臨床心理士になるには
臨床心理士になるまでの道のり
臨床心理士というのは、公益財団法人である「日本臨床心理士資格認定協会」が認定している民間の資格です。
臨床心理士を目指す一般的な道のりとしては、まず四年制の大学を卒業します。
この際に特定の学部を卒業する必要はありませんが、できれば心理学系の学部を選びましょう。
その後、心理学を学べる「指定大学院」や「専門職大学院」を修了する必要があります。
資格試験に合格すると、晴れて臨床心理士を名乗ることができるようになります。
心理系の仕事をするうえで臨床心理士の資格の所持は絶対条件ではありません。
しかし、企業や病院によっては、臨床心理士の資格を所持していることを採用条件に掲げているケースも珍しくないのが現状です。
カウンセリングを仕事にしたいのであれば、この資格を所持しておいて損はないでしょう。
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臨床心理士の資格・難易度
日本では心理系の仕事に関連する民間資格が乱立しています。
「認定心理士」や「産業カウンセラー」など、その名称も資格試験の内容も実にさまざまです。
そのなかでも臨床心理士の資格は特に信頼性があるものとして位置づけられてきました。
近年は「公認心理師」という国家資格も誕生していますが、臨床心理士の信頼性に変わりはありません。
これは、資格試験のためのハードルが高いことが大きな理由です。
試験を受けるためには特定の大学院を修了しなければいけませんし、試験も決して簡単ではありません。
一次試験は筆記試験(マークシート+小論文)、二次試験では面接が行われ、専門的な知識と技能をを持っているかどうかが問われます。
この試験は年に1回東京で実施され、合格率はおおよそ60%となっています。
難関をくぐり抜けなければ取得できない資格だけに、世間からの信頼も厚くなっています。
臨床心理士になるための学校の種類
先述の「指定大学院」と「専門職大学院」を受験するためには、一般的に「大卒(卒業見込み含む)」以上の学歴が求められます。
一部、大卒ではなく専門学校卒でも受験可能な大学院はあるものの、数はあまり多くありません。
大卒の学歴を求められる場合、学部・学科は問われませんし、理系でも文系でもかまいません。
ただし、心理学の単位や卒業論文などの要件を満たさなければ受験できない大学院もあります。
さらに、大学院の入試試験では心理学の基礎知識が問われます。
将来的に臨床心理士になりたいと考えているのならば、最初から心理学系の学部がある大学に進学しておくとよいでしょう。
大学によっては、学内選抜で大学院への推薦がもらえる場合もあるようです。
臨床心理士になるためにはどんな学校に行けばいい?(大学学部・大学院)
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臨床心理士に向いている人
臨床心理士に向いているのは、コミュニケーション能力が高い人です。
カウンセリングでは、老若男女さまざまな人と向き合います。
社会的な立場も性格も、心の悩みも人それぞれです。
その全てに寄り添えるような高いコミュニケーション能力が求められます。
この他にも、どんなことも受け入れることができる「包容力」。
長期にわたるカウンセリングのなかで、クライエントのために努力をし続けられる「忍耐強さ」。
こういったスキルを持ち合わせていることも大切です。
臨床心理士のキャリアプラン・キャリアパス
資格認定された臨床心理士は、さまざまな領域で活躍することができます。
具体的にいうと、病院、保健所、大学、研究機関、児童相談所、警察関係機関、一般企業などです。
ただし、臨床心理系の仕事は、資格を取得したとしても正規雇用で採用されるケースは決して多くありません。
新人の頃は契約社員やパートなどの非常勤でいくつかの仕事を掛け持ちしている人がいます。
そこで経験を積みながら、いずれは正規雇用を目指すというキャリアプランを立てる人も多いようです。
臨床心理士の働き方の種類・雇用形態
臨床心理士の雇用形態
臨床心理士の活躍フィールドは医療領域、福祉領域、教育領域、産業領域などさまざまです。
いずれの領域でも、働き方は大きく「常勤」と「非常勤」のどちらかに分かれます。
常勤の場合は週5日、1日8時間程度の勤務で、いわゆるフルタイムとして働きます。
給料は月給としてもらうのが一般的です。
企業に勤める場合は、「正社員」もしくは「職員」といった名称で雇用形態を結ぶこともあります。
企業ではなく、地方公務員の心理職として採用されることもあります。
一方、非常勤の場合は週に2〜3日程度、または1日に数時間程度の勤務となります。
給料は固定給や月給制ではなく、時給もしくは日給として給料をもらいます。
非常勤は、いわゆるパートタイムやアルバイトなどの働き方となります。
正社員の臨床心理士
この業界は、正社員の求人が少ないことで知られています。
臨床心理士の有資格者であっても、必ずしも常勤(正社員)として採用されるとは限りません。
それでは正社員を目指す場合、どのような職場で求人があるのでしょうか。
まず、医療領域では総合病院の精神科や心療内科、メンタルクリニックなどのスタッフとしての採用があります。
福祉領域では、児童相談所、療育施設、福祉施設などがあります。
これらの施設では公務員として「指導員」や「心理判定員」という肩書きで働くことが多いようです。
教育領域では学校や教育センターが、産業領域では一般企業の健康管理室やメンタルヘルスの専門機関があります。
ただし、こうした施設では週2日か3日程度の勤務になることが多く、正社員としての採用は多くはありません。
派遣の臨床心理士
臨床心理士のなかには派遣社員として働く人もいます。
他職種の一般的な派遣と同様に、派遣会社に登録をすることで働くことができます。
しかし、その場合に「臨床心理士」という職種で募集されているとは限りません。
「心理カウンセラー」や「相談員」といった名称のほうが一般的となっているようです。
医療業界に特化した派遣会社もあり、そこでは臨床心理士を積極的に求めることがあるので、気になる人は探してみましょう。
給与面や待遇面が充実しているのは常勤ですが、どうしても仕事が見つからない場合には、派遣で経験を積む道を模索してもよいかもしれません。
ただし注意しておきたいのは、派遣社員とはいっても、基本的に臨床心理師の資格が求められるということです。
この仕事は心理学の専門知識が問われるため、定められた大学院で学び、専門的な知識やカウンセリングスキルを身につけている必要があります。
アルバイト・パートの臨床心理士
臨床心理士は、全体として正社員や正職員の求人が多くありません。
そのため、アルバイトやパートなど非常勤で働く人も非常に多いことが特徴です。
大学院まで進んで臨床心理士の資格を持っていても、常勤で勤務できる職場が見つからず、非常勤として複数の仕事を掛け持ちしている人も珍しくありません。
臨床心理士の場合、非常勤とはいっても、有資格者として専門性が必要とされる責任ある仕事を任されることが多いです。
児童福祉施設、役所、就業支援センター、病院、学校など、多岐にわたる場所で臨床心理士の募集があります。
仕事内容は心理検査や心理療法、心理相談業務が主となりますが、場合によっては事務作業などまで任されることもあるようです。
経験を積めば少ない常勤募集の枠でも優遇されるケースが増えてきます。
若いうちは非常勤でさまざまなケースに触れて経験を積み、キャリアアップを目指す人も多いようです。
副業の臨床心理士
臨床心理士を本業ではなく、副業として働くことも可能なのでしょうか。
これに関しては、アルバイトなどの求人を上手く利用すれば、休みの日や空いている時間などに臨床心理士として副業をすることが可能です。
ただし公務員のように副業禁止の職業もあるので、自分の雇用契約を事前にしっかり確認しておきましょう。
また、各都道府県には「臨床心理士会」という組織があります。
そこに臨床心理士として所属すると、災害時などの際に地方自治体と連携して、現地へ臨床心理士が派遣されることがあるようです。
大きな災害時には被災者の心のケアなどが求められますが、そこでも臨床心理士が力が発揮できます。
「せっかく臨床心理士の資格を取得したのだから何かに役立てたい」という人は、さまざまな生かし方を探ってみるとよいでしょう。
独立開業する臨床心理士
臨床心理士のなかには、自分のクリニックや相談室を開業する人もいます。
ただし、臨床心理士の資格を取得して、すぐに独立する人はあまり多くありません。
経験が浅いうちに無理に開業してしまうと、心の問題を抱えたクライエントに対してきちんとしたサポートができないからです。
周囲からの信頼を失えば経営も厳しくなってしまうので、入念な準備が必要です。
独立開業を考えるのであれば、まずは現場で働いて自分の得意分野を作り、それを強みにして専門性、信頼性を高めることが大切です。
積極的に学会や研究会などに参加し、人脈づくりも必要になってきます。
それまでに多数の臨床心理実績があれば、クライエントを紹介してもらえる機会も増えていくでしょう。
「臨床心理士」という職業は、次第に世間でも知られるようになってきましたが、それでもまだ独立開業している人はあまり多くありません。
カウンセリングルームを設立する人やセミナー講師や執筆活動などを行う人などもいますが、経営モデルが確立していないのが現状です。
一般的には資格取得後、独立までには最低でも10年ほどかけている人が多いようです。
長期的なプランを立てて自ら道を切り開いていく気概が求められます。
臨床心理士を目指せる年齢は?
臨床心理士を目指すにあたって年齢制限はありませんが、この資格を取得するためには長い道のりが必要です。
まずは診療心理士試験の受験資格を得るために、大学への進学を目指すことになります。
そのうえで「指定大学院」や「専門職大学院」に進学して心理学を学び、修了すると資格試験を受けられるようになります。
一般的には、ここまでの道のりに、大学4年と大学院2年で最低でも合計6年かかります。
さらに資格試験も年に一度しか実施されないので、一発合格できるとは限りません。
人によっては、資格を取得するまでに十年近くかかることになることもあります。
ですから、この職業を目指すのであればできるだけ早い段階で決心するほうがよいでしょう。
特に高卒の学歴の人の場合、大学受験の勉強から始めなければいけないので、長期的なプランを立てることが大切です。