臨床心理士の仕事内容
臨床心理士の仕事とは
臨床心理士は、心の問題を抱えた人に対してカウンセリングや心理療法を行い、問題を解決へと導く仕事です。
暴力や虐待などの被害にあった人や、事故や災害の記憶に苦しむ人、仕事や学校生活にストレスを感じている人。
現代社会はさまざまな悩みを抱えている人がいます。
このような人たちの心に寄り添うのが臨床心理士の役目です。
臨床心理士になるには、資格取得のために特定の大学院で心理学を学ぶ必要があります。
そして「日本臨床心理士資格認定協会」が実施する「臨床心理士資格試験」に合格すると、認定を受けることができます。
数ある心理系民間資格のなかで社会的信用度が高いといわれていますが、正規雇用での採用が少ないという現状もあります。
しかし、経験と実績を積み上げ、社会的な評価を得られるようになれば、安定した働き方や高い収入も望めるでしょう。
臨床心理士の業務の内容
臨床心理査定(アセスメント)
臨床心理士の仕事は、まず臨床心理査定(アセスメント)を行うことから始まります。
面接や観察によってクライエントがどのような状況にいるのかを把握したうえで、心理検査を行うのです。
その結果によって、クライエントの特徴や心の問題点を明確にし、必要な援助を検討します。
心理カウンセリング
アセスメントが終わったら、その結果を元にしたカウンセリングや心理療法を行います。
心理療法にはクライエント中心療法、精神分析療法、行動療法など、さまざまなものがあります。
カウンセリングというと「話を聞く」というイメージが強いかもしれませんが、実際はそうとは限りません。
クライエントに絵を描いてもらったり人や建物などのミニチュアの玩具を動かしてもらったりしながら心の問題の解決を探ることもあります。
まだ言葉が十分に話せない子どもの場合、言語のコミュニケーションだけにとらわれないカウンセリングや心理療法が重要です。
臨床心理学的地域援助
臨床心理士の仕事はカウンセリングをすれば終わりというわけではありません。
クライエントの抱える問題は、自分一人だけでは解決できない場合もあります。
家庭内暴力で悩む妻を救うためには、家庭環境そのものを変えていかなければいけません。
いじめに悩む子どもを救うためには、学校が一丸となっていじめをなくす取り組みをしなければいけません。
必要に応じて家庭、職場、学校など、周囲にも働きかけて援助を行います。
生活環境の改善提案を行うこともあります。
調査・研究活動
こうした一連の仕事の他に、調査や研究活動も行います。
より多くのクライエントのサポートができるようになるために、臨床心理的調査や研究活動を通して知識とスキルの向上に努めます。
臨床心理士の役割
臨床心理士の役割は、「心の問題を抱えた人に対し、臨床心理的技法を用いて問題解決のサポートをすること」です。
臨床心理士の元には、さまざまな心の悩みを抱えたクライエントがやってきます。
彼らに対して、臨床心理士は「ああしなさい」「こうしなさい」と命令してはいけません。
「あれはダメ」「これはダメ」と自分の考えや価値観を押し付けることも許されません。
また、臨床心理士の個人的な感情で物事を判断しないように気をつける必要もあります。
カウンセリングというのは、一方的に解決策を押し付けるものであってはならないのです。
まずはクライエントがどのような問題を抱えているのか適切に理解する。
そのうえで、一人一人に最適な心理技法を用いて、相手が心の問題を自力で解決していけるように援助する。
これこそが臨床心理士の大切な使命です。
臨床心理士の勤務先の種類
ストレスの多い現代社会。
心の問題を抱える人が増えていることもあり、臨床心理士の活動の場は徐々に広がりを見せています。
人間が存在するすべての場所で、臨床心理士のニーズがあるといっても過言ではありません。
ここでは、臨床心理士の主な勤務先についてご紹介します。
教育分野
代表的な存在が、学校内の相談室で働く「スクールカウンセラー」です。
生徒から直接、人間関係や学業、生活面などの相談を受けています。
必要に応じて教職員や保護者と面談をし、生徒の心の問題を解決に導くためのサポートをすることもあります。
また、地域の教育センターや教育相談機関などに勤める臨床心理士もいます。
医療・保険分野
総合病院の精神科、心療内科、メンタルクリニックなどで働く臨床心理士も多くいます。
精神的な病を抱えている人や、病気やケガなどによって気持ちが落ち込んでいる患者さんの心のケアをします。
市町村の保健センターや保健所など公的な施設に勤務し、住民のカウンセリングや乳幼児の発達相談に関わる臨床心理士もいます。
福祉分野
児童相談所、老人福祉施設、療育施設などに勤務します。
介護福祉士などと連携し、高齢者や障害者などの精神面でのサポートを行います。
産業分野
現代社会では職場におけるメンタルケアの重要性がうたわれるようになりました。
社内に「相談室」を置き、従業員が気軽にカウンセリングを受けられる場を提供する企業も増えています。
なお、企業内のカウンセリングに特化した「産業カウンセラー」という資格もあります。
司法・矯正分野
警察関連施設において犯罪のプロファイリングを行ったり、少年院や刑務所の受刑者に対してカウンセリングを行う臨床心理士もいます。
臨床心理士の仕事の流れ
臨床心理士の仕事の流れは、勤務先によって異なります。
クリニックに勤務している場合、まずはクライエントがクリニックを訪れることからスタートします。
クライエントと出会って最初に行うのは臨床心理査定(アセスメント)です。
面接や観察を通して心理検査を行い、クライエントが抱える心の問題を整理します。
暴力やいじめなどデリケートな問題の場合は、クライエントがなかなか本当のことを話してくれないこともあります。
まずは臨床心理士とクライエントの間に信頼関係を築くことが必要不可欠です。
アセスメントが無事に終了すれば、次はカウンセリングや心理療法に入ります。
個人の特性を見極めて適した方法を選ぶことが大切です。
必要に応じて行政からのサポートを提案したり、生活改善のためのアドバイスをしたりすることもあります。
臨床心理士と関連した職業
臨床心理士以外にも、人々の心の問題に取り組む専門職はいくつもあります。
最近注目を集めているのは、「公認心理師」です。
公認心理師は、公認心理師法が成立したことを受けて誕生した国家資格で、2018年から資格試験が行われています。
一般社団法人である日本心理研修センターの試験に合格して公認心理師登録簿への登録を受けた人だけが、この職業を名乗ることができます。
公認心理師は新しい職業ですが、これから保健医療や福祉、教育など、さまざまな分野での活躍が期待されています。
この他にも、心理系の職業として「心理カウンセラー」や「サイコセラピスト」などがあります。
民間の資格試験が行われているものが多く、試験の難易度や合格率に関しては資格によって異なります。
気になる資格があれば、それぞれの資格試験の主催団体のHPを確認してみましょう。