーマンショック」では工作機器業界の業績も大きく悪化しましたが、上手く危機を切り抜け、立て直している企業が多いのがこの業界の特徴でもあります。

工作機器メーカーは給料やボーナスも安定しており、福利厚生なども充実しています。

したがって、安定性を重視する人には狙い目の業界といえるでしょう。

工作機器業界の雰囲気

工作機器業界は新規参入が難しい業界でもあり、倒産する会社も少ないですので、設立年数の古い老舗企業が多めです。

平均年齢も40歳前後と高く、年功序列を採用している企業も多めです。

このため、良くも悪くも昔ならではの体質の企業が多い傾向があります。

また、工作機器を開発する上では、正確さや論理性が重視されます。

どちらかというと感性的なタイプの人よりも、物事を正確かつ論理的に処理できる人が向いるでしょう。

工作機器業界に就職するには

就職の状況

工作機器業界の多くの会社は、新卒者を対象とした定期採用を行っています。

大手であれば、毎年100人〜150人程度の新卒社員を採用しています。

新卒採用では、以下大きく2つのコースに分けられ、募集されることが多いです。

<技術職コース>
設計開発、生産技術、営業、保守・アフターサービスなど

<事務職(総合職)コース>
営業、マーケティング・生産管理、総務、人事、法務など

工作機器業界は文系の学生にはあまり聞き慣れない業界ですが、理系の学生からは認知されていることが多く、志望する理系学生は毎年一定数います。

高専や大学で専門分野を学んだ学生も応募してきますので、簡単に就職が決まる業界とはいえません。

また大手ですとインターンシップを実施している企業も多いです。

インターンシップに参加したことがプラスに評価されることもありますので、目当ての企業がある場合は、できる限り参加しておくのがよいでしょう。

就職に有利な学歴・大学学部

大手の工作機器メーカーの新卒採用では、技術職・事務職問わず短大卒・高専卒・4年制大学卒を対象としている会社が多いです。

中小の工作機器メーカーの場合は、高卒や専門学校卒も対象にしていることがあります。

技術職の場合は、理系の学部が有利になりやすい傾向があり、特に機械系・材料系・制御系・電気電子系・情報系の学部出身者が歓迎されやすいです。

また技術職では「学校推薦制度」を導入しているケースも多く、学校からの推薦があればさらに採用で有利になることがあります。

事務職の場合は、学部によって有利・不利が生じることは基本的にありません。

事務職の場合は、どちらかというと人物重視の採用となり、あなたのパーソナルな部分が会社にマッチしているかをチェックされます。

なお昨今は工作機器メーカーも海外進出に力を入れていますので、「TOEIC」の点数や英会話力も評価の対象となることがあります。

就職の志望動機で多いものは

工作機器業界への就職を目指す学生には、「ものづくりが好き」という人が多いです。

たとえば「幼い頃からものづくりや機械いじりが好きだった」、「大学で似たような分野の研究を行い、その道に進みたいと思った」、「ものづくりを支える工作機器業界に興味をもった」などですね。

工作機器業界というのは一般的にはあまり知られていない業界でもあるため、やはり機械やものづくりに関心のない学生はあまり応募してきません。

とはいえ、中には「たまたまインターンシップに応募して興味をもった」、「自分の知らない新しいことにチャレンジしてみたかった」などの理由で志望する学生もいます。

いずれにしても、○○が好き・○○に興味がある・○○にチャレンジしたいだけでは、志望理由としては弱い部分があります。

「その会社で仕事として何がしたいか」、「将来どのようになりたいか」、「どのように会社に貢献したいか」の部分まで掘り下げた上で伝えるのがよいでしょう。

工作機器業界の転職状況

転職の状況

工作機器業界では、新卒者を対象とした定期採用のほか、既卒者を対象とした「中途採用」も行われています。

とはいえ工作機器業界では、定年まで同じ会社で勤める社員が多い傾向があり、離職者・転職者というのは少なく、人員の空きがなかなか出でません。

このため中途採用の採用人数は1職種あたり若干名と少なめです。

また中途採用を積極的に行っていない企業も多く、大手であっても稀にしか募集を出さない企業もあります。

一方で工作機器業界は転職先として安定した需要があり、その少ない採用枠に、ポテンシャルの高い転職者が応募してくるケースもあります。

したがって簡単に転職が決まるとはいいにくい業界です。

転職の志望動機で多いものは

工作機器業界へ転職を目指す人には、「経験を活かしたい」という人が多いです。

たとえば「同業他社で蓄えた経験やスキルを、御社の環境で活かしたい」、「御社で新たな技術を吸収し、これまでの経験と合わせさらに良いものをつくりたい」などです。

特に技術職の場合は、そのように経験を絡めて志望する人が多いです。

転職で募集が多い職種

工作機器業界の転職で募集が多い職種は、技術職です。

「設計開発」や「生産技術」などの技術職は、中途採用として募集されることが多いです。

とくに最近は、コンピュータ制御やIT制御に力を注ぐ工作機器メーカーも増えているため、IT系技術者の採用は積極的に行われている傾向があります。

一方で「営業」や「マーケティング」といった事務職の募集は、技術職から比べると数は少なめです。

どんな経歴やスキルがあると転職しやすいか

工作機器業界では、即戦力となる経験を求めているケースが多めです。

たとえば「同業他社で工作機器の設計を行っていた」、「自動車業界や電機業界など近い業界で似た仕事をしていた」など、即戦力になりうる経験が求められてきます。

業界未経験、職種未経験の人の場合は、残念ながら採用される確率は低いといえるでしょう。

とはいえ、最近は新しい風を社内に取り入れようとする会社も増えてきてはいますので、何かしら魅力的に映る経験やスキルがあれば、全く不可能とまではいい切れません。

工作機器業界の有名・人気企業紹介

DMG森精機

1942年創業。連結売上高5,012億円、連結従業員数13,042名(2018年12月期末)。国内最大手の工作機器メーカーです。

「マシニングセンタ」「複合加工機」「レーザー加工機」など工作機器を幅広く手掛けています。

海外に10の支社をもちます。ドイツのギルデマイスター社(DMG MORI)を買収し、世界的にも最大手の工作機器メーカーとなりました。

DMG森精機 ホームページ

オークマ

1918年創業。連結売上高1,821億円、連結従業員数3,495名(2018年3月期末)。工作機器の国内準大手メーカーです。

「マシニングセンタ」に強みをもち、その他「複合加工機」、「NC研削盤」なども手掛けています。海外でも広く事業展開しており、海外に17の支社をもちます。

海外売上比率は57%を占めます。

オークマ ホームページ

牧野フライス製作所

1937年創業。連結売上高1,815億円、連結従業員数4,731名(2018年3月期末)。

工作機器の国内準大手メーカーです。キャッチフレーズは「クオリティ・ファースト」。

「マシニングセンタ」や「NC放電加工機」、「フライス盤」などに強みをもちます。NC工作機やマシニングセンタの先駆けでもあり、技術面で工作機器業界を先導してきた企業です。

牧野フライス製作所 ホームページ

工作機器業界の現状と課題・今後の展望

中韓メーカーの勢いが増す

これまで日本は、世界トップの工作機器生産国でした。

しかし、ここ最近は中国や韓国の工作機器メーカーの勢いが増しています。

中韓メーカーのつくる工作機器は、品質では日本に劣るものの、価格が安いため急速にシェアを伸ばしつつあるのです。

さらに近年は品質面も少しずつ改善されてきており、日本の工作機器に迫りつつあります。

これら中韓メーカーの勢力にどのように立ち向かっていくかが、今後の課題となります。

IoT化が進む工作機器

近年、工作機器のIoT化が進んでいます。

IoT(Internet of Things)とは、モノとインターネットが繋がることを意味します。

それぞれの工作機器(もしくは工場全体)を、インターネット経由で制御できるようにし、生産の効率化や自動化を図るというものです。

少子高齢化が進み労働人口も減ってきている中、こうしたIoTを使った効率化は今後より進んでいくともいわれています。

それにあわせてIT関連の技術者を雇い、IoT技術の開発を進める工作機器メーカーが増えてきました。

IoTの技術競争をいかに勝ち抜けるかも、今後の工作機器業界では焦点になってくるでしょう。

業界としての将来性

工作機器業界自体は、世の中から「ものづくり」そのものがなくならない限り、今後も存続する業界といえるでしょう。

とはいえ工作機器業界は景気変動の影響を受けやすいリスクが引き続きあり、かつ昨今は勢力を伸ばす中韓メーカーに脅かされています。

またIoT化の波も押し寄せてきます。

工作機器業界は、これまでのように一筋縄にはいかない時代に入ってきました。

しかし、日本の工作機器の品質やアフターサービスの質はひと頭出ています。

日本の工作機器の強みを活かしつつ、これまでと違った戦略を取り入れることが、今後の工作機器業界には求められてくるでしょう。

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