人事部門で働くには
人事になるまでの道のり
人事はおもに、さまざまな企業の「人事部」や「総務部」で働いています。
これらの部署は、実務能力だけでなく、企業の方向性や社風にも深い理解が必要になるため、新卒からの生え抜き社員が就くことが多いです。
そのため、人事を目指す場合の基本的なルートは、まず総合職として新卒で就職し、のちのち配属の希望を出すことになります。
中途の場合は、求人で人事を募集している会社に就職をするのが一般的ですが、求人案件はそれほど多くなく、企業規模も小さくなる傾向があります。
ただ、人事の仕事は男女差が影響することがないため、女性が活躍している企業も多いです。
人事の仕事の中でも、採用や労務など、どのような仕事をメインにするかで需要も変わってくるでしょう。
特別な学歴や資格が必要になる職種ではありませんが、キャリアコンサルタントや社会保険労務士、中小企業診断士などの資格保有者は高く評価され、専門性を生かせるように配属されます。
20代で正社員への就職・転職
人事の資格・難易度
キャリアコンサルタント
「キャリアコンサルタント」資格は、職業選択や職業能力の開発などの相談を行うための専門的な知識・能力を示す国家資格です。
キャリアコンサルティングの理論や関係法令、メンタルヘルスなどの分野から出題され、筆記試験・実技試験があります。
雇用のミスマッチも増える中、キャリア支援の需要が高まっています。
合格率は例年50~60%ほどで、学科試験の受験料は8,900円、実技試験(論述・面接)は29,900円です。
社会保険労務士
「社会保険労務士」は、健康保険、年金といった社会保険や、雇用保険など労務全般に関する専門知識をもつことを示す資格です。
従業員の雇用に必要になるこれらの保険手続きをするにあたって、必要書類を作成し、その書類を役所に提出代行することは、社会保険労務士の資格取得者の独占業務となっています。
受験料は15,000円、近年の合格率は6~7%前後という難関資格ですが、その分人事としての転職時には有利になります。
中小企業診断士
中小企業診断士は、中小企業の経営診断やコンサルティングを行う能力があることを示す国家資格で、経営全般についての幅広い知識を習得できます。
人事戦略や組織体制の構築についても重要視されているため、学習を通して人事としての考え方も身についていきます。
試験は一次、二次、その後の研修と1年をかけて実施され、一次試験、二次試験の両方に合格する必要があり、各試験の合格率は20%前後の難関資格です。
受験料は一次が13,000円、二次が17,200円で、その後の実地研修はまた別で費用がかかります。
人事になるための学校の種類
人事になるために必要な学歴や学校の種類はありません。
まずは企業に就職し、人事に配属されるルートが一般的なため、希望の企業に就職することがスタートです。
中途から就職する場合は学歴は必須ではありませんが、新卒から目指す場合は大学・大学院への進学を考えておいた方がよいでしょう。
人事は社内で育成する方針の企業が多く、企業経営に重要な職種であることから、大学卒の総合職が求められることが多いからです。
大学での専攻はとくに指定がありませんが、心理学や経営学、教育学などを学んでいると役立つ場面も多いでしょう。
大学進学から卒業までの学費は、4年間で入学金や授業料が合計250万円~500万円ほどで、国公立か私立かで大きな差があります。
20代で正社員への就職・転職
人事に向いている人
コミュニケーション能力の高い人
人事は多くの人と接することになり、難しい調整も多くなるため、コミュニケーション能力の高い人が求められます。
とくに、コミュニケーション能力の中でもヒアリング能力や感受性がある人は相手の事情をよく聞くことができるため、話す相手からも安心してもらえるでしょう。
秘密を守れる人
人事は社内の重要な情報を扱うことになるため、口が堅い人でなければなりません。
同僚たちが興味をもつ情報を多く持っていることから、興味本位で秘密を聞き出そうとする人もいます。
そういう場合にも、しっかりと秘密を守れるよう、普段から言動に注意することが大切です。
人事を目指せる年齢は?
人事を目指す上で年齢はあまり関係ありませんが、企業への深い理解が求められることもあり、採用は若い人が多くなります。
じっくりと時間をかけて企業について理解してもらい、企業に合った人事に成長を期待することが多いからです。
創業から日が浅い企業であれば、中途で人事のベテランを採用する場合もありますが、その場合でも40歳を過ぎると厳しくなるでしょう。
とくに新卒採用の分野は、学生への理解力や共感力が求められるため20代が担うことが多く、年齢が上がるほど難しくなります。
人事のキャリアプラン・キャリアアップするためには?
人事に配属されたら
人事は採用、教育、労務関連など広い業務範囲があるため、キャリアパスもさまざまです。
大手企業では人事部のなかでも「採用担当」「教育担当」「労務担当」といったように分業されているケースも多く、人事のすべての業務を経験しないケースも少なくありません。
一方、中小企業の場合、業務範囲は広いものの、専門性の高い業務にまではアウトソーシングすることも多く、専門性が育たない場合もあります。
基本的には新卒採用や給与関連業務など、それぞれの仕事のなかから比較的難易度の低い業務からスタートし、徐々に経験を積みながら、より経営に近い研修や制度設計などの業務に関わっていきます。
配属から5~10年ほどで各分野のマネージャーになる場合が多く、10~20年くらいで人事部門を統括する立場になるのが一般的です。
人事としてスキルアップするには
人事としてのスキルアップの方向性は、各業務で専門性を高める方向と、人事の仕事全般を突き詰める方向があります。
企業規模によって取りやすい方向が変わってくるため、職場を選ぶ際には希望するキャリアパスと合っているかもよく考えましょう。
専門性を突き詰めたい場合は、大企業のように専門部署がはっきりしている方がよく、資格学習や実務を通して専門性を高めます。
幅広い仕事に触れたい場合は、専門が明確に分類されていない企業の方がよく、この場合は経営やマネジメントについて深く学んでいくのがよいでしょう。
SNSを使った採用マーケティングやダイバーシティ対応など、人事の仕事の幅はどんどん広がっています。
そのため、自社では十分な仕事ができるとしても、規模や環境の違う職場でも通用するかはわかりません。
スキルアップのためにも、常に新しいことを学び、自らの市場価値を高めていく姿勢が大切です。
将来的に転職や独立を考えている場合は、実務能力の向上だけではなく、資格取得など客観的にスキルを示すための材料も準備しておくようにしましょう。
人事のキャリアパス・キャリアアップの考え方
人事のキャリアパスを大きく分けると、実務能力を磨いて特定分野の専門家になるか、もしくは経営について理解を深めて企業の役員層に入っていくかが考えられます。
専門家を目指す場合は、「中小企業診断士」や「社会保険労務士」など士業に属する資格を取得して独立したり、組織人事コンサルタントなどとして活動したりする形が目標となるでしょう。
社内では、役職数や人員数に制限があるため、なかなか思うようなポジションで仕事ができないことも多いため、企業を離れることも前提に準備していくことが大切です。
企業内部でキャリアアップを考える場合は、人事に関する幅広い業務について網羅的に学ぶだけでなく、企業経営についても学んでいく必要があります。
また、社内の調整力や影響力も大切になるため、実務だけでなく社内人脈の構築も意識して行っておくとよいでしょう。
人事の仕事は人間を対象とすることから、同じ仕事をした場合でも、同じような成果が出るとは限りません。
成果創出や昇進・昇格のためにも、実務能力やヒューマンスキルを常に成長させるために努力し続けることが大切です。