保育士試験の難易度・合格率・倍率

保育士資格とは

保育士として働くには、国家資格である「保育士」の資格を取得する必要があります。

保育士資格は、厚生労働大臣の指定する保育士を養成する学校(大学・短大・専門学校)で所定の課程・科目を履修し卒業するか、保育士試験に合格することで得ることが可能です。

高校卒業後に最短で保育士になろうと考える人の大半が、前者の保育士養成学校への進学のルートを選びます。

このような学校で学べば、卒業と同時に保育士資格が得られますし、学校によっては幼稚園教諭など、別の資格も同時に取得を目指すことが可能です。

一方、保育士養成学校以外を卒業した人であれば、保育士試験を受験し、合格することによって保育士を目指すことができます。

保育士試験は1年に2回、春と秋に各都道府県で行われています。

保育士になるには

保育士試験の受験資格

保育士試験には、受験資格が定められています。

受験資格は最終学歴によって異なり、たとえば大学や短大を卒業した人であれば、保育士とは関係のない学部・学科出身者でも受験資格を満たしています。

専門学校の卒業生は、学校教育法に基づいた専修学校で、かつ卒業した課程が修業年限2年以上の専門課程であれば、どのような学科で学んだ人も受験することが可能です。

このほか、高卒や中卒の人であっても、定められた条件を満たすことで保育士試験を受験できる可能性があります。

最新の受験資格に関する詳細は、一般社団法人 全国保育士養成協議会のWebサイトで確認してください。

保育士試験受験資格の確認

保育士試験の難易度・勉強時間

保育士試験では筆記試験と実技試験が行われ、それぞれに合格する必要があります。

筆記試験について

筆記試験はマークシート方式で、2024年現在、以下の8科目があります。

・保育原理
・教育原理及び社会的養護
・こども家庭福祉
・社会福祉
・保育の心理学
・子どもの保健
・子どもの食と栄養
・保育実習理論

合格ラインは各科目100点満点のうちそれぞれ6割以上であるため、苦手科目をなくしておくことが重要です。

一度合格した科目は3年間有効であり(対象施設において一定の実務経験がある場合は、証明や申請によって合格科目が最長5年間免除されます)、複数年にまたがって合格を目指す人もいます。

「幼稚園教諭免許」を持っている人であれば、免除申請をすることで、一部の科目が免除されます。

なお、試験科目は年度によって変更となる可能性があるため、最新の情報を確認してください。

実技試験について

実技試験では、子どもへの話し方に関する技術を問う「言語表現」、ピアノなどの演奏技術を問う「音楽表現」、絵画などの製作に関する技術を問う「造形表現」の3種類のうち、2種類を選択します。

合格ラインは、選択した2科目それぞれ50点満点のうち6割以上となります。

実技というと難しく感じるかもしれませんが、「特別に絵が上手」「驚くほどピアノが上手」といったような高度なスキルが求められるわけではなく、保育士として働くうえで必要な基礎的な技術がきちんと身についているかが判断されます。

実際に保育の現場で求められるスキルを理解し、習得のために繰り返し練習しておくことが大事です。

平均的な勉強時間は?

保育士試験の勉強時間は、人によってだいぶ差があるようです。

最短では、1ヵ月半程度の勉強で合格している人もいますが、3ヵ月程度が平均的で、長ければ半年かけて計画的に準備をしている人もいます。

保育士試験は出題科目と出題傾向をきちんと把握し、それに沿った対策をしていけば、独学で合格することも不可能ではありません。

また、仕事をしながら合格を目指す人のなかには、合格科目の免除制度を利用し、何年かかけて資格取得する人もいます。

保育士の合格率

ここ最近の保育士試験の合格率は、例年20%前後となっています。

厚生労働省のデータによると、令和2年度試験は24.2%、令和3年度試験は20.0%、令和4年度試験は29.9%、令和5年度試験は26.9%となっています。

合格率がさほど高くない理由としては、出題範囲が広いことや、1科目でも落としてしまえば合格にならないことが考えられます。

筆記については、保育士としての保育そのものの知識を問う問題に加え、関連する法律の条文や歴史なども出題されるため、きちんと試験対策をしておく必要があるでしょう。

保育士試験の受験者数・採用倍率

保育士試験の難易度は?

合格率は10%~20%であり、簡単に合格できる試験ではありません。科目によっては、かなり細かい部分まで問われるため、しっかりと時間を掛けて勉強することが必要となります。

保育士試験受験者数の推移

保育士試験の受験者数は平成28年度より地域限定保育士試験に加え、通常保育士試験についても年2回目の試験を実施することになり平成28年度は受験者数が大幅に増加しました。令和5年度は前年度より減少し66,625人となりました。

保育士試験受験者数_令5

保育士試験合格率の推移

保育士試験の合格率は、およそ20%から30%までの間を推移しています。令和5年度の合格率は26.9%となりました。

保育士試験合格率_令5

令和6年度 保育士試験の概要

試験日 ・[後期]筆記試験:令和6年10月19日(土)、20日(日)
・[後期]実技試験:令和6年12月8日(日)
申込書受付 令和6年7月5日(金)から7月25日(木)消印有効
試験地 各都道府県
受験資格 ・学校教育法による大学に2年以上在学して62単位以上修得した者または高等専門学校を卒業した者
・学校教育法による大学に1年以上在学している者であって、年度中に62単位以上修得することが見込まれる者であると当該学校の長が認めた者
・学校教育法による高等専門学校および短期大学の最終学年に在学している者であって、年度中に卒業することが見込まれる者であると当該学校の長が認めた者
・学校教育法による高等学校(中等教育学校の後期課程を含む)の専攻科(修業年限2年以上のものに限る)または特別支援学校の専攻科(修業年限2年以上のものに限る)を卒業した者または当該専攻科の最終学年に在学している者であって、年度中に卒業することが見込まれる者であると当該学校の長が認めた者
・専修学校(専門学校)と各種学校について
(ア) 学校教育法第124条及び第125条による専修学校の専門課程(修業年限2年以上のものに限る)または各種学校(同法第90条に規定する者を入学資格とするものであって、修業年限2年以上のものに限る)を卒業した者
(イ) (ア)に規定する当該専修学校の専門課程または当該各種学校の最終学年に在学している者であって、年度中に卒業することが見込まれる者であると当該学校の長が認めた者
(ウ) 平成3年3月31日以前に学校教育法第124条及び第125条による専修学校の高等課程(修業年限3年以上のものに限る)を卒業した者
・外国において、学校教育における14年以上の課程を修了した者
・学校教育法による高等学校を卒業した者もしくは中等教育学校を卒業した者もしくは通常の課程による12年の学校教育を修了した者(通常の課程以外の課程によりこれに相当する学校教育を修了した者を含む)または文部科学大臣において、これと同等以上の資格を有すると認定した者であって、児童福祉施設において、2年以上の勤務で、総勤務時間数が2,880時間以上、児童の保護に従事した者
・児童福祉施設において、5年以上の勤務で、総勤務時間数が7,200時間以上、児童の保護に従事した者
など
試験科目

筆記試験科目

1.保育原理
2.教育原理及び社会的養護
3.子ども家庭福祉
4.社会福祉
5.保育の心理学
6.子どもの保健
7.子どもの食と栄養
8.保育実習理論

実技試験分野

1.音楽表現に関する技術
2.造形表現に関する技術
3.言語表現に関する技術

試験方法 筆記試験は、マークシート方式にて行います。
合格率 26.9%(令和5年度)
受験料 12,700円
詳細情報 社団法人 全国保育士養成協議会

保育士試験は独学で合格できる?

保育士を独学で目指す人はいる?

保育士は独学で合格することも可能

保育士になる方法として代表的なものは、保育士養成課程のある学校(大学・短大・専門学校)で所定のカリキュラムを修了し、卒業して保育士資格を取る方法です。

しかし、保育士養成学校以外の学校を出ている人であっても「保育士試験」を受験すれば、保育士資格を取得して保育士として働けるチャンスが得られます。

保育士試験は年に2回行われており、受験資格を満たしていれば、特別な学校やスクールで試験対策をしていなくても受験することが可能です。

実際、これまでには独学で保育士試験を受け、合格している人もいます。

保育士試験の独学の方法は?

独学の方法としては、市販されている対策本を使うほか、通信講座やインターネットを利用することもよいでしょう。

独学で合格できた人の勉強期間は、長くても半年程度というケースが多いようです。

なお、保育士試験は1次試験で筆記、2次試験で実技が行われ、筆記試験では8科目(2023年現在)のすべてに合格することで、ようやく実技試験を受けられます。

また、筆記も実技も100点満点中60点が合格ラインとなります。

筆記試験については、テキストを読み込み、過去問や予想問題集を繰り返し解いていくことが重要です。

実技試験は、音楽表現・造形表現・言語表現の3科目から、2科目を選んで受験します。

なお、保育士試験の全体としての合格率は例年2割程度と、決して高いわけではありません。

独学の場合、ある程度期間を決めて集中して対策することが、合格への近道といえそうです。

保育士試験の独学のメリット

保育士試験を独学で受験するメリットは、試験対策の学校・スクールに通うための時間やお金を抑えられることです。

書籍や通信講座を利用する場合でも、数千円か数万円以内におさめることができ、学校へ通うよりはずっと安く合格が目指せます。

また、決められた時間に通学しなくてはならない学校とは異なり、自分のペースで勉強を進められることも、独学のメリットです。

頻繁に家を空けるのが難しい人や、仕事をしながら試験対策をしたい人などは、独学で合格を目指すケースも多いようです。

保育士試験の独学のデメリット

独学の難しさは、とくに実技試験の対策で感じる人が多いでしょう。

筆記試験であれば、参考書・テキスト・過去問題集がたくさん出ているため、それらを利用して自分で繰り返し勉強をすれば、合格ラインに近づくことは可能でしょう。

一方、実技は明確な答えが用意されているわけではありませんし、自分の技術が合格基準を満たしているのかどうか、どうしてもわかりにくい部分があります。

しかし、効果的な実技の対策方法もあります。

たとえば、音楽表現や言語表現であれば、インターネット上に投稿されている保育士試験対策のための無料の動画を見ながら、練習していくとよいでしょう。

お手本と比べて自分の技術がどうなのかをよりわかりやすく判断するには、自分で動画を撮って、後から見返してみることも効果的です。

また、造形表現では事前に試験当日にも使う色鉛筆を用意しておき、過去に出題された問題を繰り返し練習しておくとよいでしょう。

実技は、とにかく何度も練習をして、自信をつけておくことが合格に近づくポイントとなります。