保育士の年齢別の子どものあやし方・叱り方

「あやす」「叱る」は保育士に欠かせないスキル

保育士にとって大事なことはたくさんありますが、そのなかでも「子どもたちにどう接していけばよいのか」を理解することは、保育士として最も基礎になるポイントのひとつだといえるでしょう。

子どもへの適切な接し方は、子どもの年齢によっても異なります。

たとえば「あやす」「叱る」といった行動も、0歳児の子どもと4歳児の子どもでは、保育士がとるべき対応は変わってくるものです。

保育士養成学校でもこの辺りのことは学んでいきますが、まずは内容をしっかりと理解して、実践できるように意識していくことが重要です。

保育士があやすときのポイント

あやすことはなぜ大事?

「あやす」とは、子どもの機嫌をとって、上手になだめていくことを意味します。

大人と異なり、幼い子どもたちは自分の感情を冷静にコントロールすることが難しく、泣いたりわめいたりすることで感情を伝えようとすることも多々あります。

そのようなときに、保育士が子どもを上手にあやすことで子どもは機嫌を直すことができます。

子どもを育てるうえでは、あやす方法を知っておくことが大事だといえ、あやすときには年代別の適切な方法を理解しておくとよいでしょう。

0歳児のあやし方

この時期の赤ちゃんは泣くことで自分の思いや要求を伝えようとします。

泣き止ますことを考えるよりも、いま、赤ちゃんが何を訴えているのかということを先に考えることが大事です。

自分の要求が満たされるとケロッとして機嫌が直る子が多いです。

また、このころはスキンシップが重要な時期になるので、保育士は触れ合い遊びをしてスキンシップを取り、あやしています。

1~2歳児のあやし方

触れ合い遊びや手遊び歌に興味が出てくる時期なので、泣いていたら歌を歌うと気がまぎれることが多いでしょう。

その子の好きな歌が把握できていれば子どもが落ち着けるように抱っこをして、ゆったりとした気持ちで歌を歌うと効果的です。

大人の言っている意味が少しずつ理解できてくる時期なので、ゆっくりと話して納得させる方法もあります。

3~4歳児のあやし方

この年代の子どもは、言葉も理解できるようになってきます。

子どもが落ち着けるように話して、気を紛らわせるとよいでしょう。

たとえば、その子の持ち物などを大げさなくらい褒めちぎったりします。

「うわぁ、Aちゃんの服可愛いねぇ。お姫様みたい」、「そのヘアゴムAちゃんにすっごく似合ってるね。可愛いなぁ」みたいな感じで言葉をかけると、のってきてくれる子が多いでしょう。

5~6歳児のあやし方

この時期になるとあやすということはあまりしないかもしれません。もうなんでもわかっているので、ほとんど子ども側も泣き入るということはないでしょう。

多少のわがままを言っていても、しばらく様子を見てみるという方がよいでしょう。

子どもは大人がどう出てくるかという対応のしかたを見ていないようでしっかりと見ているものです。時には見守るということが大切な時期になります。

もちろん、すべての子どもが上記のような方法でうまくあやせるとは限りませんが、慣れてくれば子どもとのかかわり方がわかってくるはずです。

保育士が叱るときのポイント

「叱る」と「怒る」はまったく別のもの

「叱る」と似た言葉で「怒る」が使われることがありますが、これは、まったく違うものです。

簡単にいうと、下記のように区分できます。

・叱る=子どもにこうなってほしいという成長を見据えた上での行動
・怒る=大人の憤りの感情を子どもにぶつける

叱るにはいろいろな場面や原因がありますが、叱るときはその場で、すぐに叱ることが大切です。

時間が経った後で叱ってしまうと、子どもは何で叱られているのかわからないことが多いからです。

どうしても無理なときもありますが、それ以外のときはその場で子どもに伝えることが重要です。

また、あまりにも保育士が感情的になってしまうとNGで、どこが間違いだったかということを子どもに教えなければいけません。

冷静でなくなると怒りに代わってしまったり、指導すべき点がわからなくなるときも出てくるため要注意です。

また、簡潔に叱ることも大事です。

子どもを「まだ終わらないのかな」「早く終わればいいのに」といった気持ちにさせてしまっては意味がないため、重要なポイントを的確に指導するとよいでしょう。

叱るときは子どものためを思うこと

子ども一人ひとりには個性があり、性格も違います。

そのため、その子どもに合った叱り方というものがあります。

乱暴な子どももいれば、おとなしい子どもや真面目な子どももいます。

そんな子どもの性格によっても保育士は臨機応変に対応しなければいけません。

このように子どもによっても叱り方は少しずつ変わりますが、一番大事なことは子どものことを思って、子どもの成長を考えて叱るということです。

子どもと一緒に成長できるように、保育士は感情をコントロールする必要があります。

保育士は子どものケンカは止めない

見守ってもいいケンカとは?

保育園では、子どもたちがしょっちゅうケンカをするかもしれません。

子どもたち同士でケンカが始まると、大人としてはどうしても「やめさせなくては」と思いがちです。

もちろん、相手を叩いたり引っ掻いたりと危害を加えてしまうケンカは、すぐに止める必要があります。

しかし、見守ってもいいケンカも多くあります。

子どもたちのやり取りに全部口出しするのではなく、見守ることも保育士の大切な役割です。

たとえば、オモチャの取り合いは子ども同士だったらよくあることです。

「私が使ってた」「そこに置いてあったから」「その前に使ってた」「いまは使ってなかった」といったやりとりは、どちらにも言い分があります。

すべてを察知し、把握していれば、見守ってもいいやり取りです。

見守っていると、言い合っていた子どもたち同士で解決策が生まれます。

「じゃあこうしようか」「そうだね。そうしよう」と、お互いが納得できる形を、子どもたちの間だけで生み出すことができるのです。

助言が必要な場合もある

こういったやり取りを経験しながら、子どもたちはさまざまな物事を学んでいきます。

しかし、うまくいかないケースもあります。

たとえば「貸して」「嫌だ、貸さない」といったやりとりが続き、しばらく見守っても話が進まなそうなときは、少しだけ子どもたちに助言をします。

「どっちが使ってたの?」「どうしたらいいかなぁ?」「あれ?〇〇ちゃんが使ってなかった?」など、声かけのパターンはその場合に応じてさまざまですが、大事なことは、保育士がすべてをわかっているということです。

子どもなりに嘘をつくかもしれませんが、見ていればその嘘にもすぐに気付くことができます。

やりとりの全体像を理解したうえで、適切な助言をしてあげるとよいでしょう。

子どもと信頼関係を築く

保育士は、大勢いる子どもたちすべてを観察し、把握する力が必要です。

すると、子どもたちは、つねに見ていてくれるのだという安心感を得ることができます。

安心感は信頼に繋がります。子どもたちとの間で何よりも大切なのは信頼関係です。

大人が口に出して解決してしまうことは簡単ですが、子どもはそれでは納得せず、どこかに不満がたまります。

自分たちで解決することは、子どもたちにとっても「自分でできた」という満足感に繋がるものです。

見守る力、そして、どこで介入していくかを見極める力が保育士にとって大切なものだといえます。